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翌日、俺は潤一とミジュマルの三人(二人と一匹)で、町の外れにある廃墟に来ていた。
廃校になった小学校で、当然人の気配はない。
「よくこんな場所見つけたな」
「ネットで調べたんだ」
「でも、勝手に入って大丈夫か?」
「ちょっとくらいならばれないだろ」
中庭に移動したところで、リュックからミジュマルを出した。
「ミッジュ!」
ミジュマルは中庭の仲を元気よく駆け回る。
「なあポケモンなら技とか使えんのかな」
「さあ……試すなら、あんま派手な技は使わせるなよ」
「分かってるって。おーいミジュマル」
潤一が呼ぶと、ミジュマルが足を止める。
「こいつに、シェルブレードだ!」
そう言ってミジュマルの方に木の枝を投げる。
しかしミジュマルは放物線を描く木の枝を眺めるだけで、何もしなかった。
「シェルブレードってなんだ?」
「ミジュマルの代名詞だよ。まあ専用技ではないんだけど」
ミジュマルが木の枝を追いかけて校舎の方に入っていく。
「あ、おい。あんま奥に行くな」
俺達もミジュマルを追いかけて校舎の中に入る。
玄関を土足で越えて廊下に入ると、ミジュマルが一番手前の教室で足を止めていた。
「ミジュ!ミジュ!」
「ん?なんだよ」
ミジュマルがしきりにその教室の中を指さすので、窓から覗いてみる。
「っ!」
教卓の傍に、一人の少女が座り込んでいた。
十二歳ぐらいの容姿で、栗色の髪を左右で束ね、病院で入院患者が着ているような白い服を身に着けている。
そして、彼女の傍にはオレンジ色の丸っこいネズミのような
「オレンジ色のネズミ、病衣の少女……」
つい先日見たSNSの投稿が想起される。
「あれって、デデンネじゃねぇか!」
「デデ!」
潤一が声を上げたことで、デデンネがこちらに気付いて警戒心をあらわにする。
「デーデー」
デデンネの頬に電気が充填される。
「やばい、何かくる!」
「ミジュ!」
ミジュマルが迎え撃つべく、俺たちの前に立つ。
「デデンネ止めて!」
少女が静止したことで、デデンネが攻撃を中断する。
「はぁはぁ……」
少女は苦しそうに左腕を抑えながら立ち上がり、こちらに近づいてくる。
「あなた、研究所の人?それとも私と同類?」
「研究所?なんのことだ?」
彼女の言葉の意味が分からず聞き返すと、一言「そう」とだけ呟いて腰を下ろした。
「分からないならいい。あなた達は敵じゃない」
「敵って……」
そこで俺は彼女が抑えていた左腕のあたりが赤く滲んでいることに気付いた。
「お前、ケガしてるのか?」
「……」
少女は答えずに、その場に座り込む。
「私のことは放っておい……っ」
「おい!大丈夫か!」
俺は少女のもとに駆け寄り、強引に傷口を確認する。
何かに皮膚を抉られたようになっており、傷口からは今も血が垂れている。
「潤一、この子とミジュマルを見ててくれ」
「お、おう」
俺は校舎を飛び出した。
◆
薬局でいくつか買い出しをしてから、俺は廃校に戻ってきた。
「ただいま……って、何やってるんだよ」
潤一は少女とポケモン達にでスマホを見せて、何かゲームをしていた。
「いや、この子がポケGOやってみたいって言うから」
「インターネットにつなぐやつはやったことないから」
「……まあ元気そうでよかったよ」
俺は少女の近くに座り、レジ袋から買ってきた消毒スプレーと包帯を取り出した。
「少し痛むぞ」
傷口に消毒スプレーを吹きかけ、そこに包帯を巻きつける。
「これでよし」
「……ありがとう」
少女はぼっそとそう呟いて立ち上がる。
「お兄さん、名前は?」
「
「俺は
「冬也さんと潤一さん。覚えておく。行くよデデンネ」
少女はそう言ってデデンネを連れて立ち去ろうとする。
「待てよ。君は何者なんだ?」
「……
「芽衣……君はそのデデンネをどこで捕まえたんだ?」
「お兄さん達には感謝してるけど、これ以上の質問には答えない。私に関わっても碌なことないからね。それと」
芽衣はミジュマルを見る。
「その子のこと、大事にしてあげてね」
そう言って芽衣は足早に校舎から出て行った。
「あ、おい!」
俺は追いかけようとしたが、既に廊下に彼女の姿はなかった。
「なんだったんだ?」
「……とりあえず、帰るか」
ミジュマルにリュックに戻ってもらい、俺達は人に見つからないように廃墟を後にした。
「ミジュマ」
「おい。だから勝手に出てくるなって」
リュックがちゃんと閉じていなかったのか、ミジュマルが背中から顔を出していた。
「まあいいじゃんか。この辺は人もいないし。ミジュマルも喋らなければぬいぐるみにしか見えないだろ?」
「ミジュ!」
潤一に言われたことを実践するように、ミジュマルは微動だにしなかった。
……いや、バランスを取るのが難しいのか微動はしている。
「分かったよ。人の多いところに出るまでな」
俺はそのまま諦めて帰路に着いた。