ガノタがニケになっちゃった   作:砂岩改(やや復活)

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第二次地上奪還作戦 中編

 

 第二次地上奪還作戦開始から一年、予想に反しアークの部隊たちは快進撃を続け、莫大な土地を占領地として占拠していた。

 

「今日もこれだけ?ふざけんなよ、アークはなに考えてるんだ!」

 

 だが最前線に配置されていたニケたちは昨今の補給事情に不満を漏さない者はいない。常にラプチャーと接触を強いられる最前線部隊の食料は1日にパーフェクトバー1本という状況であったからだ。

 

「無駄弾使うなよ。もったいない」

 

 食料よりはかなりマシだが弾薬などの戦闘に必要な物資もジリ貧状態であり、これ以上の進撃は不可能だとニケたちは感じていた。

 

「どういうことだ。ニケは物理的に飢えないが、精神的に飢える、思考転換のリスクを知らないわけではないだろう?」

 

 人間であるヨハンも流石に一時後退し中間の物資集積所で物資管理していた責任者に詰め寄っていた。

 

「我々も要請しているんです!ニケの武器弾薬はたくさん送ってくるのに食料だけが届かないんです!」

 

「指揮官、確認したけど資源回収がヤバい。想定の1割ぐらいしか回収出来ていないらしい」

 

 シフタと共にやってきたヨハンの部隊員、フレナは真っ赤な髪を靡かせながら頭をかく。

 

「回収班は寝ているのか?これほどの範囲を影響下に置いておいて想定の1割ほどだと?」

 

「物資回収を期待されてた施設のほとんどが徹底的に破壊されてるんだ。無茶をいうな!」

 

「なぁ、シフタ。流石におかしいよな?」

 

「まさか…ラプチャーが…いえ、それともニケトピア…」

 

ーー

 

 同時期、アークからそこそこの距離にある元V.T.C.研究所にサイド3の小規模戦力が集まっていた。

 

「ナユタ!」

 

「ソーン!」

 

 数年振りに再開した二人はお互い抱き合うがソーンが一瞬で顔をしかめる。

 

「服、くっさ…」

 

「ぶっとばしますよ」

 

「ぶっとばしてから言うなよぉ」

 

 脳天に拳を打ち込まれたソーンが半泣きで頭を撫でる。

 

「相変わらずですね。お二人とも」

 

 そんな二人を見て苦笑いするのはアクエリアス装備のカスペンであった。

 その後ろには10人ほどの親衛隊諜報部所属のモビルスーツ部隊が控えている。

 全機が袖と胸にエンブレービングを施されたRFケンプファー装備の特殊部隊である。

 

「じゃあ、一つずつ潰していこうか」

 

ーー

 

「来たか」

 

 ラサ基地司令部、ヘクトールが首を長くして待っていた相手は参謀本部総長のキリーであった。

 

「見たか?」

 

「見たから来た。直属のイェーガー隊も待機してる。お前の親衛隊も連れて来た」

 

「そこまでか?」

 

「盲点だったな。ラプチャーの中にもヘレティックが居ると言うのを失念していた」

 

 キリーは部屋に入るなり、司令部のメインモニターに持ってきたデータを映す。

 

「偵察班はアークの前衛部隊のほとんどが飢えていると連絡が入っている。これは原因不明だが現在アークのニケ部隊の士気が低い状態だ」

 

 モニターに映し出されたのはアーク、サイド3、確認されているラプチャーの分布図と各工業施設、地域の資源回収率を表したものだ。

 

「イェーガー隊に確認させたがアークの支配占領域外の資源もほとんどない。ここら一帯はアークが我々の存在を悟られないように回収禁止地域だから、我々が持っていった訳ではない」

 

「まて、だとしたらラプチャーはアークに対して焦土作戦を仕掛けていると言うわけか?」

 

「ラプチャーが?」

 

 ランスの言葉にヘクトールも首をかしげる。

 

「普通ならあり得ない。だが指揮しているのがヘレティックなら?」

 

「でもこれ程大規模なラプチャーを運用できるとは限らないだろ?」

 

「大規模な必要はない。施設の焦土化を実行する部隊と後1つ部隊があれば他は彷徨いているラプチャーを囮にすればいい」

 

「もう1つ?」

 

「アークの補給部隊を叩く部隊」

 

 キリーの言葉にランスは息苦しさを感じ、持っていったコーヒーを飲む。

 アークの支配占領域と言っても実際は穴だらけ、この作戦を黒字にするためにある筈もない資源を求めて補給線は延びるばかり。

 

「ソーンに来てもらった方がいいんじゃないか?」

 

「ソーンは例のジェミニ作戦をナユタとカスペンで遂行中だ。それになソーンばかり頼っていたらサイド3の意味がないだろう」

 

「「……」」

 

「なんだよ?」

 

 ヘクトールの言葉にランスとキリーは驚いた様子を見せる。

 

「いや、お前が言うとはな。その通りだ、だが報告は欠かさずな」

 

「そうだな、でもなんで飯が前線に届いてないんだ?」

 

「…分からないが。私の予想が当たれば…アークは本当に救いのない所だということだ」

 

ーー

 

「やはりか…」

 

 アークの司令部、参謀のアンダーソンはここ数日間、占領している部屋で資料に埋もれながら呟く。

 

「やはり補給部隊が中抜きしているな。これは」

 

 今回前線に配給されているのはカロリーと味を両立した試作のパーフェクトバー。高値で取引され、ブラックマーケットを辿れば首謀者が分かるだろうがこんな状況がまかり通っている状態に頭が痛くなる。

 

「ゲメント副司令の配慮が裏目に出たな」

 

 高カロリーのパーフェクトバーなら普通のパーフェクトバーより少ない数で前線の食を補えると考えての投入であったがまさかそれを狙って補給部隊の誰かが中抜きするなんて。

 

「ゲメント副司令に連絡だ」

 

ーー

 

「そうか、前線部隊から食料の要求が過剰だと聞いていたが。そんな事態になっているとはな」

 

 アークのすぐ近く、ヘビーフォーク級で指揮を取っていたゲメントは二人の報告を聞いて考える。

 

「ここは一度、占領域を縮小し部隊を建て直すべきかと」

 

「それは許されないだろう」

 

 ゲメントの言葉にアンダーソンもやはりと思う。

 第二次地上奪還作戦の快進撃はアーク中に伝えられている。そんな最中に身内の不祥事で奪還した地上を放棄するなど世論と政治家どもが許すはずがない。

 

「進言はしておけ、私の名前を使ってな」

 

「了解です」

 

「とりあえず、ヘビーフォークに載せるだけの食料を中継補給基地まで向かう。それが一番だろう、私が直接指揮するのだ、誰であろうと余計なことはできんだろう」

 

ーー

 

「世間じゃ、第二次地上奪還なんて時に俺たちはこんなところでな」

 

 某研究所の待機室では研究員たちが愚痴を溢しながら椅子に座り込んでいた。

 

「地上に落ちてた、データベースにもないニケをバラしたと思えばその研究ばかり。昔、大失敗してM.M.R.から追い出されて気狂いになったと思ってたけど」

 

「ダメだぁ!」

 

 主任研究室からガッシャーンと言う音が聞こえるが誰も特に反応しない。もはや恒例行事と化している音を聴く研究員たち。

 

「この前、片方と目があってさ。めっちゃ怖かった、手足あったら殺されてたかも」

 

「ニケが人間を殺せるかよ。でも片方だけ、たまに目覚ますから気持ち悪いんだよなぁ」

 

「でも、確かに凄い技術だよ。あのニケ、何でもいける射出装置とか無数の調合技術とか」

 

「執心するのは分かるけどさ。勘弁して欲しいよな、ナカモト博士はさ…」

 

 

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