転生して
まぁ、記憶が戻った、いや、取り戻した?どっちでもいいか。とにかく前世の記憶が出て来てから思い出したのは前世のこと全てだった。いや、全てと言うと覚えていない部分もあるから語弊があるが、まぁともかく思い出せることは全部思い出せている。はずだ。その証拠に、前世の記憶を今生きているこの世界と無意識に照らし合わせ、この街のことについて思い出したのだ。
【ブルーアーカイブ】。俺はプレイしたことはなかったのだが、かわいらしい女の子が多数出てくる、今時のソシャゲだ。主要人物が【先生】であること、学校と言う名の自治が存在していること、あとは神秘がこの世には存在していることや、なんか人間じゃない存在が裏で何かやっていることぐらいしか知らないが、ストーリーが重いことやキャラ人気がすごいことで有名だったのを覚えている。
いや、マジでそれぐらいしか知らないんだよ。ファンタジーが好きで世界観や設定について調べたことはあったけど、初期以外は調べようとはしていなかったし、そもそもマンガやラノベを読んだり据え置きのゲームのほうが好きだったからそっちメインでお金を費やしていたからマジで知らないのだ。ソシャゲもマンガやラノベ、ゲームで出費が大きかったのもあってブルーアーカイブを含めて他のソシャゲをやる時間もお金もなかったから設定だけ調べて終わり、とかしていた。
だから誰がどんな主役なのかわからないのだ。もしかしたら主要人物を見れば少しでもブルーアーカイブについて思い出すのかもしれないけど、正直思い出してから1年ここで過ごしてきたけどなにも思い出せないから、もしかしたら原作の時系列とは時代が違うのかもしれない。こんなことならやっておけばよかった、と思うこともあったけど、そもそもこんなこと起こるわけがないのでそう思ったところで何の意味もないと割り切ることにした。
で、だ。この1年間ド田舎中のド田舎と言っても過言じゃない、俺ぐらいしか生徒がいない学校で俺の卒業と共に廃校になる学校で勉強しながら自身のことを整理し、同時にこの世界において重要な要素である神秘についていろいろと考察し、実験してきた。
神秘と言えば、一番に思い出すのが【とある魔術の禁書目録】での【神秘】だ。細々とした設定を語るとかなり長くなるので簡潔に言うと、【神秘】は魔術を発動するために重要な位置にある、ということだ。例えば【聖人】。聖人と言えば作品ごとにいろんな解釈があるが、ここでは【神に近い肉体という魔術的な意味を持つ】という定義付けをしようと思う。とあるの世界では神に近い肉体であるがゆえに、人外染みた、いや人外そのものの力を発揮する【聖人】だが、ここでもそれに似た現象が起きている。銃撃を受けてもピンピンしているあれだ。この世界において、神秘は【聖人】に近づける力なのだと思えば個人的に納得がいく。
そんなことを考えてまとめている最中、ふと俺は思ったのだ。
その結果。なんと魔術が発動したのだ。初めて魔術を使うことができた時俺は驚喜したのだが、よく考えたら厄ネタなのでは?と思い至ったのだが、意図して無視することにした。じゃないと胃に穴が空くことになりそうだし。【魔神】然り【幻想殺し】然り。神秘による歪みを矯正する【幻想殺し】が幻想そのものの世界に存在しているのかわからんが。
と、まぁそんな感じで1年ちょっとの間魔術について研究していたのだが、そのせいで勉強に意識が行かず、成績もがた落ちとなった。数学とかなら特に問題ないんだが、物理法則や歴史が違ったりして前世の記憶が役に立たないことが多かったせいで目に見えて成績がとんでもなく低くなったのだ。
そのおかげで入学できる場所が、廃校寸前のアビドスか、世紀末のゲヘナかのどちらかにしか行けないことになった。この2卓しかないと知った時、割とマジで頭を抱えて悩んだ。もっと勉強しておけばと後悔したが、もう後の祭りだ。
そして悩んで悩んだ結果、自由時間が多そうだという考えの下アビドスに行くことにした。その旨を連絡すると、本当に大丈夫なのかという念押しの返答が来たのだが、さすがに暗部が存在してそうな世紀末ゲヘナに行く気にはなれないので大丈夫だと伝えた。
そして入学式の日となり、指定された場所に行くのだが……。
「……おん」
たどり着いたのは砂の校舎でした。冗談は置いておいて。本校が砂で埋まっているので分校に来てほしいとの旨だったが、興味本位で本校のほうを見てみるとマジで砂で埋もれていたから、それを見た時口から乾いた笑いが出た。それしか出なかったともいうが。ここに来るまでも長時間砂漠の中を歩く羽目になったことを考えると、これは廃校になっても仕方ないなぁという感想しか出なかった。
いやぁ。思った以上にひどくてワロス。とここに来たことに後悔しそうになったが置いておくとして。ため息を吐いて心の中で区切りをつけて指定された教室へ向かうことにする。教室に入ると、さすがに空調は生きているのか外とは違って涼しくて快適だった。中は誰もおらず、説明のための椅子も2つしかなかった。うん。俺含めて2人しかいないのね。と遠い目をしそうになるが、これ下手したらもう1人も転校して俺だけになったりとかするんじゃねぇの?とか怖いこと考えてしまうが、仕方ないだろうと心の中で言い訳してしまう。俺?世紀末ゲヘナぐらいにしか行けないから転校とかできないししたくないって。
「あの、邪魔なんですけど」
遠い目をして乾いた笑いを出していると後ろから声が聞こえてきた。いかんいかん、さすがに入り口で立ち尽くし過ぎていたかと反省をしながら謝るために後ろを向く。しかしそこには誰もいない。別の入り口から入ったのかと左右を見るが、その様子もない。気のせいか?と思ったが声ははっきり聞こえた。同時に頭によぎるのは合法ロリの文字。まさかな、と思い下に視線を送ると、予想通りと言うか嫌な予感が当たったと言うか、とにかく確かにそこにいた。
「…………」
「…………?」
まず、小さい、という感想が思い浮かんだ。続いて桃色の髪と大き目のアホ毛が揺れているのが見え、そして性格がきつそうだと感じる左右で色の違う目がこちらを見上げているのが見えた。
「小学生?」
思わずそんなことを呟いてしまったのは仕方ないだろう。なんせ頭が俺の胸辺りに来ているのだ。140㎝超えたぐらいじゃないの?とすら思えてくるほどの小柄さに驚いてちっさ、と続けて呟いてしまった。
「ふんっ!」
「グボァ!」
そのせいか、まぁそのせいだろうな。ちっこい女の子の鋭い右ストレートが鳩尾に近い腹部に突き刺さり、息が止まるほどの苦しみを味わいながらその場にうずくまることになった。
これが俺とちっこいの、改め小鳥遊ホシノの初めての出会いだった。最悪の出会いだったにもかかわらず、痛いのも嫌だった俺がまさかあんなことになるとは、この時の俺は思いもよらなかった。