巨神聖戦記2024 108と108   作:Genbu108

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#18 第五章-それぞれの覚醒-

「12000年前、こんなに沢山のサイボーグ巨獣相手に巨神達は戦い撃退した。」

 

一ノ瀬がそう呟いた途端に大画面が統制官の顔を大映しにした。

 

「そしてその巨神達も今では我々の支配下にあるのは先程言った通り。ガイガン軍団に加え巨神達が下僕共から全文明を根こそぎ奪い去る、これが俺のやり方だ。天皇や教皇の偽者による茶番よりもはるかに壮大。どうだ? 抵抗しても無駄だとわかったか?」

 

「それはX星人が、お前が巨神を完全に支配出来ていたらの話。」

 

一ノ瀬のこの発言に対しゲラゲラ笑う統制官は彼女の研究を笑いものにしてきた地球人の男性共と何一つ変わらない。

 

この時いきなり一ノ瀬に殴りかかるマンデラ、藤崎が素早く取り押さえたため彼女は負傷せずに済んだが。

 

「志保先輩、この人あいつに操られている!」

 

一ノ瀬はそう言って大画面に映る統制官を指差した。

 

「その通り。M塩基を持つミュータント達を 俺は自由自在に操れる。あれを見ろ。」

統制官が得意げに右手親首を立て指し示したのは一斉に尾崎に群がるミュータント兵士達である。

 

「へぇ、一度に複数のミュータントを操れるんだ。でも私とその尾崎は操れないみたいだね。」

 

藤崎は地陸軍にいた頃尾崎と面識があり、統制官曰く藤崎も尾崎同様カイザーだという。

 

「いけません、マルコム・マンデラさん。邪悪な者に操られないで下さい。」

 

この石香炉の声が脳内に優しく響き、マンデラは我に返った。

 

「わ、私はいったい何を?」

 

「私はいつも貴方に綺麗にしてもらっていたあの石香炉です。貴方が元に戻れて本当に良かったです」

 

この声は一ノ瀬達にも聞こえていて、藤崎は即座にマンデラを解放している。

 

「フン、何者かが俺が操るのを邪魔したようだが1人ぐらい操れなくなっても構わん。今からこの男の中に眠るカイザーの力を覚醒さ せるからな。貴様らもよく見ておけ、カイザ一が目覚める瞬間を。」

 

統制官は右手から白い稲妻状の念力を放ち、操り人形状態のミュータント兵士達に組み伏せられ身動きもままならない尾崎にその 念力を躱す術など無い。

 

「全てを支配する力を持ちながら下僕共の味方をする愚か者よ! カイザーとして目覚めよ!この俺同様に!」

 

全身に稲妻状の念力を浴びた尾崎は両目に冷たい光が宿り、統制官はニヤつきながら彼の上に覆い被さるミュータント兵士全員にも う束縛は不要と命じた。

 

「目覚めたか、カイザーよ。貴様には筆頭参謀の地位を与える。俺の右腕となり共にこの地球に帝国を築こう。そもそもX星人が地球 人と交配しミュータントを生み出したのは、その中から俺達のようなカイザーが生まれ支配者となるのを期してのことだ。」

 

起き上がった尾崎に統制官が右手を差し出 したその時である。何と尾崎が統制官の右腕を引きちぎったのだ。

 

「ぐわぁあああ!き、貴様何を!?」

 

 

「たった今貴様は右腕を失った。そして今からこの俺が統制官だ。」

 

以前X星人の司令官が筆頭参謀だった頃の 統制官に「力だけに頼る者はいずれそれよりも強い力に滅ぼされる」と言ったのを覚えて いるだろうか。たった今尾崎の蹴りにより首の骨が折れ絶命した統制官を見れば司令官の「予言」が的中したのは火を見るよりも明ら かだろう。

 

統制官の仇討ちと言わんばかりに側近達は尾崎に向け光線銃を撃ったものの、カイザーとして目覚めた尾崎の念力により全て反射さ れ全員統制官の後を追う格好に。

 

「尾崎、今すぐあのガイガンとかいうサイボーグ巨獣達を止めて。巨神達も操るのを止めて。X星人が飛ばした大量の無人攻撃機も全 部撤収して。もう終わった、全て終わった。 これ以上の破壊は不毛なだけ。今の貴方なら止められる。」

 

藤崎は画面の向こうの元同僚にそう呼びかけ、瞳から涙が溢れ出る。

 

「不要なものは滅ぶべきだ。X星人、地球防衛軍、反政府活動家、皆滅ぶべきだ。そして今の俺にはそれらを滅ぼす力がある。藤崎、 手を組もう。地球人もX星人も超えた俺達カイザーなら新たな秩序を築ける。ここは俺達の星だ。そしてこの宇宙も。」

 

真顔のままこの発言をする尾崎はかなり危ない。つい先程まで生きていた統制官ならこの手の発言をする際はニヤつくだろうか。

 

かつての同僚の衝撃的な発言に愕然とした 藤崎に代わり、一ノ瀬は大画面に映る尾崎を一喝した。

 

「思い上がるな! カイザーとか宣っても所詮はヒト!たった今お前が始末したのがお前を操れなかったのを見て確信したよ、X星人は 巨神を完全に支配することなど出来ないって。勿論最早X星人の同類に成り果てたお前もね。私は志保先輩程優しくないし、前から お前が人の陰口叩くセコくて邪悪な輩だと知ってるから改心なんて期待してない。」

 

涙を拭い、気を取り直した藤崎も画面の向こうの元同僚を睨む。

 

「地陸軍にいた頃の私だったら喜んで手を組んでいたよ。あの頃私は巨神達を力でねじ伏せることしか考えていなかったから。でも今は違う。お前の言う通り私は地球人もX星人も超えた存在かもしれないけど、巨神の前だとそんな私も塵同然だと判る。尾崎お前は下剋上を果たし万能感に酔っているから、今私が言ったことはまず理解出来ないだろうね。」

 

相変わらず真顔のままの尾崎ではあるもの の、藤崎の返答に内心苛立ちこう吐き捨て た。

 

「折角俺が全てを支配する千載一遇の機会を 与えてやったのに足蹴にするとは。カイザーのなり損ないである藤崎貴様に期待した俺が 馬鹿だったよ。ガイガン、やれ。反政府活動家共を片付けろ。」

 

現在ガイガンは尾崎の支配下にあり、その 尾崎の命令通りジョナ達を殲滅するため新宿御苑へと向かう。

 

「隊長、今すぐ避難して下さい! 我々ではあのサイボーグ巨獣は止められません!」

 

内通者達が22式メーサー戦車、AC-25等を操縦しガイガンに対し総攻撃するも数秒の足止めが精一杯、ある者はジョナに無線連絡し上記の内容を話した直後に巨大鎌に車体ごと貫かれ、ある者は黄みを帯びた破壊光線により機体ごと蒸発と次々やられていく。

 

「全員外に出ろ! 避難するぞ!」

 

ジョナが号令を発し一ノ瀬達が皆外に出ると、破壊光線が直撃し葬祭場一帯が蒸発し た。

 

「危ないところだった。ってあれ!」

 

一ノ瀬が指差した方向にはガイガンがいて、甲高い咆哮を上げている。

 

「今ので偽陛下の死体ごと蒸発していれば苦しまずに済んだものを。ガイガン、もう1発撃て。あの反政府活動家共を全員殺れ。」

 

ところがガイガンは尾崎の命令に反し破壊光線を撃とうとしない。

 

「藤崎貴様!この俺の邪魔をするのか!? カイザーのなり損ないの分際で!」

 

たった今尾崎が気付いた通り、藤崎は精神感応によりガイガンの神経中枢に干渉し破壊 光線を撃つのを止めさせた。どうやら己がカイザーであることを自覚した藤崎はガイガンが迫る危機的状況に触発され不完全ながら力が覚醒した模様。

 

「みんな、今のうちに!」

 

ジョナ達は藤崎の懸命な呼びかけに従い先程長ったらしい葬列を形成していた各車両に分かれて乗り込んだ。一ノ瀬、藤崎と共に霊 柩車に乗り込んだジョナは自嘲的に微笑みながら以下の通り呟く。

 

「空っぽの棺を運んでいただけの霊柩車にこんな形で世話になるとは。」

 

他の車両と共に急発進した霊柩車は藤崎がカイザーの力を使うのに専念出来るようジョナがハンドルを握る。

 

懸命にガイガンの動きを封じ続ける藤崎の脳内に尾崎の声が鳴り響いた。

 

「カイザーのなり損ないの分際でいつまでも この俺を邪魔出来ると思うな。」

 

途端に藤崎の力が押し負け、甲高い方向を上げ再び動き始めたガイガンが尾崎の命令通り破壊光線を撃つ。

 

「危ないマンデラ!」

 

藤崎がそう叫ぶ中破壊光線が直撃する直前 に運転中の車両から脱出しつつ霊柩車の屋根に飛び乗るマンデラ、しかし完全に避けることは出来ず背中に負ったばかりの大きな火傷が痛々しい。

 

「マンデラさん、しっかりして下さい!」

 

霊柩車の車内に入った途端にうつ伏せに倒れ込んだマンデラを目の当たりにして一ノ瀬が涙ぐむ。

 

「い、一ノ瀬さん、泣かないで下さい。 わ、私は先程貴方に危害を加えようとしまし た。それだけではありません。楠木武の間 近にいてあの男の殺人、性暴力等非道な行いを知りながら、け、結局何も出来ませんでした。私は、私は、愚かな卑怯者です。」

 

楠木は己の悪事の隠蔽に細心の注意を払っていた上使用人同士の監視、密告を推奨しており、そんな楠木にジョナに通じていること を知られることなく監視を続け、尚且つ傍若無人な楠木に気に入られるのは至難の業。その至難の業を成し遂げた上楠木の悪事の証拠をデータ化しジョナに送信し続けたマンデラは断じて愚かな卑怯者などではない。

 

「マンデラ、君から頂いた楠木武の悪事に関する証拠データは全て厳重に保管している。 今までは公開しても楠木武が権力を使い揉み消すのは明白な上性被害者のこともありお蔵入りを余儀なくされていた。しかしX星人共やあの尾崎が色々やってくれたお陰で最早楠木武の権力基盤は瓦解したも同然。性被害者達を傷つけない範囲で近いうちに必ず公開する。君はよくやったよ。」

 

ここで石香炉が霊力を使い現在極楽浄土にいる軽部の声をマンデラに聞かせた。

 

「マルコム君、貴方はこの僕のため危険を承知で楠木武の悪事の証拠を掴んでくれたんだね。僕のせいで色々無理をさせることになってしまって本当にすまない。もう君は十分過ぎる程頑張った。君は僕の誇りだよ。」

 

ジョナ、そして親の如く慕う軽部の声を聞き感涙しながら永眠したマンデラは極楽浄土への往生を果たし、憧れの人と無事再会出来 たそうな。

 

母艦の下部から再び一筋の光が地上に照射され、X星人達の決死隊が降りてきて喚声を上げながら尾崎並びにミュータント部隊を襲 う。先程統制官の側近達を一掃した時同樣光線銃を反射し決死隊を殲滅するのに尾崎が費やした時間は約30秒、しかしこの間ガイガ ンを操るのが片手間となり結局一ノ瀬らを取り逃がす破目に。

 

「尾崎少尉、いえ尾崎統制官、今は母艦の制圧が第一かと。何時でも一掃出来る反政府活動家共は後回しで問題ありません。」

 

尾崎はミュータント兵士のこの進言に頷き母艦に乗り込んだ、いやミュータント部隊を率い襲撃したと記述するべきか。カイザーとして覚醒した際統制官の記憶を共有した尾崎は母艦の内部構造を熟知している上、カイザ一能力を使い艦内の機器全てを遠隔操作出来る。ミュータント部隊の精強さも相俟って尾崎は瞬く間にX星人の残党を殲滅し母艦を制圧した。

 

「X星人というのも大したこと無いな、こんなにも簡単に一掃出来るとは。だが奴らの科学技術は地球人の比ではない。見たところメーサー砲も元々X星人の技術で、大昔地球に襲来したX星人が残したものが今世紀初頭に発見され地球防衛軍の武装に取り入れられたようだ。その科学技術も今やカイザーである 俺のもの。そうだ、あいつを呼ぼう。」

 

尾崎の言う「あいつ」、即ち藤崎は尾崎のカイザー能力により母艦最深部に瞬間移動させられ、当然ながら戸惑いを隠せない。

 

「藤崎、さっき俺の邪魔をした時は反政府活 動家共と一緒に叩き潰してやろうと思ったが、よくよく考えたらまだ覚醒していない状態であれだけ力を発揮出来るなら覚醒したら 相当なものになる筈。その力を消すのは惜しい。そこで一旦貴様をここに呼び寄せ力を覚醒させることにした。」

 

「尾崎、お前はガイガンとかいう殺戮獣を操りマンデラを、同志達を大勢殺した! 絶対許さないし絶対服従なんかしない!」

 

「相変わらず強情な女だ。おい、この女を取り押さえろ。」

 

先程統制官に操られ尾崎の全身を抑え込んだミュータント兵士共が今度はその尾崎の命令通り藤崎の全身を抑え込む。

 

「離せ!離せ!」

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