ガノタがニケになっちゃった   作:砂岩改(やや復活)

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出立

 

 ラプチャーの巣であり、かつて《蟻塚》と呼ばれていた場所には現在、サイド3の前線基地としての工事が行われ。

 その周辺を昼夜問わず、防衛任務を主とする第2軍が徹底的に間引きしていた。

 

「蟻塚にあった地熱発電システムは問題なく稼働しています。我々研究班が効率化のテストを行いますので許可を頂きたいのとチェック済み次第、原子力発電の方も稼働試験を行いますがよろしいでしょうか?」

 

「あぁ、サクヤに任せる」

 

 先進技術局二代目局長である《レイチェル》は大きく頭を下げると発電システムの確認に向かう。

 

「どうですか?」

 

「問題ないがお前が居なくなると寂しくなるな」

 

「おや、そう言われると行き辛くなりますね。今生の別れではありませんよ」

 

「まぁ、そうだが」

 

 歯切れの悪そうなソーンを見ながらナユタは微笑み、隣で首を傾けているラクダ型T.A.V:Aであるマントラの頭を撫でる。

 かつて生産したバクゥとは違いマントラはソーンがゼロから設計し、コスト度外視で作られた化け物T.A.V:Aなのだ。

 

「これ程の物を頂いたのです。ありがたく使わせていただきます。最初は風雲再起と仰っていましたが」

 

「風雲再起は師匠が乗るものだろう。つまり俺の馬だ。それに速度だけで言えばマントラより速い奴は居ないぞ」

 

 ちなみにスノーホワイトたちパイオニアは既にサイド3を離れている。体のメンテナンスも兼ねて定期的に帰ってくるそうだ。

 一応、パイオニア部隊としてはソーンとナユタも加入しこれで5人となった。

 

「それでは…」

 

「そうだな…答えよナユタ!」

 

「ソーン!」

 

「流派!東方不敗は!」

 

「王者の風よ!」

 

「全新!」

 

「系列!」

 

「天破侠乱!!」

 

「「見よ、東方は、赤く燃えている!!」」

 

 二人は拳を強く合わせ、互いに笑みを浮かべるとナユタはマントラに乗ったと思えば高速で駆け、ソーンの視界から消える。

 

「よし、俺もやることやるか」

 

 それを見送ったソーンは笑みを浮かべながらその場を後にするのだった。

 

ーー

 

 ナユタとの別れは名残惜しいがこちらもラプンツェルのお陰でやりたいことが出来た。

 彼女から聞いたのはソーンが抜けてからのアークガーディアン作戦の全てだ。

 そこでソーンは興味深いことを聞いた《アンチェインド》の事についてだ。

 

 シンデレラを拘束していたヘレティック研究所でその文言を知ってはいたがその詳細を調べる間もなく研究所は壊滅してしまって何も得られなかった。

 

「まさか指揮官の血液がヘレティックへの対抗策になるとは…しかし量産型ヘレティックと言い、まだ知らないことばかりだなラプチャーは」

 

 アンチェインドを生産していた研究所の大まかな座標をラプンツェルから貰ったのでその周辺を探索したいがそこはアークからさほど遠くもなくラプチャーの完全な支配地域だ。

 

「少数精鋭…いや、俺一人でいいか」

 

 一人なら何があっても対応できるし身軽だ。ヘクトール辺りが良い顔をしないだろうが仕方ない。

 

「ケイ、ヘクトールとキリーを呼んできてくれ」

 

 たまたま近くで作業していたニケに声をかけるとソーンは今後の段取りを考える。

 

 ナユタはアークの巨大コアの片割れが軌道エレベーターの動力源になっていると聞いた。ラプチャーの完全制圧下であるが、もしかしたらV.T.CかD.E.E.Pの支部があってもおかしくない。

 

 そんな思案を巡らせながらソーンはヘクトールたちに話すと一人でアンチェインドの研究所に向かうのだった。

 

ーー

 

 雲の中を飛び、ラプチャーに見つからないように飛ぶナイチンゲールの中でソーンは静かに怒りに震えていた。

 誰かに対するものではなく自分自身に対する怒りであった。

 

 自分は彼女たちが...ゴッデスの皆が一番辛いときに側にいてやれなかった。それが悔しくてたまらない…過去に戻れたとしても同じことをしただろう。

 

 あの時はまだ自分の体に未知の存在であるヘクトールが居たからだ、彼女がゴッデスに対して好意的であったから良かったもののパリスのように任務に忠実であったならゴッデスは身内に爆弾を抱えながら戦うはめになる。

 それはソーン自身、許せないことであった。

 

「やっぱりD.E.E.Pは潰しておくべきだったか」

 

 他人を何とも思っていないイカれ技術者どもの巣窟。その中に良識のあるナユタがいたのは奇跡だろう。

 

「新たなテクノロジーに携わる者 こそ人間の良心を忘れてはならない…か」

 

 自分が選べる立場になれば簡単に下の者を切り捨てられる精神が一番気に入らない。

 良く考えれば当たり前か、英雄なんて存在が特別視されるのはどんな人間も見捨てないからだ。

 そんな人間が少ないからそれをした者たちが英雄となる。

 英雄なんて存在が特別視される限り、人間は変わらないと言うことか。

 

「皮肉なものだ…ん?」

 

 ナイチンゲールのレーダーの警告音が鳴り響く。

 分厚い雲の中、ソーンの前に高速で接近するなにかがある。

 

「ラプチャーだが、データベースに該当なし。未確認のラプチャーっ!」

 

 雲を切り裂く轟音と共にナイチンゲールと空飛ぶラプチャーが邂逅する。

 

「ドラゴン!?」

 

 深紅の双頭の龍は一気に加速し旋回するとナイチンゲールに突っ込んでくる。

 雲を消し去る灼熱の炎が迫るが一気に上昇しながらファンネルを展開する。

 

「なんだ、てめぇ…こっちだと思ったが違うな!」

 

「ラプチャーが喋る?ヘレティックか!?」

 

「楽しませろよ、なぁ!」

 

 双方ともに加速し戦闘が始まるのだった。

 

 

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