巨神聖戦記2024 108と108 作:Genbu108
「陛下!陛下ぁ!上皇陛下ぁああああああああ!」
この絶叫は像倒壊時の轟音に匹敵し、楠木は自慢の口髭が砂だらけでも気にする余裕さえ無い模様。
途端に意識を取り戻した湊川は先程ぶん殴られた際脳に打撃を受けたため、目の前に立つ楠木をマンデラと誤認しこう言った。
「馬田てめぇ何勝手に夢洲に来てるんだ!黒人の分際で勝手なことしてるんじゃねぇ!黒 人ってのは俺達大和民族の下僕だぞ!」
この発言から湊川も楠木そして政仁同様黒人差別思考の持ち主であることが伺える。
癇癪玉を破裂させた楠木に再びぶん殴られた上倒れたところを踏ん付けられ、頚椎骨折に伴う頚髄損傷により死亡した湊川はもう二度と差別発言など出来ないが。
藤崎が操作するタブレット端末は画面上半分に巨大シン・金精神像が倒壊する瞬間が表示され、画面下半分にチャットの文字列が並ぶ。
「この映像をご覧下さい、あのおぞましい巨像が倒壊する直前に土台部分が爆発しています。隊長もしかして何か仕掛けましたか? by FUJISAKI 17:03/2025/2/18」
「いや、あの会場にはまだ何も仕掛けていない。舞洲はゴミを埋め立てて造った人工島故生ゴミ由来のメタンガスが地下に相当溜まっていると聞く。ガス抜きを怠り無茶な工事を強行した楠木武がこのガス爆発事故の元凶だよ。by Mr.A 17:07/2025/2/18」
「無理矢理な工事を続けたら遅かれ早かれ大事故が起きますよね。あの楠木武は本当にやることが滅茶苦茶です。私が地球防衛軍にいた頃から進歩も改善も見られません。by FUJISAKI 17:11/2025/2/18」
「その楠木武の無理押しが引き金となり政仁がこの世から退場、随分と皮肉な展開だ。政仁が亡くなった地で万博開催など皇室を崇敬する臣民共が許す筈も無いし、次の会場を決めたとしても夢洲に湯水の如く建造費を注ぎ込んだのが祟り最早会場を作る予算も無い。楠木武肝煎りの大阪万博がこの後どうなるのか見ものだな。無事開催出来ればだが。by Mr.A 17:15/2025/2/18」
チャットを見る限り、藤崎が「隊長」と呼ぶのはこのMr.Aなる人物のようだ。
「先程大阪湾に巨大不明生物が出現し早速大 阪市此花区に上陸したとのことです。ただで さえ政仁横死により大阪ばかりか日本国全域 が衝撃を受ける中これは泣き面に蜂と言わざ るを得ません。by FUJISAKI 17:26/2025/2/18」
藤崎の言う巨大不明生物はゴジラ似の姿形かつ身長約118mとややゴジラより大きく、全身を覆う黒い表皮は各部から内皮の赤い発光が漏れ、特に意味も無く両掌を上向きにし、走るわけでもないのに踵を浮かせたまま歩く等無駄が目立つ。
わざわざ政仁が横死した夢洲を避け隣の舞洲に一旦上陸し大阪市内に向かったあたり、この巨大不明生物は皇族には手を出せない性質なのだろうか。
まだ夢洲にいる楠木が臨海工業地帯を破壊する巨大不明生物を眺め歯軋りしていると、 UH-60JA多目的ヘリコプターが楠木からやや離れた場所に着地しマンデラが降りてきた。この多目的ヘリの機体には「地球防衛陸軍」と書かれている。楠木の周辺に湊川の遺体が見当たらないのは既に始末された後だからだ。
「遅いぞ! 馬田! 一体何をしていた!?」
「申し訳ございません。陸自出身の閣下をお迎えするのに相応しい地陸軍のヘリの調達に時間がかかってしまいました。」
「なるほど素晴らしい心掛けだ。やはり馬田貴様のような出来の良い黒人には日本国籍がよく似合う。」
自分にとって役に立つか否かという主観的判断に基づき外国人に日本国籍が相応しいかどうかを判断、上機嫌になりマンデラを褒めた時の物言いからも楠木の根強い外国人差別思考が滲み出る。
「上皇陛下の突然のご不幸を目の当たりにされ、楠木閣下のご心痛察するに余りあります。しかし今はあの巨大不明生物の破壊活動を何としてでも止めることが急務であります。亡き上皇陛下を悼むのはそれからでも遅くはないかと。」
「貴様は単に日本語が流暢なだけでなく日本の心をきちんと理解しているな、関心、関心。ところで馬田よ、あのゴジラは20年前 南極の地にてこの楠木の裸体を見た途端に怯え逃げ出した。あの頃とは姿形がかなり変わったとはいえこの楠木がいる夢洲を避けたあたり今でも俺様を恐れているのは間違いない。つまりゴジラの天敵であるこの楠木がいる限りこの国は必ずゴジラに勝つ。」
今現在大阪市内にいる巨大不明生物が20 年前南極にいた本物のゴジラと同一個体なのかは不明、巨大不明生物だけに。少なくとも 南極にて旧轟天号相手に圧勝したゴジラはもっと動きが機敏だったが。
「心強いお言葉です。それでは楠木閣下、地球防衛軍司令官として出動命令を。」
マンデラが差し出した無線を握った途端に司令官として実戦に臨む昂揚感に駆られ、楠木は思わずほくそ笑んだ。
「緊急指令!緊急指令! こちらは楠木武 地陸海空軍元帥! 現在ゴジラが大阪市内を蹂躙している! 近畿各所の地陸海空軍は直ちに出動し標的を駆逐せよ!」
現在UH-60JAに搭乗中の楠木が発した号令により近畿各地から地球防衛軍の戦車、軍艦、そして戦闘機が大阪市内に集う。戦車隊には22式メーサー戦車も多数含まれ、トレーラー牽引式の4式メーサー戦車とは異なり皆8輪駆動の自走式、この20年間地球防衛軍は巨神殲滅という見果てぬ夢を追いどれだけ 軍備増強に税金、資源そして労働力を費やしたのだろうか。
「こちら第13戦車隊。進路上に避難者が大勢いて進行に大幅な遅れが生じております。 如何致しましょうか?」
「逃げ遅れたノロマ共は目障りだから踏み潰せ!そんな場所にいるのが悪い!さっさと避 難しないのが悪い! 自己責任だ!」
楠木の非道な指令通り第13戦車隊は逃げ遅れた人々を次々踏み潰す。戦闘機が飛行しながら発する爆風も逃げ惑う人達を容赦無く襲う。
この時マンデラが操縦桿を握りながら両目に強い敵意を宿したとはいえ、楠木本人は陸海空それぞれの部隊が自分の命令通り動くため万能感に酔い、己がヘリ操縦者から敵意を向けられ続けているなどとは夢にも思わない。
大阪市内に集った地球防衛軍人共にはヘラヘラ笑いながら在日外国人や野宿者等を襲撃するクズが目立ち、関東大震災直後の混乱に乗じ朝鮮人を襲撃した自警団のクズ共を彷彿とさせる。先日ヤマト皇国のならず者共に襲撃されかけた経緯もあり、鶴橋の人達は地球防衛軍人共の襲来を見越し巨大不明生物が大阪湾に出現との速報が流れた途端に自主避難を開始した。
「朝鮮人共め!逃げ足だけは速いな!」
「ゴジラ退治のついでに退治してやろうと思ったのに空気の読めん連中だ!」
もぬけの殻になった鶴橋の地に襲来し悪態 をつくこのクズ軍人共、果たしてどうなることやら。
「じゃあ由衣、行こうか。ここは危険過ぎるよ。」
「うん、行こう。他の連中が襲ってくる前に。」
藤崎は暴漢7人のうち5人を見事な体術により叩き伏せ、残る2人は一ノ瀬が痴漢除けスプレー並びに荒川らから頂いたスタンガンを使い撃退したばかりである。例によってこの暴漢共は皆地球防衛軍に属し、先日の荒川らと同じく一ノ瀬を襲おうとしたのだ。藤崎は暴漢共が乗っていた高機動車を奪い、助手席には一ノ瀬が座る。
「とりあえず和歌山方面に行こう。あと、もうここには帰ってこれないかも。あの巨大不明生物がこの後何するかわからないし、出動に乗じて由衣のような民間人を襲撃する地球防衛軍なら私達を戦車で踏み潰すぐらいやりかねない。」
「志保先輩と一緒なら私、何処でも行く。あの巨大不明生物、20年前南極で自衛隊に撃退されたゴジラと同一個体と報じられているけど、明らかにゴジラとは別物だよね。そもそも南極で自衛隊がゴジラを撃退したって話自体胡散臭い。ゴジラ撃退を喧伝し南極即ち日本国外での武力行使という専守防衛の原則に背く暴挙を正当化したい魂胆が見え見えだし。」
一ノ瀬の指摘通り南極の件が喧伝されたのは専守防衛の原則を骨抜きにしたい楠木そして日本政府の意向に基づき、その喧伝は日本国憲法を事実上空文化しろという世論を生み出し自衛隊が地球防衛軍へと発展的解消を遂げるのを後押しした。
「凄いね、由衣、そこまで自衛隊の、地球防衛軍の欺瞞を的確に語れる人は多分この日本には殆どいないと思う。こういう大事な話を聞けるのも由衣とより戻せたからだよね。」
「志保先輩にそう言われると何だか照れるよ。でも曲がりなりにもこうやって志保先輩と一緒にドライブ出来て嬉しい。」
自動車の運転が苦手なのもあり、一ノ瀬は憧れの先輩が運転し自分は助手席に座るこの状況が嬉しくて仕方ないのだろう。
鶴橋から自主避難したコリアン達の中にマイクロバスに相乗りし和歌山方面を目指す人達がいて、堺市、和泉市を通過するも岸和田市内にて高機動車に進路を阻まれ先に進めない。
「おい、そこのキムチ臭ぇマイクロバス、ここは日本人専用道路だ!貴様らに通行資格など無い! とっとと引き返せ!」
「日本人のフリしても無駄だ!貴様らが在日なのは知っている! 車体のおでん文字がその証拠!貴様ら在日はこの世で最も卑しい人種 だ!さあ、選べ! マイクロバスから出てきて蜂の巣にされるかマイクロバスごと爆砕されるかを!」
「なにわナンバー、大阪市内から来たのか。 随分逃げ足の速いことで。避難するなら南じゃなくて北に行けよ。さあ、早く行け。」
といった具合に高機動車の車内から身を乗り出し在日コリアン達への誹謗中傷を楽しむ地球防衛軍人共は卑劣極まりない。現在大阪市北部に巨大不明生物ばかりか民間人を容赦無く踏み潰す戦車隊がいるのを踏まえると、「避難するなら南じゃなくて北に行け」の卑劣さがわかるだろう。
「おっと、仲間が来たぞ。あいつらが到着したらマイクロバスの連中全員殺っちゃおうぜ。」
新たな高機動車の接近に仲間が来たと思いほくそ笑む軍人共ではあるものの、その高機動車が少し離れた場所に停車し中から出てきた藤崎がいきなり84mm無反動砲をぶっ放したため全員仲良く消し飛んだ。
「今の私が撃っても良かったんだよ。あいつらは在日コリアン迫害を楽しむクズだし、どう見ても改心の余地無いし、志保先輩共々地獄に行く覚悟を示すため私が。」
「それ以上言うな!」
と一ノ瀬に対し怒鳴った藤崎の表情は鬼気迫り、両目には大粒の涙が浮かぶ。
たった今自分が人を殺す理由を探していた ことに気付き、一ノ瀬はハッとした。
「由衣、貴方強がっているけど本当は繊細で純真。そんな人が一度人を殺せば心が罪悪感に押し潰され廃人状態になる危険性もあるし、良心の呵責なら逃れるため殺人に快楽を見出しそのまま快楽殺人鬼になる危険性もある。貴方ほど純真でない私でも初めて人を殺した後眠れない日が続いたんだよ。貴方には廃人になってほしくないし、快楽殺人鬼にもなってほしくない。」
「ごめん、志保先輩ごめん。」
そう言いながら泣き崩れた一ノ瀬の身体を藤崎の両腕が優しく包み込む。
「由衣は撃たなかった。それで良い。一線を越えず踏みとどまった。それで良い。今日は朝から色々あり過ぎて疲れたよね。毛布あるから助手席で寝てて。和歌山に着いたら起こすから。おっと、あのマイクロバスも先導しないと。」
マイクロバスの人達は新たな高機動車の接近に怯えたものの、助手席にてすやすや眠る一ノ瀬の寝顔を見た途端に皆安堵した。
淀川の河川敷にはメーサー戦車部隊がズラリと並び、楠木の指令を待つ。
「現在ゴジラは新大阪駅方面に移動しております! メーサー戦車部隊配備完了です!」
「ならば早速攻撃開始だ! あのデカブツに最新鋭のメーサー砲をお見舞いしてやれ!」
楠木が檄を飛ばすとメーサー戦車隊が一斉にメーサー光線を撃ち、今年制式化されたばかりの「しらさぎ」ことAC-25戦闘機も両翼のメーサー砲を使い巨大不明生物を狙い撃つ。出力80万ボルトとAC-25のメーサー砲は出力500万ボルトの22式メーサー戦車より大きく劣るとはいえ、出力15万ボルトの4式メーサー戦車の比ではない。地球の主導権を取り戻すため巨神殲滅という文明人のあさましい妄執を原動力とし、ここ20年間の兵器性能の向上は20世紀のそれを遥かに凌ぐ。
新大阪駅方面に移動中の巨大不明生物は背中に夥しいメーサー光線を浴びた途端に大量出血し、凄まじい悲鳴が半径4km圏内に響き渡る。移動中もほぼ棒立ち状態の愚鈍故巨大不明生物の背中を狙うのは実に容易く、これといって意味も無く高く持ち上げた尾の動きも緩慢この上なく背中を狙うのを阻むには至らない。
「メーサー砲命中!目標、損傷! 出血を確認!」
「見たか、最新鋭のメーサー砲の威力を!どうやってあの分厚い氷から出てきたのか知らんが貴様がお昼寝している間にも地球防衛軍の兵器は日進月歩の勢いで進化し続けてきたのだ!この楠木が今度こそゴジラ貴様の息の根を止めてくれるわ!」
この楠木の物言いは南極の地において旧轟天号の性能を自慢げに語る在りし日の麻生に酷似、いや最早麻生そのものか。
「現在ゴジラの背部放熱器官が発光中、詳細不明!」
「ゴジラめ、一体何をするつもりだ?」
突然巨大不明生物が俯き全身の赤い発光を紫色に変化させ、夥しい黒煙を吐き始めた。
その黒煙は瞬く間に火炎放射に変化した途端にまたもや変化し最終的に口から吐いているのは紫色の細い熱線である。
巨大な獲物を飲 み込むわけでもないのに下顎を左右真っ二つに展開しながら口を大きく開くも結局細い紫色熱線を撃つだけ、やはりこの巨大不明生物は無駄が目立つ。
口から吐く火炎放射により淀川河川敷に並ぶ戦車隊を壊滅させつつ大阪市内のビル街を火の海に変え、口ばかりか背中の至る所から発射した無数の紫色熱線によりAC-25をはじめ大阪市上空の戦闘機部隊を大阪湾に集う艦隊共々一掃と、広範囲攻撃により体内のエ ネルギーが尽きた巨大不明生物は新大阪駅構内に佇んだまま動かなくなり、全身の発光も消えている。
「おい! あれは何グワーッ!」
といった具合に大阪市内にて乱暴狼藉を楽しんでいたクズ軍人共は悉く爆炎ないし紫色熱線の餌食になったとはいえ、この巨大不明生物は無性生殖により群体化し地球全体の生態系を歪める性質故クズ軍人どころではない害悪だったりする。その害悪が全エネルギーを使い果たし群体化が先送りになったのは不幸中の幸いか。
「楠木閣下、ご無事で何よりです。」
「言った筈だ、この楠木は不死身だと。 しかし馬田貴様ヘリ操縦が上手いばかりか墜落直前のヘリから見事に脱出しかすり傷程度で済むとは一体何者だ?」
「ただのモザンビーク生まれの人間ですよ。 楠木閣下のお計らいにより現在は日本国籍を得ておりますが。それよりも閣下、上皇陛下はお亡くなりになり大阪に展開した陸海空部隊は壊滅しました。今はこの状況をどう立て直すかが急務です。」
マンデラが操縦するヘリは紫色熱線の直撃によりテールローターを失ったため失速し、 楠木は機内に1つしかないパラシュートを使い脱出とマンデラを見殺しにする暴挙に出た。
驚くべきことにマンデラは機体が地上に激突する直前に素早く脱出し負傷を軽い擦り傷程度に留め、自分を見殺しにした外道に対する接し方も以前と同じく恭しい。
「流石この楠木が日本国籍を授与しただけあって馬田貴様察しが良いな。この際貴様が何者かなどどうでも良い。まずはあのデカブツをどう仕留めるかだ。ゴジラを亡き者にすれば無念の最期を遂げられた上皇陛下の霊を弔うことにもなる。そうだ!この戦いは上皇陛下の弔い合戦なのだ!」
ほんの数分前にマンデラを見殺しにしておきながら一言も詫びずこの上から目線過ぎる物言い、
楠木の辞書には反省という単語が載っていないのだろう。
そもそも政仁の死と全く関係の無い巨大不明生物を打倒しても政仁の弔い合戦にはならないが。
「そういえば私の代わりに閣下に同行していた湊川伍長は今どちらに?」
「急に叫んで走り出したと思ったら足滑らせてコンクリート破砕機の中に落ちたよ、可哀そうに近日中に葬式を出してやろう。」
湊川の遺体をコンクリート破砕機に放り込む様子を見せつけ、もし事実を口外すればお前達も放り込むぞと夢洲の現場作業員達を恫喝し沈黙を強要、これが楠木のやり方だ。