女舐めんじゃないわよ!
 ドイツ国防軍の軍属───エリナ・エーベルトは気が付くと、異臭漂う洞窟の中に居た。
 そこは魑魅魍魎の跋扈する地獄の様な空間。

 食われた女子供に、囚われた女達。

 エリナはその地獄の如き、ゴブリンの巣穴から一人脱出を計る。

 途中で見つけた大日本帝国陸軍の火器を手にして───……。

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第1話

ピチョン……。

 

ピチョン……。

 

ピチッ──顔にかかる水滴を手で払いのける。

 

 覚醒したエリナ・エーベルトの意識は、どこかあやふやだった。

 

「頭──いったー……」

 

 しっとりと濡れた髪が重く、体を起こすのも億劫だ。

 

 その上髪が纏わり付き、不快この上ない。

 

 おまけに起こした体にも髪から伝わった水分が、親衛隊の女性軍属用の服を濡らしている。

 

「あらら、ビッチョビチョ」

 

 ぐっしょりと濡れて、女性らしい体の線がくっきりと浮かびあがっていた。

 

(ったく、最悪──)

 

 あーもう。

 

何だってのよ!

 

 足元に転がる親衛隊の制帽を被ると、濡れた髪と制帽が不快感を増すが、構ってはいられない。

 

 ……さて、と。

 

 ここはどこだっけ?

 

 なんでこんな所にいるのか、皆目検討がつかない。

 

 確か、ちょび髭の実験に付き合わされて、妙な薬を飲んだけど──。

 

「ゲギャ!ゲギャギャ!」

 

 う。

 

なんか居る……。

 

 今しがた意識の覚めたこの空間の先、急な曲がり角の向こうに何やら妙な気配がある。

 

 エリナは壁を伝うようにして、そっと通路の先を覗きこんだ。

 

(あれって……ゴブリン?!)

 

 童話や物語に出てくる化け物──狡賢い小鬼。

 

 ゴブリンって、奴だ。

 

 そいつらが火を囲んで酒をかっくらい、肉を齧っている。

 

 どうやら、ここは奴らの巣穴らしいが、何故エリナはそんな所で目覚めたのだろうか?

 

(まぁ、ちょび髭のくだらない実験かしらね)

 

 行動実験の一種だろうと、あたりをつけたエリナ。

 

 彼女はミュンヘン大学の助教授で、軍に協力する傍ら、その手の実験には詳しいのだ。

 

(化け物の巣穴で目が覚めたらどうするか──って感じかしら?)

 

 ──そういう実験なのだろう。

 

「いいじゃない?やってやるわよ」

 

 そっと、姿勢を戻したエリナは敵影を脳裏に刻み、次の行動を決定する。

 

 ゴブリンの数は12体。

 

 横の穴は無数……。

 

 ふむ……。

 

 ゴブリンを突破して、その先へ──。

 

 成程。どれかが出口なのだろうが、悠長に探していては、何 いずれこいつらも気付く。

 

 その後の事は想像に難くない。

 

 ならば、突破よりもここは殲滅しかないだろう。

 

 だから、

 

(まずは奴らが寝静まるのを待ちましょうか)

 

 ※

 

 およそ一時間後。

 

 寝床で小汚ない顔を晒すゴブリンに近づくエリナの姿があった。

 

 幽鬼の如く彼らの前に立つと、

 

(──恨みはないけど、…ごめんなさいね。私は人間なのよ)

 

 ゴブリンが腰に下げていた武器に、そっと手を伸ばし掴む。

 

 金属製の武器は、鞘引く時に静かに音を発した……。

 

 シュラン───。

 

 ゴブリンの体を 跨ぐ様にして、奴らを冷たく見下ろす。

 

(酷い匂い……)

 

 奴らの匂いに思わず鼻を覆いそうになる。

 

(くっさいわねー)

 

 だが、それらを堪えてナイフを手に……!

 

 パチリ──。

 

 ゴブリンが目を覚ました。

 

「ッ!」──ズブブブ!

 

  躊躇なく喉を貫くエリナ。

 

 鋭いナイフの切っ先呆気なくゴブリンの皮膚を貫き、彼を自分の血で溺れさせた。

 

 肺から溢れた空気が、ボコボコと気道を泡立てていたがそれすらもすぐに収まる。

 

(ふぅ……)

 

 軽く浮いた汗を拭いつつ、

 

 ──エリナはその作業を、あと11回行った。

 

「これで、───最後ッ」

 

 血だらけのナイフを引き抜くと、返り血を浴びた顔が真っ黒に汚れていた。

 

「ったく、女の顔はファンデーションを塗るものよ」

 

 さて、これでここは完全制圧。

 

 次なる目標。ま、当面は脱出だが……。

 

 まずは、

 

「───武器よね」

 

 ゴブリン共の装備を拝借しても良いが、正直余り使いたいと思わない。

 

 にしてもこれ、

 

「───銃剣……よね?」

 

 奪った剣。

 

 その基部たる 鍔(つば)の部分は、一部が反り返り「J」の字を描く。

 

 穴と溝があり、銃に取り付けられる仕様だ。

 

「こいつらが銃を?…………まさかね?」

 

 だが、行動実験の一環として──これらの武器を準備していたなら?

 

 ふむ……。

 

「──という事は、何処かに銃があるのかもしれないわね」

 

 脱出させる為に武器を用意する。

 

 あり得そうな話だ。

 

 そして、その目星はついている。

 

 ここの奥。

 

 無造作に積み上げられた木箱の中だ。

 

 罠の可能性も考慮しつつ、そっと近付き中覗き見ると、

 

「わぁお……」

 

 中身は予想通り武器だ。

 

 旧式っぽい小銃に、不恰好な短機関銃。

 

 それに銃剣が十揃い程収まる。

 

 奥の方には油紙に包まれた美麗な剣が何振りか、無造作に放り込まれている。

 

 比較的保存状態の良かった小銃を取り出すと、まずは確認する。

 

 それは騎兵用なのか、切り詰められた銃身に折り畳み式の銃剣付き。

 

 作動を確認する為、ボルトを操作して薬室を開放してみた。

 

 ガチャキ───シャキ!

 

「ふむ……」

 

 作動異常なし。

 

「口径は6.5mm~7mm級ね。一昔前の銃かしら」

 

 最近の軍用小銃の標準は7.62mm~8mmらしいから、これは新型のそれではない。

 

 さらに、短機関銃を取り出すと、取り付けられているやたらと反り返った弾倉を見る。

 

 外観からして、MP18───ドイツ帝国軍の旧式短機関銃に似ている。

 

 これなら扱えそうだ。

 

「それにしても、随分拘ってるわね~」

 

 同じく収められていた短い銃剣があるのだが、なんとこの短機関銃、銃剣を付ける事が出来る。

 

 なんなのだろうか、この銃剣に対する飽くなき欲求は……?

 

 まぁ良いわ。

 

 使えない訳でもないみたいだし。

 

 一応、銃剣も確保しておく。

 

 そして、これ!

 

 エリナが取り出したのは、スラっとした曲刀。

 

 海賊が待つ様な下品な曲がり方の曲刀(シミター)ではない。

 

 なんというか、美しい曲線なのだ。

 

 取り出し照明に翳すと、

 

 ひぃぃん……。

 

 空気を斬る様に剣が外気を受けて鳴いていた。

 

「───綺麗な剣……」

 

 どこかうっとりした表情でその刀身を眺めるエリナは、躊躇いなく鞘に収めて確保する。

 

 なんとまぁ。

 

 ちゃんと帯皮まである。

 

 そうして、残りの木箱を漁っていけば、まぁー出るわ出るわ……。

 

 取り敢えず、ある物で使えそうな物は全部頂いていく。

 

 四四式騎兵用小銃×1

 

 百式短機関銃×1(弾倉10個)

 

 二式銃剣(短)×1

 

 九五式曲刀×1

 

 九六式軽機関銃×1(弾倉10個) 

 

 八九式重擲弾筒(小型迫撃砲)×1

 

 九七式自動式対戦車長銃×1(弾倉10個)

 

 南部十四年式自動拳銃×2(弾倉10個)

 

 九九式手榴弾×30発

 

 いやーはっはっは、大量大量!!

 

 え、そんなに持っていけるのかって?

 

 良いものあったのよ!

 

 ほらこれ、ゴブリンさんのリヤカー!

 

 ドスンと、対戦車長銃を積み込み、擲弾筒やら軽機関銃を積み込んでいく。

 

 弾帯には小銃用の弾をみっちり詰め込んだ。

 

 予想通り弾丸は6.5mmで非常に扱いやすそうだ。

 

 腰の前に弾嚢(だんのう)が二つ、そこに30発ずつ。

 

 そして腰の後ろにちょっと大きめの弾嚢が一つ、そこに60発。

 

 あとは、短機関銃用の弾倉が左右5個ずつ入る弾嚢付きサスペンダーを付ける。

 

 キツキツのサスペンダーに挟み込まれたお胸が、強調されて盛り上がる。

 

 ───ふふん、どうよ。

 

 ちなみに軽機関銃の弾倉はバナナ型で、30発入り。

 

 これはリヤカーに突っ込んでおく。

 

 あ、知ってる?

 

 この軽機関銃も、なんとまぁ銃剣が付くという不思議仕様だった。

 

 なんなのかしらねー。この銃を作った国は、着剣装置がないと呪われる国民なのだろうか…?

 

 そして、小型の擲弾筒!

 

 50mm級のこれは、小さくて軽くてとても使い勝手が良さそうだ。

 

 でも、弾は結構大きい。

 

 パッと見、手榴弾といった感じ。

 

 多分、着発式だ。

 

 ピンを抜いたら最後、地面に落とす訳にはいかない……。

 

 信管が反応し、その瞬間───ボン、だ。

 

 おーこわ。

 

 そして、これ……!

 

 見てよ、このデッカイ大砲を!

 

 なんとまぁ、自動式対戦車長銃って奴だ!

 

 装弾数は驚きの7発!───しかも、箱型弾倉付きだ。

 

 口径は20mm……。

 

 うん───作った奴は、馬鹿(浪漫が分かる奴)だと思う。

 

 もはや小型の大砲と言った方が良いだろう。

 

 多分、一人で担いで撃つのは無理。

 

 地面に据え付け、───ドガン!ドガン!とやるのが正しい使い方に違いない。

 

 ぶっちゃけ持ち上げる時に腰を、 やりかけた。

 

 で───。

 

 後は拳銃!

 

 なんていうか、ルガーP08旧式拳銃を模倣した様な外観だった。

 

 装弾数も8発で、標準的な拳銃といった感じ。

 

 まぁ使い勝手は悪くなさそうだ。

 

 折角なので二丁持ち。

 

 一丁は、ホルスターに入れ刀の帯皮の右側に取り付けた。

 

 もう一丁は胸に挿んでおく。

 

 うふふ───デカいって素晴らしい!!

 

 ちなみに携行する火器は、こんな感じ。

 

 以下、

 

 騎兵用小銃を担い前には主に使用する予定の短機関銃を垂らす、と。

 

 腰のホルスターとお胸に拳銃。

 

 腰には曲刀、そして干渉しない様に短い方の銃剣を同時に挿す───と。

 

 あと、手榴弾はポッケにイン♪

 

 どうよ!?

 

 フルアーマー=エリナ・エーベルトの登場よ~!!

 

 多分、世界一火力のある助教授ね!

 

 さて、一服───ぷはぁ。

 

「さーて、行くとしますかね」

 

 リヤカーを押し、ゴブリンの巣穴の奥へと向かうエリナ。

 

 ※ ※

 

「ったく、広いったらないわ!」

 

 ァ……。

 

 ん?今───。

 

「なんか、声が聞こえたわね?」

 

 ふむ?

 

 ……こっちね。

 

 通路の中ほどにある横穴。

 

 そこから空気と共に、獣だかが発する声が微かに響く。

 

「嫌な予感しかしないけど……」

 

 なんというか、絶対悪い何かがある。

 

 その予感だけはヒシヒシと身に感じているというのに、見ずには居られない。

 

 エリナはこれでも大学の助教授だ。

 

 その経歴故の好奇心。

 

 だが……。

 

「───あらら。……こりゃ地獄かしら」

 

 群がるゴブリンと、女達。

 

 その先は牢屋状に格子で区切られた空間がいくつか。

 

 内部は広い。

 

 壁から延びる細い鎖には、女達が繋がれていた。

 

「うーん?ゴブリンさんの 遊郭かしらね」

 

 酷く痛めつけられたソレらは────血だらけの者、食い千切られた者等々……なかなか凄惨な現場だ。

 

「ったく、胸糞悪くなる光景ね」

 

 嫌悪感も露に、ゴブリンどもを睨むエリナ。

 

 そのうちに、ゴブリンの何体かが牢屋の外にいるエリナに気付いた様だ。

 

  ゴブリン共はエリナを見ると、ニィと口角を釣り上げる。

 

(うげ……!)

 

 ゾワリと背筋が震えあがる。

 

   新しい女(おかわり)……ってとこ?

 

「───冗談じゃないわよ」

 

 スチャっと、短機関銃を引き寄せると、バチコン! とコッキングレバーを引き初弾を薬室に送り込む。

 

 不発の可能性も考慮して、近接武器の具合も忘れない。

 

 曲刀をいつでも引き抜ける様にし、

 

 銃剣は一応……とばかりに短機関銃に着剣した。

 

 さぁ、準備良し!

 

 下等生物め、いつでも来なさいな。

 

 ギャイギャイ!とゴブリン共が騒いでいる。

 

 その騒ぎをみてエリナの存在に気付いたのか、女達がたちどころに「助けてくれ」と、騒ぎ出す。

 

 ゴブリンに犯されていた連中は、希望を見出だしたかの様に目に光を灯す……も。

 

 ──ボキリ。

 

 ゴブリン共は容赦なく、連中の首を折り命を絶った。

 

「あ、あいつら……!」

 

 容赦も情けもない。

 

 まるで玩具を捨てるかの様に───。

 

 フ……。

 

  新しいの(エリナ)が来たから、古いのは要らない、ってとこ?

 

 ズンズン! 足音も荒く、ゴブリンが10匹ばかりエリナに迫る!

 

 全員、棍棒やら骨やらの 得物を手にしている様だ。

 

「やるしかないわね」

 

 牢屋の格子越しとはいえ、奴らの事だ鍵くらい持っているだろう。

 

 ブシュ、ザクッと、次々に近くの囚われていた女達を惨殺しながら迫るゴブリン。

 

 目の前で少女が殺された時、エリナは思わず目をそらす。

 

(───ゴメン……救えなかった)

 

 その絶望に染まったその眼を見て、心の中で謝る。

 

 ったく、胸糞が悪い。

 

 汚いものをブラブラさせやがって!

 

「あらまぁ……汚いブツねぇ。──アタシが欲しいの?」

 

 だったら、

 

「───かかって来な!」

 

 ドスの効いた声で言い放つと、短機関銃をぶっ放す。

 

 薄暗い洞窟がマズルフラッシュでギラギラと照らし出される。

 

 同時に、その轟音を惜しみなく響き渡らせた。

 

 タパパパパパパパパパパパッパパパパパパパン!!!

 

 と、軽快に響く銃声の先に撒き散らされる8mm南部弾。

 

 キツいテーパーを描く弾倉から、次々に吐き出される銃弾に、排莢口からは薬莢がたくさん!

 

 カラカラカランと、澄んだ音が洞窟に響き、撃ち切っても尚、反響していた。

 

「どぉ?貫かれる気分は……」

 

 ドチャドチャ……と、折り重なって倒れるゴブリン共。

 

 その数9体……。

 

 む。

 

 あと1匹!?

 

「ゲ、ゴギャ?!」

 

 死体に阻まれたお陰で、銃撃から逃れた1匹が恐怖に濁った眼でエリナを見ていた。

 

 あっという間に9匹の死体を量産したのだ、数の理などあって無きにしも──。

 

「あーら……。運がいいわね……?」

 

 短機関銃を下ろすと、さも美しい笑顔を向けるエリナ。

 

 見るものが見れば天使……いや、女神の如き美しさ。

 

 だが、その見目麗しきは中に潜む攻撃性を上塗りしただけの事。

 

 エリナ・エーベルト。

 

 まさに、カラフルな大蜘蛛の様なものだ。

 

「───こっちも試し撃ちしちゃうわね?」

 

 騎兵銃を構えると、スッと照星と照門を一致させて、その先にゴブリンの頭部を見ると──バァン!

 

 グシャ!と、ゴブリンの頭部が変形して衝撃で背後に吹き飛ばす。

 

「良かったわね……穴が好きなんでしょ?その穴なら好きなだけ突っ込みなさい」

 

 静かな怒りを見せたエリナはゴブリンを 殲滅する。

 

 しかし、同時にやらかした事にも気付く。

 

「こりゃ巣穴中のゴブリンさんが気付いたわよね? 参ったわね~」

 

 すーっと周囲を見回す。

 

 複数の牢屋があるのみで、出口や通路の類はエリナが入ってきた横穴以外にない。

 

 要は袋小路だ。

 

 そして、通路の先からはゲギャゲギャと、ゴブリンさんの団体が叫び声をあげている様子が伝わる。

 

  直にここに殺到するだろう。

 

 しゃーなし。

 

 こうなったら、やるっきゃないわね。

 

 ゴトゴトと地面に銃器を並べていく。

 

 他にも、擲弾筒の弾に手榴弾をいくつか。

 

 化粧道具を並べる女性の如く、鼻歌交じりに銃器を陳列していく。

 

 対戦車長銃に軽機関銃──、それらを横一列に並べると、その脇に弾倉を積み上げる。

 

 そして、地面に体を俯せると軽機関銃に取りつき低い伏せ撃ちの姿勢で銃把を握り締めた。

 

 「どれどれ、照準は~?」とばかりに───斜めに突き出た照門を覗き込む。

 

 この軽機関銃は銃の真上に弾倉があるから、照準は斜めにずらした位置にあるのだ。

 

 少し体を動かしたりして二脚の具合を確かめるエリナ。

 

 ふむ……。

 

 グラつきなし、姿勢安定、照準良し───。

 

 さぁ、戦争を始めましょうか!!

 

 来てみろ下種共が!

 

 準備を整えたエリナの前に団体さんが到着。

 

「「「ゲキャーーー!!」」」

 

 と現れたゴブリン共に、これでもかと銃撃を浴びせてやった。

 

「死ね。下等生物が!」

 

 ッガガガガッガガガガガガッガガガガガガッガガガガガッガガガガッ!!

 

 猛烈なマズルフラッシュに周囲が明々と照らし出される。

 

 その先───。

 

 数も分からないくらい、ミッチリとやってきたゴブリン共だが、あっという間に軽機関銃に貫かれ、死体を量産。

 

 生き残った者も、腰を抜かしている。

 

「ゲヒャァァ……?!」

 

 ───ふ。

 

 脅威なし!

 

 戦意なし!

 

 残弾なし!!

 

 さ、次ぃぃい!

 

 ガチャキ!と弾倉を交換。

 

 素早く装填───さっさと、来なっ!!!

 

 ゲギャギャァァァと、生き残りが 這う這うの体で逃げていくと、さらに追加の集団が殺到する。

 

 は!同じ事ぉ!!!

 

 ッガガガガッガガガガガガッガガガガガガッガガガガガッガガガガッ!!

 

 30発の6.5mm弾はゴブリンを寄せ付けず、戦意と命を奪っていく。

 

 遺棄死体は30~40体程が転がっていた。

 

 ───ッガガガガッガガ!!!

 

(チ……死体が邪魔ね)

 

 積みあがる死体のせいで、ゴブリン共が隠れられるスペースが所々に発生している。

 

 それらを利用しつつ、ゴブリンが、近付いてくる。

 

 だけど、そこが安全とは片腹痛いわね。

 

 ゴロリと体を横にしたまま横に一回転、隣の銃に切り替える。

 

 いっくわよぉ!!

 

 馬鹿の様にデカい銃には、後ろにまで支持脚が付いている。

 

 こいつは自動砲───20mm対戦車長銃だ。

 

 文字通り──── “対戦車”だ。間違っても生物に向けるものではない。

 

 だーけーど!

 

「───ドカンといくわよ」

 

 ガキンと引き金を引く───……ドゥン!!!

 

 ゴォォォォォンと物凄い反響音を響かせて発射。

 

 ゴブリンの死体の山に突き刺さり、隠れていた小集団ごと吹き飛ばす。

 

 なんというか……こう、ゴッパァン!と言った感じで……。

 

 ヒュゥ♪こりゃ凄いわ……!

 

 さ、もう一丁!!

 

 いくつかある死体の山に照準する。

 

 ──ドゥン!!!……ゴッパァンッッ。

 

 ──ドゥン!!!……ゴッパァン、ォンォン……。

 

 もうなんというか──、

 

 グッチャグチャ……。

 

 グゥゥッチャグチャァ!の死体がそこかしこに。

 

 流石にこれにはゴブリンの集団も驚いたらしく、二の足を踏む。

 

 恐る恐る覗き込むだけで一向に近付いて来ない。

 

 あらまぁ。

 

 それじゃ困るのよ?

 

 こうなってしまった以上、殲滅しないと脱出できない。

 

 流石に、広い空間で戦うには一人では厳しいものがある。

 

 この隘路(あいろ)だからこそ、銃で戦えているのだ。

 

 背後は袋小路、前だけを注視していれば良い。

 

 仕方ない……、

 

 地面の手榴弾を取り出すと、 ピンを思いっきり引き抜き投擲……──ってか、あ。

 

 対戦車ライフルをぶっ放しておいて、今さら何もないのだが───流石に爆発は不味いかもと思う。

 

 思うが……、

 

 

 

 止めない、止まらない、フルアーマー=エリナ・エーベルト。

 

 ゴトンと鈍い音を立てて手榴弾が落下。

 

 ………………。

 

 ……あれ?

 

 不発だろうか。爆発しない。

 

 ならこっちね。

 

 擲弾筒弾の先端についたピンを引き抜くと、素早く投擲し、すぐに地に伏せる。

 

 だって、あれ着発信管ですもの───ボォン!

 

 というが早いが爆発音。

 

 狭い空間で爆発したものだから音が物凄い。

 

 実際エリナも耳を塞いでいながら、少し一時的な難聴に陥っている気がする。

 

 だが、今はそれ処ではない。

 

 地面に置いてあった軽機関銃の銃把を掴んで持ち上げると、手慣れた兵士の様に中腰の姿勢で素早く躍進。

 

 反対の手には4つ程の弾倉を持つ。

 

 横道にいたゴブリンは、爆発で壁の染みになっている。

 

 さぁ、残りはどこだ!

 

 ズシャア!と、──横道から元の通路に出ると、素早く左右を確認。

 

 おぉっと、どっちにもゴブリンの集団が居る。

 

 数が多いのは………右ぃ!

 

 ポイと弾倉を地面に置く、銃把を握り締める。

 

「死になさい!!」

 

 ガガガガッガガガッ!!

 

 と腰だめに連射。

 

 反動が小さいお陰で、意外にも弾道の据わり良い。

 

 銃の重さも相まって、素晴らしい命中率だ。

 

 6.5mm弾はその威力を惜しみなく発揮し、固まっていたゴブリンの集団を肉塊に変える。

 

 全滅させるには至らなかったが、右側は取り敢えずこれで良い。

 

 次、左ぃぃ!!!

 

 グルンと銃身を体ごと背後へ向けると、ジリジリとエリナの無防備な背中を狙わんとしていたゴブリン共の鼻先に銃口を近付ける。

 

「……アタシはね、“後ろから”は嫌いなのよ!」

 

 ガガガッガガガッガガガガガガッガッ!!!

 

 小刻みに左右に振りながらゴブリンを薙ぎ払う。

 

 接近していた分、左側のゴブリン共の殲滅率は高く、今ので取り敢えず全滅。

 

 そんでもってもう一回、右ぃぃ!!

 

 グルリと再び銃身を右側へ向ける。

 

 ゲギャギャ?と、小さくなって震えていたゴブリンの集団に狙いを付けると残りの弾を全部ぶち込む。

 

「命乞い?聞かないけど、ね」

 

 ガガガッガガガガッ!!

 

 チリン、チリン……チリンリン…………───。

 

 と薬莢が澄んだ音を立てる中、この場に居た集団は殲滅された。

 

「ふぅ……ッて、キャ!!」

 

 珍しく可愛い悲鳴を上げるエリナ。

 

 足元にはさっき投擲した手榴弾があった。

 

「あ、っぶな……。これ爆発したら死んじゃうわよ……」

 

 不発弾は最高に危険だ。

 

 いつ爆発するかもわからないのだから、近付く事さえ憚られる。

 

 ん?

 

 これ、不発弾じゃないわね。

 

 よくよく手榴弾を観察すると、ピンを抜いて爆発させるものではない。

 

 ピンはあくまでも誤爆防止の為で……。

 

「ま、まさか───これ……」

 

 手榴弾を拾い上げる。

 

 って、危ない危ない?!

 

「もしや,この出っ張りを叩いて発火させるんじゃ……?」

 

 手榴弾の弾頭の上に生えている、豆粒の様な出っ張り。

 

 そこに被帽が被せてある所を見ると、その部分を叩く必要があるみたいだ。

 

 何なの、この面倒臭い作りは……。

 

 この手榴弾は、3つの動作が必要になるという事だ。

 

 ピンを抜く、叩く、投げる。

 

 普通の手榴弾に比して、ワンアクションが余分に必要になるという事。

 

 まともな国のやる事ではない。

 

 そして、丁度追加のゴブリンがやって来る頃合いとなった。

 

 それにしても一体何匹居る事やら。

 

 あ、そうだ~。

 

 この手榴弾、試してみましょ。

 

 エリナは手榴弾の出っ張りを手で叩く。

 

 ペチッ!

 

  ………………あれ?

 

 叩く。

 

 ………………───あれれ?

 

 叩く!!

 

 あるぇ?

 

「こ、これ、固いわ!!」

 

 焦る内にゴブリンが近付いて来る。──数は流石に少なくなって約5~6匹。

 

 だぁ、もう!!

 

 コンニャロ、とばかり壁に叩き付けるとバシュ! っと発火の手ごたえ……───うわわわわ!?

 

 いきなり発火したものだから驚いて手から滑り落ちる。

 

 ヤバイ、ヤバイヤバイッ!!

 

 エイヤ!と掛け声一つ蹴り転がすとコロコロとゴブリンのところまで転がり……───ッバァン!

 

  炸裂!!

 

 ベチャベチャと肉やら何やらが飛び散るて。

 

 エリナの被る制帽にも腸(はらわた)がデロン…と。

 

 ……。

 

 …………。

 

 Scheiße!!!!

 

 制帽ごと腸を地面に叩きつけると、血と肉片を払って被り直す。

 

 この手榴弾作った奴…馬鹿でしょ。

 

 「ったく!」───悪態を吐きつつ軽機関銃の弾倉を交換し、油断なく周囲を見回す。

 

 シンと静まり返った洞窟。

 

 先程までの喧騒が嘘の様だ。

 

「殲滅した……いえ、違うわね」

 

 ソロソロと横穴に戻ると、武器を回収する。

 

 洞窟に立ち込める気配…殺気の様なもの。

 

「ここからが本番?それとも、慎重になっただけ?」

 

 ゴトゴトとリヤカーを曳きつつ、通路を征く。

 

 そして、

 

 通路が途切れる………。




 
 to be continued??


 ゴブリンの巣穴で目覚めた美人助教授。

 エリナ・エーベルトの戦いはまだまだ続く!!

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