ガノタがニケになっちゃった   作:砂岩改(やや復活)

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各キャラのイメージ画像をサイド3キャラ一覧に順次追加中です。



アークの星 前編

 

 

 参謀本部の私室にて音楽を聴き、口ずさみながら書類を書くキリーは突然、頭を小突かれイヤホンを外す。

 

「ソーン?」

 

「さっきから呼んでるだろ。なに聞いてたんだ」

 

《明日への光を届けるよSmileForYou~》

 

「プリティーだよ。知らないか?」

 

「お前もか」

 

 アークの一部、上層部から感づかれつつあるサイド3であったがそんなことなど気にせず優雅な暮らしをしていた彼女たち。

 その中でも今、音楽がもっとも人気を集めていた。

 ブームの火付け役はアークで最も人気なニケの歌姫《プリティー》であった。

 元々、個人の趣味の範囲で楽器を嗜む者ちらほらいたがアイドルと言ったものの存在はサイド3にはおらず、メディア関連では1日遅れでやってくるアークのテレビを楽しみにしているニケも沢山おり、そこから波及したプリティーブームとともに音楽ブームが始まった。

 

「ソーンはカントリーミュージックばっかり聞いてるから」

 

「古いものも良いんだよ」

 

 ソーンは個人的に収集していたレコードを聞いてたりしていたのでその流行りには疎かったが。

 

「人間時代も、ニケの人権活動家だったそうですよ。それが事故でニケになってアークのニケの名誉回復の為に歌ってるんだそうです」

 

「なるほどな。でも、テトラって中々な企業だろ?」

 

「まぁ、そうですね」

 

 サイド3もシェイドを通じて極々内密に接触しているがその事もこちらの存在もアークに知られている感じはしない。

 

「ですがプリティーのお陰でニケの擁護派なんて出来てるんですから結果的には良いのでは?」

 

「そうだな…じゃなくて!」

 

 なんとなくラクス(偽)みたいな人気感を感じながら当初の用事を思い出して話すのだった。

 それからと言うものプリティー人気は凄まじく発売されたグッズ等をアークの諜報員を使って取り寄せ始める者も現れるほどであった。

 

ーー

 

「全くもう…」

 

 そんな状況を嘆きつつも音楽プレイヤーでプリティーの音楽をかけ、聞き始めるソーン。

 

「…良いじゃない」

 

ーー

 

 後日、敗残兵軍参謀本部会議室。

 

「もう!プリティー、プリティー、ハマリ過ぎだろうが!いい加減にしろ!」

 

「……」

 

「……」

 

 プリティーの魅力は理解したものの定例幹部会では流石にやり過ぎと言う議題をソーンがあげる羽目になることになるが。

 

「お前だって空き部屋にプリティーの等身大パネル置いてただろうが!ナユタが居なくなった途端にやりやがってナユタに言うぞ」

 

「ナユタは関係ないだろう!」

 

 ヘクトールの反論と共に定例幹部会初の大声が飛び交うことになった。

 

「いやいや、ヘクトールもプリティーのライブ見ながら踊ってましたよね。あんな笑顔出来るんですね」

 

「カスペン!」

 

「カスペンだって情報部のつて使ってプリティーのCD初回限定版手に入れてたような」

 

「それは言わない約束でしょう!それにめっちゃ高かったんですよ」

 

「ミレイナも三徹明けにプリティーの銅像を広場に建てようなんて案を会議で押したそうじゃないか」

 

「ランスは地上演習中ぐらいプリティーの曲聞かないでもらえますか?任務中ですよね」

 

「レイチェルなんてAI音声認識アシスタントの声、合成したプリティーの声だったような。ナユタの後任がこれとは」

 

「皆さんに比べたらマシですよ。キリーさん、貴方この前、数日もどこ行ってたんですか?」

 

「え、良いだろ?プリティーの握手会行ってきたんだよ。抽選、当たっちゃって。これ、ツーショのチェキ」

 

「「「「ふざけんな!!!」」」」

 

 キリー以外の幹部が声を揃える。

 

「うらや…参謀総長が仕事ほっぽりだしてプリティーの握手会!?倍率800以上だったけど良く当たったな!」

 

「プリティーって小さいの?」

 

「う・る・さ・い。だ・ま・れ!」

 

 ソーンがどこから持ち出した対艦ライフルを抜き天井に向けて3発撃ち込むと全員が凍りつき、席に座る。

 この銃痕は後に敗残兵軍の怪談の一つ《3発の銃痕》の元凶になるものであった。

 

「やるなとは言ってない。節度をもて、お前たちは幹部なんだから。」

 

「「「はい…」」」

 

「それにプリティーはアークのニケの権利回復に熱心なんだろ。ニケの待遇が良くなるのは我々も望むことだ。それがグッズや音楽を買うことだろうと応援と言う形を示すのは悪くない」

 

 幹部たちはそれぞれ倒れた椅子を戻して座り直す。

 

「だがやることは多くある。サイド3の防衛拠点、防衛設備の開発と設置。ラプチャーの研究、クイーンの捜索。それぞれ本分を忘れないように。じゃあ、アークに行く順番決めるぞ」

 

 そうすると全員が立ち上がり体をほぐし始める。

 

 

「「「「最初はグー!じゃんけん!」」」」

 

ーー

 

 その後、じゃんけんで大敗北を喫したソーンは遊びに来ていたパイオニアに愚痴を漏らす。

 

「そんなに歌が好きならソーンがいつも歌っている歌でも歌ったら良いだろう」

 

「スノーホワイト、そう言うことではないぞ」

 

「そうですよ。あくまでソーンはその人の歌を」

 

「それいいかもな!」

 

「「え?」」

 

 数ヶ月後…。

 

「嵐の中で輝いて!その夢を!あきらめないで!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 自らをガノタアイドルとしてサイド3に売り出し、ガンダムソングをしばらくの間、排出し続けたソーンはちょっとした伝説になった。

 

「ソーンって歌の才能もあったんですね」

 

「今度私も歌ってみようかね~」

 

「私も歌は分からないがいいと思うが…」

 

「「「ソーン!ソーン!ソーン!」」」

 

「ナユタたちのテンションがおかしいな…」

 

 パイオニアのメンバーでソーンのライブに参加した時のナユタのテンションにスノーホワイトは若干退きながらも全員がペンライトを振って応援する。

 

「あの格好の時に分かってたであろう」

 

 おでこにはソーン命のハチマキにペンライトを振り回すナユタ《私を改造して》《全世界の技術的特異点》と意味不明なうちわを振るナユタ、全身にペンライトを装備し1人エレクトリカルパレードと化してる本物ナユタの3人がいつも通りの表情で叫ぶのを見て苦笑いする紅蓮であった。

 

 サイド3で音楽ブームがノリに乗っている頃、プリティーは様々なスキャンダルでかつての輝きに僅かながら陰りが生まれ始めていた。

 

ーー

 

「だいぶ味が上がったな」

 

「アーク民も粘土ばかり食べていたら気が滅入りますからね。ですが私も久しぶりにサイドの飯が恋しいです」

 

「カスペンに言っておくよ」

 

 アーク内、ロイヤルロードで現地局員と歩んでいたソーンは周囲を見る。

 認識チップをこれでもかと装飾した明らかに金持ちと言った感じの者たちが往来している。

 

「端から見れば成金だな」

 

「派手な認識チップのせいで殺人の標的にされるそうです。認識チップさえあればアークに出入り出来ますからね」

 

「アウターリムか。テトラがやけに肩入れしてるヤツだろ」

 

「社長はバットドリームに入り浸りだそうで」

 

 シャンブロが近づかないようにするマーカーを欲しがったりしたのはそう言うことか。

 

「プリティーも可哀想に。あんなヤツの側に居たら花も萎れるってもんだ」

 

「先日もニケフォビアの襲撃があったようです。プリティーは長期休暇に」

 

「せっかくプリティーを一目見ようと来たのになぁ」

 

 ソーンの服装はいたってシンプル、情報局が用意した服にサングラスだけ、アークのほぼ全てをエニックの統制下に置かれたがサイド3側としてはさほど支障は出なかった。

 なぜならエニックの価値基準はアークの存続させることのみ、危害さえ加えなければ向こうから仕掛けてくることはないし、中央政府にも知られることはない。

 

「アークは敵地同然です。ニケの希望である貴方を失うような事があれば我々は暗闇に落ちることになります。アークの星がプリティーなのであれば貴方はニケの太陽、太陽を失えば星も月も輝けなくなる」

 

「俺はそんな大層なものじゃないよ…」

 

「え?」

 

「いや、なんでもない」

 

「え…あっ。ソーン様?」

 

 通りがかった公園の前で罵倒され唾を吐きかけられるニケ、その間にソーンが割って入ると市民を無視してニケを立たせる。

 

「気に病むな。英雄は常に理不尽な目に合うものさ」

 

「は、はい!」

 

「なんだてめぇ!」

 

「失せな」

 

 ニケを罵倒していた市民はサングラス越しのソーンの目に耐えられず一目散に逃げ出す。

 

「困ります。あまり目立つことは…」

 

「分かってる。全員を助けようほど、思い上がってないさ」 

 

 ニケの体の土埃をはらってやるとニケは深々とお辞儀をして二人を見送る。

 

「あ、あの!」

 

 ソーンと現地局員が少し歩を進めるとサングラスをした女性が声をうわずらせながら話しかけてくる。

 今度はなんだと顔をしかめる現地局員と笑みを浮かべながら振り返るソーンだったがその声の主を見て2人は少なからず動揺した。

 

「大空の女神さまですよね!」

 

 声の主は話題のプリティー本人であったからだ。

 

 

 

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