手始めとばかりに放たれた火炎は空を焦がすが本命であるソーンには当たらない。
だがその場に居合わせたラプチャーたちは火炎に呑まれ墜ちる。
大型・メガ・ビーム・ランチャーのビームが空を駆け、ニヒリスターに直撃するがその巨体に比して威力不足であり、すぐに再生される。
「再生能力…」
「ちっ、痛ってぇな!」
体を再生しながら突っ込んでくるニヒリスター、それをソーンは避けることなく受け止め、火炎を吐こうと口を開けた左頭にランチャーを向け、拡散ビームを放ち頭をズタボロにする。
「この!」
「っち!」
同時にビーム・トマホークを展開し右頭を縦に切り裂くと腹部拡散メガ粒子砲を放ちながら離脱するがニヒリスターも負けておらず、翼を振るいソーンを吹き飛ばす。
だがやはり強力な一撃で穴を空けるより、無数の箇所に穴を空けた方が向こうとしては厄介なようだ。
だがこのドラゴンの動きはある程度予測できる。仮想上のドラゴンのように羽ばたいているわけではなくドラゴンの形を模した戦闘機みたいなものだ。
小回りはナイチンゲールの方が上、敵の装甲も貫ける。基本的に有利な状況だ。
「まだまだ!」
即座に再生して突っ込んでくるニヒリスターに対して展開したファンネルでビームの網を作り出す。目の前に展開されたビームの網を避けることが出来ず、ドラゴンは細切れにされ破片が空中を舞う。
「やっ…てない!」
「ようやく捕まえたぜ!」
破片に紛れてニヒリスターはナイチンゲールに降り立つと頭部を掴み、背後に装備されたドラゴンの頭を連想させる武装ユニットをこちらに向ける。
だがソーンも素早くファンネルを動かしニヒリスターの頭部を吹き飛ばし、武装ユニットを狙撃し攻撃を逸らす。
「小賢しい!」
「コアは胸か」
頭部を握り潰さんと力を込めるニヒリスターだったが突然、ナイチンゲールの頭部がせり上がり中からソーンが姿を現すと右手をニヒリスターの胸に押し当て、パルマ・フィオキーナを放つ。
「がっ!?」
コア付近を抉られ、苦悶の表情を浮かべるが武装ユニットがソーンの左腕に噛みつき、砕かんとするが想像以上の堅さに驚く。
(なんだコイツ、バケモンかよ!)
驚きつつももう一つの武装ユニットでソーンの右手を捕まえると右手は簡単にひしゃげる。
「くっ!」
「だが俺の勝ちだぁ!」
「システムスタート!」
…メインコアの出力上昇
……エネルギージョイント接続
………サブコア起動、エネルギーフィールド展開
…………全コア最大出力
……………ダブルコアシステムの起動準備完了
「起動…」
ソーンの全身からプラズマが漏れ、青い炎が彼女を包む。
「なん…」
ニヒリスターは青い炎が巻き上がった瞬間に空中に蹴り飛ばされているのが分かった。
青い炎を纏った瞬間、ソーンは両腕を拘束していた武装ユニットを引きちぎり、視界に映らない速度で回し蹴りし、ニヒリスターの腹部内部構造体を粉砕しながら空中に飛ばしたのだ。
「ちっ!」
イラつきを隠さないニヒリスターであったが不利だと察し巨大化でドラゴンの姿になりながら片方の頭でナイチンゲールを噛み潰す。
システムの途中停止させるために反応が遅れたソーンには対応できずに火炎を吐かれ、潰されるナイチンゲールを逃がすことは不可能であった。
「やってくれる」
ソーンは素早く乗り込むとナイチンゲールの上部装甲をパージ、中からサザビーユニットを装備したソーンが射出され脱出する。
それと同時にナイチンゲールは自爆、ドラゴンの頭を吹き飛ばすがそれもお構いなしで最大出力で加速し撤退するニヒリスター。
「1つ貸しといてやる。覚えてな」
あっという間に地平線の彼方に消えるドラゴンを見つめながらソーンは自由落下しながら地上を見つめると大きな残骸が見える。
「もしかして…」
姿勢を整えて着陸態勢に入りながらその残骸に降り立つ。
海すら近くにないこんな大陸のど真ん中にそびえ立つのは空母の残骸。
傷から見て分かる、凄絶な戦闘の末にこの船が沈んだことを…そして自分達の家だったものを見つめ呟く。
「勝利の翼号…」
勝利の翼号の改修はソーン主導で行われ、自身の子のように思っていた船だがこうやって役目を最後まで勤めきった姿を見ると自然と笑みがこぼれる。
「お疲れさま…よく頑張ったな……」
ーー
その頃、アーク。
「報告は以上です」
「ご苦労様です。ゆっくり休んでください」
「ありがとうございます」
報告に来ていた量産型ニケを見送った女性は脳波で車椅子を動かし自身の机に置かれた資料を再度熟読する。
「戻りました」
「ご苦労様、スカルク」
スカルクと呼ばれた黒髪のニケの表情は眼を覆うバイザーによって伺い知れないが淡々と求められた説明を話す。
「再度、入念に調査しましたが津波被害地点以外に集積されていた物資は皆無、ニケの残骸の数も予測よりかなり少数でした」
「やはり、ニケたちが新たなコロニーを構築している可能性がありますね」
「可能性は0ではありません…が低いことは間違いないかと」
まるで細枝のような体に車椅子、軍服を纏っているがその姿に違和感を感じない人間は少ないだろう。
顔にはベールがかけられおり、うっすらと顔が視認できる程度であり、それがまた違和感を助長させる。
「第一次地上奪還より15年ほどが経ちましたがアーク周辺から逃れた筈のニケたちの残骸は発見されず。作戦行動中に消息を絶つニケも少数ではありません。そして、かつてアークに辿り着けなかったニケたちが逃れたシェルターも我々が把握している範囲では全て跡形もなく消えていました」
優しい声色、まるで母親が子に語りかけるように話す印象とは裏腹に少女は淡々と話す。
「しかし離反者や脱落者の寄せ集めでしかありません。ラプチャーとの生存競争に勝てるとはとても」
「地上にしかない旗印があります」
「…ゴッデスですか」
「特にアークから逃げ出したソーンは第一次地上奪還作戦中に消息不明。地上に取り残されたニケたちを先導して連れていった可能性は高い…ニケの楽園、さしずめニケトピアですね」
少女は大きなため息をつきながら車椅子に深く座る。
「聡明な保安長官殿の独断によりソーンとリブラ部隊が武力衝突、そのせいで我々はソーンの脳と引き換えにゴッデスを地上に放逐するしか選択肢を与えられなかった。本来ならアークに引き込み、罪状を着せ、憎きニケとして処刑するはずだったのに…」
「ゴッデスと引き換えに得た脳も逃げられました」
「……」
スカルクの言葉に少女はベールの中で睨み付けるも彼女は意図的に眼を合わせない。
「汚名まみれのリブラ部隊いえ、今はシージペリラスでしたか…それ任せているのです。信頼していますよ」
「はい、クラウディアス副司令…」