ガノタがニケになっちゃった   作:砂岩改(やや復活)

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壁外の怪物

 

 人類がアークに逃げてから30年、第3層先進技術開発局。

 

「アンチェインドの件ですがやはり人工的に作り出すのは不可能ではないかと」

 

「やはりか…」

 

 開発局局長のレイチェルの報告に肩肘をつくソーン。

 アークで人間医療関係に携わっていたニケをスカウトしてまで研究していたアンチェインドの量産化は結果を出せぬまま時を浪費していた。

 

「平行して進めているナノマシン同士の相殺によって再生能力の抑制を軸に進めていきます」

 

「そちらの方は成果を出しているからな」

 

 ナノマシン研究はサイド3の研究の中でも最重要課題として取り組んでいる。

 最近開発された金属に対する腐食能力を持つナノマシンは現在実験中であり、サイド3周辺で散布されている。

 

「はい、ですが実戦には向きませんね。小型のラプチャーを完全に腐食させるのに3日かかりますから」

 

「防衛としてはそこそこ有効だ。現にサイド3周辺のラプチャーは駆逐されつつある。ニケにも効くのが難点だが」

 

「それに関しては自然由来の素材で作った特殊コーティング材が効果を発揮しそうです。有効性が分かり次第。出入りの多い常備軍からしていこうかと」

 

「分かった。地上のやつらにも情報共有を忘れずにな、範囲内でキャンプでもされたら殺しかねん」

 

「分かりました」

 

 報告を聞き終わるとソーンは研究所を後にする。

 ニヒリスターと交戦し、勝利の翼号を見つけた後、研究所に残っていた3発のアンチェインド弾のうち1つを回収したソーンは研究を続けていたがアンチェインドはどちらかと言えば遺伝子工学の分野であったために難航していたが結局の所、成果は出せなかった。

 

「ニヒリスターの腕の1つでも持って帰っていればな…」

 

 地上にいるニケたちアーク内でピルグリムと分類される者たちとヘレティックを含むラプチャー特殊個体に関する捜索を行っているがやはり拠点があるのは足枷になるのか滞っていた。

 むしろ外に出たナユタたちの方が多くの情報を持って帰ってくれる。

 

「ソーン」

 

「どうしたヘクトール?」

 

「親衛隊諜報部から中々、興味深い話が来た。」

 

 ヘクトールから受け取った端末を見る。

 

「M.M.Rの研究員がこちらの情報網に接触してきた。今は精査中だ、人間だがかなり有能な人物だから罠だとしてもギリギリまで調べたい」

 

「アーク最高の頭脳か…」

 

 端末には白色長髪の女性の写真と共に名前が表示されていた。

 

「セシル…」

 

ーー

 

「第二次地上奪還作戦…ねぇ」

 

「最近、エブラ粒子発生装置をそこらかしこに建ててるでしょ。ラプチャーの通信能力を奪って敵の連携を絶った上で作戦を実行する手はずよ」

 

 アークからほどほどの位置にある小さな地下シェルターには煙草を吸いながら資料を見るキリーの姿があった。

 

「第一次の百倍ほどの戦力が投入されてると聞くがそれほどの蓄えがあるとは思えないな。アークに」

 

「流石、アークの事をよく知っているわね」

 

 とある会合のために設えた専用の地下シェルターであり、中は最低限だが整えられている。

 キリーと相対するように置かれたソファーに触っているのは桃色の髪に黒い仮面を着けたニケ。

 

「分かっていると知りながら、こうして情報を持ってくるんだ。感謝はしている」

 

「私の役目はアウターリムに配備されたニケと同じよ。貴方たちのような不確定要素に関わりを持つことでささやかな均衡を保つこと。そのために社長は私たちのような部隊を作った」

 

「エンターテイメントと叫びながら裏では諜報、世論操作、拉致なんてな人間はやはり怖いな。シェイドの部隊長《ベルベット》?」

 

「外交窓口は持つべきでしょう。名前すら知らないそちらの国とアークが戦争になれば待っているのは人類の消滅。どちらも望まぬ結末ではなくて?」

 

「そうだな、我々の至上命題はラプチャーを殲滅し地上を奪還すること。アークを潰すことではない」

 

 だがサイド3にいるニケたちはアークに対し恨みを持っているのも事実だ。

 

「ならあの外の化物をどうにかして欲しいんだけど?」

 

「ヤツはソーンしか扱えない。ブイは提供したはずだが」

 

「それ以上は望めないのかしら?」

 

「そちらによるな」

 

 キリーの言葉にベルベットはニタリと笑うのだった。

 

ーー

 

 アウターリム、アーク外縁部に位置し、壁で隔てられたアークから様々な理由で追い出された認識チップを持たない人間たちが暮らしているスラム街である。

 いわゆるスラムであり、アークから排出されるゴミの集積所でもある。

 

「今日さ…」

 

「違いない!」

 

 廃棄されたエレベーターを利用し地上で仕事をするほどの度胸を持つ者、追い込まれている者様々であるがアウターリムはそれなりの活気があるのは間違いないが1つだけ大きな問題があった。

 

ゴーン!

 

ゴーン!ゴーン!

 

 とあるセンサーと連動している鐘がアウターリムに鳴り響く。

 先程まで騒いでいた者たちは急いで近くの建物へ、物陰へと隠れ、怯えるように息を殺し始める。

 それなりの活気があったはずのアウターリムは物音1つしないただのゴミ捨て場と化す。

 

 法などないアウターリムであるがそこには1つだけ絶対の掟が存在していた。

 それはアウターリムが生まれるまでの引き起こされた惨劇によって生まれた教訓であった。

 

(来た…)

 

 小さな、ほんの小さな地響きすら大きく感じる。

 屈強な男たちでさえ物陰からソレを見る眼が震える。

 

 ソーンが生み出したアークを守る化物《シャンブロ》がモノアイを動かしアウターリムの外縁をゆっくりと進む。

 

 シャンブロはラプチャーのみならず侵入を許可されていない全てを破壊し尽くす化物、その判断基準は体に埋め込まれているはずの認識チップ。

 つまりチップを持たないアウターリムの住民はシャンブロの攻撃対象であると言うことだ。

 

 シャンブロは基本的、同じ場所に待機しているがAIによるきまぐれにより、こうしてアークの外縁を巡回することがある。その時に無惨にやられた住民の数は膨大だ。

 かつて腕利きたちが揃ってシャンブロの討伐に向かったが一秒すら持たなかった。

 

 それからシェイド部隊によって設置されたブイによってブイの範囲内をアーク内と誤認するようになったシャンブロはアウターリムにあまり近づかなくなったがそれでも近くは通る。

 その時がアウターリムの唯一の掟、沈黙の時間となるのだ。

 

「化物め、我が物顔で居やがって」

 

「まぁまぁ姉貴、元々あの化物が住んでたとこに我々が住み着いてる訳ですからね」

 

「わ、分かってるよ!」

 

 シャンブロが立ち去った方向を見つめながら悪態をつく。

 

「それよりどうするんですか。テトラからの申し出は、晴明会とヘッドニアにも同じ話が来てるようですよ」

 

「テトラにはブイの借りもある。俺はありだと思ってる」

 

「姉貴がニケになるならもしもの時も安心ですね。楽園の門はニケにしか開かれてないんですから…」

 

「なにか言ったか?」

 

「いえ、なにも」

 

 





 第二次地上奪還作戦がアーク封鎖から30年後だと仮定して話を進めます。

 OVER ZONEのエピローグでドロシーとスノーホワイトは封鎖から50年ぐらいと話していた時点でセシルとドロシーが、まだ会っていない状態。
 GODDESS FALLのエデンストーリーで第二次地上奪還作戦後にセシルとヨハンが地上へ逃げたと言う話があるからその話だけ見れば第二次地上奪還は50年以上後になりますが
 RED ASHのエピローグとFOOTSTEP,WALK,RUNのストーリーで、第二次地上奪還作戦参加中のラピと目が覚めたレッドフードが出会ったのが30年でしたのでこっちを参考にしています。
 基本的に一次資料であるアプリの描写を参考にしつつ整理していますがこのようにややこしい所が多いです。

 ラプチャーの分類も小型、大型からロード級、タイラント級などの分類にいつからなったか不明でARK GUARDIANのイベントで既にリリーバイスがタイラント級と発言しているシーンがありましたのでこの小説ではアーク封鎖からロード、タイラント級として分別されているとしています。
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