巨神聖戦記2024 108と108   作:Genbu108

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#23 最終章-それぞれの旅立ち-

大火傷に起因する激痛により巨人楠木は再び意識を失い、ムートーに頭部を破壊された ガイガン同様仰向け状態だ。股間のものはシン・轟天号になる前とほぼ同じ大きさに戻っているとはいえ、真っ赤に腫れ上がり何故かミサイルのような形状に。

 

今の様子は石香炉が霊力を使い壁に映してくれた映像により一ノ瀬達も観ることが出来る。ただしシン・轟天号に関してはジョナの要望によりジョナ以外観ることが出来ないが。

 

「隊長、ご厚情痛み入ります。あの楠木武の全裸は絶対由衣には見せたくありませんし、 私も見たくありませんので。」

 

「礼なら楠木武の全裸を私以外が観られないようにしてくれた石香炉さんに言って欲しい。まぁ私もある種の怖いもの見たさで観ているがね。勿論今まで悪逆非道の限りを尽くした楠木武の末路を見届けたいのもあるが。」

 

「私はあの収蔵庫から救出し保護して下さった皆さんに恩返し出来ればと思っています。 私の霊力がその恩返しになるなら光栄の極みです。この霊力自体皆さんの温情により取り戻せたものですので。ところで一ノ瀬さん、貴方は自分が皇室の血を引いているから三種の神器同様私を害しているのではないかと心の奥底で不安に思っているみたいですけど、全然そんなことありませんよ。貴方が あの収蔵庫にいた私を抱えた時の絶対落とさないというひたむきな思い、しっかり受け取っています。」

 

途端に一ノ瀬が感動の余り泣き崩れ、その感動は今の石香炉の言葉に心底救われたと いう思いに基づく。

 

「そうか、由衣は自分が皇族の血を引いていることにずっと負い目を感じていたのか。私も地球侵略を企てた邪悪なX星人の末裔だからその気持ちは痛いほどわかる。でも三種の神器の邪念に苦しめられてきた石香炉さんが由衣のひたむきな思い受け取ったと言ってくれたから、もう負い目を感じる必要は無いと思う。気持ちが落ち着いてきたらあっちの洗面所で顔洗おうか。私も行くから。」

 

程なくして一ノ瀬は泣き止み、愛しの先輩と共に洗面所へと向かう。

 

「断絶した後も純真な人の心を苛み続ける。 皇統というのは本当に罪深いな。石香炉さん、一ノ瀬さんの心の重荷を降ろしてくれて礼を言う。彼女は危険を顧みず我々の活動に協力してくれた上、私の右腕である同志藤崎の命の恩人だからな。」

 

「恐れ入ります。それではジョナさん、巨神達の戦いの続きを観ましょう。」

 

ガイガン軍団が巨神達に各個撃破される中、尾崎はミュータント兵士達に担がれ母艦内部の格納庫に移動し、そこに安置されている新型ガイガンの巨体を見上げた。統制官の記憶によるとこの真紅のガイガンは従来のガイガンの特殊強化個体として生み出されるも全く動かず、将来的な改良を見越し一旦お蔵 入りになったとのこと。

 

「尾崎統制官、この赤いガイガンを今から動かすのですか?」

 

「そうだ。巨神共が皆反旗を翻した今、もうすぐ地球に着く切り札だけでは心許ないからな。前の統制官はカイザーの力を使ってもコイツを全く動かせなかった。その前の統制官を亡き者にした俺がコイツを動かせば俺の方がより優れたカイザーだと実証出来る。」

 

同じカイザーである藤崎に完敗した上巨神全員が自分の命令を全く聞いていなかったことが判明し、文字通り心も身体も深く傷付いた今の尾崎は自分が最も優れたカイザーだという確証が喉から手が出る程欲しいのだろう。

 

「この真紅のガイガンは他のガイガンの上位種、ガイガン軍団を率いる王だから、今からガイガンレクスと呼ぼう。そしてこの俺はカイザー、即ち皇帝、ガイガンレクスを含め全てを支配する力と権利を持つ。」

尾崎の言う「レクス」はラテン語の 「rex」、即ち「王」が語源か。

 

「では行くぞ。ガイガンレクス、起ドゴワーッ!」

 

いきなりガイガンレクスが腹部から破壊光線を撃ち、母艦を内部から大破させた。この新型ガイガンは腹部に巨大丸鋸の代わりに巨大な眼球状の器官を備え、眼球を縦に開き従来のガイガンのそれを凌ぐ威力の破壊光線を撃つ。夥しい母艦の破片が炎を纏い皇居全域に降り注ぐ中、ガイガンレクスは宮殿東庭に着地しメガクルーザー数台を踏み潰した。

石香炉はガイガンレクスが内部から母艦を爆破し外に出た瞬間を壁に映し、一ノ瀬達はそれを観ている。

 

「藤崎さん、今の爆発で尾崎は死亡か。」

 

「尾崎は私と同じカイザー、たった今その気配が消えました。間違いなく他のミュータン ト兵士共々爆死しています。」

 

「私のことを老い耄れ呼ばわりしていた尾崎が老い耄れになる前に爆死とか悪い冗談みたいな話だよ。あの赤いガイガンはX星人が今回の侵略のため用意したんだろうけど、先程他のガイガン動かした時出動させなかった。何か不具合があったんだろうね。尾崎はそんなのを動かし結局自分の身を滅ぼした。最期まで一貫して愚か者。人間力持つとあんなに愚かで傲慢になるんだね。」

 

ただならぬ気配を感じた巨神ムートーは半蔵門を破壊して徐々に炎に包まれつつある皇居に突入し、宮殿東庭に佇む真紅のガイガンをギロリと睨む。ちなみに母艦が飛来する直前に野生動物達が一斉に姿を消して以来皇居敷地内には虫1匹いない。

 

「もうX星人も、尾崎もいない。今はあの赤いガイガンが事実上侵略者の首魁。志保先輩、さっきやったみたいにあの赤いガイガンの動きを止めたり出来るかな?たとえ一時的でも動きを止められたら巨神ムートーも戦いやすくなると思う。」

 

「ごめん、由衣、もう何度も力使ってるけどあの赤いガイガンは全然操れない。他のガイガンなら一時的に動き止めるぐらいは出来たのに。さっき由衣はカイザーも所詮はヒトと言ってたけど、その通りだよ。結局尾崎はそのことに気付かないまま爆死したけど。」

 

「藤崎さん、もういい。何度も言っているがそもそもこの戦いは最初から我々が圧倒的に不利なんだ。今はムートーがあの赤いガイガン相手に粘るのとゴジラが一刻も早く着くのを祈るしかない。」

 

ガイガンレクスの左右それぞれの手を換装した金属光沢を放つ巨大な鎌は分離展開機能を備え、分離時は鞭の如くうねらせつつ鎌一つ一つを繋ぐワイヤー部分に仕込まれたチェーンソーを回転させ鉄筋コンクリート造りのビルを軽々と両断する。更に腹部からの破壊光線に加え従来のガイガン同様額からも破壊光線を撃つ。

 

一方ムートーは遠距離攻撃の手段が橙色に発光させた前肢を地面に叩き付けた際電磁パルスと共に拡散する衝撃波のみ。従来のガイガンに施されている対電磁パルス加工は当然 ガイガンレクスにも施されており、ガイガンレクスは2種類の破壊光線とチェーンソーの鞭を巧みに使い分け、確実にムートーを追い 込んでいく。

 

ムートーはガイガンレクスの猛攻に深手を一方ムートーは遠距離攻撃の手段が橙色に 発光させた前肢を地面に叩き付けた際電磁パ ルスと共に拡散する衝撃波のみ。従来のガイガンに施されている対電磁パルス加工は当然ガイガンレクスにも施されており、ガイガンレクスは2種類の破壊光線とチェーンソーの 鞭を巧みに使い分け、確実にムートーを追い込んでいく。

 

ムートーはガイガンレクスの猛攻に深手を負い、吹上御所即ち清仁一家の住まいを押しカイザー 潰しながら倒れ込む。起動するや否や皇帝レクス尾崎を滅し巨神ムートーを圧倒と、この王の戦闘力は桁外れだ。

 

ガイガンレクスが得意気に咆哮しムートーにトドメを刺すため腹部の眼球を開いたその時である。凄まじい轟音を伴いながら皇居の ど真ん中にところどころ青白い光が混じる紅梅色の光の渦が立ち昇り、夜空を明るく照らした。何とこれ現在数千km地下に広がる地下空洞世界にいるゴジラが地上に向け吐いた放射熱線である。

 

程なくして皇居のど真ん中にぽっかり開いた大穴から地球最強の巨神、ゴジラが姿を現し、お馴染みの咆哮が東京全域を覆う。既に敷地の半分以上が炎に包まれた上、放射熱線が皇居のど真ん中をブチ抜いた際関東大震災を凌ぐ大地震が生じ宮内庁、長和殿等建物を悉く倒壊させ、瓦礫の山と化した一帯に皇居だった頃の面影は無い。

 

この大地震により23区の大部分が壊滅した東京は首都機能を失い、地球防衛軍発足以来世界各国を主導してきた一極集中国家日本は事実上滅亡した。文字通り地球をブチ抜いた放射熱線から半減期25000年の放射能が拡散され関東全域を覆い、東京の復興を強烈に阻む。

 

それにしても何故ゴジラは地下空洞世界にいて、そもそもどうやってそこに行ったのだろうか。早速答えを言うとゴジラが地下空洞世界にいたのはモスラに呼ばれたから、そしてゴジラは未だ地球人もX星人も発見していない地上と地下空洞世界を繋ぐ大穴の位置全てを熟知しているので、何時でも地下空洞世界に行ける。その大穴に入れば重力加速度を味方につけ地下空洞世界と地上間の移動はあっという間だ。重力反転に耐え得る頑丈な身体を持っていない者は大穴に入った途端にあ の世に直行だが。

 

モスラは20年前ゴジラの休眠に伴い地下空洞世界に移動し、今現在もそこに留まり他の巨神達と見たものを共有する千里眼の一種を駆使して状況を掴み、精神感応により指示を出す。タスマン海最深部の大穴を通りやって来たゴジラに放射熱線を吐きムートーを避けつつ敵の度肝を抜けと指示出来るのは巨神女王、モスラならではだ。その指示を完璧に実行したゴジラも十分人智を超えている が。ちなみにチェン姉妹は直接人語を話さないモスラが藤崎に事情を伝えるため作った幻影だったりする。

 

突然光に包まれ思わず両目を閉じた一ノ瀬達が波の音に驚き両目を開くと、先程まで赤坂御苑の地下シェルターにいた筈なのに今は何処かの砂浜にいて目の前の海は月光を浴びながら輝き、彼女達が地下シェルターに持ち込んだリュック等も浜辺にズラリと並ぶ。

 

「上手く移動出来ました。ここは久高島の東海岸、イシキ浜です。」

 

石香炉の解説に一ノ瀬達は驚き、言葉が出 てこない。

 

「皆さんが驚くのも無理はありません。突然の瞬間移動ですから。この瞬間移動は皆さんが私をここ久高島に返したいという思いを抱いていたから成功しました。私を久高島に返したくない者、私が久高島にいようといまいとどうでも良いと考える者があの地下シェルター内に1人でもいれば失敗し、私を含む全員が地下シェルター崩落に巻き込まれていた筈です。」

 

そう言って石香炉が砂浜に映し出した地下シェルターは瓦礫に埋もれ、地下からの放射熱線が皇居をブチ抜いた際の大地震により崩落したと推察される。石香炉が何処にあろうと知ったことではない義仁親子並びに露子親子に擬態していたX星人達が生きていたなら一ノ瀬達は皆瓦礫に押し潰されていただろ う。現にイシキ浜には義仁親子の遺体もX星人の遺体も無く、石香炉が映し出した映像をよく見ると瓦礫の隙間からオーダーメイドの革靴を履く大人の左足がはみ出ている。

 

「東京がここまで壊滅し与党議員は勿論与党の太鼓持ち共も全滅した今となっては、結果的に楠木武は自分にとって目障りな人達を安全圏に避難させる格好になったな。」

 

与党たる保守第一党に属する議員は勿論、 王政復古の会あるいは君民協同党に属し矢口の組閣時を除き与党の協賛に徹してきた議員達はこの大地震により大多数が即死、生き残った者達も都心全域を覆う高濃度の放射能に全身を蝕まれ次々他界していく。従って今ジョナが言った通り与党議員も与党の太鼓持ち議員も全滅したと断じて差し支えない。

 

「石香炉さん、折角久高島に来たので私が拝所までお運びします。沖縄本島にいる地球防衛軍のクズ共がまた盗みにくるかもしれませんので、私達が交代で見張り番を請け負います。」

 

「藤崎さん、お心遣いありがとうございます。でも私を盗もうとする兵士はもういないんですよ。」

 

石香炉曰く沖縄本島の地球防衛軍兵士達はその過半数が那覇市に飛来したガイガンにやられ、残りはシン・金精神像に縋ったのが災いし全員ミイラ化したとのこと。そのガイガンはシーサーが2本足で立ちあがったような姿の神獣キングシーサーに挑み、破壊光線を撃つも光線による攻撃を片目から吸収しもう片方の目から撃ち返す戦法に嵌り胸部に 大きな風穴が開く破目に。

 

「本島方面から時折聞こえる咆哮はそのキン グシーサーのものですね。そういえば去年地海軍辺野古基地建設反対デモに参加した時地元の方から恩納村の万座毛に眠る守護神の話を聞きました。その守護神がキングシーサーというわけですか。」

 

「一ノ瀬さん、その通りです。私が椿山荘内の収蔵庫にいる間も貴方は地球防衛軍が、そして日本政府が沖縄に不当な扱いを強いる件に真摯に向き合って下さっていたんですね。 貴方のような本土の方がいたからこそ私はここ久高島に戻れました。本当に何とお礼を申し上げれば良いのでしょうか。」

 

石香炉の感謝の言葉を聞き一ノ瀬が両頬を 紅潮させ俯いた丁度その頃、沖縄本島ではキングシーサーが機能停止したガイガンを尻目に沖縄市内をはじめ本島の複数個所にあるシン・金精神像を次々潰している。万座毛に戻って再び眠りにつく前に沖縄を抑圧し続けた地球防衛軍の負の遺産を一掃したいのだろう。

 

つい最近まで皇居外苑だった瓦礫の山を踏 ん付けながらゴジラは放射熱線を吐き、飛行 能力を駆使してその放射熱線を躱したガイガンレクスはペシャンコになった警視庁の真上に着地、両腕の巨大な鎌を鞭状のチェーンソーに展開した。

 

うねりながら襲い掛かる2本の鞭状チェーンソーを軽く払いのけたゴジラの腹部に破壊光線が2発撃ち込まれ、地球最強の巨神の身体が和田倉噴水公園へとうつ伏せに倒れ込む。厳密には少し前まで和田倉噴水公園だった瓦礫だらけの水溜りだが。すぐに身体を起こしたゴジラは再び放射熱線を吐くも、それをガイガンレクスはひらりと躱す。

 

先程から躱すのに徹しているあたり、ガイガンレクスは放射熱線が直撃すればまず助からないと分かっている模様。一方ガイガンレクスの攻撃は確かに強力とはいえゴジラに致命傷を負わせる程ではない。果たしてガイガンレクスに勝機はあるのだろうか。

 

ゴジラとガイガンレクスの白熱した競り合いが続く中、東京上空に巨大隕石が飛来するや否や大爆発し中から怪人めいた細身の怪物が出てきてゆっくりと都心に降り立った。黒い皮膚を白骨状の外骨格により覆い両肩の外骨格は頭蓋骨を縦に二等分したような形状、そして両肩のものを含め赤く光る眼が何とも 不気味なこの怪物こそ亡き統制官が呼び寄せたX星人の切り札、モンスターXだ。

 

着地した途端に四つん這いになり背中から黒色混じりの黄金の翼が生え、全身の外骨格が黒い皮膚と同化し翼と同じ色合いと化したのに伴い両肩の突起が頭部共々長く伸び3本の首へと変貌、元々統制官ないし尾崎がカイザー能力により操る筈が既に両者共にこの世にいないため、モンスターXは地球に到着して早々に魔獣カイザーギドラの正体を現したのである。

 

実のところ巨大隕石の接近に気付き大気圏突入前に放射熱線を撃ち込むのも考えたゴジラではあるものの、直後に隕石に潜む何者かが大気圏突入直後に隕石自体を壊し出てくると気付き思いとどまっていた。そして結果はゴジラが気付いた通り。仮に大気圏突入前の隕石に放射熱線を撃ち込んでもモンスターXが自ら隕石を爆破し直撃を阻むため、エネルギーの無駄遣いでしかない。

 

突然のモンスターX出現そしてカイザーギドラへの変貌にゴジラが戸惑う一方、起動時に尾崎の思考を読み取ったのかガイガンレクスはこの魔獣を正体も含めて知っていたらしく、その咆哮は如何にも得意気だ。

 

「あの赤いガイガン、さっきから放射熱線を躱したりチェーンソーの鞭を無造作にうねらせゴジラの注意を逸らしたりと時間稼ぎしているような動きが目立っていたけど、あの3本首の魔物がもうすぐ来ると分かっていてそれを待っていたのか。」

 

と発言しながら一ノ瀬が観ているのは数年ぶ りに外間殿内の拝所「イビ」に戻れた石香炉が映し出した映像である。

 

「由衣、やばいよ。あの3本首は明らかに赤いガイガンと組もうとしている。」

 

するとジョナが映像に映るカイザーギドラを眺めながら以下の通り呟いた。

 

「違う、あれじゃない。」

 

一ノ瀬が今の発言の意図を尋ねると、ジョナ曰く最近見た夢に全身黄金の三つ首龍が登場し、その龍は今都心にいるカイザーギドラよりも遥かに巨大な翼を持ち天候を自在に操り暴風雨を起こすという。

 

身体が肥大化しモンスターXだった頃の俊敏さを喪失という難点を抱えるカイザーギドラとはいえ、各首が吐く稲妻状の反重力光線デストロイド・カイザーは今のゴジラが吐く放射熱線と同等以上の威力と火力面が凄まじい。真正面からカイザーギドラの猛攻に晒される中背後からガイガンレクスの2本の鞭状チェーンソー並びに2種類の破壊光線に襲われ、流石のゴジラも苦戦を余儀なくされた。

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