「なるほど、事情は分かりました」
クラウン王国城の広い食堂で紅茶を飲んでいるのは城の主であるクラウンと側に控えるチャイムとそれと対峙するように座るソーンとドロシー。
最初はチャイムが警戒度MAXだったため一瞬、一触即発状態に陥ったがクラウンの言葉とソーンの返答により矛は納められた。
「つまり貴方も王としての責務を果たすためにハイパーフードを求めているのですね」
「そうだ、全ては求めていない。ただ研究開発のために数房か分けて欲しい」
ハイパーフードは人類が地上へと帰還した際に必要になる代物。その守護のためにクラウンとチャイムはこの城を根拠地とし既に何十年も護ってきた。
「チャイム」
「スノーホワイトの言っていた通りです。お嬢さま、あの者は間違いなくソーンでございます」
「スノーホワイトたちも来たことが?」
「彼女たちは我が国の民ですわ。貴方方のことはよく聞いております。当然、貴方のことも」
クラウンはドロシーに視線を向けると彼女は少しだけ気まずそうに紅茶を嗜む。
「疑問があります。」
「なにか?」
「聞いている限り、貴方の国は豊かな物資を抱えており食料問題も我が国やアークと比べても軽快な問題でしょう」
「軽微でございます。お嬢さま」
「臣下を試すのは王の勤めですわ、オホホ…」
「確かに我々の問題は備蓄している物資を消費するしか出来ないアークと比べては贅沢な悩みだろう。だが我々は国家を持つ軍隊…地上奪還のために作られた存在だ」
通常は国家と言う社会システムを護るために軍隊があるがサイド3は地上奪還と言う長期目標を叶えるため、軍隊を健全に運営するために国と言うシステムを利用してるに過ぎない。
「サイド3の民は皆、常に死と隣り合わせ、サイド3に所属する全ての者が明日を生き抜くために全力を尽くしてる。そんな彼女たちに報いるためにはいきる希望が必要だ。暖かい家、清潔な服、豊富な食料、豊かな生活こそ生きる希望になる。生への執着こそ何より必要だと俺は思う」
「そのためにハイパーフードが必要なのですね」
「あぁ」
「分かりました」
「ありがとう、では王同士の話し合いをしようか」
その後、ソーンとドロシーはクラウン王国に一週間ほど滞在。
その間に臨時の外務大臣を兼任したミレイナもクラウン王国に入国、クラウン王国とサイド3はお互いに公的な国として保証しあい。
クラウン王国からはハイパーフードの提供及び、新型ラプチャー、未確認ニケ等のあらゆる地上情報の提供
サイド3からは定期的な物資提供とボディの定期整備
を約束し公文書として記された通称《王冠条約》が締結された。
これによりサイド3の食料問題の解決、新しい角度での情報収集方法を獲得。クラウンたちも安定した生活が送れるようになった。
アークが絶望的な第二次地上奪還作戦を実施している間にサイド3は着実に地盤を強固にしていくのだった。
「では王同士、これからもよろしくお願いいたしますわ」
「あぁ、こちらこそ。よろしく頼む」
クラウンとソーンはしっかりと握手を交わし一旦は解散となるのだった。
ーー
「ふぁぁぁ~」
「珍しいですね。貴方があくびなんて」
ミレイナたちはハイパーフードのために先に戻り、その後ろを追いかけるように帰っていた2人は和やかな雰囲気であった。
「最近少し疲れを感じるようになってな」
「ニケであれ、疲れは感じます。昔の貴方がおかしかったのでは?」
「昔は焼き肉でカルビしか食べなかったのに急にセセリやらタンを食べ始める感じの老いを感じる」
「具体的ですわね」
「ドロシーはタンばっかり食べてたもんな」
戦火の最中、勝利の翼号の甲板でバーベキューをしたのを思い出す。
翼号のエンジンの整備中で動けない時にソーンが廃材で作った巨大鉄板を囲んで翼号に所属する全員で食べた。
スノーホワイトはカルビしか食べない
脂身のばかり食べてるスノーホワイトに少しひいてる紅蓮
ラプンツェルはフランクフルトで悶えてる
ドロシーは匂いが服に移るって艦内で食べてて
レッドフードとソーンは肉を肴に酒を飲んで艦長を潰して
指揮官とリリーバイスは2人でゆっくり食べてた
「懐かしいですね。昨日の事ようです」
「あぁ…最高だったな」
流石にソーンが眠そうだったのでギャルセゾンで睡眠を取る2人の表情は晴れやかであり、ドロシーは久しぶりに心地よい睡眠を取るのだった。
ーー
アーク副司令官室
「一部の部隊が対象と合流、本拠地に行けそうとのことです。以降は無線封鎖済み」
「結構ですね。何かしらの情報を得られれば幸いなのですが」
おおむね、計画の順調さに満足したクラウディアス。
「一枚岩の組織など存在しません。後は待つのみです」
「そう簡単にいきますかね?」
「上手くいなくても結構、相手に不信の目を開かせられれば動きやすくなるのは明白」
計画の種を巻いたクラウディアスの関心は既に他に移っており、無駄に装飾された招待状を見る。
「第二次は失敗します。結果を見届けた後にV.T.Cの総会が久々に開かれますからね。教皇陛下は来られませんが参加すればもう少しこの現状も打破できるでしょう」
「今となってはV.T.Cは嫌われものですからね。何もないことを祈ります」
「貴方も護衛としてくるのですよ」
「はいはい」
スカルクの言葉にクラウディアスは釘を刺す。
「制服を着るのも久しぶりですね」
ーー
出発時刻少し前に目を覚ましたドロシーはギャルセゾンテントの外に出るとふと疑問を抱いた。
いつも先に起きて朝食を作っているソーンがいなくテントの幕も開いていなかった。
「まぁ、そういうこともあるでしょう」
いつもと違う風景に若干の胸騒ぎを得るがドロシーはいつもの礼に代わりに取って置きの紅茶と朝食を用意する。
その間もソーンが起きてくることはなく、かすかに寝息が聞こえてくるだけだった。
「ソーン、朝食が冷めてしまいますよ」
出発時刻ギリギリまで待ったが起きてこない彼女を流石に起こすためにテントに入るドロシー。
「ソーン?」
「すぅ…すぅ……」
軽く揺さぶるが起きる気配がない。
「ソーン!」
ドロシーの大声と強めのビンタを加えるが彼女は安らかな寝息をたてて眠るのみ。
「どうしたのですかソーン!緊急連絡を!」
ドロシーは慌てて渡されていた端末を探しだし、緊急連絡先へと連絡を入れるのだった。
ーー
「好きな音楽は?」
「カントリーミュージック!」
「一番好きなものは?」
「カントリーミュージック!」
「やってみたいことは?」
「カントリーミュージック!」
「繰り返しね、処分する」
「質問の仕方が悪いんだよ!」
最前線の派遣任務を行っていたランスはどこか聞き覚えのある声が聞こえ周囲を見渡す。
「どうしましたか隊長?」
「いや、なんか聞き覚えのある声が…」
「ランス隊長、サイド3本国より緊急連絡です!」
「なんだ?」