神秘?あぁ、魔術的に必要なやつでしょ?   作:衝動書きする人

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え?オカルト研究会が、本編で出てきた?え?

えぇ……(頭を抱える)。


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「ぬ~~~~~ん」

 

 メットウの表情は悩ましそうに歪んでいた。その視線の先には数々のケーキが並んでいてメットウの視線はケーキを行き来していた。

 

「店員さ~~~ん。栄養あっておいしくてカロリークソみたいにあるお菓子って置いてないです?」

 

「ないよ。あまり聞きたくないけどなんでそんなのを所望してるの?」

 

「うちの同級生のおチビ、肉付きが微妙な感じでさ~。筋張っててちっこいから将来的に嫁にもらってくれる聖人男性がかわいそうだよな~って思って、今からなら身長は難しくても全体的に脂肪付けられるかなって。腰回りはどうせ動き回るから心配してないけど、まぁ全体的に柔らかくなっていたら結婚相手の聖人男性もいい思いするんじゃないのかなぁって」

 

「君、割と最低なこと言ってる自覚ある?」

 

 ケラケラと笑うメットウに店員は呆れたような声を出した。店員としてもメットウのような客、というか生徒は初めて見る者だった。

 乱雑に伸びている髪を後ろで雑に括っているのに小物を着けているその姿はちぐはぐを感じていた。制服も緩く着崩していてその旨には小さな木馬のペンダントをぶら下げており、その右耳には記号のようなものが書かれている透き通った青い石がイヤリングとしてぶら下がっていた。

 制服は校区外の、それも廃校寸前とすら言われているアドビス高等学校のものであることもあって、少なくとも店員からすれば目の前にいる少年は物珍しさに欠かさない少年だった。

 

「いやぁ、あの凶暴おチビ今はまだ肉あるけど、あのままだとガリガリに痩せてくのが目に見えてるしさ。おっさんの余計なお世話かもしれないけど、将来考えたら多少は印象良くするようにした方がいいでしょ?それが性的な魅力でもさ」

 

「…………」

 

「ただでさえ不愛想で引き金引くのが軽い暴力的なおチビだからさ~。せめて性的だとしても魅力に感じるようにすれば聖人男性と出会える可能性は上がるだろ」

 

 ケラケラと笑っているメットウの背後にゆらりと小さな影が動いたのを店員は見た。その姿からも察しがついた店員はいまだに気が付いていないメットウに憐れみを多分に含んだ視線を送っているのだがメットウはその様子に気が付いた様子がない。

 

「まぁ、あれはあれで需要はありそうだけど……」

 

「骨と筋ばかりで暴力的なおチビで悪かったですねぇ?」

 

 聞き馴染みのある苛立ちを隠そうともしない声がメットウの背後から聞こえた。あっ、と数分後の自分の未来を予見して全身の筋肉が強張るのをメットウは自覚しつつ、強張った首の筋肉を無理やり動かしてゆっくりと顔を後ろに向ける。しかし視線はやや上を維持、具体的には150㎝より下の物は視界に入らないように顔を上げる。

 

「なんだ。気のせいか。おっちゃん、これだけの料金でなんかいい感じに詰めといて」

 

 何でもないように言うが、その声は明らかに震えていた。

 

「おい、どこ見てる」

 

 ゴリッと腰の骨の部分に硬い棒が突きつけられる痛みを感じた。グリグリと捻じりこまんと徐々に力を込めてくるそれを、メットウは気づいてないと装うのを必死になって頑張って商品が詰められるのを待つ。

 店員は呆れ顔を隠そうともせずにため息を吐くとわざと高いものを中心に袋の中に入れていく。商品を丁寧に入れていた、と言えば聞こえはいいが店員はわざと遅く商品を袋に詰めていく。それを察したメットウは徐々に強くなっていく後ろの気配に内心悲鳴を上げ、店員から商品を受け取るとお釣りはいらないと言って大きく体を後ろに向けるととてもわざとらしい声を出した。

 

「あっれー?おチビじゃないかー。いやー、きぐーだなー」

 

「遺言はそれだけですか?」

 

「すんませんしたー!」

 

 銃口を向けてくるホシノの怒りに満ちた声に、メットウは窓口からずれてから膝をついて頭を地面にこすりつけ、先ほど買った商品をホシノに捧げる。

 

「あの、これ、献上物デス。オオサメクダサイ」

 

「ふん」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()おチビは不服そうに箱を受け取る。それでも気に食わなさそうに地面につけていた頭をコツコツと蹴り続けている。

 

「お客さん、店先でそんな特殊なプレイされたら変な噂流れて商売上がったりになるから自宅でやってくれないか?」

 

「これのどこがプレイになるんです!」

 

「女王様、ここでは人目が多すぎます、どうか、どうか家までこらえていただけたらと……」

 

「お前も何変なことを言ってんの!」

 

 窓口にいた店員からの注意にホシノが顔を赤らめながら叫びを上げる。メットウも笑いをこらえているがために声がわずかに震えているのが怒りと羞恥でホシノは気づいていない。

 

「いつまでそんなことしてるんですか!早く頭を上げろ!」

 

「いえ、そんな、ヒンソウオチビゲフンゲフンカタナシホシノ様が許してくれていないのに頭を上げるなんて、そんな恐れ多いことはとてもとても……」

 

「さてはお前許される気ないな?」

 

 ガシガシと頭を踏みつけるように蹴るホシノに痛いやめてと頭を上げずに悲鳴を上げ続けるメットウ。

 少しの間ホシノのなされるがままだったメットウにホシノが軽くため息を吐く。なんでいこいつはいつもこうなんだと頭を抱えそうになるが、ここは学校の外だ。苦虫を噛み潰した表情で深いため息を吐く程度に留める。

 

「いい加減に立って。もう反応するのもめんどくさくなってきた」

 

「ははーっ」

 

 まだやんのかこいつ、とホシノは怒りと呆れが混ざったため息を吐く。もう首根っこひっつかんだ方が早くないだろうかとメットウに手を伸ばしたその時、戦車の砲撃音と一緒に何かが破壊される音が大きく響いた。

 

「な、なんだ!?」

 

 さすがのメットウも頭を上げて音がしたほうを見る。ホシノはショットガンを手にしてメットウと同じ方を見ると、視線の先には砲撃音と一緒に煙がいくつも立ち上っていてその方向から人が逃げてきていた。

 

「『災厄の狐』だ!やつがここにも現れやがったぞ!」

 

 逃げていた人の中から叫ぶように聞こえてきた襲撃犯にホシノはさっき以上に苦々しい表情を浮かべる。『災厄の狐』と言えば広範囲における破壊活動を行っている愉快犯であり、同時にヴァルキューレ警察から幾度となく逃げ切っている実力者だ。

 いかにホシノであったとしても苦戦は逃れられない上に、今はメットウがいる。下手に刺激してしまったらメットウが重傷を負ってしまうことを考えたら逃げるしかないと判断したホシノとは対照的に、メットウは少し考えるように爆発音が聞こえる方を見ていた。

 

「おチビ。確かあの子に結構な額がかかっていたよな?」

 

「えぇ。それだけにかなり厄介かと」

 

「よし。気を引いてくるからいい感じで襲撃を頼んだぞおチビ」

 

「え?ちょ、メットウ!?」

 

 ホシノの制止を無視してメットウはワカモの方へと向かって歩き始める。流れてくる人ごみの中でメットウはイヤリングの青い石に触れつつ、ポケットの中から腕時計を取り出して腕に付けると5つに分かれた穂先をもつ折れた槍を模したかのような針の先端を自分の方へと向けると魔術を発動する。

 誰も彼もが破壊と略奪を行っているワカモから離れようと必死に逃げている中、メットウはワカモの近くまで歩いていく。そんなメットウをワカモは()()()()()()()()()()()()ドローンからの銃撃も不自然なほどにメットウを避けていく。

 5mほどまで近づいたメットウはそれ以上近づこうとせず、すぐに動き出せるように構えながらイヤリングの石に触れて口を開いた。

 

「どうも。建物まるまる一棟を崩す破壊活動は楽しい?狐耳がキュートなかわいいお嬢さん?」

 

 メットウの声にワカモはピタリと愉悦に満ちた笑いを止めて視線をメットウへと向ける。その目はメットウを値踏みするかのように、しかし同時に警戒と嫌悪を混じらせていた。

 

「あら?私に声をかけてくださるなんて珍しいお方。しかし、私の趣味ではないですね」

 

「あらら。フラレちゃった。美人さんなだけあって結構ショックだなぁ」

 

 いや~ん、とわざとらしく悲し気にため息を吐くメットウにワカモは心の底からめんどくさそうにため息を吐く。このまま撃ってもよかったが、5mも近づいていたにもかかわらず気づかなかったのにわざわざ話しかけてきたことに疑問がぬぐい切れない。

 今は情報を集めるべきだと判断したワカモはめんどくさそうな態度を崩さずにメットウに話しかける。

 

「それで?私になんの用です?」

 

「いや、さすがにかの有名な『災厄の狐』さんが突如現れたからね。驚きと好奇心と喜びで胸がいっぱいなんだよ」

 

「私と会えて喜びが?」

 

「一目惚れしててね。君の背格好やお顔がストライクドンピシャなんだよ。正直こんな出会い方じゃなかったらデートにお誘いもしてたね」

 

 やれやれと言わんばかりに肩をすぼめて首を振るメットウ。それを見てワカモは疑わし気に目を細めるが、ドローンから送られてきた後ろからの反応を見るや否やなるほどと言わんばかりにニタリと口角を残虐に上げた。

 

「そうやって私の気を引き付けて奇襲するのは、あなたの趣味でして?」

 

 持っている端末を素早く触り自分の銃と7割のドローンを後方へと向けて銃弾を斉射した。

 

「チィッ!」

 

 銃弾の向かう先にはホシノが忌々し気に舌打ちをしながら後退していく。その合間に次々とドローンをショットガンで打ち抜き、近くの崩れた壁へと隠れて銃撃から身を隠した。そのままドローンを操作して壁に隠れているホシノを銃撃しようと回り込ませるが、それをホシノは()()()()()()()()()()()()()()次々とドローンを打ち落としていく。

 

「なるほど。それなり以上には実力はあるようですね」

 

 ショットガンでドローンを打ち落とす等という神業を見たワカモはホシノの実力を察し、同時にその背格好からアドビスにいる『暁のホルス』であることも察して面倒そうにため息を吐く。

 

「ですが無駄ですよ。常にドローンで警戒しておりますので、不意打ちは不可能ですよ」

 

 ショットガンの有効射程外距離からドローンを配置し、同時にホシノを囲うようにドローンを移動させる。いくら暁のホルスでも全方位からのドローンによる斉射に耐えられるはずもない。

 自分でも警戒は外すことなく自動操縦に切り替えたワカモは疑問も解けたことでメットウの処分に移ろうと視線をメットウがいた場所に移したが、その姿はどこにも見えなかった。

 

「……いない?」

 

 辺りを見回すが、どこにも隠れられそうな場所は見当たらない。瓦礫の下となればいくらでも隠れられそうではあるが、こちらには瓦礫ごと踏みつぶせる戦車がある。外からでも操縦できるように改造してあるがゆえに本来のスペックから大きく下がってはいるが、それでも戦車としての運用は十分に可能な範囲だ。だというのにひき潰される可能性を考慮して瓦礫の下に隠れる等という愚行を起こすのか?

 

「ドローンに反応は、ある。『暁のホルス』は隠れたままのようですが、あの男の姿が見えない?」

 

 反応は2つある。ホシノの物であろう反応は離れていて、メットウの反応は近くにあるどころか近づいてきているのを確認できる。けど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。近づいてきているのはドローンで分かるのに、近づいてきている人がどこにいるのかが()()()()()()()()

 

「一体どういう……」

 

「キャッチ、ユア、ハンズ」

 

 突然、ワカモの目の前にメットウが現れた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()出現したメットウにワカモは銃を構えようとしたが、その前に驚きで緊張した手に強く拳を叩きこんで銃を弾き落とし、力が入りにくいようにワカモの両手を掴むように強く握り締めた。

 

「驚いてくれた?お面で可愛いお顔は見えないけど、息を呑んだのはわかりやすいね」

 

 にこやかに軽い口調のメットウだが、本気でワカモの手を握っていて腕がわずかに震えている。力が入りにくいせいで腕の力だけでは引きはがすのも難しく、ドローンを使おうにも操作もおぼつかない上に今のままドローンで攻撃すれば自分も巻き込まれる。それに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……乙女の手を乱暴に掴むなんて、紳士としていかがなものですの?」

 

「手厳しい。破壊活動を繰り返してる様だし乱暴なほうが好きかなと思ったんだけど、紳士的なほうが好みだったか。読み間違えちゃった」

 

 失敗したと言わんばかりに深くため息を吐くメットウに、ワカモはそれは残念でしたねと言うと強く蹴りを腹部に入れた。

 

「ぐっ」

 

 蹴りを入れたメットウの胴からジャラリと鉄が擦れるような感触と音が聞こえたが、メットウは苦しそうに顔を歪めてひねり出すように苦悶の声を上げる。それでもワカモの手を放さず、ワカモの力でもいまだに解放できないほどの力は込められていた。

 

「さて。乙女を乱暴に扱ったのですから、どんな目に遭ってもおかしくないことはわかっております?」

 

 しぶとい。余裕の表情を浮かべながらもワカモはメットウのしぶとさに内心舌を巻いていた。蹴った感触から鎖帷子のような何かを仕込んでいるのだろうと見当はついたが、それでもヘイローを持たない人間が体勢が悪かったとはいえそれなりに力を込めた蹴りに耐えるとは思っていなかった。

 

「ふふふ……」

 

 痛みに耐えて顔を歪ませているメットウだったが、苦しそうではあったが愉快気にくぐもった笑いを出し始める。マゾかと思い不快な表情を隠そうともせずワカモはメットウを睨みつける。

 

「なにがおかしいのです?」

 

「いや、なに。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんて、惚れた身としてはとても光栄だなと思ってね」

 

「何を言って……」

 

 メットウの言葉を鼻で笑おうとしたとき、背後からいくつもの銃声が聞こえてきた。その銃声はさっきまで警戒する必要があると判断していたはずのホシノの銃のものであると理解した時には思わず舌打ちをしてしまった。

 

「しまった……!」

 

 油断していた。いや、油断ではない。なぜか()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と思考がそれていた。そしてそれをおかしいものだと思わずにいたことにワカモは恐怖すら感じてきた。

 今度は油断しないと意識をドローンの情報に向けようとするが、しかしメットウの言葉によってそれができなかった。

 

「おっと。おチビの方がいいなんて寂しいじゃないか。()()()()()()()()()()()()麗しの妲己様?」

 

 グルリと、目が回ったのではないかと錯覚するほど視線が不自然にメットウへと向けられた。同時に意識がメットウの方へと向いていき、脳内が欲しいという感情にあふれていった。

 

「(意識が、集中できない……!)」

 

 欲しい、欲しい、欲しい。破壊と奪取への欲望を是としている自分が、ただ奪取に意志を集中させていることに混乱を隠せずにいた。

 

「(どうしてこの男の方に意識が持ってかれる!?もう一人のほうに意識を集中しようとしても、すぐに意識が男の方に移っていく!まるで誘導されているように!)」

 

 ()()()()()()()()から目が離せない。自分の五感とドローンで襲撃してきたホシノを探そうとしても木馬に意識が集中していき、しかし手を抑えられている以上奪うこともできない。ホシノ、木馬、木馬、ホシノ、木馬、木馬、木馬、ともはや自分はどっちに意識を向けているのかすらわからなくなるほどに思考がグルグルと回っている。

 思考が自由に動かすことができない。木馬に思考を集中していきそうな中、ワカモはそう判断して、逆に考えることにした。思考が定まらないのなら、強制的に思考を向けられている方向に集中しようと。つまり木馬を奪う方向に集中することにした。

 

「ガフゥッ……!」

 

 先ほど以上の威力の蹴りがメットウを襲った。ジャラジャラとチェーンが波打ったような音がはっきりと聞こえたが、それ以上にメットウの苦しむ声がワカモの耳にはっきりと届いた。痛みで手の力が一瞬ゆるみ、その隙をついてメットウの手から自分の手を解放する。そのままワカモは欲望に従い、その手をメットウの胸へと伸ばそうとする。

 

「やらせると思ってるの?」

 

 同時に背後から怒りに満ちた声が聞こえた。しまった、とワカモがメットウに意識を割きすぎていたことを後悔して体勢を崩してでもこの場から逃げようとするが、前傾姿勢とすら言える状態から逃げるために崩そうとしても間に合わず、体を動かす前に後頭部にホシノの撃った散弾が直撃した。

 その散弾はまるでホシノの意志に従うかのように今まで以上に強い衝撃をワカモに与え、後頭部に直撃したこともあってかワカモは意識を落とした。

 

「ナイスおチビ!いやぁ、今回はマジで死ぬかと思った!」

 

 散弾が当たった衝撃を殺せないまま気を失ったワカモをメットウは体で受け止め、そのまま着ていた服を脱いでそれを縄代わりにして腕ごと上半身を縛る。キヴォトスで販売されている服は外の世界と違いかなり頑丈にできており、それはホシノでもそう簡単に破けないほどの耐久性を誇っている。それを力を込めにくい体勢で縛り上げているのだから、ワカモ以外の誰かが外さなければほどけることはない。

 

「……私みたいに銃弾に耐性があるわけじゃないんでしょ?なんで危ないことしたの?」

 

 逃げられないようにと自分の服でワカモの上半身を縛っているメットウを、ホシノは不機嫌さを隠そうともせず半目で睨みつけている。

 メットウはヘイローを持っていない。それをメットウは自身の保有する神秘が少なすぎるが故のものだと言っており、その証拠とでもいうべきかメットウはキヴォトスの人間と比べると脆弱とすら言えるほどの耐久力しかない。

 

 だからメットウは今まで自分が前線に出るようなことはしていなかったのだが、今日は喜んで危険人物であるワカモの前に出ていた。それをホシノは沸々と湧き上がってくる怒りにも近い感情を露わにしてメットウを睨みつけていた。

 それをメットウはキョトンとした表情でホシノを見る。そのまま考えるように視線を横に逸らし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「おチビだけだと時間がかかりそうだったからな!あとは実験的な意味合いもあった!いやぁ、偶然とはいえまさか実験ができるとは思ってもなかった!」

 

 カラカラと笑いながらメットウは自分の胸にぶら下がっている小さな木馬のペンダントをつまむようにプラプラさせてホシノに見せる。最近、というか初めて会った時からメットウはオカルトに関することを披露していたのだが、実物というかオカルトに関する物を見せたことはなかった。それこそ、今のように見せつけるようなことをするようになったのは本当にここ最近のことだった。

 それを今になって見せるようになってくれたのは、自分たちが知っても問題ないと信頼してのことなのか、それとも何も考えていないだけなのか。初めて会った時からからかわれているホシノには判断がつかなかったが、少なくとも信用はしてくれているのだろうとは思っていた。

 

「……一目惚れして会話したかっただけじゃないの?」

 

 だからこそ、縛られているワカモを見ながらぼそりと呟いた言葉は本心から聞きたいことだった。危険人物だと言うのに喜々として目の前に行ったメットウが、惚れたと言う理由で危険の渦中に突っ込んでいったメットウがどこかに行ってしまうのではないかと思ったホシノの言葉に、メットウは驚きを隠せずに目を軽く丸くしていた。

 

「なに?嫉妬?」

 

「なっ!?」

 

 驚いた表情から一変し、ニヤニヤとした表情を浮かべてホシノの顔を覗き込むメットウに、さきほど自分が何を言ったのか理解したホシノは顔を真っ赤にして覗き込んできているメットウの顔面に張り手を入れた。

 

「イッタイメガァ!目にビンタ入ったってこれ!」

 

「そ、そんなわけない!何言ってんの!?」

 

 顔を真っ赤にして猫のように威嚇しているホシノの前で、衝撃が目に入ったのかメットウは悲鳴を上げながら顔を抑えていたが、痛みが治まってきたのか悲鳴も小さくなっていき顔を抑えていた手の片方をホシノの頭に乗せた。

 

「そっかそっかぁ。おチビがいっちょまえに嫉妬かぁ。いやぁ、モテる男は辛いねぇ」

 

「んなわけない!頭撫でるな!」

 

 愉快気に笑いながらぐしゃぐしゃと髪が乱れるほどに強く頭を撫でるメットウの腕を、ホシノは引きはがそうと掴むが強く握りすぎるとメットウの腕が折れてしまうからかうまく力を入れて離すことができず、メットウが満足するまでホシノの頭には感じることのなかった温かみが残っていた。

 それをホシノはメットウの手が離れると気に障ったと言わんばかりに髪を直すように頭を触っていたが、メットウが触っていた部分は自分の手でなぞるようにゆっくりと触れていた。

 




 ホシノかわいいよホシノ。塩対応からの特大ミスをしてしまって愛する人が植物状態になったのを見て後悔と自責の念で表情が死んでしまった姿はきっとダイヤモンドよりも輝いているよ。
 それから表情を無理やりに作って元気なさまを振りまいているように見せているけど植物状態になった人の前では表情が消えてひたすらに謝りながら手を握って涙を流すその姿は絶対に星の輝きなんかよりもキラキラしているよ。

 ユメパイセンかわいいよユメパイセン。良かれと思ってした行動が原因で愛する人が植物状態になったのを理解した瞬間に発狂して涙を流しながら頭をかきむしる姿は嵐の後の青空みたいに透き通る美しさがあると思うよ。
 そのまま病んでしまって愛する人は寝ているだけと思い込んで愛する人の隣でずっと楽しそうに声をかけている姿は綺麗な海の中にダイビングした感動すら上回るに決まっているよ。



ワカモがドローンを使ってるのは作者のノリです。まぁ街を破壊するのにミサイル付いたドローンを使っててもおかしくはないよね?とも思いましたのでこういうことをしました。
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