オセアノーツオデッセイ(不定期更新)   作:イエローケーキ兵器設計局

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 かつて艦長だったあの人は連れて行かれるとき、こう言ってました。いつか必ず帰って来るって。でも、彼は……別エリア担当になってしまいました。いつになったら帰ってきてくれるのでしょうか……。


第1話:セトリヌス1-1

 私はセトリヌス1-1。ありがたく1-1海域……データ管理番号(後で確認しておきます)、通称「静かの海」担当になってかれこれ1ヶ月は経つ、独り身の潜水調査艇母艦です。いやまあ、独り身と言っても私にくっつく更に小さい存在が居るから一人ではないのだけれども……はぁ……艦長……帰ってきてくれませんかね……。

「キャプテン、大丈夫ですか?」

「1-1B、おしゃべりしない。」

「すいません……1-1A。」

 ここでは1-1Aが小型潜水艇達のリーダー。1-1Aから1-1Fの6隻が私を帰るべき場所としている。彼女達は軽武装で、野生生物や敵対勢力の攻撃には弱いから、母艦である私が責任を持って守らないといけない。さらに帰るべき場所が無くなっていては帰還できないから、母艦も生き残らないといけない。私の責任はとても重い。望んでなったわけじゃないのに。

「1-1Bが失礼しました。」

『1-1B、帰還したら1-1Aを連れてきて頂戴。』

「了解、キャプテン。」

 

「こちら1-1E、攻撃を受けています!記録に無い敵対勢力です!」

 妙ね……この海域はあまり敵対勢力が出てこないはずなのに。

『1-1E、隠れながら退避。1-1Fを向かわせる。』

 1-1Fは戦闘特化の特殊な中型武装潜水艇。今回も大丈夫なはず。私達はいつも乗り越えてきた。

「1-1F、現着。」

「キャプテン、この海域の警戒レベルの引き上げを要請します。」

『了解。警戒レベルをブルーからグリーンへ変更。』

『1-1Aから1-1Eまでに伝達。急ぎ帰投せよ。繰り返す、非戦闘型は帰投せよ。』

 厄介なことになってしまった……。

 

「こちらパキコルムス。セトル1-1、()の警戒レベルを上げたか?」

『はい、上げました。』

 母艦から連絡が……はぁ……あ、セトルというのは私達セトリヌス型の短縮形です。セトリヌスは長いですから……。

「応援は必要か?」

『え?あ……確認します。』

 分からず屋にしては珍しく素直に警戒レベルをあげさせてもらえたなぁ……。

『1-1より1-1F、状況報告を。』

「……。」

 返信が来ない。

『繰り返す。1-1より1-1F、応答せよ。』

「……。」

「警戒レベルを上げる。セトル3-1が近海を回航中だ。」

「パキコルムスよりセトル3-1、()へ向かえるか?」

「セトル3-1、了解。」

 低い懐かしい声がする。それはそう。元艦長だもの……。

「セトル1-1、セトル3-1と共同で調査に当たれ。」

「3-1、了解。」

『……1-1、了解。』

 

『……。』

「……。」

 予備のプリスティス級を上部格納庫から放出し、1-1Gと緊急のコードを振って手動で制御する。右隣を見れば3-1F、左を見れば……マクロシスティスの森。視界が悪くて何も見えやしない。

(マクロシスティス:大型の海藻。種によっては数百mにもわたって生育するケースもある)

「1-1Eが1-1Fと分かれたのはこの座標か?」

『そのようです。』

「ふむ。あれを見てくれ。」

『これは……。』

「厄介なことになったな。行けるか?」

『ええ……私は艦長の部下ですから。』

 テトラプトゥルス型魚雷の破片……敵艦が近くにいる……。

(テトラプトゥルス:メカジキ。吻が短いことが特徴)

「森に隠れるぞ。」

『了解。』

 数分後……哨戒に来たのか深度200m付近にスクリュー音の反応……中型の潜水艦がやってきた。本体までは2kmある。ワイヤーもあと3kmは引き出せるはずだ。

「タイミングは任せる。やれるな?」

『はい、問題ありません。』

 嘘でも問題ないと言っておくしか無い。横にいると意識するだけで少しずつ気になってしまうから。

 

『目標、中型音源反応。魚雷を発射。』

「目標、回避機動を開始。ノイズメーカーだな。」

 みーつけた。

『手動誘導開始。』

「セトル1-1……?」

「……着弾を確認。畳み掛けよう。もう1発だ。」

『了解。』

「怒ってる……のか?」

『いいえ?』

 ともに戦えて嬉しいですよ?どうせなら艦内に居て欲しかったですけど……。

 

『次弾射出。』

「1-1Gに敵弾接近。」

『回頭開始。右旋回。』

「こちらセトル1-3、本艦に航空機接近。航空支援を要請する。」

「パキコルムス、了解。タキソ2-1、2-1Fを回せますか?」

「タキソ2-1、了解。2-1Fを向かわせる。」

 タキソはタキソジウム(ヌマスギ属=ラクウショウ属)のことらしい……です。データログを漁った限りでは、ですが……。

 

「スクルラ2-1F、交戦開始。」

 プロペラの回転音と甲高いジェットエンジンの音が無線越しに聞こえる。データからして……プロペラ機のこちら側が格闘戦に持ち込んだみたい。

 

「タキソ2-1より、スクルラ2-1F。状況は?」

「優勢……撃墜。帰還する。」

「了解、警戒を。」

 

 ジェット機は速度があって格闘戦には弱く、プロペラ機は旋回力があって速度戦には弱いらしい。

 

「敵艦の残骸を発見。データマイニングを行う。」

 




来週の2話に続く。

静かの海
:かつて太平洋と呼ばれた大海の一海域。とても広くてセトリヌス級1隻では調べきれない。その為、複数のブロックに区分けされており1-1海域は地下の磁鉄鉱等による地磁気の影響などからコンパスが使えないものの、平均的な調査難易度である。

プリスティスFの行方
:https://syosetu.org/novel/340631/23.html
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