貞操観念逆転世界で低レベルな女子野球部を指導してやろうとしたら逆に分からされた 作:伊つき
『
「あはっ~!またお散歩~!」
王皇は美山先輩を歩かせる。
3番のソユン先輩が単打で一塁三塁にしたから、これでツーアウト満塁。
3点差。
続いて、中宮先輩。
『5番 センター
「……涼香。乗り越えたんだね」
メットを深く被り、三塁ランナーの原田先輩を見る中宮先輩。
彼女は原田先輩が立ち直ったのを目にして、「よし……!」と気合い十分にバットを構えて打席に入った。
「……っ!」
「涼香が復活した。だったら、私は1つに集中できる。私が活躍すれば津川の評価が上がる……!」
「……!?」
カキィン!も音が響く。
中宮先輩は苦手の変化球、つまりスライダーで1点攻めしてくる王皇バッテリーにしつこい!と対応した。
さすがにジャストミートは無理だが、逆方向へ綺麗なタイムリーヒットだ!
「……っ。つ、津川……!」
「あっ。ははっ。ナイバッチです、中宮先輩!」
中宮先輩が一塁上で俺にアピールしたので、褒めろって意味かなと思って称賛を返した。
そしたら顔を赤くしてそっぽを向いて髪を弄り始めたから、多分正解だ。
まだツーアウト満塁。
大チャンス!
ベンチには原田先輩が帰ってきた。
「……ただいま」
「えぇ。おかえり。見違えたわね。よく戻ってきたわ」
「冬華……。うん」
原田先輩と成城先輩。
見つめ合い、成城先輩が微笑んで、原田先輩もぎこちなくだけど笑みを返した。
色々あったけど二人の仲も完全に戻った。
温かいな。
「津川。津川も……ありがとね。津川の気持ち、凄く嬉しかった。あれのおかげで私……
「えっ。いや、俺なんて全然!……でも、よかったです。原田先輩、凄くスッキリしてて。それに、これで約束果たせますよね?」
「……っ。うん、もちろん!その為にも……ここは勝とう!」
「はい!」
原田先輩と頷き合う。
彼女の真骨頂を目に焼きつけることができるのは、きっと甲子園に行ってから。
ならばここで勝つことは絶対条件。
『6番 レフト
「クソ!ここでかいな……!」
満塁で強打者に回ってきて、苦い顔をする
なので、彼女は打たれる恐怖に逃げ腰になってしまった。
『フォアボール!』
「……っ」
長門先輩は四球!
しかも押し出しだ。
これでまた得点が入る!
「よし!さすが長門先輩、選球眼がいい!」
「そうね」
俺の言葉に成城先輩が頷く。
もう2点差まできた。
あと少しだ!
『7番 ショート
「うおおおお!!あたしも続くぜぇ────!!」
「……っ」
気合いの入った素振りを見せる霧島先輩に、武松さんは顔を顰めた。
本来霧島先輩は打力の低い打者の為、警戒度は低いが。
武松さんからすれば別。
霧島先輩は癖のある投手は得意としてる。
手先は器用だけどパワーがない彼女にとって、こねくり回した技術はあまり関係なく、寧ろ地のステータスは育ててないので格好の餌だ。
普遍的な投球スタイルで球威や球速でゴリ押しのパワーピッチャーの方が寧ろ苦手。
それはもう前の打席で周知になっている。
ここで霧島先輩に2点以上を取る長打を与えたくないのが王皇。
だから、武松さんは力んだ。
『デッドボール!』
「痛ってぇ!!!!」
「……っ」
急いで帽子を脱いで頭を下げる武松さん。
だが、表情は苦い。
当然だ。
状況的にはこの死球はこっちにとって有り難いもの。
霧島先輩も痛みを堪えながらも、ラッキーだと思ってる。
「は、ははっ。クソ痛ぇけど……押し出しだぜ!」
「ちょっと!大丈夫!?」
ニヤッと口角を上げる霧島先輩に、ベンチから飛び出した
一度治療の時間を貰って試合は中断。
5分後、問題ないと判断されて霧島先輩が出てきた。
ベンチにガチ医者がいると高校野球とは思えない待遇を得られるんだな……。
なんて、そんなことを思ったりもしたけど試合も動いてるからそっちに意識を戻す。
霧島先輩の言う通り、これで押し出し。
もう1点追加!
遂に1点差!
延長まで1点、サヨナラまで2点!!
遂に王皇の背中が見えてきた。
しかも引き続き満塁。
あとは打つだけだ!
そんな時、回ってきた打者は……!
『8番 ピッチャー
「あ、あばばばば……」
『あっ』
全員がネクストバッターを見て、察する。
イケイケムードすぎて、誰もが見落としていた。
忘れていた。
次は獅ノ宮最弱打者、面平良さん。
彼女はバットを抱えて真っ青になりながらスコアボードを見上げている。
状況は理解しているようだ。
これは……マズイ。