巨神聖戦記2024 108と108 作:Genbu108
ふと目を覚ました楠木が目にしたのは何と天井に立つ広池の姿、と思いきや実際は全裸姿の楠木が逆さ吊りにされていて、広池が天井に立っているかのように錯覚しただけだ。
「楠木武、漸く目を覚ましたか。」
広池は意識が戻ったばかりの楠木を眺めながら嫌らしく微笑む。
「広池貴様!何様のつもりだ!? 軽々しくこの俺の氏名を呼ぶな!『楠木閣下』と呼べ!」
鎖付きの鉄枷を両腕両足に嵌められ大の字状態かつ逆さ吊り故、全裸男楠木は目の前の広池をぶん殴ろうにも身体の自由が利かない。
「何様だと?日本国首相に決まっているだろそれにしても楠木貴様、もがく度胸や腹の贅肉がプルンプルンと震えるのが面白いな。尻の肉も随分弛んでいる。この20年でどれだけ太ったんだ?」
今までなら広池はここまで喋る前に短気な楠木に顔面をぶん殴られ、かけている眼鏡がグニャリと歪むだろう。
「貴様のようなボンクラが総理でいられるのは地陸海空軍元帥かつ元老であるこの楠木がテコ入れし続けたからだろうが!大恩人である俺様にこんな真似してタダで済むと思うな!大体ここは何処だ!?」
すると広池が電灯を点け、楠木は今自分が何処にいるのかを理解した。
ここは市ヶ谷地下に設けられた拷問室だ。地球防衛軍発足に伴い市ヶ谷の軍事中枢は臨海地区の地球防衛軍本部に移り、国防大臣も地陸海空軍元帥、即ち楠木の代弁者に過ぎない。
この拷問室は在日外国人、野党支持者、反皇室活動家等を 拷問にかけるため他ならぬ楠木の命により作られていたりする。
「先程新宿御苑から避難した時路上に転がる全裸のおっさんが目に入った。そのおっさんが楠木貴様だと知った時は今までのお礼が出来る千載一遇の好機だと全身が震えたよ。意識の無い貴様をここに運び込み逆さ吊りにす るのは彼らがやってくれた。さあ皆さんどうぞ。」
そう言いながら広池がほくそ笑むと、広池の言う「彼ら」即ち楠木の使用人達、そして 「奇兵隊」の面々がぞろぞろ部屋に入ってきて逆さ吊り状態の全裸男を取り囲む。日頃からこき使われ続け、時には性被害を受けた人達だけに、ずっとサンドバッグ扱いされてきた広池同様楠木を激しく憎悪しているのだろう。
「楠木武!今まで散々玩具扱いしてくれて感謝している!感謝の気持ちを受け取れぇ!」
使用人達はそう叫びながら手に持つ棒を振るい楠木の全身を滅多打ちにした。中には金切り声を上げ棒が折れるまで楠木の腹部を延々と殴り続ける者もいる。
「奇兵隊」の面々は顔面に蹴りを入れる、裸踊りの際使わされていたお盆の縁を後頭部にぶつける等各自のやり方で楠木への恨みを晴らす。
この時広池は使用人らに痛めつけられる楠木の姿を写生しながらニヤつき、楠木への集団暴行に加わろうとはしない。自分は手を汚さず他の人達に痛めつけられる楠木を眺め楽しむ魂胆か。
「何故だ!?この楠木は不死身の筈!?撃たれても痛みを感じない身体の筈!? 何故全身が痛い!?」
先程楠木が路上に転がっていたのは、マン デラにぶん投げられ壁を突き破った際20年ぶりに痛みを感じ意識を失ったからだ。あれだけ全身を棒で殴られたり顔面を蹴られたりしても特に負傷していないとはいえ、どうやら楠木は少しずつ普通の人間に戻りつつある模様。
想像以上の楠木の狼狽えぶりを目の当たり にして、広池はかけている眼鏡のレンズ部分がギラリと輝く。
「おやおや、痛いのかい? 可哀想だねぇ。でもいけない子にはお仕置きが必要なんだよ。 さぁ楠木武ちゃん、おじちゃんに対してごめんなさいと言いなさい。おじちゃんは総理大臣というとっても偉ぁい人なのに、お顔をぶって眼鏡駄目にしたり、無理矢理自分のお尻の穴を舐めさせたりとそのとっても偉ぁい人に対していけないことをし続けたのだから、ちゃんとごめんなさいと言いなさい。」
見ての通り完全に図に乗った広池は楠木を幼稚園児扱いしている。
「広池貴様ぁ!この楠木をお子様扱いしてここから生きて帰れると思うな!」
いくら広池を恫喝しても今の楠木には何も出来ない。不死身の身体といっても身体能力自体は普通の人間と変わらないためいくら力んでも手足に嵌められた鉄枷はびくともしないし、少しずつ普通の人間に戻りつつある今なら尚更だ。
「楠木武ちゃん、お顔がばっちく見えちゃうからおヒゲなんて生やしちゃ駄目でし よ。」
広池がニヤニヤ笑いながら楠木の口髭を数本毟り取ると、使用人達並びに「奇兵隊」の面々も皆広池に倣ったため楠木ご自慢の口髭は殆ど無くなった、激痛を伴いながら。
「痛い!痛い!痛い!痛いいい!」
日頃自分が暴力を振るった部下や使用人に対し散々「痛がるな!」と言いながら、今現在喚き散らしながら痛がる楠木を広池らが冷たく睨む。
「楠木武ちゃん、痛いでしゅか。では痛いところにお水をかけて冷やしましょうね。 の総理大臣のおじちゃんが用意した特別なお水をたぁっぷりかけてあげましゅよ。」
この広池の発言に嫌な予感がした楠木は思わず黙り込み、その嫌な予感は即的中することとなる。広池がズボンのチャックを開け楠木の顔面目掛けて放尿し始めたからだ。
「ほらほら、楠木武ちゃん、これはこの総 理大臣のおじちゃんが身体の中で作った特別 なお水でしゅよ。貴重なお水をたっぷりと飲 ませてくれたこの総理大臣のおじちゃんに心 から感謝しましょうね。」
先程広池に同調し一斉に楠木の口髭を毟り取った面々も皆閉口し、流石に楠木の顔面に放尿は同調出来ない模様。
「皆さんどうしました? 楠木武ちゃんは私の身体の中で作った特別なお水を美味しそうに飲んでいますよ。皆さんも特別なお水を楠木武ちゃんに飲ませてはいかがですか? まさか皆さん日本国首相である私が今言ったことをシカトなんてしないですよね?」
使用人達も「奇兵隊」の面々も広池の邪悪過ぎる笑顔に震え上がり、何人かは広池に倣い楠木の身体目掛けて放尿し始めた。
「どうですか、楠木武ちゃん? この総理大臣のおじちゃんが呼びかけると他の人達も特別なお水をかけてくれましたよ。これがとっても偉ぁい総理大臣の威光ですよ。おっとゴメン、お子ちゃまには難しい言葉使っちゃったから説明するね。偉ぁい人には他の人達を従わせる力があって、それを威光と呼んでいるんだよ。」
逆さ吊りの全裸男、楠木はずぶ濡れの上半身から悪臭を漂わせながら呻き、最早広池の陰湿な説教を聞く余裕も無い。
一旦放尿を終えた広池は缶コーヒーを飲み、尿意を催すのを待ちながら他の人達が次々と楠木の裸体に放尿するのを見てほくそ笑む。
「楠木武ちゃん、お待たせ。この総理大臣 のおじちゃんの身体の中で新しい特別なお水が出来たからまた飲ませてあげるよ。今日は沢山飲めて幸せだねぇ。」
そう言いながら広池がズボンのチャックを開け中のものをニョロりと出したその時、
「いい加減にしろ! この小便垂れ眼鏡があ!」
と叫んだ楠木がいきなり広池の股間のものに力一杯噛みついた。
「ギヤァアアアア!」
楠木に股間のものを噛みちぎられ、その激痛から絶叫した広池はそのまま仰向けに倒れ込んだ。この凄まじい絶叫は事実上広池の断末魔となり、死因が股間のものを噛みちぎられたことによる出血性ショック死なのか、 後頭部を床にぶつけたことによる脳震盪なのかは専門家による検死が必要だろう。
「総理!広池総理!」
「楠木武!貴様何てことを!」
「この狂犬野郎! 総理を返せ!」
使用人達並びに「奇兵隊」の面々が逆さ吊 り状態の殺人犯を一斉に詰る。
現在口周りがベットリと血塗れな楠木は目の前の人々の罵声など聞こえていない。というのも先程己を辱め続ける広池への憎悪を滾らせる中世界各地のシン・金精神像を一身に 拝む大勢の人達の声が聞こえるようになったからだ。偽清仁の正体がTV、ネットにより瞬く間に世界中に知れ渡り、今まで楠木と共に偽清仁を崇敬していた人達がより一層楠木崇拝に傾倒したのだろう。
「ダビデ王の生まれ変わりである楠木閣下こそ救いです!」
「楠木武様!どうか巨神とX星人とやらを滅ぼして下さい! 我々のものである地球を取り戻して下さい!」
「裸一貫でゴジラに挑み圧勝した楠木閣下! あの伝説の全裸をまた見せて地球人の偉大さをお示しあれぇ!」
楠木をひたすら拝む人達の心の声はこの他にも多数あり、皆この調子だ。元々調子に乗りやすく短絡的な楠木がこうした現実離れした賞賛の声を浴びるように聞き続けるとどうなるか、答えは簡単、慢心し暴走する。
「そうだ!この楠木はダビデ王の生まれ変わり!全裸でゴジラを撃退した真の英雄なのだ!グハハハハ!」
全裸姿かつ手足に鉄枷を嵌められ逆さ吊り状態の楠木が上半身から独特の悪臭を漂わせながら下品な声を上げ大笑い、この異様かつ珍妙な光景を目の当たりにした使用人達並びに「奇兵隊」の面々が唖然とするのも無理はない。
「ナンマイダホーレンソー! アーメンソーメン俺イケメン! アブラカダブラゴマ油!エロ本エロイゾエッサイム!」
楠木が以前上野公園にて唱えたものより更に滅茶苦茶な呪文を唱えるや否や、世界中から夥しい邪念が押し寄せ逆さ吊り状態の全裸男の身体へと流れ込む。この邪念は「地球は文明人のもの」という己の傲慢な思考を保つためシン・金精神像を懸命に拝み続ける世界中の人達のものだ。
「さぁ貴様らもこの楠木に力をよこせ! この楠木の血肉となれぇ!」
楠木を激しく憎悪しているとはいえ、「地球は文明人のもの」と思い上がる点に関しては使用人達も「奇兵隊」の面々もシン・ 金精神像を懸命に拝む連中と何一つ変わらな い。夥しい邪念を吸い最早超人を通り越し魔物と化した楠木は先程己の口髭を毟り取った連中からも邪念を吸い始め、邪念ばかりか精気まで吸い尽くされた使用人達並びに「奇兵隊」の面々は皆身体がミイラ化し息絶えた。
現在世界中に建てられたどのシン・金精神像も周囲はミイラ化した死体により覆われ、「地球は文明人のもの」と思い上がり続けたい一心からよりにもよって楠木に縋った連中全員がその楠木に精気を吸い尽くされ たのは最早自明。文明人の思い上がりは己の視野を狭め、時にはこうやって命を落とす。
「漲る!漲る! 漲るぞぉ! グハハハハ!」
夥しい邪念、そして精気を吸いまくった魔物楠木は全身をブクブク膨らませ、地下拷問室を破壊しながら地上に出た時は何と身長が50.1mに達していた。あれだけ自分をダビデの生まれ変わりだと言っていた楠木ではあるものの、現在その姿は巨人、即ちゴリアテそのもの。先程殆ど毟り取られた口髭が元通り生え揃っているのは己の口髭への執着心が実体化した結果だろうか。
「世界中の諸君! ミケランジェロのダビデ像を遥かに凌ぐ美しき全裸を見ろ! 冷たい大理石などではない温かみのある小麦色の肉体美を!巨大化する前からゴジラをビビらせる力があったこの全裸が巨大化し、更なる力を備えた!この楠木こそ地球の帝王だぁ!グハハ ハハ!」
などと怒鳴るあたり、巨大化しても己の全裸を見せびらかし悦に浸る楠木の露出魔気質は変わらない。
「地球の帝王」を自称と自惚れ度合いは巨大化する前の比ではないが。無論巨大化した楠木の体型は巨大化前と同じくブヨブヨな肥満体である。
巨大化した楠木が仁王立ちし大笑いする市ヶ谷一帯の様子は母艦最深部にも映し出され、楠木の弛みきった裸体を目にした藤崎は思わず映像から目を背けた。一応映像に映る楠木の股間は入念にぼかし加工されているが。
「隙あり!」
と言って藤崎に殴りかかる尾崎は顔面にぶん殴られた跡が目立ち、先程とは打って変わり圧倒的に劣勢なのが見て取れる。
殴りかかってきた尾崎をひらりと躱し、逆に尾崎の背部に右肘の一撃をお見舞い、今の藤崎の動きは某伝説のプロボクサー同様「蝶のように舞い蜂のように刺す」という表現がよく似合う。
「ぐはぁ!何故だ!?何故藤崎貴様はこんなにも強い!? さっきは俺があんなに圧倒していたのに!」
仰向けに倒れ込み吐血する尾崎、見ての通り先程とはものの見事に戦況が逆転している。ただ尾崎もよろめきながら起き上がり、まだやる気だ。
「藤崎!この俺の一撃受けてみろ!」
約5m跳び上がり渾身の蹴りを入れようとする尾崎、しかしまたもや藤崎に躱され自分が強烈な跳び蹴りを貰う格好に。
「トドメだ!同志の仇を取る!」
うつ伏せ状態になり呻く尾崎の首に蹴りを入れようとしたその刹那、藤崎の頭の中にマンデラの声が鳴り響く。
「藤崎さん、もういいです。貴方は私の死を十分悲しみ、そして怒ってくれました。尾崎なる者は屈辱感に打ちのめされ、もう貴方を叩きのめすことも従えることも出来ません。それに今トドメを刺すと彼は自分が巨神を操れていないことに気付かないまま逝くことになります。それで良いんですか?」
石香炉が聞かせてくれたマンデラの声に藤崎は頷き、呻く尾崎にトドメを刺すのを思いとどまった。
「ゴッ、ゴホッ、ふ、藤崎、もしこれが逆の 立場なら、おっ、俺はお前に何の躊躇もせずトドメを刺していたぞ。た、確かに俺は、貴様に敗れた。それは、認めよう。だが俺はまだ巨神達と、ガイガン軍団を従えている。俺を殺さないと止められない。しかし藤崎貴様には俺は殺せないことがたった今判明した。 殴り合いではお前の勝ちだが、全体的な勝負では俺の勝ちだ。」
この尾崎の発言に対し藤崎は特に反論はしない。わざわざ反論しなくても遅かれ早かれ 尾崎は絶望すると確信しているからだ。
藤崎が尾崎を放置し母艦から退出しようとしたその時、ミュータント兵士が1人慌ただしく駆け込みこう言った。
「大変です、尾崎統制官!南極でゴジラが目覚めました!」