神秘?あぁ、魔術的に必要なやつでしょ?   作:衝動書きする人

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書きたいことを書けたから満足


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「もう!危ないことはやっちゃダメだよ!」

 

 災厄の狐こと、狐坂ワカモを捕らえて賞金をもらった2日後。あの後メットウはホシノに無理やり病院へと連れてかれて診察を受けさせられ、ジト目で説教を受けていたことで次の日はメンタルリセット!と叫んで学校をさぼって霊装の開発に勤しんでいた。それを腹部の傷が悪化したのかと心配になった放課後の時間になった時にホシノとメットウから自宅に突撃された日を挟んでメットウは生徒会室で事後処理と賞金が入ったことによる計算を行っていた。

 その最中に授業が終わったユメが両腕に包帯を巻いた状態で生徒会室に入ってきて、そしてエアコンを切った状態で白い着物を身に着けているメットウを見つけるや否やほほをわかりやすく膨らませて怒っていた。

 

「ところがどっこいレイヴィニア=バードウェイ。数か月分の利子を超えて借金にも手が届くぐらいの賞金を手に入れたんですよ。お手柄でしょうこれは」

 

「違うの!そんな危ないこと、メットウくんがやったダメでしょってこと!」

 

「パイセン俺のこと手綱のついてないやんちゃな犬とか思ってません?」

 

 メットウの表情は解せぬと言わんばかりに歪ませていたが、ユメからすれば似たようなものかもしれない。最も、メットウもメットウでユメのことをなにをしでかすのかわからない子犬とすら思っているのだからどっちもどっちかもしれない。

 

「特に何もなかったんだからいいじゃないスか。ケガだって腹の痣だけだし」

 

「もう!そういうところがダメなの!メットウくん私たちよりも弱いんだから!」

 

「その通りなんだけどなんかもやる~」

 

 事実メットウは銃弾を体で受けても痛いや痣で済むような他の人たちと違い体に穴が空く程度の頑丈さしかない。それでも口径が小さければ数mm体に入る程度に収まるぐらいには地球上に住む人よりは頑丈なのは違いないが、それこそ流れ弾でいつ死んでもおかしくない程度はここでは貧弱とされている。ユメのように心配するのは間違ってはいないのだ。

 それはそれでメットウも理解しているのだが、それはそれとして詐欺に簡単に引っかかるようなユメにそんなことを言われると納得がいかないとすら思っている。これがホシノから言われたのだとしても最強の【聖人】候補にそんなこと言われても困るとしか思わないからどっちにしろ納得はしないような性格がひん曲がっている男なので気にするだけ無駄なのはホシノの意見だったりしている。

 

「しばらくは生徒会室で事務作業を手伝ってもらいます!」

 

 ビシッと効果音が付きそうなぐらいに人差し指をメットウにつき差すユメだが、それをメットウはぇ~と言わんばかりに口を歪ませて生徒会室の棚に置いている資料と作業をしているパソコンに視線を向ける。

 

「いつもやってることじゃないですか。誰が資料とかまとめてると思ってるんです?」

 

「ひぃん!何も言い返せない!」

 

 メットウの言葉に口を富士山のように突き上げながらユメは拗ねるように机に突っ伏す。それを見てメットウは仕事してくださ~いと言葉だけ言うだけで視線をパソコンに向けて作業を続けていた。

 

「……ずっと思ってたんだけど、エアコンもつけずにそんな厚着して暑くないの?」

 

 数分の間ひんひんと拗ねていたユメだったが、メットウに構ってもらえないからかむすっとした表情を浮かべてメットウをジッと見ていたが、エアコンもつけずに生地が厚そうな着物を着ているのが気になってきたのかメットウの白い服を見ていた。

 ユメの言葉にメットウは視線をパソコンからユメへと変えたが、その目はさっきまでの面倒くさそうな色はなくむしろ自慢するかのように輝かせていた。

 

「あ、これっすか?いやぁ、霊装がちゃんと機能してるかの確認してるだけですよ。エアコンなくても涼しいので電気代安くなってて便利なんですよね、これ」

 

 ヒラヒラとユメへと風を送るかのように裾を振り回しているメットウだったが、送られている風がエアコンも付けていない夏の教室にしてはとても涼しいものだと思い、同時にエアコンも付けてないのに汗がそこまでかかないぐらいには気温が低いことに気づいたユメは目を輝かせてメットウの着ている白い着物を見た。

 

「すごい!メットウくんから涼しいのが来てる!」

 

「【雪女の雪衣】って名付けてましてね。これを着るだけでそこに雪女がいるって状態になるんで気温下がるんですよ。ちなみにこれ着ながら抱き着くと氷枕に抱きしめられてるみたいな冷たさが体験できますよ。する気ないですけど」

 

「えぇ!でも夏って寝苦しいからそれで寝苦しさも解決できるじゃない!」

 

「やりませんって」

 

 自分のことを男だと見てねぇのな、といろんな意味での心配と呆れでため息を吐くメットウに、その様子を見てユメは意味を理解できていないのかキョトンとした顔で首を傾げる。

 

「あ、そうだ!その服を私とホシノちゃんにもくれたらエアコンつけずに済むから学校の電気代安くなるんじゃないかな!」

 

「それやると本来のスペックが発揮されて極寒並みの気温になる可能性がデカいんでちょっと無理ですねー」

 

「冬並み……?」

 

「男の俺が着てるからこれだけで済んでるんですよね。調整不足なのもあって着てる人直で冷えるからパイセンとかおチビが着たら気温0度以下になって凍え死にますよ」

 

「そんな怖いものなの!?」

 

「霊装なんてそんなもんですよ。大体がやべぇのを参照して作ってるんであってそこからこじつけてスペックを切り盛りしてるだけですし」

 

 実際死にかけたこともありましたねぇ、とカラカラ笑うメットウにユメは心配そうな表情を浮かべる。

 

「そんな危険な物どうして作ってるの?もっと便利なものとか作れないの?」

 

「まぁ、作れるか作れないかで言えば多分作れるとは思うんですけど、調整に時間がかかりすぎるんで俺1人だと無理なんですよねぇ」

 

 実際メットウは様々な霊装を並行して作っていることもあるのは事実ではあるが、霊装自体は作ることにも使えるようになるまで調整することにもかなりの時間がかかるのだ。

 メットウがホシノに渡した【ホルスの眼鏡】も原型があったのと、ホシノの【神秘】が桁外れだったからこそホシノしか使えないようにすることで工程を削り、ようやく最近完成できたようなものだ。

 

 第一、霊装とは夢幻の願望や願いを形にしたものであり、有を別の有へと変換する物であり無から作り出すのは膨大な時間と手間が必要になる。2000人もの学園都市の学生を使い捨てることで発動がかなった【黄金錬成(アルス=マグナ)】などの例外はあるが、それを作り出せるほどの力も知識もメットウにはない。

 それこそ魔術を使うことで出来ることなんてキヴォトスの世界において店で売っている物を使えば事足りるのだ。それこそ日常に便利な物など、それこそそこらの店で売っているようなものを使えば事足りるし手間も時間もかからない。携帯性や奇襲性といった利点はあれど、正直なところ作り出す必要性はほとんどないのだ。

 

「それでも、まぁ、これができるようになるのが夢みたいなもんですからねぇ」

 

 それでもメットウは魔術を諦めたことはない。偶然の産物であったとはいえ、この世界に満ちている【神秘】を使い、魔術を行使できると知った時からメットウは魔術(幻想)を追い続けていたのだ。

 

「魔術ありますよ~って言われて普通あるわけないだろってなりません?」

 

「え?あるものじゃないの?メットウくんが使ってるし、なかったら使えないんじゃないの?」

 

「う~ん。なんか例外に聞いちゃってるな~これ」

 

 ユメの理解の及ばないと言った表情にメットウは残念な子供を見るような目でユメを見る。

 

「まぁ普通は、んなもんねぇよ幻想見てんじゃねぇよ、で終わるんスよ。パイセンみたいに、あるかもしれないね!って現実も見てないような言葉は普通でないもんなんですよ」

 

「メットウくん私のことバカにした!?」

 

「バカとは思ってませんよ。頭が残念な娘とは思ってます」

 

「ひぃん!」

 

 後輩からの情け容赦のない言葉に、もう1人の大切な後輩であるホシノからも同じようなことを言われていたからか何も言い返せないと言わんばかりに悲し気に顔をゆがめた。

 

「でも、そういうことが言えるのはパイセンの美徳みたいなもんだと思いますよ」

 

 そんなユメの様子を見て、メットウは普段のユメの様子を思い出す。

 失敗ばかりで現場を引っ掻き回すのようなことすらもしでかしかねないほどの先輩だが、それでもホシノは苛立ちを覚えながらも大切に思っているし、メットウも同様だ。むしろメットウはその様子であるからこそユメのことを気に入ってると言ってもいい。

 

「パイセンは夢追いかけてたらいいんですよ。現実的な部分はおチビが見てるでしょうし、俺はその間を取り持ちますよ」

 

 ホシノは今できることをただひたすらに処理していく。ユメはできたらいいなを思い描いていく。それらをメットウが引っ掻き回してはいい塩梅になるようにこねくり回す。

 

 現実は見なくては前に進んでいけない。でも、夢を見なければ目的がわからない。

 

 夢を見なくては最後まで進めない。でも、現実を見なければ進むべき道がわからない。

 

「幻を想うと書いて幻想。夢と幻はとても似ている。掴むこともできない幻を想うのは確かに愚かなことだけど、だからと言って現実だけを見ていてもいつかは壊れてしまう。なら、現実を見ながら()を想ってもいいじゃないですか」

 

 現実は辛い物が多い。逃げたくなるようなことが次々と襲い掛かって来ているようにすら錯覚するほどに。

 夢は甘い物が多い。見たくない者から逃げるようにそれにだけしがみついて溺れていたくなるほどに。

 どちらかだけでは壊れてしまうし、どちらかだけでは腐っていってしまう。ホシノとユメは、まさにこの両極端にいるようなものだった。

 

「俺には諦めるしかない現実(幻想)壊す(殺す)のはできないし、(理想)逃げ()れるような力もない。でも、誤魔化し(幻想)を作ることはできるんですよ」

 

 だからメットウは思った。気に入ったこの2人を繋ぐように、幸せな夢を叶えるために辛い現実を幻想で誤魔化して繋ぎ続けれるようにしようと。面白楽しく過ごして距離も曖昧にして、横道に逸らして、休むために足を止めて、それでも歩き続けるために。

 

「それじゃ、みんなで仲良く借金を返済して、砂漠が広がる問題も解決できるような、そんなとびっきり幸せな夢を追いかけようね!」

 

 メットウの言葉を聞いたユメは優しく微笑み、メットウはその笑みを見てからかいを含まない笑みを浮かべた。

 





 借金返済で資金のやりくりをしている中で時間の合間を縫ってホシノたそとユメパイセンに持ち運びできる手作りの小物をプレゼントしたい。目に見えて喜んでいるホシノたそとユメパイセンをニコニコと眺めて、いくらか日にちが過ぎた後でお返しのキーホルダー的なのをプレゼントされたい。最終的にホシノたそとユメパイセンもお互いに交換し合って3人でそれぞれのプレゼントを持っているようになりたい。

 そんである日ぱったりと連絡が取れずにホシノたそとユメパイセンの2人が探し回っていると血だまりの中で手にプレゼントしたキーホルダーを砕けていた状態で握り締めていた状態で死んでいるのを発見してほしい。
 死んでいた理由も襲撃が多くなっていたから2人に楽になってほしいという理由で1人で対処しに行っていたけど度重なる不運でキーホルダーが外れて無意識にそれを取りに行こうとしたら撃ちどころが悪くしかも落ちた衝撃で壊れたキーホルダーを必死になって取りに行っていたのを引き摺られていた血の跡から察してほしい。

 その日以降ホシノたそは無表情で襲撃者を殺す勢いで襲撃しに行くようになって、ユメパイセンは喪失感で気を抜いたら泣きそうになるけど死んだ人に誇れるようにって無理に笑うようになってほしい。
 そしてそのままホシノたそとユメパイセンの間で軋轢がだんだんと強くなっていってついには大ゲンカをするんだけどその拍子にもらった小物が壊れてしまって2度とあの頃に戻れないんだって悟って抱き合いながら2人に号泣してほしい。
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