ガノタがニケになっちゃった   作:砂岩改(やや復活)

53 / 60
アークの星 後編

 

 突然のソーン登場は元々フリージアとの諍い?により心身ともにボロボロであったオスワルドにはとんでもないショックであったのだが当のソーンは何故かフリージアと仲良く話しているしで混乱はさらに加速する。

 

「まずはここに来るまでの経緯を教えて頂けませんか?」

 

ーー

 

「なるほど...と言って良いのか分かりませんが理解しました」

 

 フリージアと公園で出会ったのは分かったがそもそも何故、ソーンがアークに居るのか聞きたくなるがゴッデスの中でも様々な面で常識外れな彼女にそれを聞くのは野暮であろう。

 

「まぁ、コーヒーでも飲め。俺のお気に入りだ」

 

 話の途中からどこから取り出したコーヒーミルでコーヒー豆を潰したと思えばフリージアから受け取ったお湯でコーヒーを淹れてくる。呆然と受けとる2人は今まで飲んできたコーヒーとは比べ物にならない深い薫りに驚く。

 

「いい匂いだろう。木から選んで長年の試行錯誤の末に出来た嗜好のブレンドコーヒーだ。カフェインマシマシで目もバキバキ!…フリージアにもあげよう」

 

「ありがとうございます!」

 

「ニケの国、噂には聞いていましたがまさか貴方が建国されていたとは驚きです。貴方は仲間意識が非常に強い一方で人間や他のニケたちに対する関心が極めて薄い印象でしたので」

 

「よく分かってるな」

 

 コーヒーの話で彼女には安定した環境と設備があることが伺える。噂のニケの国の話と掛け合わせた、かなり強引な推理だったが彼女は否定することはなかった。 

 ならば建国されたのはソーンがアークを見捨てた第一次地上奪還作戦の頃。私人としてのオスワルドはいまだに動揺しているが元職業人としての彼は冷静に彼女を分析していた。

 

「ここへはどのような用で?」

 

「言ったろ。フリージアに招待されたから来た、それだけだ。お前を殺しに来たとでも?」

 

《ひとつ約束してさしあげましょう。あなたを、それが無理なら、あなたの家族、子孫を。この世で最も苦しい方法で殺してあげます。》

 

「…」

 

 ただのコーヒー、一杯だけの時間がオスワルドの家でソーンが過ごした時間だった。

 

「人にはそれぞれの立場、主義主張があるものさ。ゴッデスを脅威と思う中央政府の意思も分からんでもない」

 

「でもゴッデスは人類のために尽くしてきたのになんで脅威なんて思うんですか?」

 

「人類が争いを止められない理由だ。対話をしなかったからだ」

 

「対話…」

 

 驚くフリージアと静かに頷くオスワルド。

 

「中央政府は怖かったんだよ。あれだけの過酷な戦場で勝利し続けてきた俺達になにもあげられないと。あげられるのはアーク内での地位や権力ぐらいだった。だから恐れた、そんなもの求めてなかったのにな」

 

 人間は恐れるものにたいして三つのいずれかの行動を取る。《懐柔する》《無視する》《排除する》だから排除に出たのだ。

 

「だから俺個人としては感謝してるのさ」

 

 オスワルドの自責の念は当の本人たちから許されたとしても消えることはないだろう。アークガーディアンの際に人類に最期まで尽くしてくれたゴッデスを置き去りにしたと言う変えられない過去が彼を苦しめ続ける。

 

「いえ…私は」

 

「ありがとうな」

 

 地上のゴッデスたちはどうだったかとかそう言った話はしなかった。ソーンがオスワルドの様子を見て抑えたと言うのもあったが彼にとってこの一杯のコーヒーは新たな心の支えとなったのだった。

 

ーー

 

「ゴッデスは私にとってなにより輝いていた星です。今でも変わりません。でも人の妬みや嫉妬で消えていくのはとても辛いです」

 

「そう思ってくれるだけで嬉しいよ」

 

 流石に体がボロボロだったオスワルドを無理やり寝かせたフリージアは会った公園まで送ると言って着いてきた。

 久しぶりに眠りについた彼の顔はほんの少しだけホッとしたようなそんな印象を受けた。

 

「永遠のものなんて存在しないんですかね」

 

「存在しないだろうな。何事も移ろい行くものだ。だが、泥だらけのゴミクズになろうとも戦い続ける者の輝きはいかなる光に負けない。生きることはとても辛く、苦しい。だが死んだら駄目だ…」

 

 強く、強く拳を握りしめるソーンをフリージアは見つめる。

 

「光だけ見せて去るなんて許さない」

 

 リリーバイス

 

 レッドフード

 

 指揮官

 

 あれだけ俺を焼いておいて去るなんて許さない。

 

「時を変え、場所を変えても生き続けることがなにより大切なんだ」

 

「…ソーンさん!」

 

「ん?」

 

ーーーー

 

しばらくしてアークリアンホールにてプリティーのコンサートが開催されることとなった。

 そして歴史に残る事件《プリティー暗殺事件》が発生。

 プリティーは凶弾に倒れ、文字通り永遠の星になった。

 

 プリティー暗殺の大混乱に包まれている最中、アークリアンホールから出てきた救急車が市内を走る。

 

「フリージア…」

 

 頭を撃ち抜かれたフリージアに助かる見込みなどないが一応、救急車に運ばれた彼女に付き添うようにオスワルドも乗り込んでいた。

 

「いや~最初はビビったけどなんとかなったな」

 

 救急隊員が笑いながらヘルメットを取るとソーンが現れる。

 

「ナユタの持ってきた技術が役に立ちましたね」

 

 運転席から振り返ったカスペンも笑みを浮かべながら振り返る。

 

「なにを…」

 

 状況に困惑するオスワルドを他所に死んだと思われていたフリージアが頭を押さえながらゆっくりと上体を起こす。

 

「痛ったかったぁ」

 

「フリージア!?」

 

「テトラの目を盗んで特殊な頭部にしたのは骨が折れた」

 

 フリージアの特殊頭部は脳の周りを全てPS装甲に置き換えた超高級仕様。

 

「ウルフスベインでも抜けないぐらいカチカチにして、血糊やら何やら特殊な加工ばっかりで間に合わないかと思ったわ」

 

「本当にありがとうございっ!」

 

 血糊が頭からドバトバ出ながら笑顔で話すフリージアをオスワルドは強く抱き締めた。

 

「…お父さん」

 

「良かった…本当に良かった」

 

「ソーンさん…」

 

「まぁ、仕方ないだろう」

 

ーー

 

「フリージアの体はこのままリペアセンターに行く。どうだ?」

 

「問題ありません」

 

 事前に用意していた新しいボディに換装したフリージアは体を確認するが特に問題ないようだ。

 

「説明した通り、フリージアはサイド3に亡命する」

 

ーーー

ーー

 

 2人と出会った日、分かれる前にフリージアはソーンに自身の思いを告げた。永遠のアイドル《プリティー》の最大の活用方法、そしてそれがニケ人権運動最大の起爆剤になり得ることを。

 

「確かにその爆発力はとんでもないだろうな」

 

「はい…でも迷ってます。私が死ぬことではなく…それが未来のために本当に良いのか」

 

「そうだなフリージア、君が死ぬ必要はない。死ぬのはプリティーだけだ」

 

ーー

 

 それからは完全に内密に事を進めてきた。

 フリージア以外のアーク市民は誰1人知らない計画。

 

「私は貴方が生きていればそれで良い。たとえ会えなくても、フリージアが幸せに生きているのであれば不満はありません。ソーン、フリージアを頼みます」

 

「仲間を助けてくれた恩を返すだけさ。10分後にエレベーターに乗る。今生の別れとは思いたくないが後悔のないようにな」

 

 その後の2人の会話は流石に聞いていないが2人がしっかりと抱擁しあって居るのを見てホッコリする。

 フリージアはフリージアとしてサイド3に亡命させる。プリティーとして大々的に亡命させるとサイド3がパニックになるレベルの有名人だからだ。

 

「親子って良いもんですね…」

 

「カスペンは?」

 

「人間時代はなにも覚えてません。何となくですがロクでもない人生だったと感じてます」

 

「フリージアはツいてる。ニケで親孝行が出来るんだからな」

 

「ちょっと違う気が…」

 

「お待たせしました!」

 

 カスペンと話しているとフリージアがこっちに駆け寄ってくる。

 

「もう良いのか?」

 

「はい」

 

「じゃあ、行くか」

 

 遠くで立ち、その場から動かないオスワルドを見つめながらフリージアはエレベーターに乗り込む。

 扉が閉まり始める時。オスワルドは姿勢を正し、美しい敬礼を向ける。

 ソーンも敬礼を返すとエレベーターの扉が閉まるのだった。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。