ガノタがニケになっちゃった   作:砂岩改(やや復活)

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サイド3

 

「ハーモニーキューブの活性化を確認」

 

「各地に配置したピラーを起動。基礎構造物の出現を確認」

 

「電力確保に時間がかかりましたね」

 

「まぁな」

 

 かつて第3アーク候補地と名付けられたその地下空間には6000近くの避難してきたニケたちが新天地として作業を行っていた。

 名前は3にちなんで《サイド3》と名付けられハーモニーキューブの活性化によりさらに都市開発が進められるだろう。

 

ーー

 

「しかし。一番最初に作り始めるのが自分達の家ではなく温泉街とは…自由すぎますな」

 

「まぁ、モチベーションは大事だからな」

 

「最初の温泉が忘れられないんだと」

 

「気持ちは分かりますねぇ」

 

 カスペンが笑うように語ると思い出す。

 基礎構造体が完成した後に都市開発が始まるかと思えば最初に作り始めたのは溜まった温泉を活用した温泉街、わざわざ地上から木材を切り出して作られた街は遥か未来の時代なのに昭和を感じる街並みであり、湯畑もあるからもう立派な温泉街だ。

 ソーンが作ろうとしていた自由な空気感は既に形成されつつあった。

 

 そんな温泉街でも特に豪華に作られた屋敷に国家元首となったソーンと主要メンバーたちが一時拠点として腰を下ろしていた。

 

「想定される居住人数はアークに比べて圧倒的に少ないだろう。その分は軍事、開発施設、あと農業プラントを作りたいな」

 

 そして第一次地上奪還作戦に参加した中でも主だった活躍をしたニケたちを重職につけ、ひとまずの命令系統を再編した。

 

 サイド3元首及び敗残兵軍総帥《ソーン》

 参謀本部総長《キリー》

 親衛局長官《ヘクトール》

 親衛局副長《カスペン》

 敗残兵軍暫定第1軍司令官《Lことランス》

 都市開発局局長《ミレイナ》

 先進技術局代理局長《ナユタ》

 

「アークにない強みはやはり技術力でしょう。技術力を伸ばしていく方針にしましょう」

 

「農業プラントも忘れずにな。やっぱりパーフェクトじゃストレス溜まるわ」

 

「食べ物は士気に直結する。ここに来るまでの行軍で全員が思い知っているからな」

 

「都市開発はミレイナに一任する。皆と良く話し合って決めるように」

 

「承知しました。現在計画している状況ではアークのようにビル中心ではなく、土地に余裕のある都市計画を考えています」

 

 ミレイナは港湾基地の津波を生き残った数少ない工兵部隊所属のニケだ。基地の復旧のために尽力していたが全て流されてしまった。

 だが彼女は建築技術を含む様々な都市運営に関する知識を有していたため、幹部に名を連ねることになったのだ。

 

「サイド3の計画は良いとしてアークの動きが気になります。しばらくは他所を気にしている余裕は無いと思いますが…」

 

「前にソーンがおっしゃっていたようにアークとは不干渉を貫くのは理解しましたが情報は集めておくことは必要でしょう」

 

「伝はある。俺たちのアーク離脱を手伝ってくれた大物がな」

 

「あの男か…信用できるのか?」

 

「中々に面白い男だったろ?」

 

 ソーンの言葉にランスは思い出す。あの明らかに異常な男を思い浮かべるだけで目がチカチカする気がする。

 

「そもそもランスだって、ソーンと殺しあった仲じゃないのか」

 

「ヘクトール、何故それを」

 

「経歴は問いますまい。こうして集ったのも何かの縁ですからねぇ」

 

 幹部会を終え解散する一同は仕事に戻るのだった。

 

ーー

 

 その後、ソーンはドローンを大量生産しサイド3完成へと着実に進めていく。

 莫大な電力不足を補うために新設された先進技術局を中心にソーンが開発した施設発電用の巨大なエイハブ・リアクターを使い、補った。

 

 当初策定した開発計画の達成まで数年ほどの時間が経過していた。

 

 開発途上であっても地上探索等は定期的に行われ、迷子や逃げてきたニケたちを保護し、少しずつであるが数を増やしていった。

 

「結局完成までに会えなかったなぁ…」

 

 ソーン自身は急がしすぎて外に出られていなかったが部下たちに命じてゴッデスメンバーの捜索を行わせていたが中々見つからなかった。

 

「ソーン様、最終確認をお願いします」

 

「ミレイナ、分かった。案内を頼む」

 

 ミレイナの迎えにソーンは機械馬車に乗るとミレイナの案内のもと、サイド3の様子を見て回ることにする。

 この機械馬車も先進技術局のおふざけで作ったものだが滅茶苦茶乗り心地が良く、車並みの速度で動け、悪路にも強いのでソーンの仕事用の移動車と化していた。

 

「居住区は予定より拡張し、サイド3では約100万人を想定して建設しました。現在のところ人口は2万ほどですがこれからも増える予定です」

 

「アークからの亡命者が多いようだな」

 

「はい、第一次地上奪還作戦からニケは迫害の対象になっています。地上作戦を通じて脱走しているニケたちを保護していたら想定より多くの同志を受け入れる形になりました」

 

 基本的にサイド3はアークへの徹底的な不干渉を唱っているが情報収集は欠かさない。裏の中でも公的な情報源はあるが既にサイド3支援者たちが日夜、情報を送ってくれている。

 中には放送されているテトラプラネットの録画データを毎日送ってくれる者もいて1日遅れであるがサイド3でも放送されていたりする。

 

「人口増加に対する措置は入念にな。治安維持は怠るな」

 

「ヘクトールに伝えておきます」

 

 現時点では唯一の軍隊である第1軍が資材調達等の外界作業、親衛隊が治安維持含む内政を担当している。

 そんな話をしていると視界いっぱいに広がる農業プラントが姿を表す。

 

「農業プラントの稼働率は72%ですが食料自給率は100%です。昨今では食の探求を行う者も増えているようで娯楽としての食事も可能になるでしょう」

 

「この前見てきたよ。朝市には新鮮な果物が並んでいた」

 

 昨今、植物系の食料には余裕が生まれ始めたまに開催される朝市で安く売られている光景をよく目にするようになった。

 

「サイド3中に張り巡らした川に放流した魚たちも十分に成長してきましたが生態系の調整に難儀しているようです。環境管理局から漁獲量の新規調整案が出ています」

 

「流石に俺もそこまで知ってるわけではないがな。任せると伝えてくれ」

 

 淡水魚のみだが魚の収穫量も安定しつつある。

 あくまで現在の人数でだが、これから増えていくであろう人口に対してまだまだ考えていくべき事は多くある。

 

「分かりました」

 

 農業プラントも果樹園ゾーンに突入すると1つ気付くことがある。端から見ても明らかにブドウの種類が多い、量だけでなく種類もかなり豊富だ。

 

「ブドウが多いな」

 

「探索部隊とプラントの職員が結託していつの間にかワイン用のブドウ園を作っていまして…現在ワイン用のブドウだけで30種類ほどあるそうです…」

 

「ハハハッ!」

 

 思わず声を挙げて笑うソーン。食や娯楽への執念と言うものはここまでになるのかと。

 

「それを知った他の者たちも動きだし現在、酒造ブームが発生しています」

 

「ミレイナが見逃すとは珍しいこともあるものだ」

 

「隠してた方が逆に見つけやすかったのですが堂々と申請していまして。ブドウの苗30個ではなく30種だとは思わず」

 

「まぁ、酒は時間がかかるからな…好きにやらせろ。ところでもうワインは出来ているのか?」

 

「いえ、近日中に完成品が出来上がるそうです。出来次第ソーン様に献上したいと」

 

「ヌーボーってやつか。楽しみにしてると伝えてくれ」

 

 農業プラントを超え、最深部になるとそこは先進技術局を中心とする大規模な開発施設がある。

 サイド3の上層は軍事施設、中層に居住区、下層に研究開発施設の多層構造になっている。

 そして最下層にはソーン専用の巨大な工房が存在する。

 ちなみに上層と中層の二層に農業プラントが設置されている。

 

「お久しぶりですねぇ」

 

 研究開発施設を統括しているナユタが現れソーンを出迎える。ナユタは既に右腕が様々な機能を内包した義手となっておりメタ的に言うと原作と同じ姿になっていた。

 

「ナユタ…朝あったばかりだろう」

 

「そうですねぇ」

 

 居住区にはソーン用の大きな邸宅があり、そこに住んでいるのだが本人はそんな豪華さを求めてはいなかったがいつの間にか善意で建てられたものを無下に出来ずに使っている。最初は執事やメイドを着けるといった話も出ていたが流石にやめさせた。

 そして持て余していた邸宅にいつの間にかナユタも住み着き、謎の同棲生活をしているのである。

 

「ってかお前の家どうしたんだ。今思ったけど」

 

「ミレイナにあげましたねぇ」

 

「貰いました」

 

「そこが結託してるのかよ」

 

 そんな雑談をしながら施設に入っていくとすれ違う者たちは全てソーンに対して敬礼を行っていく。

 

「偉そうにはしたくないんだがな」

 

「偉そうにするのも仕事です。傲慢になられても困りますがねぇ」

 

 目的地にたどり着くとそこは先進技術局の中枢。

 ここでは現在、ニケの新しいボディフレームの開発を行っている。

 現状の主兵装はアークに比べて高性能化しているがたかが知れている程度、一人一人の高性能化を実現するためには新しいボディを0から設計するしかないと判断したのだ。

 

「では、話を聞かせてくれ」

 

「はい。よろしくお願いいたします」

 

 先進技術局員はカチコチに固まりながらも説明を始める。

 技術開発に至っては現状、ソーンの右に出る者はいないそんな彼女にプレゼンするのだ。

 そんな様子を見てナユタとミレイナは少し可哀想だと思いながらも話を聞く体勢にはいるのだった。

 

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