巨神聖戦記2024 108と108 作:Genbu108
入間基地に南極観測支援機ロッキードLC-130が着陸し、楠木は機内から出た途端に全身に纏う毛布を脱ぎ捨て以下の通り叫ぶ。
「見よこの楠木の肢体を! ゴジラも恐れをなして逃げ出した神の如き肉体美を!少年ダビ デが全裸で暴虐な巨人ゴリアテを打ち倒したように、この楠木は全裸で暴虐な魔獣ゴジラ を退散させ分厚い氷の下に封じ込めた! そんな我が全裸を無料で拝める諸君は天下一の果 報者だ!グハハハハ!」
見たくもない全裸を見せられ悲鳴を上げる女性自衛官達を目の当たりにし加害欲を増幅 と、今の楠木は完全に露出魔である。
数日後、都内の靖国通りにおいて戦勝パレードが開催された。
パレードの主役である楠木はパレード開始早々に衣服も下着も全て脱ぎ捨て自らの股間を中継カメラに密着させる等やりたい放題し、最早羞恥心の欠片も無い。
「この楠木のイチモツは映像として永久保存しておくだけの価値があるからな! グハハハ
ハ!日本男児の諸君、わざわざルーブル美術館に行かずともダビデ像は見れる! この楠木 の肢体こそ生けるダビデ像なのだからな!さあ思う存分この楠木の肢体を拝むがいい!」
楠木がやたらとダビデ像と自分を重ねたがるのは所謂「日ユ同祖論」を真に受けているのが大きい。そこまでミケランジェロのダビデ像に拘っている割に、そのダビデ像がフィ レンツェのアカデミア博物館に収蔵されているとも知らずルーブル美術館所蔵と思い込ん でいるのもお笑い草だが。
いきなり銃声が鳴り響き、パレード車輌の 屋根の上に仁王立ちし両手を腰に当て馬鹿笑 い中の楠木が仰向けに倒れ込んだ。両目を見開いたまま仰向け状態の全裸男即ち楠木の眉間に弾痕が出来ている。
「誰だぁ!?誰が撃ったんだぁ!?」
「見事ゴジラを打ち倒した俺達の英雄が!此 畜生!」
突然の「英雄の死」を目の当たりにし驚愕した観衆達は程なくして更に驚愕することと なる。
「た、立った! 楠木二尉が立った!」
起き上がった楠木の眉間の弾痕が瞬く間に消え、背中の無数のミミズ腫れもいつの間にかきれいさっぱり無くなっている。
「何者か知らんがこの楠木を撃ってくれて礼 を言う! お陰でこの楠木が神の如き存在であ ることを皆に知らしめることが出来た!何な らもっと撃っても構わんぞ! この楠木は不滅 だ!グハハハハ!」
楠木の挑発に乗せられたかのように再度銃声が響き、楠木の左胸及び右こめかみに銃弾 が食い込んだ。どうやら狙撃手は複数人いて複数の個所から楠木を狙ったらしい。先程と 違い撃たれても倒れもしない楠木は最早撃たれた時の痛みさえ感じていない模様。
「どうしたどうしたスナイパー共! この楠木の心臓はまだ動いているしこうして喋ること も出来るぞ!ゴジラでさえ恐れをなして逃げ出したこの楠木を貴様らスナイパー共が仕留 められる筈無いだろうが! グハハハハ!」
観念したのか狙撃手達は皆その場で銃口を自らに向け命を絶った。
狙撃手は3人いて1人はヨーロッパ系の赤毛の男性、1人はアフリカ系の女性、残る1人はアジア系の男性。
この狙撃手達は全員CIAに属し、楠木を亡き者にしようとしたのはゴジラ打倒を機に日本 が国際的な影響力を高めるのを懸念したホワイトハウスの意向に基づく。
「奇跡だ!やはり楠木二尉は奇跡の人! 我々大和民族の真の英雄!」
「そうだ!この楠木こそ大和民族の真の英雄! そしてダビデ王の生まれ変わり、シン・ダビデでもある! 者共ひれ伏せぇ! グハハハ!」
ひれ伏す人々に囲まれながら全裸男が馬鹿笑い、何とも愚かしい光景である。そしてこ の狙撃事件を機に楠木を神と崇める風潮が日本列島はおろか世界中に広まったのだから笑 えない。折しも何をやっても巨神は倒せないし止められないという諦念に囚われていただ けに、文明人共は地球最強の巨神ゴジラを見事封じ込めた楠木という神話に我先に飛びつ いたと考えられる。
ゴジラが地中に身を潜めてからも他の巨神達が度々出現し破壊活動を繰り広げ、程なく して国際連合即ち国連が巨神打倒のため国際軍事機関の創設に踏み切ったあたり、
文明人共は巨神達の破壊活動が自然破壊を繰り返す自分達への制裁であることを全く理解していないのは明白だろう。
巨神打倒を目的としたその国際軍事機関を
折しも巨神達の破壊活動により国連の主導的地位にある国連安全保障理事会の常任理事国全てが国力の大半を喪失し、総力を駆使し地球最後の巨神ゴジラを南極に追い込んだとされる自衛隊の「功績」が国際社会から高く評価されたからだ。
一躍世界的英雄となり国連総会に招かれた楠木も地球防衛軍本部を日本国内に置くよう強く訴えていたりする。
そして楠木は演説しながらまたもや全裸になりまたもや銃撃された。
「貴様この楠木の銃と金を盗んだ上にその盗んだ銃で俺様を撃ったのか!この不届き者 が!」
例によって眉間を撃ち抜かれても無傷な楠木に罵られ、軽部孝士一等陸士は戸惑いを隠せない。
「自分は楠木二尉、貴方に言われた通り撃っただけです!このお金は知りません!本当で す!信じて下さい!」
途端に軽部の左頬に拳骨を叩き込んだ楠木はよく見ると額に冷や汗を流している。
「嘘をつくならもっとマシな嘘をつけ! 部下に自分の銃を渡して俺を撃てと命じる上官が どこにいる!?上官の金を盗んでおきながら知らんなどと盗人猛々しいにも程がある!大 体誰だ貴様!?この楠木とは初対面なのに知り合いぶるな!馴れ馴れしい!おい貴様ら、 不届き者をとっとと連れていけ!」
何を隠そう楠木は事前に9mm拳銃を気弱な軽部に手渡し、国連総会において演説中の自分が全裸になった瞬間を見計らい眉間を撃つよう厳命していた。
自分が撃たれても死なない身体なのをいいことに、各国の代表が見ている中撃たれて何事もなかったかのように起き上がる自作自演である。
この自作自演に驚愕した各国の代表が地球防衛軍本部の東京設置に賛同したのは無論楠木の狙い通り。勘の鋭い方は楠木が用済みの軽部に窃盗並びに殺人未遂の濡れ衣を着せたことにも気付いただろう。
「こうしてこの国を中心とした地球防衛軍が発足し、以来20年間この国は国際社会の旗振り役となり他のどの国よりも優れていることを示し続けてきたのは皆も知っての通り。日本男児の諸君! この国に生まれた時点で諸君は勝者だ! 後は終わらせるだけだ! 巨神共のやりたい放題に人類が怯えるこの屈辱の時代を!天皇陛下万歳!そして本日は建国記念日! 今から諸君が華麗な演舞を披露するのを期待しているぞ!」
などと怒鳴る楠木は20年前国連総会において自作自演をかました時同様一糸まとわぬ姿 だ。
もっとも現在の楠木の中年太りも甚だしいブヨブヨ体型にはそれなりに引き締まっていた若き日の体型の面影など微塵も無く、束子状の口髭を生やしているのも20年前とは異なる。そんな珍妙な姿の楠木に向かって若き兵士達が一斉にひれ伏す様子は例えるならカルト教団の集会、あるいは軍事独裁国家の行政府といったところか。
2025年2月11日、日本武道館にて建国記念の日を祝う式典が開催された。
先程全裸姿の楠木に向かってひれ伏していた軍人共は楠木自らプロデュースした男性アイドルユニット「奇兵隊」の構成員を兼ね、本日は「お盆踊り」なる楠木考案の演舞を披露するとか。普段楠木にこき使われる秘書の広池一雄が式典の司会を担う。
「それでは『奇兵隊』の皆様のご登場です! 会場の皆様、盛大な拍手を!」
広池の発言に伴い楽屋から出てきた全裸姿の男性アイドル達がスポットライトを浴び、 両手に持つお盆により股間を隠しつつ拍手並 びに歓声を浴びながら特設ステージ上へと移動する。背中がミミズ腫れだらけの者が複数人と、この若き兵士達が楠木から「指導」と称する暴行を頻繁に受けているのはまず間違いない。
そのまま「奇兵隊」の面々が披露し始めた楠木考案の「お盆踊り」はとどのつまり裸踊 りである。その裸踊りに歓喜し黄色い声を上げる観衆は「お盆踊り」が直球のパワハラそ してセクハラであることには誰一人関心を示さないが。
「それではいよいよ元老でもあらせられる楠木武元帥閣下のご登場です!皆様盛大な拍手 を!」
ところが広池並びに観衆の意に反し楠木は ステージ上に出てこない。
さて読者の中には2025年現在の楠木が有する肩書に驚いた方もいることだろう。
何を隠そう自衛隊が地球防衛軍へと発展的解消を遂げた2005年に楠木は自衛官時代中尉相当の二等陸尉だった階級がいきなり陸海空軍元帥になったばかりか、1945年の敗戦以前の 日本同様内閣総辞職時の後継総理の指名等国家の重要事項に関与出来る元老の地位を得た。
ゴジラを南極の地に封じ込めた自分が日本の政治並びに軍事を担うのは当然、それに見合った地位をという楠木の何とも厚かましい要望に2005年当時今上天皇の地位にあった政仁が応じたのが事の発端だ。
現役自衛官にこれほどの地位を与えるなど天皇の国事行為の範疇を逸脱した正真正銘の憲法違反とはいえ、政仁の行いを憲法違反だと非難する者は殆どおらずむしろ英断だと絶賛の声が相次いだのだから始末に負えない。
20世紀の終盤頃から巨神の攻勢に怯える日本国民共が前にも増して天皇に縋るようになったのが大きく、楠木自身極右団体との繋がりを利用し天皇崇拝がより一層広まるよう暗躍していたりする。
それでは本編に戻ろう。いきなり楽屋方面から銃声が鳴り響き、驚いた広池が武装警備 員達と共に駆け付けるとドアノブ周辺が弾痕だらけと楽屋のドアが酷いことになっていて、楽屋内では両目を血走らせた楠木が銃口から煙の出ている9mm拳銃を右手に握りながら佇む。
「くっ、楠木元帥閣下、こっ、これは一体?」
と声を震わせる広池の左頬に楠木の拳骨がめり込んだ。広池は事あるごとに楠木に顔面をぶん殴られその度にかけている眼鏡のフレームが歪む。まだ2月の前半にも拘らず2025年の元旦以来広池は既に眼鏡を10回は新調したとか。
「この楠木に気安く話しかけるな! ゴマすりクソ眼鏡!俺は今猛烈に機嫌が悪いんだ!」
実のところ楠木は意気揚々と楽屋を出ようとしたところ、
「びりびりばりばりっ!!」と特注品の新品スーツのポケットがドアノブに引っかかりものの見事に裂けてしまった。 先程の銃声は楠木が新品スーツの破損に激怒しドアノブに向け9mm拳銃の銃弾を全弾撃ち込む音だったのだ。
そして楠木がいきなり広池の左頬をぶん殴ったのが単なる八つ当たりなのは想像に難くない。
「申し訳ございません、楠木元帥閣下!すぐに新しいスーツを用意させます!」などと土下座し叫ぶ広池はおそらく楠木にぶん殴られる度に同じことをしているのだろう。殴られた側が殴った側に土下座し詫びるというのも色々理不尽だが。
楠木は土下座する広池の後頭部をグリグリ踏ん付けながら以下のように叫んだ。
「馬鹿者!貴様それでも総理か!新しいスー ツを着たところでまたドアノブにポケットが引っかかって破れたら無意味だろうが! そんなこともわからん癖に総理やっているのか!恥を知れ!」
驚いたことに秘書として毎日楠木に酷使され続ける広池は現役の内閣総理大臣、即ち日本国首相だったのである。
楠木は元老の地位を得て以来総理の人選は勿論内閣の人事にも度々介入してきた。
新たな内閣総理大臣が決まる度官邸に赴きその新総理に己の菊門を舐めるのを強要するあたり完全に楠木は図に乗っている。
実のところ2005年以降楠木が総理の人選は勿論内閣の人事にも一切口を出さなかった時期が3年間あった。
「エルサレムの地に赴き『シン・ダビデ』の威光を示すべき」という牧野正助の進言に歓喜し、楠木本人が日本を離れたからだ。
2009年当時総理だった牧 野は単純な楠木をおだてて体よく日本国内から追い出し内閣への干渉を止めさせる腹積もりだったものの、その年の衆院選は保守第一党が議席を大幅に減らし与党の地位を失う結果に終わり牧野内閣は総辞職。楠木のテコ入れ無しには与党の地位を保てない自党のお粗末な実態が全く見えていない牧野の認識の甘さが明らかとなった。
野党に転落した保守第一党が与党に返り咲けたのは3年ぶりに帰国した楠木のテコ入れに依るところが大きく、かつては楠木を毛嫌いしていた牧野がその楠木の菊門を一心不乱 に舐め副総理の地位を懇願等最早党内が楠木への媚び一色と言っていい。
一度組閣するも自身の脱税が明るみに出かけたため仮病を使い政権を投げ出した門長四郎に至っては楠木の菊門の皺の数を覚える等楠木への媚びが度を超え、再び政権を投げ出したのは菊門の舐め過ぎが祟り健康を害したからからだ。 このように他人の菊門を舐めるのは大腸菌による口内汚染を招く危険性が高く決して真似しないように。
イスラエルに赴きやりたい放題していた楠木が何故日本に舞い戻ったかは後程触れるこ とにしてそろそろ本編に戻ろう。
結局楠木は全裸姿のままステージ中央の舞台に上がり歌と踊りを披露し始めた。某ガキ大将級の音痴 かつブヨブヨ体型の楠木が披露するぎこちない「演舞」が股間部分にぼかし加工もされないまま全国に生中継、この国は一体何処に向かうのだろうか。
「これがあのゴジラを退散させた伝説の全裸!」
「尊い!衣装に頼らず身一つで踊る楠木閣下 尊い!」
「建国記念日に楠木元帥閣下の全裸と歌と踊り生で見れたぁ! 俺もう死んでもいいか も!」
このように楠木を熱烈に崇拝する輩が選挙の度その楠木の発した号令通り投票するから こそ保守第一党は与党でいられる。20年前まで教祖法山伸作を熱烈に崇拝していた法華聖教の信者達が楠木崇拝に転じ、教団解散により支持母体を失った正大党は連立を組む保守第一党に吸収され、今や日本の選挙自体が楠木1人に牛耳られているに等しい。