神秘?あぁ、魔術的に必要なやつでしょ?   作:衝動書きする人

5 / 9
5

 

「あぁ~。怖かった……」

 

 梔子先輩のネット上の詐欺に関する授業をおチビにぶん投げることで始まったショットガン片手と竹刀片手に30分追いかけられる鬼ごっこ(ごっこ抜き)が終わり、制服に穴空けられながら逃げるように学校から飛び出し、じゃあ代わりに稼いで来いとぐうたら亭主を叩き出す肝っ玉母ちゃんみたいなことをされてから早5時間。

 いやぁ。マジで大変だった。まさか当日の朝に梔子先輩の面倒をぶん投げただけであんな不機嫌になるとは思ってなかった。まぁ確かにおチビの賞金稼ぎで借金を返してる状態だから、稼ぎ頭をそんなことで止めると言うのはどういうことだと怒りそうな性格をしているのは確かだ。

 ダメ亭主を叩き出す肝っ玉母ちゃんかよと愚痴ることで、おチビが顔を真っ赤にして俺を狙ってショットガンを発砲し、それをヒンヒン鳴きながら抱きかかえて止めようとする梔子先輩とで一緒に見送られたことで多少の擦り傷を負ったが、まぁ問題はない。無いったら無い。

 

 さて。そんなこんなで学校から出てやることと言えば、まぁおチビの代わりですわな。おチビは真正面からカチコミをかけて制圧を繰り返しているゴリラなので全く参考にはならん。そんなことしたら比喩抜きで死ぬ。死因:銃殺になる。

 なので一計を、というか魔術を使って制圧していくことにした。不幸中の幸いというか、元々おチビに仕事ぶん投げて代わりに賞金稼ぎするつもりだったから準備はちゃんとしてきた。魔術を使って誰からも認識されず、意識を飛ばしてそこらから拾ってきたリアカーに乗せる。

 そんなことを時間が許す限り続け、今ではサンタクロースが背負ってそうな袋に大量の砂を入れて背負い、時代錯誤のリアカーに顔を砂まみれにしながら眠っている賞金首共を山積みにして、多くの人が無意識に俺から避けるように歩いている大通りをのんびりと歩いていた。

 ちなみに目的地はヴァルキューレ警察学校。おチビからそこで賞金首の換金を行っていることを聞いている。仕方ないから裏道通って近道するかと、人通りが少ない裏路地に入り、若干整備不良な部分がリアカーを揺らして引っかかりで重くなるのを力尽くで引く。

 

「失礼。上内メットウさんですね?」

 

 地味に遠いんだよなぁと重いリアカーを引いてのんびりガラガラと歩いていると、突然後ろから声をかけられた。声的には、男性。しかもうさん臭さを覚える。

 まて。声をかけられた?おかしい。魔術を使って意識されないようにしているのに声をかけられた。すぐさま警戒度を引上げ、袋の口を緩めていつでも中の砂を飛ばせるようにし、しかし警戒を表に出さないようにして声のかけられた方を向く。

 

「……えっと、どなた?」

 

 そこには人がいた。いや、人と言うには歪というか、人でないナニカが人の形をとったようなナニカが、そこにいた。

 

「あぁ、これは失礼。私は……そうですね。黒服とでも呼んでください」

 

「はぁ……」

 

 人型のナニカ改め黒服はクツクツと愉快気だと言わんばかりに喉を鳴らす。思い付き、にしてはすぐに出てるということは以前に誰かからそう呼ばれたものを使っている?わからん。が、警戒をするに越したことはない。というか警戒しないわけにはいかない。

 

「それで?こんなちんけな一般ピーポーな俺に一体何の御用なので?黒服さんとやら」

 

 背中の袋の中の砂を落としながらわざとらしくおどけて見せる俺に、黒服は特に意に介した様子はない。それどころか面白いものを見たと言わんばかりにわずかに声を漏らすほどに笑みを、人で言う口に当たる部分の白い三日月のようなものが吊り上がっているから多分口だろう、浮かべている。

 

「えぇ。実は私は神秘について研究をしておりまして」

 

「神秘を?」

 

 神秘を研究している。そう聞いて思ったのは、珍しいだった。この世界において神秘とはあって当たり前のモノだ。そもそも神秘と言う言葉を知らない人のほうが圧倒的多数であり、俺もこの世界に来る前に神秘と言うものを知っていなかったら知る機会はなかっただろうと言えるほどに、資料として記載されている神秘が圧倒的に少ない。

 それゆえに神秘を研究していると言った黒服が、どうして神秘を知っているのか、俺と同じく違う世界(神の視点)から来たのか存在なのか、そんな疑問が頭の中で回っていた。

 

「そう。神秘を、です。この世界における神秘は不思議な力を持っています」

 

 そうして黒服はベラベラと話を始めた。これは長くなるかと思って身構えていたが、存外黒服は話をまとめるのが得意なのか神秘に関する説明を簡潔に終わらせてくれた。

 曰く、生徒たちに宿る力である神秘。その神秘についてはある程度はわかったがそれ以上のことはわからない。そのわからないことを知る第一歩が欲しいのだと。大まかにまとめるとそういうことらしい。

 

「気になったのですよ。あなたが神秘ではない力を発揮しているのを見て。すぐさま様々な映像を見て確認して、それが既存の力で起きているものではないと確信した時私たちは歓喜したのです。私どもはまだ神秘について理解できていない。理解できていないがゆえにそれを十全に扱う術を持っていないのです。ですが、あなたは違う。あなたは神秘を理解したうえでその力を使っている。そうとしか思えない状況を、あなたは作っているのですよ」

 

 ううむ。バレテーラ。確かに目に見えておかしい現象を起こすような魔術は使わずにパッと見はおかしいと言うだけの魔術ぐらいしか使用しない、等と気を付けて魔術の行使をしてはいたが、さすがに違和感を持たれて調べれられると、神秘という力を認知している黒服のような存在だとバレてしまうか。

 

「フフフ。とぼけても無駄、いえ、こんな言葉は無粋ですね。私どもは確信している上に証拠もある。これを公表したところで眉唾物にしかならず、議題に上がることすらない程度のものですが、私どもとあなたは違う。これは証拠足りうるものだと、そう確信するものを、私どもは持っているのですよ」

 

 しらばっくれてこの場から離れようかと思ったのを察知したのか。黒服はそう言ってタブレット端末をいやらしくないように取り出して見せつける。画面も映ってないし、そもそも細かい部分が見えない以上中を見せるつもりはないんだろうけど、いや、タブレットを見せてデータとして持っているぞ、ということを言いたいのだろう。

 

「ちなみに聞くけど、それ、脅迫?」

 

「まさか。私どもでは解析すらもできない絶技。対策などもわからずにこうやってあなたと会いに来た時点でどうなるかわからない。なのに脅迫を行うなどという愚行を行うつもりはありませんよ」

 

 白々しい。条件はわかっていない爆弾を持っているとなれば警戒は必須だが、今こうやって目の前に出てこれる程度には準備はできてるのだろう。ここで短絡的に事を起こせば俺も無事ではいられないぞ、ってか。

 

「あくまで私はあなたの力のことを知っている、そうあなたに理解してほしいがゆえの言葉だと思っていただければと思っていますよ」

 

 表情はわからないが、声色でわかるほどに今この時を楽しむように付け加えるようにそういう黒服だが、はたしてその胸中はどうなのだか。

 

「それで?それを知った黒服さんは何をしに来たわけ?まさか知らない力について一緒に話して盛り上がりましょー、って言うわけでもないんでしょ?」

 

 それはそれでこっちとしては嬉しくないわけではない。なにせ1人だけで魔術を研究してても限界は見えてくる。俺1人の発想なんて限られてくるのだから他の人の発想も加えてよりクリエイティブな魔術を作りたい。

 そうは思うのだが、いかんせん物がモノだ。これが漏れた時にどうなるか。世界が混乱に陥る程度で済めば御の字のこの知識をこんなどこの誰かもわからない存在にぺちゃくちゃと話すようなことをしたくはない。それは向こうとて承知なはずだ。

 

「えぇ。ここに来たのは偏に、あなたと取引を行いたいと思い足を運んだのです」

 

「取引?」

 

「はい。私は、私たちゲマトリアはあなたの扱う力を知りたい。しかしそれを奪うように知ることは私どもの誇りを自分で壊すことと同義。故に、取引です。私どもは用意ができる範囲であなたに望むものを、あなたは私どもにその力を。そういう契約をしたいと思い、ここに参りました」

 

 取引。なるほど。取引と来たか。

 

「つまり、借金をすべて払ってほしいと言えばすべて払うと?」

 

「えぇ。えぇ。その場合それに見合う知識をいただくことにはなるでしょうが、間違いなくお支払いさせていただきます」

 

 黒服の言葉に、少しばかり思案を巡らせる。多分嘘ではないだろう。手数料を含む合計10億もの借金を肩代わりしてもいい。そう断言できるほどのものを俺は持っているのだと言われているのと同義なのだから気分は悪くはない。

 それに借金が無くなればおチビもあぁまでカリカリとする必要はなくなるし、梔子先輩もよくわからない詐欺に引っかかることもなくなる。何より借金に充てていた労力を学校のことに回せるようになるのだ。悪いことはなく、むしろいい面のほうが大きい。

 

「悪いけど、縁がなかったと言うことで」

 

 けど、それでもその取引に頷くことはしない。

 

「悪くない取引だと思いますが?」

 

「取引内容は、な。けどそもそもの話、取引で受け取る品物そのものが問題ないものだとは限らないし、それを受け取った後で何かしらの災難が来ないとも限らない。厄介払いのために渡す取引だ、なんてことになったら逆に借金が増える羽目になる」

 

 例えば借金を返すために使ったお金が銀行を襲って作ったものだったり、盗んだ貴重品や貴金属を売り払って作ったものだとすれば、それをろくに手続きを取らず適当に投げられれば被害はこっちに来る。なんなら犯人に仕立て上げられることになる場合だってあるだろう。

 

「俺たちにそのお金が健全な物だという証拠を出す能力はない。そちらから証拠を出されたところで100%の情報だと言う裏付けも取れない。この力が表に出ることをしたくない以上、第三者による裏付けもできない。そんな状態で契約なんてできないっての」

 

 例え向こうから第三者を用意しました、なんて言われても信用しない。向こうの息がかかった組織を紹介されていると考えるのが妥当だろう。

 

「つまり、俺はあんたを信用も信頼もできないから取引できない。誇りだの契約だの、あんたのことを知らない以上裏切られてもおかしくないと考えるのが妥当だろう。取引がしたかったら信頼を勝ち取る行動をとってから来るんだな」

 

 それがどういう方法なのか、それは向こうの考えることだ。わざわざこっちから教える必要はないし、向こうも教えられたことを愚直に行おうとは思わないだろう。向こうに言えることはこっちにも言えるのだから。

 

「クックックッ。なるほど。確かに、今ここで私が契約は絶対だと、そう言ったところであなたは信じられないでしょうね」

 

 俺の言葉に納得できたのか、黒服は愉快気に喉を鳴らして笑い始める。一通り笑うと満足したのか黒服は一息吐くと自分のネクタイの位置を直すように両手をのど元へと遣った。

 

「わかりました。では、あなたと取引できるよう、私どもも活動してみることにしましょう」

 

 では、これで失礼します。そういうと黒服は踵を返して建物で陰になっている裏路地に向かう道に歩いていく。もとから薄暗い場所だったことに加えてさらに暗い場所に足を運んで行った黒服は、名前通りの様相であったこともあってかすぐに姿が見えなくなった。

 それを俺は追いかけようとは思わなかった。追いかけても多分仲間がいるだろう。その中に入って強襲された、なんてことになってもおかしくはないのだから。

 

「ま、そもそもそんなお金もらったところでおチビは喜びそうにないだろうし、梔子先輩も受け取ろうとはしないだろうしな」

 

 ただ10億を逃したのはもったいないかなぁ、とは正直思っている。後ろめたいお金じゃなかったら魔術に関する知識も絞って出せばいいから、後ろめたくない組織っぽかったらもっと考えていただろうしなぁとも思う。これが真っ当に働いて出るお金ならおチビは鼻息を荒くして俺にやれって言うだろうし、梔子先輩は私がやると言って失敗して借金が増える、なんてことになる未来が簡単に見える。

 

「……いや、別に懐に入れる分なら取引してもよかったか」

 

 ポツリと呟いてみたが、当然のことながら何も起きない。いつもならおチビが「バカなことを言ってるんじゃない」って銃床なり棒なりでしばいてくるんだが、おチビからの激しいツッコミがないと寂しいものだな。なんていつもなら叩かれるだろう頭をさすり、今度こそリアカーを引っ張り始める。

 とりあえず今は健全なお金稼ぎをする時間だ。その後の話は、その時になって考えればいいだろう。

 

 





叶うならホシノたそをお腹に乗せて一緒にお昼寝したい……。子供みたいな体温をお腹で感じながらサラサラの髪をナデナデしながら重さを感じつつお昼寝したい……。
叶うならユメパイセンのむちむち太ももを枕にしてナデナデされながらお昼寝したい……。時々交代してユメパイセンを膝枕しながら頭を撫でてだらしない寝顔を眺めていたい……。
そしてホシノたそを真ん中にしてユメパイセンとはさんでお昼寝してのんびりとした休日を過ごしたい……。過ごしたくない?

そしてユメパイセンのやらかしで2人の前からいなくなって泣きながらユメパイセンを責めながら抱きついて疲れて眠るホシノたそを優しく抱きしめながら光をなくした目で聞こえないようにごめんなさいと繰り返し呟くユメパイセンを見たい。
さらにユメパイセンへの過度な責任追及で罪悪感がやばくてユメパイセンと会わないように目から光を失くしながら朝早くから夜遅くまで外で賞金稼ぎの仕事をするホシノたそと自分のせいで一人が死んで一人が離れていって心も体もボロボロになりながら事務仕事とお金稼ぎをするユメパイセンが見たい。見たくない?

そこから自己嫌悪が行き過ぎてホシノたそが身も心もボロボロになった状態で学校に帰ってきて、ふとユメパイセンの姿をしばらく見てないことを思い出して嫌な予感を抱きながら急いで生徒会室を開けるとヘイローが消えたユメパイセンが横たわっているところを発見し、今までの行動の罪悪感で心を押しつぶされて泣き叫びながらユメパイセンの名前を連呼するホシノたそは美の女神程度とは比較にもならないぐらいに美しい。そう思いませんか?

まぁ文章力ないので書けないんですけどね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。