神秘?あぁ、魔術的に必要なやつでしょ?   作:衝動書きする人

7 / 9
7

 

 ビデオによる授業も終わり、生徒会の手伝いもなくおチビがいつものように賞金稼ぎに出ていった放課後。少し前に実験的に作成して半分成功した作品である眼鏡を手のひらで弄ぶように動かしながら軽くため息を吐く。

 

「…………」

 

 おチビが苦戦した、か。先日【暁のホルス】が誰かわかった件で流れで詳しく話を聞いたのだが、内容としては少々信じにくいものだった。あのおチビが、質が低いとはいえいくつものヘルメット団を相手しても無傷で制圧できるあのおチビが痛み分けで終えた相手が、たった1人で相手できるほどの戦闘力を持っている同類がいたというのは、動画としてわずかに残っていたものがあったとはいえ見ても簡単には信じることはできないほどにおチビの強さは異次元なのだから。その戦闘跡を見てチビ怪獣大戦争かよと呟いておチビから蹴りが飛んできたが、それほどの激戦の跡が残るほどの戦闘を行ってもなおおチビが倒せなかったというのは驚きでしかない。

 

 いや、確かに【聖人】は何人もいてもおかしくはない。【とある魔術の禁書目録】の世界でも何人もの【聖人】がいたし、この世界では強弱はあるが【聖人】の特性を持っているのが当たり前なのだから、そういう意味ではおチビと匹敵できる【聖人】がいるのは何もおかしいことではない。

 驕っていた、というと言葉が違うが、それでもおチビの力を過信していた部分があったことは間違いない。このままおチビの力を信じ過ぎたら痛い目に遭いそうだと思い、しかしどうにかする手段を知っててもそれを教えてもいいのかが悩ましい。

 

 今持ってるこの眼鏡、割と命の危険がある危険なものなのだが、どうして持ってきたのかと言われたら、正直自分でもよくわからん。危険物として、同時に魔道具の成功例のサンプルとして普段は開けない机の中にしまっておいたのだが、【暁のホルス】に感化して持ってきたのだろうかと我がことながら憶測でそう思う。

 【暁のホルス】。偶然だろうが、ホルスの名を持ったおチビなら、もしかしたらこの眼鏡を扱えるかもしれない。上条当麻と【幻想殺し】の関係のように、案外悪くない結果を出すのではないかと思ってもいる。しかしこのまま渡しても脳の処理が追いつかずに死ぬ可能性もあるし、相性が良すぎるが故の相互作用で俺の時以上の力を発揮するかもしれない。だからと言って実際に実験をすることはできない。さすがの俺も他者を使った人体実験なんかしたくはない。

 

 いや、そもそもとして魔術や魔道具をそう簡単に教えていいものなのか?あのおチビが大ケガを負うのも考えにくい。おチビと同じような純度の高い【聖人】なんてそう多くもいないどころか10人いるかどうかだろう。今回敵対したのも風紀委員会だしそう対立することはないだろう。そう思ったら教えなくてもいいんじゃないのか?でも教えることをしなかった結果大ケガを負われても困る。だが、けど、でも……。

 

「メットウくん?どうしたの?」

 

 頭の中でグルグルと思考が繰り返している中、俺のすぐ後ろから聞きなじみのある声が聞こえてきた。後ろを見るとそこには不思議そうな表情を浮かべて首を少し傾げている梔子先輩が俺を見ていた。

 

「いえ。ちょっと悩みがあるだけですよ」

 

 手慰みで動かしていた眼鏡を握り、視線がレンズに行かないように手のひらで隠す。空いた手でヒラヒラと手を振って何でもないように言う。それを聞いた梔子先輩は少しだけ表情を明るくして手を軽く叩いた。

 

「悩みなら、よかったら私が聞くよ!なんたってメットウくんの先輩だから!」

 

「梔子先輩に相談するとなんかダメなほうに行きそうなんですよね」

 

「ひどい!」

 

 明るい表情から一転、富士山みたいな口をしてひぃんひぃんと鳴く梔子先輩を片目に見ながら思考を眼鏡に移す。これのことについて、話してもいいんだろうか。そう思いながら、私頼りになるよね?ね?とかまってちゃんになった梔子先輩の相手をしながら眼鏡を見る。

 

「秘密、というには結構言ってるんですがね。詳しく内容とか教えたほうがいいのかなと思いまして」

 

 ぼやくようにそう呟いたが、すぐに失言したことに気づいて深く息を吐いて唇を噛む。しまった。あまり話さないほうがいいと思ってたのに、梔子先輩の相手をしながらさっきまで話す方向で考えてたからつい漏らしてしまった。

 

「いや、なんでもないです。忘れてください」

 

 急いで握っていた眼鏡を机に置いていた眼鏡ケースにしまい、手をヒラヒラと振る。その様子にむぅっとほほを膨らませるように不機嫌ですとアピールしてくる梔子先輩だったが、少しすると困ったように眉をひそめて深いため息を吐いた。

 

「気になるけど、言いたくないなら仕方ないか。なら相談できるようになったらまた言ってね」

 

 そう言った梔子先輩の思わず目を見開いてしまう。いつもなら、というかさっきまで私に頼って~とか言って駄々こねてたのにどういう風の吹きまわしなんだろうか。

 

「……聞かないんです?」

 

「私も聞きたいとは思うよ?メットウくんすぐいたずらするからそういうことをするんじゃないかって警戒もするし。でもメットウくんは本当にダメだって思ったことはやらないし、言いたくないことを無理やり聞こうとしてもいいことないと思うからね」

 

 正直意外なことを言ってるなぁと思って聞いていた。普段の梔子先輩は子供っぽいのは垣間見えてるけど、なんか、こう、成長を感じているというのだろうか、情けなく目じりを下げて笑っているその姿には背伸びをしているようには感じなかった。

 

「梔子先輩、我慢すること覚えてたんですね」

 

「私動物扱いされてる!?」

 

 ひぃん!と一段と大きな鳴き声を上げる先輩に愉悦笑顔を浮かべ、掴んでいた眼鏡ケースを持って席を立つ。

 

「そうですね。じゃあ、相談できるぐらいに成長出来たらぜひ聞いてくださいねユメパイセン」

 

 カバンを持ち鼻歌交じりに眼鏡ケースを弄びながら教室を出る。教室から何やら騒がしい声が聞こえるけど、俺はいたずら好きのようなのでつっかえ棒でドアを動かないようにしておいたからドアは開く様子はない。まぁ後ろのドアには仕掛けてないし、閉じる方向にドアを少しでも動かせばつっかえ棒も落ちるんだろうけど、いつ気付くのやら。

 

「いやぁ。結構熱中してたほうだけど、今まで以上にやる気が湧いてきてるなぁ」

 

 そうだよな。できないわけじゃ無いんだ。できるまで研究し続けてたらいいわけだし、うまく言えば大ケガを負わせることはないんだ。それに、どうせおチビのことだし調整さえすればなんだかんだ言って使い熟すに決まってる。魔術だって適当な口調だったとはいえ普段から言ってたんだし大きく否定されるわけじゃ無いだろう。

 

「【ホルスの眼鏡】以外にも放置してるのあるし、そっちも触るか」

 

 果たして学校に登校することはできるんだろうか、と魔道具の研究で寝食もおぼつかなくなることも予想しながら込み上がってくる笑みを抑えられそうになかった。




 ホシノたそから殴られたい。セクハラ寸前の交流で顔を赤くして罵倒されながら殴られたい。そのままの流れでセクハラ発言してキャメルクラッチや腕ひしぎ十字固め受けて女の子の柔らかを感じながら痛みで悶絶したい。
 ユメパイセンにセクハラ発言して顔真っ赤にしているところに追い打ちをかけたら「じゃあ、私で試してみる?」って顔真っ赤にしながら涙目の上目遣いで見られて自責の念で柱や壁に頭打ち付けて自戒したい。

 そして2人を守るために重体になって生死の境を行き来した結果奇跡的に復活したものの、手や腕が欠損した状態でホシノたそユメパイセンの前に現れて盛大に曇らせた後でしばらく経ってからセクハラ発言して前みたいに折檻されるけど欠損した部位を触ることで改めて自分のせいで失ったことを改めて理解して泣きながら謝られたい。触る?と言いかけたところで手がないことを思い出して私のせいでと大泣きしているところを眺めたい。
 きっとオーロラなんかよりも心を打たれる美しさと感動がそこにあると思う。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。