「サングラスと帽子が必要か?」
「必要かもしれませんね」
ソーンの研究所で体のメンテナンスを受けていたドロシーは顔につけられたホットアイマスクの下で困り顔を浮かべる。
「当時俺たちは最前線にいたからあまり実感はなかったがゴッデス信仰は凄まじいものだったらしい」
「そうなのですか」
「終末世界に現れた神の化身言われてたほどにな。絶対権力者となったV.T.C.の熱烈な信者でさえゴッデスに傾倒してたレベルのな」
慣れた手付きでドロシーの各部を丁寧に整備する。何十年も使い続けてきただけあって劣化は見られるが他のメンバーとは違い軽微だ。ドロシーの戦闘スタイルもあるだろうがやはり、他のメンバーと比べてかなり頑強な設計だ。
「どこでそんな話を」
「閉じ込められてたときに色々と調べててな。人の口に戸は立てられぬってな」
「アークで我々はなんと言われていましたか?」
「アークガーディアンの際にゴッデス部隊は迫り来るラプチャーの群れを蹴散らし扉が閉まる最期の瞬間まで勇敢に戦い続け全滅したのが通説らしい。公式発表はないからな」
「そうですか…」
それ以降、メンテナンス中にドロシーが話すことはなかった。なにかをずっと考えているようでソーンもなにも言わなかった。
ーー
「しばらくいるだろ?」
「まぁ、そうですね。セシルとか言う女性がサイド3への亡命を希望してると聞きまして、彼女に用があるのです。その情報さえ戴けるのなら今のところ、外で動き回る必要はありません」
「分かった。最優先で回すように手配しておく」
アーク内でセシルの亡命の話は前向きに検討中であったがアークの監視網を掻い潜るためにはまだ準備が必要だ。
セシルの離反をアークの損失と判断されればエニックと対峙することになる。流石にアーク内でエニックと戦えるほどアーク内での影響力は持っていない。
「ところで相談なんだが」
「はい」
「来る時に飲んだマリーゴールドの花茶を用意してくれた店から嘆願が届いていてな。ドロシーのオリジナルブレンドをドロシーって名前で発売したいとのことでな」
「ほう…悪くない話ですね」
ドロ茶もといドロシーオリジナルブレンドの話に彼女は澄まし顔をしながらも興味津々と言った感じで耳を傾ける。
「ちなみにどれ程の種類のものが?」
「店主に聞いてみないと分からんが。無許可あわせてかなりの数」
「無許可とは?」
「なんか産地の気候風土によって、品質や香味にそれぞれの個性があるとか言って一部のやつらが地上でも栽培してるらしくてな」
「嗜好品への執着が凄いですね…もう少し管理すべきでは?」
「まぁ…厳しくしすぎてもな。線引きはしっかりしてるから」
「まぁ…良いでしょう。店の名前を教えてください。出向きますので」
「案内するが?」
「貴方も忙しいでしょう。それに、考えたい事もあります」
「分かった」
店の名前と住所を書いた紙を渡し、道を歩いているとマントラに乗ったナユタが現れる。
「参謀本部に向かうのでしょう」
「助かる」
ーー
参謀本部
「現在のアーク部隊の状況ですが芳しくありません」
ラプチャー大進行の際に敗残兵軍による遅滞戦術のお陰でアークのニケたちの被害は殆どなく撤退できたものの総指揮を取っていた副司令官の戦死により上層部は混乱。
責任を取りたくない責任者どもの混乱により支配地域を全てを喪失した。
直前までアークの大進撃を大々的に報道していた上層部も全部無くなりましたなんて言えるはずもなく部隊を必死に送り込んで奪還を狙っているが暖簾に腕押し状態であった。
「ヘレティックは?」
「ヘレティック、通称パリスの行方は分かっておりません。プライドと飛ばれていたラプチャーも現在戦闘データを元に性能をあぶり出しています」
「ラサのキリーは何と?」
「現在は脳だけ置き去りにされたニケたちを回収、ラサ基地で保管していますがブレインシェルターの数が圧倒的に足りないとの事でア・バオア・クー、ソロモン、アクシズ、サイド3からもありったけをかき集め、追加生産も行っています」
ア・バオア・クー、ソロモン、アクシズはラサ基地を参考にサイド3の四方に建設された前線基地である。
もしもサイド3がラプチャーによる侵攻を受けたときに防波堤となるように建設されている施設であり、サイド3程ではないが立派なアーコロジーである。
だがまだ未完成状態であり、よくて稼働率二割程と言う状態で最低限の設備と人員がいるだけであるがその最低限の物資すらラサ基地に集めねばならぬほど逼迫している状態であった。
「これ以上、無謀な突撃が繰り返されれば我が国への亡命ニケ達も出てくるでしょう」
「亡命者の推定は?」
「あくまで予測値ですが第一次の数倍に登るかと」
ソーンは黙り込み、同じ部屋にいた都市開発局長のミレイナを見る。
「農業は問題ありませんが畜産が逼迫するでしょう。一気に数を増やせません。土地はまだまだありますので新たな居住区の建設を今から始めれば」
ミレイナの言葉にカスペンが口を挟む。
「親衛隊諜報部としてはこの混乱に乗じてのスパイが気がかりです。中央エリアから離れた場所に仮居住区を建てて欲しい。理想なのはラサ等の前線基地で調査を行いたいですが」
「推定値通りに来ればサイド3の人口を越える亡命者で溢れますよ。現実的じゃありません」
「ニケ、多すぎだろ…」
参謀の一人が呟くのも無理はない。
それほどまでにアークのニケの数が多すぎるのだ。
「やはり、アウターリム出身がほとんどでしょうね」
「だろうな」
アークの出生率は右肩上がりで留まるところを知らないがそれはアウターリムでも同じこと。
むしろアウターリムなら出生率も高く死亡率も高い、最低の言い方をすればニケの畑と言える環境だ。
「兵士は畑から取れるってか。どこぞの大昔の国じゃあるましい」
ナユタの言葉にソーンは思わず頭を抱える。
ーー
そんなサイド3側の懸念は既に現実になりつつあった。
「指揮官も死んだ。どうすれば良いんだ」
「アークに戻るしかないだろ」
「戻ってまたこの地獄に戻れってか、生存率50%だぞ」
後に生存率8%まで落ちる事になるが現時点でもアークのニケ達にとって二人に一人が死ぬ現状に不満を持たぬ者は居なかった。
「ニケの国に行こう…」
「あんなのおとぎ話だろ。どこにあるか分からないのに」
「じゃあ、死ぬまで再出撃を繰り返すの?」
「……」
「生存率、もっと下がるだろうね。ここにいるメンバー、一人も生き残れないよ」
「………」
思い出すのはアークのニケに対する処遇。
プリティーのお陰でかなり回復したがそれでも町を歩けば罵詈雑言を浴びせられ、ゴミを投げられ、サンドバッグにされることには変わりない。
「ニケの国は、殴られたりしないんだろうか…」
「ニケの国だよ。無いって」
「……前進しよう。運が良ければ誰か1人、助かるかも知れない」
最前線に取り残された部隊は弾倉を確認するとお互いに顔を会わせ頷きあう。
「行こう…」
プリティー関連の話は第二次の前だったのを思い出して崩れ落ちたこの頃、時系列戻して書きたい…。
アンケートとります。
おそらく書くとしても二話になると思います。
プリティー関連の話を追加して良いか
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やって欲しい
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別にいらない
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時系列遡るから嫌だ
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ハッピーエンドを望む