巨神聖戦記2024 108と108   作:Genbu108

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#21 最終章-それぞれの旅立ち-

20年前ゴジラが旧轟天号と激闘を繰り広げた南極大陸の一帯、通称エリアGは放射能濃度の高さから立ち入り禁止区域とされ、その際ゴジラが潜り込んだ地割れは一応人工衛星からの監視が続けられたとはいえ事実上放置されたと言っていい。

 

実のところ先日巨大不明生物が大阪に出現 した際、地球防衛軍本部のエリアG監視班は衛星による映像を確認し、例の地割れ付近に何の変化も見られずゴジラはまだエリアG地下にいる可能性が濃厚、との報告書を作成し ていた。しかしながら巨大不明生物をゴジラと信じてやまない2人の元老、即ち楠木と矢口の機嫌を損ねるのを恐れ、この報告書は隠匿されたのだ。

 

その報告書は地球防衛軍本部を密かに脱出した内通者達により持ち出され、エリアGの画像データ共々ジョナの手の中に。

 

「ご苦労だった。あれ程警備が厳重な地球防衛軍本部をよく脱出出来たな。」

 

「実を言いますと危ないところでした。地下通路を使い脱出しようとしたところを警備兵に見つかり射殺されそうになりました。いきなり本部が倒壊し我々を射殺しようとした警備兵が全員潰され九死に一生を得た次第で す。」

 

丁度この時東京湾からムートーが出現し、 地球防衛軍本部を破壊したのである。瓦礫の山と化した地球防衛軍本部から例の核ミサイ ル、ハチワリを3発美味しそうに咥えているあたり、ムートーがここを襲った理由が核エネルギーを頂くためなのは最早自明か。先日原発など無い東京を真っ直ぐ目指していたのもこの核ミサイルが狙いだったのだろう。

 

内通者から手渡された報告書に目を通し、 ジョナは満足げに頷いた。

 

「やはりあの大阪に来た愚鈍な巨獣はゴジラとは別物だったな。楠木武も矢口蘭堂もとんだ勘違い者だ。」

 

現在ジョナ達がいるのは何と赤坂御苑地下 の皇族専用シェルターである。というのも義仁が偽清仁の正体を暴いたジョナ達に好感を持ち、皇宮護衛官よりも頼りになると考え警護への従事を条件にこのシェルターを使うの を許可したからだ。ちなみに義仁の側近達は先に逃げた皇嗣父子を懸命に探す中ガイガンが撃つ破壊光線を浴び、皇宮護衛官共々消し飛んでいたりする。

そういうわけで義仁もジョナ達と一緒にいて、会話にも度々口を挟む。

 

「その資料、俺にも見せてくれ。なるほど 確かにエリアG付近には何の変化も無い。そ れにしてもあいつら、こんな大事なことをこの俺にも隠していやがったのか。楠木武は野蛮人の変態野郎、矢口蘭堂は汚職野郎な上平気で約束破る人間のクズだから知らせないのはまぁわかる。だが皇嗣である俺には即知らせるのが筋だろう。地球防衛軍も所詮は役立たず集団か。」

 

散々地球防衛軍に守ってもらいながら勝手なことを言う義仁に対し一ノ瀬は呆れながらこう言った。

 

「以前本物のお前の兄と話した時余りにも自分勝手過ぎて心底呆れたけど、お前も同じだね。よく似ている兄弟だよ。」

 

この一ノ瀬の発言が癇に障ったらしく、資料の紙を床に叩きつけ部屋を出た義仁の顔色には茹蛸という比喩がよく似合う。一ノ瀬を罵倒することも資料の紙をぶつけることも出 来なかったあたり、この皇嗣は菊タブーなど恐れない彼女の剣幕が己を心底震え上がらせる程凄まじいのを本能的に感じ取った模様。

 

「一ノ瀬さんには礼を言わないといけないな。丁度あの義仁の高慢さに辟易していたところだ。」

 

「ジョナさんもでしたか。私もあの義仁にはガツンと言っておきたかったんです。」

 

現在ジョナ達がいる部屋の隅にはX星人の遺体が横たわる。先程まで露子と一人娘の恒子に擬態していた2人は地下シェルターに逃げ込んだ直後の義仁を襲おうとしてジョナに射殺された。本物の皇后母娘を秘密裏に始末したのは共に生活していた偽清仁あたりか。予てより清仁一家を毛嫌いしていただけ に、義仁はその一家の全滅に内心ほくそ笑んでいたりする。

 

義仁が完全防音構造の寝室に入ると、ふかふかベッドの上に一人息子の靖仁が寝転がっていた。

 

「パパ、あの一ノ瀬由衣ってネーちゃん、顔大和撫子だし、胸も結構デカそうだから一回ヤッてみたい。俺が今までやったのは派手なのとかスポーティーなのつけた女が多かった けど、あの姉ちゃんは俺が初めてやったあい つみたいに清純な下着つけてそう。あとこれ俺の勘だけど、あの姉ちゃん多分しょじよ...」

そこまで言った靖仁の左頬に実父の鉄拳が食い込んだ。

 

「馬鹿者がぁ! そんなことしたら証拠押さえられ世界中に公開されるぞ!あのテロリスト共には菊タブーなど通用しない! 大体お前まだ17なのに女に見境無さすぎる! お前が女を犯る度口封じにどれだけ手間暇かけたと思っているんだ!?」

 

密かに観た18禁サイトの動画を真似して 同級生女子を襲ったのは中学卒業を控えた15歳の春、以来靖仁は性暴力を楽しむようになり既に被害者数は20人を超え、彼女達 は皆性被害に遭った直後に行方不明ないし不慮の死を遂げているという。

 

「痛いよ、パパ。何もぶん殴ること無いじゃないか。そういえばあの姉ちゃんは清仁伯父ちゃんが宮内庁職員の女とやって生まれたんだよね。つまり俺の従姉。ねぇ、パパ、やっ ぱりあの姉ちゃんとやりたい。従姉とやるっ て昨日の晩観た弟が姉とやる動画みたいでオモシロぉ、おぐぐぐぐ!」

 

最早靖仁の発言を看過出来なくなり無我夢 中で一人息子の首を絞める義仁、その表情の おぞましさは衝動的に泉を殺害した時の矢口のそれに匹敵、あるいはそれ以上か。6年前、義仁は即位を控え浮かれる兄への苛立ち を募らせ、その兄の笑顔を褒めた宮内庁職員1人を衝動的に絞殺していたりする。無論この殺人は厳重に隠蔽され、急性心不全として処理されたそうな。

 

ふと胸騒ぎがしたジョナは親鍵を使い寝室 の扉を開け思わず息を呑んだ。ふかふかベッ ドの上に2つの死体が折り重なり、下の靖仁は顔面鬱血状態かつ首筋に手型が濃く残り、 上の義仁は左目に深々と突き刺さった万年筆 が痛々しい。靖仁が仰向け、義仁がうつ伏せ状態なのを踏まえると、首を絞められ絶命寸前の一人息子が最後の力を振り絞り実父の左目に万年筆を突き刺したのだろう。

 

皇位継承資格を有する義仁親子が仲良く冥界に旅立ち皇統は断絶、本来1945年の敗戦直後に解体しておくべきだった皇室が漸く滅び去った。

 

「一ノ瀬さん、我々は今皇統断絶というある種の歴史的瞬間に立ち会っているようだ。」

 

「あの靖仁は私の身体狙っていたみたいですけど、こんなに呆気無く逝ってしまうと何だか哀れに見えてきました。」

 

 

この場に藤崎がいれば「靖仁は何人も女性 を襲った性犯罪者だぞ! クズに同情するな!」と一ノ瀬を叱るかもしれない。その藤崎は赤坂御苑に着いた途端に姿が消え、石 香炉から今母艦最深部にいると聞き一ノ瀬もジョナも帰りを待っている最中だが。

 

さてその母艦最深部の動向を見よう。藤崎に格闘戦を挑むも惨敗し呻いていた尾崎は、 南極にゴジラ出現との報告を聞き思わず跳ね起きた。

 

「ゴホッ、ゴホッ、ゴッ、ゴジラが南極に出 現!?何を言っている!? ゴジラはつい先日大阪に襲来し核攻撃で消し飛んだ筈だ!」

 

「尾崎統制官、私も正直信じられません。 しかし映像をご覧下さい。あれは間違いなく ゴジラです。」

 

報告に来たミュータント兵士にそう言われ 尾崎が観た映像は南極のエリアG一帯に焦点 が当てられ、氷山をぶち割り地下から這い 出てきて力強く咆哮するゴジラを大映しにし ている。その姿は全身に青白く輝く筋が走る 点以外20年前と同じであり、特に意味も無く両掌が上向きのまま、走るわけでもないの に踵を浮かせたまま歩く等今は亡き巨大不明 生物なら目立った無駄は一切見られない。

 

途端に藤崎が大笑いした。

 

「尾崎お前、さっき地球防衛軍が打倒出来た のはゴジラ1体のみとか言ってたけど、結局 ゴジラも倒せてなかったね。じゃあそろそろ 私帰るから。」

 

「おい待て、藤崎! 誰が帰って良いと言っ た!?グッ、グワーッ!」

 

藤崎を追おうとした尾崎の全身をズキンと 激痛が襲う。先程藤崎を叩きのめそうとして 返り討ちに遭った今の尾崎はその場に立ち続けるのが精一杯、同じカイザーを追いかける など到底出来ない。

 

「貴様らあの女を連れ戻せ! これは統制官の 命令だ!」

 

尾崎が檄を飛ばしミュータント兵士共が一 斉に跳びかかるも、華麗に宙を舞う藤崎の蹴 りを浴び全員背後の壁に叩きつけられた。

 

「私1人相手にこんな大勢で、しかも背中を 狙う卑怯な手を使っておきながら全員返り討 ち、これが尾崎、お前の言う精鋭部隊か。」

 

藤崎の発言に逆上し右手の拳を振り上げた 尾崎を再び激痛が襲う。

 

「もういいかな? 今度こそ帰るよ。尾崎お前 が巨神達にギャフンと言わされるのを楽しみ にしているから。」

 

呻き回る尾崎らを尻目に藤崎はカイザー能力を使って機器を操作し母艦から出ると、両側のドアに「M-Organization」即ちM機関と書かれたメガクルーザーに乗り込んだ。先 程尾崎らがX星人討伐に出向いた際この車両 を使い、現在宮殿東庭の片隅には複数台のメガクルーザーが並ぶ。

 

「藤崎さん、ご無事で何よりです。一ノ瀬さん達は今赤坂御苑の地下シェルターにいまして、彼女達にも貴方がそちらに向かう旨をつたえています。」

 

「わかりました。それでは貴方のお告げ通り赤坂御苑に向かいます。」

 

霊力を使いすぐ連絡してくれる石香炉は実に心強く、愛しの一ノ瀬が危険な地上に出なくて済む。

 

その地上の危険の1つ、巨人楠木は急激な巨大化に起因する激痛が全身を襲い、市ヶ谷一帯を転げ回りながら呻いている。藤崎にとって移動中楠木に襲われる危険性がほぼ無いのは有難い一方、その叫び声がやかましくて仕方ない。ガイガンはカイザー能力により動きを止め、ムートーは現在品川にいるのが幸いし藤崎は無事赤坂御苑に辿り着いた。

 

地下シェルターに入った藤崎は愛しの先輩の生還に感涙中の一ノ瀬と抱き合う。

 

「由衣、突然いなくなってゴメンね。」

 

「石香炉さんからあの尾崎に無理矢理に瞬間移動させられたって聞いているよ。もう同じ目に遭ったりしないよね?」

 

「もう大丈夫、さっきと違ってあいつの超能力を遮断出来るから。本当はこのまま由衣と抱き合い続けたいけど、大至急隊長に報告しな いといけないことがあるんだ。」

 

今の藤崎ならたとえ尾崎が再び母艦最深部に瞬間移動させようとしても、カイザー能力により完璧に阻める。

 

「隊長、こちらをご覧下さい。」

 

そう言って藤崎は母艦から出る際頂いた小型端末を操作し、南極に出現したゴジラの映 像をジョナに見せた。

 

「漸く現れたか、地球最強の巨神、ゴジラよ。」

 

画面を観てそう呟いたジョナは何処か嬉しそうな表情だ。

 

「やはり隊長は先月大阪に上陸したのはゴジ ラとは別物で本物のゴジラは別にいると確信 されていたのですね。」

 

藤崎のこの発言に対しジョナは微笑みなが ら頷く。

 

「藤崎さん、貴方とは違い尾崎は先月大阪に上陸したのを本物のゴジラだと思い込んでいたようだな。その尾崎が本物のゴジラをその力により従えられるか否か我々はじっくり見ていこうではないか。」

 

実のところカイザーとして完全に覚醒した今の自分の力をもってしてもガイガン1体を 一時的に動き止めるのが精一杯、その旨を藤崎が申告するとジョナはこう言った。

 

「そもそも我々が圧倒的に不利なのは最初からわかっていたことだ。そんな中藤崎さん、貴方はガイガンの動きを止め我々が避難する時間を作り、X星人の立ち位置を奪った尾崎に煮え湯を飲ませた。貴方はもう十分過 ぎる程働いてくれたよ。だから卑屈になることは何も無い。この後我々に出来るのは戦いの行方を見守ることだけだ。」

 

処刑宣言した藤崎に返り討ちに遭い歩行もままなくなる程の深手を負った上、本物の出現により今まで本物のゴジラと信じていた巨大不明生物がまがい物と判明し、尾崎は苛立ちを募らせる。藤崎に深手を負わされた今もガイガン全個体を操れるカイザー能力は健在とはいえ、そのカイザー能力を使ってもゴジラを全く操れないのだから尚更だろう。

 

「超能力で操れないならX星人の科学力で操るまでだ!」

 

尾崎は大爪形態UFO1機を母艦から外しゴ ジラの下に遣わした。UFOの機体を一旦大 気圏外に出し光速で移動させたため南極には すぐ辿り着く。

 

「何い、X星人の科学力でも操れないだと!」

 

以前ムートーやラドンにそうしたように謎 の光線をゴジラに向け照射する大爪形態UFOは照射直後に撃墜された。接近し過ぎたのが祟りゴジラの長い尾の一撃を浴び機体が大破したのだ。

 

藤崎が持つ小型端末によりジョナも一ノ瀬もゴジラが大爪形態UFOを叩き潰した瞬間を観ることが出来る。

 

「あの光線を照射してもゴジラを全く操れない。志保先輩、ジョナさん、これで少なくともX星人は、そして尾崎は巨神ゴジラを操る術が無いのは確定です。この後尾崎はゴジラ討伐のためガイガンと巨神達を仕向ける筈。つまりこれで他の巨神達がどう動くかに より本当に尾崎の操り人形なのかがはっきり します。」

 

一ノ瀬の発言に藤崎もジョナも黙って頷 く。

 

「こうなったらゴジラ抹殺に全身全霊を注ぐ!」

 

と意気込む尾崎に対し先程南極にゴジラ出現との報告をしたミュータント兵士がこう言った。

 

「尾崎統制官、現在あのゴジラは全身から強い放射線を発しています。生きた原子炉相手に戦いを挑んで大丈夫なのでしょうか?」

 

すると尾崎はそのミュータント兵士をギロリと睨む。

 

「その生きた原子炉が日本に襲来したらどうする!?もうすぐ新たな陛下が即位される首都東京を、皇居を放射能汚染するわけにはいかんだろ!だから今のうちに片付ける!たとえゴジラが地球最強の巨神だろうと俺の支配 下にある他の巨神達とガイガン軍団相手には到底勝てまい。」

 

X星人と同じ侵略者と成り果てたにも拘らず尾崎は尊皇心を失っていない。ガイガンが皇居や赤坂御苑には一切手出ししないのも操り主が勤皇家なら頷ける。なお先程ガイガンの破壊光線を撃ち込み葬祭場一帯を蒸発させたのは偽清仁の遺体を一刻も早くこの世から消し去りたい思いに基づく。

 

義仁親子が殺し合い皇統が断絶と相成った件を精神感応により尾崎に伝えようと考えた藤崎ではあるものの、今尾崎がそれを知れば激怒し今自分達がいる赤坂御苑にガイガン並びにムートーを攻め込ませると考え思いとどまった。たとえムートーが尾崎の命令に従わ なかったとしても、ガイガンが尾崎の命令通 り赤坂御苑を襲えばそれこそ一ノ瀬達の身が危ない。

 

 

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