巨神聖戦記2024 108と108 作:Genbu108
「さて藤崎、折角だからまずはこの俺の力を見てもらおう。」
そう言いながら尾崎は以前X星人司令官がやっていたように両掌を天井に向け数々の映像を映し出す。
ニューヨーク上空ではランブリングが再び飛来したラドンに挑むも劣勢である。
ランブリングを支援するため出動した地上部隊は先程飛来したガイガン2体が瞬く間に一掃したのだから尚更だ。ガイガンは飛行能力を有し、その速度はラドン並み。
「ホイットモア大佐、最早この艦は限界です!」
「最後まで諦めるな! これは強いアメリカを取り戻すための試レギャババババ!」
素早くランブリングに飛び乗ったラドンが 頑丈な嘴により艦体各部をつつき回し、あちこち火花を噴出したこの空中戦艦はもう長くはもたない。
この火花噴出に伴う漏電によりまだ勝てる気でいるホイットモアが高圧電流を浴び絶叫しながら息絶えた。
ベオグラード市内の中国大使館に空爆をはじめ己の悪事を全く反省していない腐れ外道だけに、電気椅子による死刑執行に見えなくもない。
ラドンが艦体から離れた途端に2発の破壊光線を浴び消し飛んだランブリング、最早墜落不可避な空中戦艦へのこの過剰攻撃からガイガン2体を操る尾崎の残忍さ、冷酷さが見て取れる。
今のランブリング消滅をはじめ世界各地のガイガン軍団、そして巨神達の攻勢は母艦最深部の天井に映され、その映像を観た藤崎は思わず目を背けた。
フランスに配備されランブリング、火龍と並び称された地空軍所属の空中戦艦、エクレールも艦体左側面にベヒ モスの拳骨を浴びガイガンのパリ到着を待つまでもなく撃墜され、ノートルダム大聖堂が最早原型をとどめていない。
「地球防衛軍が20年の歳月を費やし打倒出来たのはゴジラ1体のみ。そして他の巨神達は今ではガイガン軍団共々俺の意のままに動き、まもなく世界がカイザーであるこの俺に屈服する。どうだ、藤崎?俺と組む気になったか?さっき俺の邪魔をした件はもう忘れよう。出来れば自発的にカイザーとして目覚め、自発的にこの俺と組んで欲しい。」
「ミュータント兵士共に私の身体押さえ込ませておいて、自発的にこの俺と組んで欲しいとかどの口が言う?さっさと私をカイザーとやらに目覚めさせたら?目覚めた瞬間にお前の右腕引きちぎって首の骨へし折ってあげるよ。さっきお前がやったみたいに。」
そう言った途端に藤崎は先程尾崎がカイザ ーとして覚醒した時同様のオーラを全身から湧き立たせ、全身の自由を奪うミュータント兵士共をまとめて弾き飛ばし素早く起き上がった。
「ほぉ、漸く貴様もカイザーとして覚醒したか。目覚めさせる手間が省けたな。さて、藤崎、どうする?俺と組むのか?」
「さっきも言った筈、お前はマンデラの、大勢の同志達の仇だと。それに私はお前と違ってX星人の真似事なんかしたくない。だからお前なんかとは絶対に組まない。」
藤崎の返答を聞き真顔の尾崎の右眉が僅かに歪む。
「X星人の真似事だと?あいつらは異星人の侵略者、俺はこの星の人間だし全てを支配する力を持つ者、カイザーとして当然の権利を行使したまで。折角カイザーとして覚醒したのに糞と味噌の区別も出来んとは。」
ガイガン軍団、巨神達を操り大規模な破壊活動を行い地球人に屈服を強いる、今尾崎がやっていることは先程統制官、即ちX星人がやっていたことと全く同じ。地球防衛軍もX星人も巨神を力でねじ伏せ主導権を握ることへの執念が凄まじく、その地球防衛軍の精鋭尾崎がカイザーとして覚醒した後やることがX星人と全く同じになるのはある意味必然か。
「先程俺の邪魔をした件を不問にし、カイザーとして目覚めたお前に全てを支配する力を、権利を行使する機会を再度与えたのに馬鹿なことしか言えんなら、ここで死んでもらう。」
尾崎はそう言った途端に藤崎に飛びかかり、カイザー同士の肉弾戦が始まった。
「がはっ!」
尾崎の猛攻に圧倒され床にうつ伏せに倒れ込んだ途端に吐血、見たところ圧倒的に藤崎の分が悪い。
「同じカイザーでも地球防衛軍の過酷な訓練に耐えられず脱走し反権力ごっこしているお前と、その過酷な訓練に耐え抜きM機関に属する精鋭兵士となった俺では出来が違う。藤崎、同じカイザーである俺に処刑されるなら 貴様も本望だろう。」
不意に藤崎の周囲の景色が母艦最深部から生まれたままの姿の一ノ瀬がいるベッドの中へと変わり、藤崎自身先程変装を解いた際灰色尽くめの上下の上に来ていた儀仗兵の制服だけ脱ぎ捨てた筈なのに今は一糸まとわぬ姿だ。
「すっ、数日前に、ゆっ、夢を見たんです。 てっ、天女様と激しく愛し合う夢です。その天女様、顔が志保先輩でした。」
この一ノ瀬の発言は先月大阪市内にて彼女と久しぶりに再会した日の夜と同じ。つまり今藤崎は初めて一ノ瀬とベッドの中で激しく愛し合った日にいる。
「志保先輩が言った通りあの男は、尾崎はX星人の真似事をしている邪悪な侵略者。絶対倒してね。」
突然上半身を起こした一ノ瀬が一糸まとわぬ姿のままこう言ったため藤崎は驚いた。この日の藤崎はX星人の存在は勿論、尾崎の顔も名前もまだ知らない筈だ。
途端に藤崎が涙ぐむ。
「ごめん、由衣。あいつ滅茶苦茶強くて私じゃ倒せない。」
すると一ノ瀬があの日と同じくティッシュペーパーを1枚手に取り、憧れの先輩の両頬を優しく拭く。
「あの尾崎は自分が巨神を意のままに操れていると思っているけど本当は違う。志保先輩、今からこれを見て。」
一ノ瀬がそう言うと再び藤崎の周囲の景色が変わった。藤崎は今ほぼ壊滅したパリにいて、尾崎と戦っていた時同様灰色尽くめの上下を着込みもう傍らに一ノ瀬はいない。
いきなり藤崎の目の前に落下したのは何とガイガンの生首だ。弱々しく咆哮し頭部の赤い発光が消えた生首は切断面からコード束が零れ落ち、このサイボーグ巨獣が体内の大部分を機械化されているのはまず間違いない。 驚いた藤崎が向こうを見るとベヒモスが首無 しガイガンの身体を踏ん付けている。
「もしかして、これは未来?それも元々私がいた時間よりほんの少しだけ先?」
またもや藤崎の周囲の景色が変わり、秘境のような場所の奥に建つピラミッド型石造物にとまる巨神モスラが巨大な翅を広げ、モスラの手前に立つ藤崎とほぼ同じ年頃の東洋人女性2人は見るからに双子だ。
「初めまして、私はリン・チェン、そして彼女はアイリーン・チェン、私の双子の姉です。ここは世界中のどの地図にも載っていない秘境です。」
リンが藤崎と同じぐらいの髪の長さなのに対し、アイリーンは一ノ瀬同様髪を短く切っている。
「初めまして、私は藤崎志保です。貴方達は 何故初対面の私に事細かに説明してくれるのですか?」
藤崎の問いに対しアイリーンがこう言っ た。
「私達はモスラと交信出来ます。太古の侵略者の末裔がこの地球を同じ侵略者の末裔から守るために奮闘している、その者は巨神撲滅を企てる軍事組織から脱退し巨神について調べながら巨神殲滅に反対し続けている、自ら の意識を過去や未来に移動させる能力を持ち近いうちにここに来ると最近モスラからお告げがありました。」
太古の侵略者はX星人、その末裔はミュータント、巨神撲滅を企てる軍事組織からの脱退は地球防衛軍からの脱走、そして自らの意識を過去や未来に移動させる能力を持つ者、ですか?」
藤崎の問いに対しアイリーンがこう言っ た。
「私達はモスラと交信出来ます。太古の侵略者の末裔がこの地球を同じ侵略者の末裔から守るために奮闘している、その者は巨神撲滅を企てる軍事組織から脱退し巨神について調べながら巨神殲滅に反対し続けている、自ら の意識を過去や未来に移動させる能力を持ち近いうちにここに来ると最近モスラからお告げがありました。」
太古の侵略者はX星人、その末裔はミュータント、巨神撲滅を企てる軍事組織からの脱退は地球防衛軍からの脱走、そして自らの意 識を過去や未来に移動させる能力を持つ者、全て藤崎に合致する。
今度はリンが藤崎にこう言った。
「巨神について調べている貴方はもうご存知でしょうが、基本的に巨神は特定の人間に肩入れすることはありません。しかし圧倒的に不利な状況下で己の血筋に囚われず侵略者に抗う貴方の真摯な姿勢は巨神の女王、モスラの心を動かしました。モスラは貴方が来たら全てを話すように、そして力を授けると言っています。」
解説を終えたチェン姉妹の姿がフッと消えたのと同時にモスラは全身を翡翠色に輝かせ、その光は藤崎の全身を優しく覆う。
間髪入れずに藤崎は元の時代の母艦最深部に戻り、すっと立ち上がった。
「今少し先の未来を見てきた。そして巨神の女王、モスラに会ってきた。尾崎お前が巨神を操れてなどいないと確信したよ。巨神達が懸命に侵略者に抗うのだから私もお前に負けていられない。」
そう言いながら尾崎を睨む藤崎はいつの間にか吐血の跡がきれいさっぱり消えている。
「未来を見た? モスラに会った? そんなのは俺にボロ負けという現実に直面し、現実逃避のため妄想に浸っているだけだ。この俺が貴 様を引き戻してやろう、残酷な現実に。」
この尾崎の発言を皮切りに、再びカイザー 同士の肉弾戦が始まった。