貞操観念逆転世界で低レベルな女子野球部を指導してやろうとしたら逆に分からされた 作:伊つき
「じゃあ
「待ちなさい。電話で良いでしょう。なぜ直接会う必要があるのよ」
合流した
確かにその通りだ。
どうなんだ?
「ハッハッハ。
「えぇ……」
仲悪いのか?
王皇のベンチ、そんな空気悪いようには感じなかったけどな……。
まあ映像だからわかるところとわからないところがあるけど。
「いいからかけてみなさい。かかる時間が全然違うでしょう」
「ふむ。一理あるね。じゃあ1度コールしてみるよ」
案外柔軟だ。
納得できることなら受け入れて実行してくれる。
ただ……通話はありえない速度で断念された。
「すまない。着信拒否されていた」
「えぇ……」
仲悪いのか?
いや、
「……なら王皇に行くしかないわね」
「申し訳ない。では、行こうか。ここからなら1時間もかからないよ」
「あ、車あるんでそれに乗って道案内してくれませんか?」
「おや。そうなのかい?いいよ、私が言い出したことだからね」
改札に向かおうとしていた
「申し訳ありません、私まで搭乗させて頂くことになって。お手数おかけします」
「いいのよ。えらい律儀ね。王皇ってお嬢様高校なの?」
「ははっ。まさか。普通の公立高校ですよ」
礼儀正しいのは
車に乗せてもらうということで
車に揺られること約1時間。
少し山奥へ入ったところに
「ようこそ、王皇へ。ここが校門だよ。でも、練習場は離れにあるんだ」
「……津川くん。王皇の野球施設は凄まじいわよ。力の入れ具合が他とは違うからついでにしっかり見ておきなさい」
「は、はい!」
だが、俺たちを率いて先頭を歩く
多分聞こえてたんだろう。
少し口角も上がっている。
「ここが室内練習場さ。さぁ、入って」
「……すっご。えぐ」
「言った通りだったでしょう?」
室内練習場と言っていたが、ほぼ施設だった。
客席と商業店さえ設けたら球場と言われても違和感ないかもしれない。
しかも至る所から機械音が聞こえてくる。
マシンも充実してそうだ。
中に入ると多くの選手が練習していた。
「……王皇って今日の午前中に試合ありましたよね?その後に全員練習してるんですか?」
「そうだね。でもまあ、本来はもっと軽くやらせるつもりだったよ。ただ……主力が練習の虫だからね。試合に出られない者達もそれ以上に練習しないと試合に出られないと思いがちなんだよ」
……主力が練習の虫、か。
獅ノ宮も試合後に練習したけどここまでガッツリとはやらない。
ある程度は休みも入れる。
まあ王皇も明日は休みらしいが、主力は自主的に勝手に練習し始めて、レギュラーでない選手は練習量ですら負けていたら試合に出られないと思い込んで追い込んでしまうらしい。
まさに実力のある者たちが努力もしてしまうから振り回されているといった感じだ。
「ま、努力ではあるけどそれだけじゃないんだ、彼女達は。レギュラーじゃない
「どういうことですか?それ」
「別に大した話じゃないさ。主力は皆、野球のことで頭がいっぱいというだけ。彼女達は休みを与えても野球以外にやりたいことが特に思いつかないとよく言ってるね。だから、努力よりも呼吸に近いんじゃないかな?彼女達にとって練習は」
「……っ!」
マジかよ……。
なんつー野球マシン達だ。
野球以外興味ねえってか。
常に野球のことを考え、パフォーマンスの向上を目指し、練習の虫。
そんな野球狂い達で構成された強くあるべくして強い。
それが王皇百十……!
「さてと、じゃあ無愛想なショートストップとさっそく邂逅といこうかな」
「は?」
「……!」
練習場を練り歩いていると、突如バッティングエリアのカーテンをあけてそこに原田先輩とそっくりの淡白な塩顔女性がいた。
彼女は突然練習に邪魔が入って驚愕した様子で振り返る。
その奥に彼女の練習を手伝っていたもう1人の王皇野球部女子。
おそらくライトフィールダーのレギュラー、
彼女は、江山さんと俺のさらに奥にいる成城先輩が目に映った瞬間、二度見する。
「えっ!?
「……
故に、彼女を睨む
「チッ」
「私の顔を見て舌打ちはさすがに傷つくねぇ……」
間違いない、この感じ。
原田先輩と同じだ……!
「で?【完璧】の
「……相変わらず煽り癖があるわね。貴女、江山さんが電話したのに着信拒否していたでしょう。だから、直接来たのよ」
「電話……?着否?……何の話か知らないけど、練習の邪魔。帰れ」
「まったく……。貴女は冬の代表合宿を辞退した。だから、こうして顔を合わせたのは去年の夏ぶりかしら。久々に会ったっていうのに随分な態度ね」
「ハッ。アリス以外の高校BIG5が参加してない寄せ集めの選出くらいでマウントとられてもね。ていうかこっちは先輩、な?敬語使えよ。相変わらずタメ口聞きやがって2年アマが」
「……」
「……」
「……っ」
険悪な雰囲気になってしまった。
互いに無言で睨みあっている。
この空気の中、原田先輩のことを聞くことはできないぞ。
「……フッ。了解。有難いご指名だ。私が仲裁させてもらおうかな。成城、君はメンチを切りに来たんじゃないだろう?」
「貴女が半ば無理やり連れてきた癖によく言うわね。まあでも、その通りではあるわ。原田……
「は?」
顔を顰める
そんな彼女に尋ねる。
「今日の昼から原田先輩が姿を消したんです!どこか、原田先輩が行きそうな場所とか知りませんか……?」
「……あぁ、そういう」
質問すると、
そして。
「知らない。あの
……っ。
なんて言い草だ。
原田先輩が失踪したのは間接的には貴女に原因があるのに。
それを故意的にやって、自覚もしてるくせに。
本当に罪の意識とかないのか?
「私が
「
だが、
「だったら私達との試合が終わった後に待てばいいでしょ。どうせ私と顔合わせずに済んだら戻ってくるんだから」
「去年そうだったからといって今年もそうとは限らないわよ。心境はいつだって変わるし、人間の情緒ってもっと不安定よ。取り返しのつかないことになったら貴女責任取れるの?いいから知ってることをできる限り教えなさい」
「……人に聞く態度?それ」
イラッときて目を細める
元々原田先輩が失踪した原因はこの人だし、
ここでこの人から何も情報を得られずトンボ帰りするのは避けたい。
俺が下手に出るか。
「あの!試合前のタイミングで非常識に来たことも、こっちの態度がでかい事も謝ります。本当にごめんなさい!ただどうか、何か知ってること……原田先輩が行きそうなところ心当たりありませんか!?お願いします!教えてください!原田先輩が心配なんです……!」
「津川くん、貴方……」
俺が声を張って頭を下げると、
そして、
俺達の後頭部を見て
「そんなこと言われても、何も知らな―――」
「……?」
言いかけて途中で止まった。
俺と
彼女の言葉を待った。
数秒後、
彼女の表情は関内さんだけが目にしていた。
「……川にかかってる橋」
「えっ」
ボソッと呟く
そこにまたポツリと続ける。
「そういうとこの高架の下に、いるかもね」
「……っ」
それだけ言って彼女は道具を回収してから足早に俺達の前から去った。
俺達はその背中が見えなくなるまで目で追うしかない。
「すまないね。彼女、口が悪くて」
「あぁ……いえ!」
だが、キャプテンである彼女の監督責任を成城先輩は見逃さない。
「随分と身内には甘いのね。注意しないなんて、貴女の責任放棄じゃないかしら」
「……君達が
そんな彼女を前に成城先輩は目を見開いて、険しい顔をした。
「彼女は加害者よ?」
「……そうだね。……そうだね」
目を逸らして噛み締めるように肯定を重ねた。
彼女の表情は物悲しげだった。