ガノタがニケになっちゃった   作:砂岩改(やや復活)

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時系列不問です。


番外編 サイド3の年末

 

 サイド3、人類最後の生存圏《アーク》とほぼ同じ面積を持つニケが作ったニケだけの国。

 人類の尖兵、身代わりの兵士として産み出されたニケたちの国はアークと比較して遥かに豊かな文明生活を送っているのは皮肉と言うしかない。

 

 だがこのサイド3はアークとは違い、一種の巨大な軍事要塞であり、究極の軍事国家と言うべきであろう。無数の兵器郡にそこに住む住民全員が総力戦体勢時には武器を持ち徹底的な抵抗を行う失われた地上を奪還するためだけに特化した国家。

 

 そんなサイド3の年末を今回は覗いていこう。

 

 

ーー

 

 サイド3にも年末年始と言うものは存在する。むしろイベントや行事は積極的に行われるのがサイド3の流儀だ。

 それは指導者であるソーンが《武器を持つものこそ人の心を忘れてはならない》と言う考えのもと推奨されているからだ。

 

 サイド3 第二層、居住エリアには様々な露店が並び、自慢の商品たちを売り、賑やかな雰囲気を出していた。

 

「石焼きいも~焼きたてだよ!」

 

「年末特別価格!特製焼きそばはここだよぉ!」

 

 賑やかなメイン街道を抜けた裏路地は年末とは言え人通りは少ない、そんな場所に長い金髪を靡かせた大人びたニケは慣れた様子で看板のない店に入る。

 

「キリーさん、いらっしゃい」

 

「いつもの」

 

「はい!」

 

 サイド3内は居住区だけ、意図的に外と同じ気温に設定されている。その寒さを防いでいたコートを壁に掛けるとキリーはカウンターに座り、灰皿を受けとると吸っていた煙草を置き、火を消す。

 店主のニケから熱燗とおでんの盛り合わせを受け取るとハフハフと言いながら卵を頬張る。

 

「うまい、やっぱりここのおでんが一番美味しい」

 

「こんな隠れ家的な場所があったんですね」

 

 キリーの隣で同じくおでんを食べながら熱燗を飲んだ彼女の弟子、マリルは青髪を短く纏めたオッドアイの少女だ。

 

「隠れ家みたいな店を作りたいって言って本当にこんな場所に建てて、看板も出さないから潰れかけてな」

 

「いやぁ。キリーさんが居なかったら本当に危なかったです」

 

「今後は私も使わせていただきますね」

 

「頼みますよ。どうぞ、サービスです」

 

 山盛りの焼き鳥が出てきて上機嫌なキリーは熱燗をさらに追加するのだった。

 

ーー

 

 ランス邸宅の居間、そこに設置された暖炉の側で紅茶を飲む家の主は静かに手にしていた本のページをめくる。

 敵拠点攻略等、攻撃を担当する敗残兵軍の第一軍の司令官であり、攻撃力だけなら最強と言われる《黒の槍先》の部隊長であるランスはその勇猛果敢な肩書きには似合わないほど静かな人物であった。

 

「ナギ」

 

「はい」

 

 屋敷執事のナギは紫色の髪を三つ編みにし、右目が眼帯に覆われた女性だ。

 彼女はランスの副官であり、唯一の屋敷執事である。

 そんな彼女から紅茶を受け取ると静かに味を楽しむ。

 

「今日は?」

 

「はい、ビーフシチューと赤ワインを用意させて頂いております。もちろん、私もご一緒に」

 

「そうか。先に風呂に入っていて良いぞ、後30分したら読み終わる」

 

「承知しました」

 

ーー

 

「…9…10000…」

 

 装備無しでビームソードを振るい終わったヘクトールは武器を置くと水を一気に飲む。

 外は雪が降り、ヘクトールの体から煙のような湯気が立ち上る。

 

「お疲れ様です、日課は終わりましたか?」

 

「あぁ、カスペンもすまないな」

 

「いえ、部隊の統括は私の仕事なので」

 

 制服のズボン以外最低限の装いであったヘクトールはコートの上着を羽織ると歩き始める。

 

「こんな日でも鍛練は欠かしませんね」

 

「当たり前だ。ソーンの剣となり盾となるために怠ることはない、その為の親衛隊だ。それにパリスの事もある。あれで死んだとは思えないからな」

 

 ヘクトールはカスペンが持ってきた軍服を受け取り着替える。

 

「そうですね。かのヘレティック《アナキオール》もゴッデスに打ち倒されてもなお、生きていたらしいですから。奴らの生存能力は驚異ですから」

 

「そうだな、だが今悩んでも仕方ないか。カスペン、いつものとこに行くぞ」

 

「またステーキですか?」

 

「いいじゃないか。おまえのBARも付き合ってやるから」

 

「言いましたね。今夜は飲みますよ!」

 

「お前はザルなんだからな…」

 

ーー

 

「ふふん~」

 

 ソーンの邸宅のキッチンにはエプロンを来たソーンが料理をしていた。

 オーブンから丸鳥のローストチキンを取り出すと良い匂いが鼻をくすぐる。

 

「ナユタ、グラタンとビーフシチューも運んでくれ」

 

「はいはい」

 

「ソーン、酒はどこだい?」

 

「もう1つ飲んだのか、席に座ってろ酔っぱらい、スノーホワイトを見習え!」

 

「ソーン、まだか。私はもう限界を超えている」

 

「落ち着いてください。ご飯は逃げませんから!」

 

 リビングに広げられたご馳走たちを目の前に震えるスノーホワイトを必死に押さえるラプンツェルとそれを肴に飲む紅蓮。

 

「よし、お待たせ」

 

「素晴らしい鳥だ!」

 

 ソーンが最後に持ってきた丸鳥のローストチキンに立ち上がりながら歓喜をあげるスノーホワイトに笑いながらソーンも席に座る。

 

「よし、では食べるか!」

 

「「「「いただきます!」」」」

 

 スノーホワイトを筆頭にご馳走を楽しむ一同はそれぞれの地上の報告を交えながら会話を楽しむ。

 

「明日には整備した武器を渡そう。皆、丁寧に使ってくれるおかげで整備は楽だよ」

 

「地上では最も便りとするものだ。当然だ」

 

「ライフルの台尻にキノコが生えてなくて助かるよ」

 

「あら、そんなことがありましたね」

 

 ソーンの言葉にラプンツェルが口を押さえながら笑う。

 

「ライフルの台尻からキノコ?ものぐさなニケも居るものだな」

 

「……そうだな。面白いだろう?」

 

 スノーホワイトの言葉にソーンは笑顔を崩さずに答える。

 

「ソーン、裏の風呂に酒を持っていくぞ。今日は雪だ、雪見酒で露天風呂とは最高じゃないかぁ」

 

「お前はいつもそうだろう」

 

「やはり皆は自由ですね。特に白雪の食べっぷりは壮快です」

 

「そう言うお前は見ない間に太ったんじゃないか?」

 

「あ、ソーン。それは…」

 

 隣に座っていたナユタの脇腹をつまんでやると彼女は固まり、ラプンツェルは悲劇を止めようと手を上げるも時すでに遅かった。

 

「やっぱり太ったな。俺たちのボディは少ないが太るからなぁ」

 

「………爆熱……」

 

「あぁ…ソーン。貴方に神のご加護を…」

 

「ナユタ…右手が真っ赤に燃えてる気がするんだけど…」

 

 ナユタは右手でソーンの顔を掴むと目をカッと開き叫ぶ。

 

「ゴッドフィンガー!」

 

 スノーホワイトはローストチキン、紅蓮は酒を持ち上げて退避させ、ラプンツェルは静かに祈りを捧げ、誰も彼女を助けようとしない。

 

「ごめん、ごめんってぇ!」

 

 ソーンの頭部が爆発に巻き込まれるのだった。

 

 

 

 

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