貞操観念逆転世界で低レベルな女子野球部を指導してやろうとしたら逆に分からされた   作:伊つき

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第150話:岩手県地区大会

 

「1つの県を除いて、地区大会の結果が出たわ。甲子園大会に出場する47校のうち46校が確定。最後に残った予選は……岩手県よ」

『……!』

 

 土曜日。

 今日は練習せず教室に集められた俺達。

 教卓に立つ成城先輩の言葉に……俺たちはアリアを見た。

 アリアは腕と足を組んで座っていたが、渋い顔をする。

 

「岩手……鴎坂は決勝まで進出した。雨で何度も予定変更になって最後まで残っちまったらしい。その決勝は……今日だ」

『……っ!』

 

 全員が目を見開く。

 どうやら埼玉と同じく延期に延期を重ねて球場を抑えられなくなり、場所も移動したらしい。

 場所は幕張の球場。

 マリーンズはビジター遠征中。

 そこしか取れなかったとのことで、ネットではんな訳あるかと賛否両論だ。

 可哀想なことに岩手県の学生は球児だけでなく応援する人たちまで千葉遠征を強制されている。

 決定したと同時に都熾さんからアリアに連絡がきた。

 そして、今日の正午にプレイボールだ。

 

「今日の部活動は岩手地区大会決勝の観戦よ。現地に行きましょう。千葉に来てるから観に行ける範囲になったわ」

『……!』

 

 仲のいい鴎坂を応援しに行こうと告げる成城先輩。

 全員が驚きつつも、野球を見れるという喜びと同志の応援に燃え上がる興奮を内心で抱えた。

 だが、予想外にも彼女が反対する。

 

「いや……中継にしてくれ」

「えっ!?なんで!?」

 

 アリアか渋い反応を見せて、俺が驚くと皆も目を丸くしながら俺に同意するように頷いた。

 全員の注目が集まる中、アリアは視線を落とす。

 

「……怖いんだ。観に行くのが。あいつらの事は信じてる。だが、怖い」

「アリア……」

 

 これは……誰でもないアリアが言うなら汲み取るしかないだろう。

 成城先輩を見たら同じ意見のようで仕方ないと頷いた。

 どうやらもう既に都熾さんにも現地観戦を誘われて、それを断ってもいるようだ。

 都熾さんも受け入れたとアリアは言った。

 ならもう……教室で中継を観る流れになる。

 俺達獅ノ宮野球部全員で学校からテレビを借りて中継をつけた。

 

『はい。本日は岩手県の高校野球地区大会、その決勝戦の様子をお届けしていきます~。実況はワタクシ、桧山でお送りします。よろしくね、はい。お願い致します。はい』

 

 なんかおっとりしたアナウンサーが担当だ。

 放送局自体は岩手県らしく、岩手地方のアナウンサーらしい。

 

『えー、実はですね。私、本日対戦校に挙がっています鴎坂の出身でして。なので鴎坂を応援しているんですけれども、公平に。ね。公平に。実況していきたいと……はい。思っております』

 

 と、いうにわかに信じ難い公平さを訴えている。

 上品な印象は受けるが独特な実況だなぁ。

 前の世界の男性アナウンサーならまずないスタイルだ。

 まあそこはなんでもいいか。

 大事なのは試合そのものだ。

 

「てかよく決勝いけたな。去年はアリアが全部投げてようやくいけたんだろ?」

「……あぁ。まあ、そうだな」

「いうて鴎外いるんでしょ。あ、でも故障してるんだっけ。今はどんな感じなの?」

「ウガイ?あぁ……マオか。もう完全回復して状態もいいらしい」

「あら。だったら打線の心配はいらなさそうね」

 

 霧島先輩、原田先輩の質問に回答するアリアと、その返答を聞いて頷く成城先輩。

 アリアが解説担当になってる。

 まあどう考えても鴎坂野球部の現役部員を除いて、この世で最もアリアが詳しいだろうからな。

 これ以上ない抜擢だ。

 アリアの鴎坂に対する知識を真横で聴きながら観戦できるのはかなりアドだな。

 

「……他所のこと全くわからないんだけど。その、うがい?って人は凄いの人なの?」

「はい。元々はハマ高の4番です。親の転勤だかで転校して鴎坂に来たようですが、本来なら流出は許されないレベルの選手です」

「マジか。ハマ高は知ってるわ。野球強いとこでしょ。そこの4番?ヤバ。チートじゃん」

 

 無知な中宮先輩が解説を受けて驚いてる。

 まあ、鴎外さんは強豪校の主砲なんだから言っちゃ悪いけど鴎坂にいるような戦力ではない。

 逆に言えば彼女がいる間に優勝を狙える最初で最後のチャンスを鴎坂は今迎えている。

 鴎外さんが転校して2年目。

 去年は惜しくも決勝で敗れてしまったが……今年は何としても甲子園に行きたいところだろう。

 鴎外さんが卒業する前の、このラストイヤーに。

 

「……ここまで来たということは甲子園を目指しているのね」

「……っ!……あぁ。約束したからな」

「……!」

 

 成城先輩の呟きにアリアが頷く。

 俺も目を見開いた。

 そうだ。

 そもそもアリアを出したのは、都熾さんがアリアのキャリアのことを考えてのこと。

 んで鴎坂の上昇は諦めた結果だ。

 それでも、アリアを欠いてここまで来た。

 それは紛れもない"覚悟"の表れだろう。

 上昇を投げ出していない、という。

 鴎坂は弱くない。

 甲子園を目指せ。

 そう告げたアリアとの約束を、守っているんだ……!

 

『正午を迎えました。岩手県地区大会決勝。西巻高校vs鴎坂高校。今、プレイボールです!』

 

 そして、サイレンは鳴った。

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