「しかし、流石はラプチャーの拠点だ。忍び込むのも斬り倒すのも苦労するねぇ」
「やはり三人ではかなり厳しいですね」
「待て二人とも…ニケの大規模隊だ」
パイオニアの三人はラプチャーにバレないように様子を窺っているとスノーホワイトはかなりの数のニケたちがラプチャーから見つからないように布陣しているのを見つける。
「おや、アークのお嬢ちゃんたちかい?」
「いや、装備が違う。かなりの装備だぞ」
「ですがアーク以外にこれほどの規模の部隊がいるのでしょうか?」
ラプンツェルの言うとおりであり、パッと見ただけでもかなりの数になる部隊だがその全てが見慣れぬ装備を着けていた。
「…ソーンが着けていた強化アーマーに似ていますね」
「ソーンか…」
この三人でソーンの事をハッキリと覚えているのはラプンツェルだけだ。ソーンと言う名に複雑な気持ちを持つ二人を余所に敗残兵軍は行動を開始するのだった。
ーーーー
主戦場から離れた場所に敗残兵軍の砲撃部隊が展開していた。自立型移動砲台《ザメル》全高8メートルとかなりの大きさだが砲撃能力と移動能力の兼ね合いを考えてこの大きさになった。
それが10機全機展開しており、作戦開始を今か今かと待ち構えていた。
「目標地点入力完了、作戦開始まであと30秒」
「いいな、5発撃ったら移動だ。忘れるな!」
ーー
蟻塚、周辺部隊。
「3…2…1…着弾…今!」
蟻塚周辺に展開していたラプチャーの頭上からミサイルのシャワーが降り注ぎ、小型を含む多くのラプチャーが吹き飛ばされ残骸と成り果てる。
生き残ったラプチャーも戦闘モードに移行しつつ何事かと周囲を索敵しだした瞬間、先頭にいたラプチャーたちはビームで撃ち抜かれた。
「各機は作戦に従い、行動を開始せよ。全機、兵器使用自由。繰り返す、全機兵器使用自由!」
敗残兵軍の主力、その殆どは《オールズモビルシリーズ》と呼ばれる装備に身を包んだニケたちだ。
扱いやすさと柔軟な武装を扱えるRFザク装備
中、近距離戦闘を意識したRFグフ装備
扱いに癖があるが重装甲、高火力、高機動を誇るRFドム装備
指揮官、エース仕様のRFゲルググ装備
それぞれの装備の特性を生かし、敗残兵軍は順調に作戦を進めていた。
「蟻塚周辺のラプチャーたちは?」
「現在、周辺を封鎖している第3軍が迎撃、誘引しております。損害は小破数名、作戦続行可能です」
敗残兵軍の中で策定された小破、中破、大破、損失この四つの定義は簡単で
小破 損傷あれど作戦続行可能な状態
中破 体のいずれかが欠損、辛うじて戦闘続行可能
大破 頭部以外破壊、脳をブレインシェルターに保管
損失 回収不能、脳を損傷または損失した状態
の状態に分けられる。
「現在中央部に攻撃を集中させていますのでそれを避けて敵は扇型に広がりつつあります。それに合わせて我々も広がり戦況を拮抗させます。この様子ですと敵の左翼が脆い状態ですので孤立させ各個撃破に持ち込みます」
「なるほど。脆いとはいえラプチャーの中に突っ込むんだ、誰に行かせる?」
後方に察知された本陣では指揮を取るキリーがソーンに戦況図を見せながら解説する。
本陣には簡易的なテントが張られ、地上とは思えないほど安全な状態で配られたコーヒーを啜っていた。
「お分かりなのに…意地が悪いですね」
「ランスに任せよう」
ーー
「よし、来たか…」
第一軍の指揮官でありながら直属の部隊を編成していたランスはキリーからの通信を受け呟く。
背部のスラスターを稼働させ手にしていたショットランサーを構える。
「出番だ、敵中を突破し左翼を分断させる。その為に我々は編成された部隊だ。大規模戦の初陣を飾るぞ!」
「「了解!」」
クロスボーン・ガンダムX2装備に身を包んだランスはABCマントを靡かせながら一気に加速する。
負けじとそれに追随するのはハクジ装備の黒いギャンたちもランスと同じくABCマントを身に付けながら出撃する。
「ランス隊長に続け!」
殺到するラプチャーたちに一斉射撃を浴びせ、トップスピードのまま敵陣に突っ込み破壊していく。
ミサイル、ビーム、ランスを使い次々とラプチャーを破壊していき、ロード級ラプチャーでさえも巨大なランスに貫かれ破壊される。
そんな彼女たちを援護するように砲撃などの後方支援を浴びせられ、文字通りビームの雨の中、彼女たちは駆け抜けていく。
「流石はランス肝入りの《
「突破力と破壊力を突き詰めた部隊編成。我が軍の最強部隊と言っても過言ではないでしょう」
「指揮官が真っ先に戦闘で突撃するんだからな。少し迷ったがスカウトして正解だったな」
中央と左翼の間を食い破られたラプチャー達であったが奴らに戦略的な知恵などは持っておらず。
集中される砲火を嫌い、その隙間はドンドンと広がっていく。
「今だ、敵を半包囲しつつ敵左翼に攻撃を集中。殲滅するぞ!」
グフ装備のビームロッドがラプチャーのコアを破壊し後続のザクたちが前線を押し上げる。
「よし、行けるぞ!」
「異常振動検知、地下からだ!」
突然の異常振動に慌てて退避すると地下から蛇のような長い体を蠢かせ、採掘機のような顔面を震わせながら部隊に迫る。
「回避!」
「新型のタイラント級か!」
「ビームライフルじゃ駄目だ。ビームランチャー持ってこい!」
「胴体は無理だ。顔を狙え!」
地面に大穴を空けながら暴れ始める新たなタイラント級、グレイブディガーの登場に若干戦線が混乱する。
「しまっ!」
横合いからのラプチャーの攻撃で左足を吹き飛ばされたザクが倒れるとそこに目掛けてグレイブディガーがドリルごと突っ込んでくる。
「た、たすけ!」
「させん!」
ランスはその間に割り込み、グレイブディガーのドリルの隙間にショットランサーをねじ込みながら勢いを止めると渾身の力で蹴り飛ばせばグレイブディガーは思わず地面に倒される。
「今だ!」
それを逃すまいとギャンの大槍ハクジが次々とグレイブディガーに突き立てられ爆発する。
「やった!」
「タイラント級を撃破したぞ!」
グレイブディガーを倒し、ラプチャー左翼の殲滅を終えた頃、喚声が挙がり敗残兵軍の指揮も最高潮になっていた。
「落ち着け、まだ敵は残っている。このまま中央に展開するラプチャーを…」
「隊長、後ろ!」
「っ!」
滞空していたランスに地面から勢いよく出現したもう1機のグレイブディガーがランスを粉砕しようと迫る。
そばに控えていたギャンもなんとか無事であったが防御が精一杯であり、弾かれ飛ばされてしまう。
「くそが!」
ランスがショットランサーを構えた瞬間、近くの山間から強力なエネルギーが飛来しグレイブディガーの粉砕機を破壊、大爆発したと同時に音もなく近づいてきていた白い影がその首?を斬り飛ばした。
一瞬で破壊されたグレイブディガーを唖然と見る敗残兵軍は首を落としたニケを見つける。
白い笠を頭に乗せた和風のニケ、元ゴッデス部隊でその有名を馳せた天才剣客《紅蓮》は満足そうに花無十日紅を振るった。
「紅蓮…まさかさっきのはスノーホワイトか?」
「まさかとは思っていましたが…ソーン?」
映像を見ていたソーンは思わず立ち上がると本陣を守っていたニケの案内でテントに入ってきたラプンツェルはソーンを見つめる。
「ラプンツェル!」
「ソーン!」
互いを認識した瞬間、二人は強く抱き締め合う。
部隊にいた頃はこんなこと一度もしなかったが今までにないほどの激情に駆られて二人はその存在を確かめ合うように抱き合うのだった。