貞操観念逆転世界で低レベルな女子野球部を指導してやろうとしたら逆に分からされた   作:伊つき

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第124話:性悪の極地

 

 6回表。

 王皇の攻撃。

 先頭打者は。

 

『7番 レフト 江山(えやま) サン』

 

「……っ!」

 

 左打席に入るのは、キャプテン江山さん。

 彼女が巡ってくると、マウンドの吉田さんも意識して気を引き締める。

 

「おやおや。モテ期かな?」

 

 吉田さんに鋭い目で捉えられでも飄々と振る舞う江山さん。

 余裕が違う。

 彼女はバットを構えて吉田さんと対峙する。

 

「いくぞ!!」

 

 気合い十分な吉田さん。

 セットポジションに入る。

 廣目とアイコンタクトでやり取りした。

 

(この人は、この人だけはカーブに対応してる……!ここは"あのカーブ"で……!)

 

 カーブしか投げないからサインはない。

 確かに最初はそうだったが、成城先輩に魔球を仕込まれてからは"2種のどちらか"、その判断を求めるためにサインのやり取りも増えた。

 吉田さんは強い眼力で廣目に魔球を求めるが……廣目は首を横に振る。

 

(……っ!?なんで……!)

 

 廣目の判断に吉田さんはなぜ!?と目線を送る。

 でも、廣目にだって考えがある。

 

(確かに彼女には打たれてしまうかもしれませんが……他は抑えられます。1人だけなら出塁を許しても得点には繋がりません。他を完璧に、そして省エネで抑えることの方が重要です)

(……!)

("あのカーブ"は消耗が激しい。吉田先輩以外が通用しない中、先輩にはイニングを食ってもらわなくてはなりません。省エネで……!そっちの方が優先です!)

(……わかった)

 

 廣目とアイコンタクトでやり取りして吉田さんは彼女に従った。

 構えに入って、江山さんもバッティングフォームで待つ。

 

 "江山(えやま) 栗深(くみ) VS 吉田(よしだ) 輝子(しょうこ)"

 

 いざ、勝負。

 

「……ふっ。まさかここまで迫ってくるとはね。さすが獅ノ宮だ」

 

「……っ!!」

 

 吉田さんが投じる。

 低めのカーブ。

 江山さんは敵に関心する。

 

『ストライク!』

 

 1球目はストライク。

 吉田さんが返球を受けて、ロジンを触り、すぐに打者と向き合う。

 江山さんも構えて、続く2球目。

 

「……っ!!」

 

「……散々ホームランを打ってくれたね。―――じゃあ、"お返し"といこうか」

 

「……っ!?」

 

 廣目が目を見開く。

 次の瞬間。

 高めからインコースへ曲がるカーブを、江山さんはフルスイングで"捉えた"。

 

 カキィン!!

 

 と金属バットの音が響く。

 打球は鋭く高くライト方向へ飛ぶ。

 

『江山の打球ッッ!!鋭いぞ……!?打球はライトへ!引っ張って……!―――入ったぁぁぁぁーーーーー!!江山(えやま) 栗深(くみ)、ソロホームラン!!獅ノ宮が追い上げた点差を、再び引き離す!!貴重な勝ち越しホームランだぁ……っ!!』

 

「……っぁ!?そんな……!」

 

 廣目はマスクを脱いで立ち上がり、口を開けてワナワナと震えながら呆然としている。

 吉田さんも思わず振り返って、外野を見て、打球の行方に絶望した。

 空気が一瞬で張り詰め、同じ愕然とした顔で瞠目するバッテリー。

 そんな2人を横目に、ダイヤモンドを一周する者あり。

 

「"あのカーブ"が来たらこうはならなかったかな。さすがにあれをスタンドに持っていく自信は私もないよ。来たのが……()()()()()()で良かった」

「~~~~~~~~っ!!」

 

 二塁ベースを蹴りながら敢えて告げる江山さんに、吉田さんは顔を赤くして唇を噛み締める。

 最悪の展開だ。

 

「……1点。ゴチ」

 

「……っ!」

 

『ホームイン!』

 

 立ち尽くす廣目の前で見せつけるように片足を突き出して、ホームベースを踏む江山さん。

 廣目は険しい顔で、表情筋をひくつかせる。

 これで。

 

 

 王皇百十(おうきみももと) 13 - 9 獅ノ宮(しのみや)

 

 

 せっかく縮めた点差が、また広がる。

 自分が嫌な相手だと理解しながら、打たれたくない場面でキッチリ打つ。

 そして、相手に的確な言葉を浴びせる。

 

 まさに"性悪"。

 

 "江山(えやま) 栗深(くみ)"……!!

 

「まだまだ負けるつもりはないよ?獅ノ宮(しのみや)

 

 ベンチ前で盛り上がる仲間に迎えられてそれにクールに微笑むだけで対応する江山さん。

 彼女はバッテなどを外しながら、小首を傾げて不敵な笑みを俺達に向けた。

 それを見た廣目が膝をつき、地面を叩く。

 

「……クソ。クソ……!クソォォォ!!クソ……ヘボ捕手が……ふざけんじゃねえぞ……」

 

「廣目……」

 

 ベンチから見ても廣目の悔しさが伝わってくる。

 自責の念に駆られる彼女に、内野陣は何も声をかけられず、悪い流れが発生してしまった。

 そんな廣目に……吉田さんだけが近付く。

 

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