巨神聖戦記2024 108と108 作:Genbu108
奮闘虚しく放射熱線が押し負け、反重力光線3発を顔面に浴びたゴジラは悲鳴を上げ仰向けに倒れ込んだ。ぐったりとしているゴジラに対しカイザーギドラもガイガンレクスも攻撃の手を緩めずそれぞれ反重力光線と破壊光線を撃つ。重力を歪ませ標的を束縛しつつ一旦空中に浮かせ叩き付ける、地面を引きず り回す等反重力光線の性能は凶悪極まりなく、その反重力光線に加え2種類の破壊光線 を同時に浴び続けるゴジラの苦痛は察するに余りある。
「こんなのもう戦いじゃない。ただのなぶり殺しだよ。志保先輩、カイザーの力使ってあ の3本首の魔物止めるのは無理だよね。」
「うん、無理。由衣、私悔しいよ。あんな邪悪な相手2体に単身立ち向かったゴジラがやられかけているのに何も出来ないなんて。」
一ノ瀬並びに藤崎が2体の魔物になぶられ続けるゴジラの映像を観て涙を流していると、夜空から「イビ」に一筋の光が差し先日2人が参拝した補陀洛山寺の本尊、千手観音が現れた。
「私はこちらの石香炉に導かれ、やって来ました。先日はお2人が亡くなった大勢の方の冥福を真摯に祈る姿勢、厨子の扉の向こうから拝見し貴方達なら悪しき者の手から石香 炉を取り戻せると確信しその手引きをした次第です。さあ、般若心経を唱えて下さい。あの魔物達に抗う龍を異世界より召喚します。」
合掌しながら無心に般若心経を唱える一ノ瀬そして藤崎、何としてでもゴジラを救いたい思いが2人を突き動かす。
「観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄 舎利子 色不異空 空不異色 色即是空 空即是色 受想行識亦復如是 舎利子 是諸法空相 不生不滅 不垢不淨 不增不減 是故空中 無色 無受想行識 無眼耳鼻舌身意 無色声香味触法 無眼界 乃至無意識界 無無明 亦無無明尽 乃至無老死 亦無老死尽 無苦集滅道 無智亦無得」
久高島の2人が般若心経を唱えた途端に都心の空に時空の穴が開き、中からキングギドラが出現した。この巨神龍はカイザーギドラに酷似した姿とはいえ、翼が矮小故飛翔出来ず黒色混じりの黄金のゴツゴツした皮膚が全身を覆い4足歩行のカイザーギドラに対し、胴体も3本の首も相対的に小さく見える程巨大な蝙蝠状の翼により飛翔し黄金の鱗が全身を覆い2足歩行と差異も目立つ。
「そうだ、これだよ。私はこの龍を夢に見たんだ。」
「ひょっとしたら隊長も私みたいに予知能力があるのかもしれませんね。」
「いや、これは予知能力とは違う。私はとにかくあの龍を見たかったんだ。もし仮に
出現した途端に巨大な積乱雲を手足の如く操り関東全域を覆う暴風雨を発生させたキングギドラ、この天候操作能力も以前ジョナの夢に出てきた黄金の三つ首龍と全く同じだ。
着地したキングギドラはキングギドラ側から見て右の首がカイザーギドラ並びにガイガ ンレクスを睨み、左の首はぐったりしている ゴジラを悲しげに眺め、中央の首は注意深く 周囲を見回すといった具合に各首それぞれに 個性があり、左右の首に何か指示をしている 中央の首が司令塔の模様。
「貴方は今その身体に
千手観音の問いに対し藤崎はこう答えた。
「私と同じような力を持つ者がその力に酔い侵略者に成り果て破壊と殺戮を重ねた挙げ句己の身を滅ぼしました。つい先程の出来事です。私はその者と同じ過ちを繰り返さないためにもこのモスラの力をゴジラに渡します。」
途端にゴジラの全身が翡翠色に輝き、素早く身体を起こした地球最強の巨神は再び闘志をその両目に宿す。
「志保先輩は尾崎とは違うね。尾崎ならモスラから貰った力をそのまま占有していた筈。そもそもX星人の同類に成り果てた侵略者にモスラが力与えること自体があり得ない か。」
「由衣が言った通りカイザーも所詮はヒト。 たとえモスラの好意だとしてもヒトが巨神の力を持ち続けるのはおこがましいよ。この力でゴジラが助かるなら私は喜んでゴジラに渡す。」
「素晴らしい心掛けです。貴方のような方だ からこそモスラも力の一部を託したのでしょう。それでは私は補陀洛山寺に戻ります。」
途端に千手観音の姿が消えた。
関東全域を暴風雨が覆う中、廃墟と化した 都心を舞台にゴジラがガイガンレクスに、キングギドラがカイザーギドラに挑む。
キングギドラの各首が吐く引力光線はカイザーギドラの各首が吐く反重力光線同様稲妻状、ただし物体の分子構造を乱すことに特化しているため反重力光線のように物体を宙に 浮かせたりは出来ない。
引力光線は反重力光線とぶつかり合い激しく火花を散らす。カイザーギドラ側がやや優勢な中いきなりキングギドラは各首が引力光線を吐くのを止め、3発の反重力光線はそれぞれキングギドラの各首を吹き飛ばした。首全てを失ったキングギドラの巨体がうつ伏せに倒れ轟音が鳴り響く。
早速キングギドラを倒したと喜ぶカイザー ギドラの身体にちぎれて宙を舞ったキングギドラの各首が噛みついた。何とキングギドラは首だけになっても動くことが出来、キングギドラの中央の首はわざと首全てを失いやられたふりをして油断したカイザーギドラにちぎれたばかりの各首が攻撃する作戦を立てていたのだ。
カイザーギドラの各首にキングギドラのような個性は無く、どの首も敵と見做した相手を痛めつけ最終的に噛みつき体力を吸うことに思考を使う。そして噛みついて体力を吸う能力はキングギドラにもあり、カイザーギドラの身体に噛みついたキングギドラの各首は早速体力を吸い始めた。カイザーギドラ側から見て左の首が右の首に噛みつくキングギドラの首めがけて反重力光線を吐くも、殺気を感じ一旦噛むのを止めたキングギドラの首にその光線を躱されたため結果的に右の首が切 断され自滅する格好に。
右の首を失い焦るカイザーギドラに追い打ちをかけるかの如く引力光線が直撃し今度は中央の首が吹っ飛んだ。唯一残った左の首の目線の先には起き上がったキングギドラがいて首全てが生え揃っている。首だけになって も生きているキングギドラは首全てを失った 胴体もしっかり生きていて、身体を起こし並 外れた再生能力により首全てを再生したばかりだ。一方カイザーギドラの首はちぎれた途端に絶命しキングギドラのような再生能力も無く、もう二度と3本首には戻れない。
もし本当にキングギドラが首全てを失った途端に絶命していたなら、操り主がいなくなった関東全域を覆う暴風雨が消え晴れた夜空が戻る筈。しかし実際はキングギドラが各首を失った後も暴風雨は健在であり、火力勝負では勝っていたカイザーギドラはキングギドラの生命力、戦略性を見誤り窮地に陥ったと言えよう。
キングギドラのちぎれた各首が蛇腹をうねらせキングギドラ本体のところに素早く戻ると、再生したばかりの各首がそれぞれちぎれた首を飲み込んだ。この瞬間ちぎれた各首がカイザーギドラから奪った体力がキングギド ラ本体のものとなり、キングギドラは両翼を前脚代わりにして首2本を失ったカイザーギドラに迫る。カイザーギドラ側も残った左の首が反重力光線を吐くも先程より威力が大幅に落ちていたため引力光線1発に押し返され、先程まで3本の首を持っていた魔獣は引力光線を3発とも浴び仰向けに倒れ込んだ。
仰向け状態のカイザーギドラの胴体に各首が素早く噛み付いたキングギドラはそのまま体力を奪う。体重10万トンの巨体に3本の首 が噛みつき軽々と持ち上げたあたりこのキングギドラの怪力ぶりが伺える。これ程の怪力なら体重が9万トン以上あるゴジラを抱えたまま成層圏まで飛翔するぐらい朝飯前だろう。
キングギドラに体力を吸い尽くされたカイ ザーギドラは全身が黒い塵と化し、その塵は暴風雨が即洗い流した。先程ゴジラをなぶり殺しにするのを楽しんでいた魔獣カイザーギドラの最期である。カイザーギドラを仕留めたキングギドラは各首がふと空を見上げると先程の時空の穴が消えそうになっていて、これ以上もちそうにない。
素早く飛翔したキングギドラが飛び込んだ直後に時空の穴が消失し、晴れ間が戻った夜空にキングギドラの咆哮が響き渡る。さしずめこの咆哮は「後は任せた!」というゴジラへの伝言といったところか。