新チャプター早く読みたい欲と怖くて見たくない感情があって中々に難しい。
あとマリアンイベントはとりあえずひっくり返ったよね。
雪山
サイド3のメイン通りでは所狭しと屋台が並び、今集まれる全てのサイド3の住民が祭りを楽しんでいた。
それぞれの特技を見せ合い、秘蔵の酒を浴びるほど飲む。
楽器を持つものは音楽をかき鳴らし、遠くのステージではフリージアがステージを披露し熱狂に包まれていた。
それは居住エリアだけでなく、軍事エリアの当番の者も同じで酒を片手に差し入れられた料理を楽しみながら笑うほどであった。
「はぁ…疲れたわ…」
文字通りクタクタと言わんばかりのアニスが食事を楽しんでいたカウンターズの元へと戻ってきた。何時間もフリージアのコンサートで叫びまくっていた喉を潤すために炭酸水を流し込む。
「普段のぐーたらアニスとは思えないですね」
「当たり前でしょ!まさかプリティーのコンサートに来られるなんて考えてもなかったわ」
「えぇ、とても楽しかったわ」
ラピも昔の親友たちを思い浮かべながらフリージアのコンサートを思い出す。
《凄い祭りだな》
「はい、やはりアークとは比べ物にならない豊かさです。備蓄も全て解放しているようで」
「この火力チャーハンなんてレンゲが止まりません!」
「やっぱりこのドーナツ最高よ。アークじゃ絶対食べれないわ」
全員が心から楽しんでいるのが分かる。
だがその中には涙を流しながら笑うニケたちも少なくなかった。
「その…本当にいいの私たち」
「アニス」
「アニスの気持ちも分かります」
《それは…》
「指揮官を困らせないで、ソーンも言ってたでしょ」
「辛気臭いな、ニュータイプ」
少しだけ空気が重くなるのを感じた瞬間、指揮官の頭に腕を乗せて現れたのはソーンだった。
「英雄は時代を拓き、その轍を皆が進むんだ。この万を超える轍の先を走るのはお前たちだ。お前たちの恩人がそうしたように」
ソーンはカウンターズと固く握手をして一歩離れる。
「お前のことをなんでニュータイプって呼んでるか教えてたっけ?」
《いや》
「そうか」
「って教えてくれる流れだったでしょうよ」
アニスのツッコミに笑いながらソーンは人混みに呑まれていく。
「また今度な」
ーーーーー
そんなソーンと出会ったのは北部の雪原地帯であった。
「これはこれは、熱い光景だこと」
ヘレティックとなったマリアンと交戦し遭難したカウンターズは戦場を共にしたピルグリム《スノーホワイト》に外骨格を託した。
カウンターズ無事にアンリミテッド小隊と合流、命の危機を脱したのだった。
「こっちを持って」
「せーの!」
ルドミラが呼んでくれた救助部隊が到着し、動けなくなっていたラピたちを輸送車に乗せる
救助作業で往来するバンカーを横目にカウンターズの指揮官は遥か先の雪山の上に何かが立っているのが見えた。
《ロボット?》
マリアンを纏っていた機体に比べ小さいが真っ白な雪の中、真っ赤な機体がこちらをまっすぐ見つめているように立っていた。
「指揮官?」
横に運ばれたラピが不思議そうに声をかける。
指揮官は一瞬、ラピに視線を移すもそのロボットがいた方向を指差す。
「なにも見えませんが」
そこにはなにもおらず、ただ真っ白な雪山が視界に広がるだけだった。
「お疲れなのでしょう。もう安心です、お休みください」
ラピに促され毛布を深く被る指揮官だったが眠るまで立っていたロボットのことが頭に残り続ける。
カウンターズからしてみればほんの一瞬のまるで極まった疲労が見せた幻覚のような出会いであった。
ーー
指揮官が指差した雪山の反対側、そこには担がれたスノーホワイトが不満な顔をして揺られていた。
「この体勢は揺れるから変えて欲しい」
「お前、クソ重いからこの運び方が一番なわけよ」
ソーンはリハイゼを身に纏い、スノーホワイトの武装ごと運んでいるがその総重量は4トンを超える並みのドダイ等では運搬できない。
問題なく運べるのは、ミノフスキードライブを利用した飛行能力を得たソーンのみだろう。
「初めて救難信号を使ったと思えば新種のヘレティックとはな」
「ここ数十年、新種のヘレティックは発見されなかった。何かあるはずだ」
「だろうな」
「それと修理を終えたら最新のパスが欲しい」
「アークに行くのか?」
アークに入るためのエレベーターを認証するパス情報は常に更新されている。サイド3シンパのニケたちが絶えず情報をくれるからだ。
だがそれをスノーホワイトから欲しいと言われるのは以外であった。
「借りは返さなければならない。命を救ってもらったのならアイツらが命を繋ぐためのモノをやらねばならない」
「アンチェインドを?」
「あぁ」
「それほどか…なら会っておけば良かったな」
遥か上空で待機していた勝利の光号に着艦したソーンはスノーホワイトを降ろしながら眼下に広がる雲海を見つめる。
「お前がそれほどまでに肩入れする人間は珍しいな」
「そうか?」
「そうだよ。なら、俺もなにか礼をしなきゃならんな」
ソーンがカウンターズに対して明確な興味を示したのも同じタイミングであったが正式に相対するにはかなりの時間を要することになる。
ーー
「ずいぶんと静かだな」
「今日は教練日ですから」
「なるほど」
ソーンの秘書として働いているフリージアからココアを貰うとゴクゴクと飲むスノーホワイト。
サイド3所属のニケは一部を除いて、週1度の軍事教練と年に1度の実戦訓練が義務付けられている。
そして今日は年に1度の実践訓練、ほとんどの人員が地上で敗残兵軍の護衛のもと訓練を行う。
「ニヒリスターも出てこなくなったのでかなり安全になりました」
「安全な実戦など存在しないがな」
実戦訓練を開始して数年後、ニヒリスターの強襲を受け、訓練に参加していたニケの多くが死傷すると言う大惨事が起きた。
現場指揮をしていたランスの必死の防戦と駆け付けた本気のソーンとニヒリスターが壮絶な戦闘を繰り広げた。
「ラプンツェルからの通信を貰って駆け付けたが流石に驚いたな」
皮膚が焼けた垂れ、左半身を吹き飛ばされたソーンが元気に挨拶してきたときは流石に言葉を失ったものだ。
「そのお陰でアイツの武装ユニットとかパクれたからこっちとしてはお釣りがでるぐらいさ。ってお前定期的に来いって言ったよな俺は!ライフリングがガタガタだぞ」
「使用に問題ない」
「全く、昔のお前が聞いたらブチギレてたぞ。変なとこだけレッドフードに似やがって」
会話に割り込むように入ってきたソーンはスノーホワイトのセブンスドワーフを完璧に整備して渡す。
まぁ、ほとんどのパーツを総取っ替えしたのだが。
「腰のフレームもガタ来てるじゃないか。直してやるから横になれ」
「うむ…」
グチグチと小言を言いながら直すソーンの言葉を饅頭のように潰れた表情で聞くスノーホワイト。
ソーンは話ながら両こめかみに装着された装置を操作する。
ナユタが製作したソーンの脳波を調整する装置であり、ある種のリミッターでもある。
「こう見えて俺は忙しいんだよ。今日だって訓練の視察をキャンセルしたんだから」
「研究所に籠ってるだけだろう?」
「明日はクラウン王国で茶会に参加、明後日からはエイハブリアクターの定期点検で一週間はかかります。エデンのセシルさんとの技術交流、長期入院患者の慰問等々です」
「悪かった。だが病院の慰問とはなんだ」
フリージアが直近の予定を告げると頭が痛くなったスノーホワイトは素直に謝る。
だが疑問が残る、なぜ長期入院患者などと言う単語がでてくるのか?
ニケしかいないはずのこの国にリペアセンターはあっても病院はない。長期間入院するニケなんて聞いたことがなかったからだ。
「少数ですがおります。一部は四肢を動かせなくなっている者もおります」
「侵食か?」
「それよりもっと厄介なものだよ」
ソーンはサイド3最大の問題を口にする。
「ニケの寿命だよ」