貞操観念逆転世界で低レベルな女子野球部を指導してやろうとしたら逆に分からされた   作:伊つき

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第18話:野球選手の言う、違和感

 

 VS中龍学園。練習試合2回戦。

 昨日に続き、先行の獅ノ宮の先発ピッチャーは、成城冬華。

 対する後攻の中龍学園の先発ピッチャーは、2年生の裕貴(ゆうき) 麗柳琶(うるは)さん。

 

 昨日に引き続き向こうは完全に先発投手育成モードらしい。

 ただ裕貴さんも決して未熟さや発展途上さを感じさせない。昨日の橋本(はしもと) 真広(まひろ)さん同様、現時点でもエース級の投手だ。他のチームだったらどちらも1番手を担えるだろう。

 彼女たちに欠点があるとしたら経験の少なさくらい。だから、こうして練習試合に駆り出しているという訳だ。

 

 中龍学園2年生投手、裕貴(ゆうき) 麗柳琶(うるは)さん。

 所謂変化球ピッチャー。同じ右投げでも橋本さんとは対極の存在だ。

 大きな変化の縦のスライダーを決め球とし、チェンジアップでストレートとの緩急をつけて空振りを取る。

 最速134km/h。

 

「野手は昨日と同じ、打順も変わらず。うちは昨日勝ってる。裕貴さんは充分凄いけど橋本さん程じゃない。なのに―――」

 

 俺はベンチで難しい顔をして試合と睨めっこする。

 昨日と違って、今日は俺も監督として参加してる訳だから真剣に試合を動かしていかなければならない。内容がダメなら途中からでも試行錯誤して対策しなくては。

 

 だが、俺はそんな途中で対応しなきゃいけなくなるような事態は起きないと睨んでいた。

 なにせ、俺が組んだスターティングは完璧だ。間違いないはず。

 なのに……なのに、なんで。

 

「なんで1点も取れないんだよ!?」

 

 俺は獅ノ宮が守備で全員出っ張らってる中、ベンチで1人嘆いた。

 だって、嘘だろ!?

 ぶっちゃけ守りより攻撃の方が自信があった。昨日より格段に攻撃力が高いシフトを組んだつもりだ。

 

 作戦だってちゃんとしてる。まず、長門先輩が長打で出塁して―――はい、まずそこが今日全然できてません。

 あの人、全然出塁しねえ!!

 

 裕貴さんの緩い変化球に完全に振り回されてる。スイングのタイミングが早すぎるんだよ。そして、それを完全に見透かされてるから、相手も抑えやすそうだ。

 ここまで長門先輩は2打数2三振。

 

 まずい。これは、まずいぞ。

 幸い、成城先輩が4イニング24球で無失点に抑えてるから投手戦にギリなってるが、いつ均衡が崩れてもおかしくない。

 うちの打線の調子を見る限り、先制するとしたら向こうだ。

 

 成城先輩も3回までは完全試合だったが、4回では四球も出したし、ヒットも1本許した。失点するとしたら8回以降にはなりそうだが、不安だ。

 クソ。本気でやるって言ってたのに……嘘だったのか?

 

 まあ長門先輩に関しては対ピッチャーのデータをきちんと見なかった俺も悪い。総合的な成績より様々なピッチャーとの細かい傾向まで把握しておくべきだった。

 だから、問題は成城先輩と美山先輩だ。まあ成城先輩は先発もやってるから負担も大きいし、まだわかるけど……美山先輩がマジで打たない。あの人、本気でやるって言ってたのにまたやる気ないのかよ!?

 

「ちょっといい加減打ってくださいよ!その気になれば打てますよね!?本気出すって言ってたじゃないですか!?嘘ついたんですか?本気じゃないなら負けても俺の責任じゃないですよ、美山先輩……!」

『……!』

 

 守備を終えて、ベンチに帰ってきたところに、俺は美山先輩に説教する。

 大きな声を出す俺に、ベンチに戻ってきた皆の注目が集まった。

 俺に指摘された美山先輩は、不思議そうに首を傾げた後、ニヤッと口角を上げる。

 

「え~?優希、いつも通りやりまーすとは言ったけどぉ?本気でやるなんて1回も言ってないもーん」

「なっ……!?」

 

 しまった……!俺は戦慄すると同時に、想起する。

 確かに今朝もいつも通りやるとは言ってたけど本気でやるとは一言も口にしてない。

 クソ、やらかした!話の流れ的にいつも通り=本気と解釈していた。

 

 この人の『いつも通り』は、つまりは『=やる気によって本気度合いを変える』、だ!

 てことは今日もやる気魔人のまま……っ!!あぁ、クソ。ミスった。

 こうなったら、どうにかやる気を出して貰うしかない。

 

「困りますよ、それじゃあ!やる気出してくださいよ……!」

「えぇ~?そんなの優希の勝手だもーん」

「はぁ!?いや、美山先輩が本気出せば勝つなんて簡単じゃないですか!」

「それおかしくなーい?優希一人のやる気で左右されるなら、試合の内容も結果も津川くんは関係ないってことになるよぉ?そしたら、監督なんていらないよね~!―――優希がいる、それだけでいいじゃん」

「……っ!」

 

 ぬあああ……!しまった!!言葉で従わせるつもりが、墓穴を掘った!

 俺は顔を顰める。変な汗が出る。

 ヤバい、この指摘はヤバい。何が俺にとって不利な材料かって、俺たちの会話は周知においても事実の他ないってことだ。

 

 美山先輩に俺が頼みこんでる時点で、俺自身が証明しちまってるんだ!美山先輩頼りで、俺の力で勝とうとしてないって……!

 ~~~~っ!いや、だとしても!このままじゃそれ以前の話だ!負けちまう!確かに対決はしてるけど、試合に負けるのは獅ノ宮が負けることでもある。

 野球に快感を求めてる美山先輩からしても、敗北は避けたい筈だ!

 

「このままじゃ負けちゃいますよ!?それでもいいんですか!?」

「あは~!さすがに最後の方は優希も頑張るよ~?だから、それまでに津川くんは自分の力で優勢に立たないとだね~!優希にやる気出せって言うけど、優希が勝たせる時が―――この対決、津川くんの敗北の時だよ?」

「……っ!?」

 

 美山先輩の言葉に息を詰まらせる。

 まだ気づいてないの?馬鹿だねっと嘲笑うように美山先輩は冷たい笑みを浮かべた。

 

 美山優希という人智を超えた力を持つ存在を、やる気魔人という特質を含めて上手く使うというならまだしも。彼女にやる気魔人はやめてその力を奮ってくださいとお願いするのは、俺に皆を勝たせる能力はありませんと宣言していることと同義なんだ……!

 

 それに、本気を出さないことに俺が言えることは何も無い。

 彼女も別に負けようとしてる訳じゃないからだ。ただ、美味しい場面を待ってるだけで、勝とうとはしてる。

 

 だから、俺のことが気に食わないからってわざと負けに行くなという言いつけ自体は守っているんだ。

 そうなると、俺に彼女を責める権利は……ない。

 

「クソ!」

 

 俺は悪態を捨てて、ベンチにドカッと座る。

 美山先輩はじゃ、そういうことで~!ってニコニコしながらSNS用の自撮りをし始めた。インフルエンサー部の活動もいつも並行してやってるらしい。

 俺はその様子をイライラしながら見ていた。

 そんなところに、俺より後ろに座っていた成城先輩が背後から声をかけてくる。

 

「……津川くん。心配しなくても、私があのピッチャーを降ろすわ。未来に相性のいいピッチャーが出てくるまで全員打ち崩してみせるわよ。そしたら貴方が組んだ打順も活きるでしょう」

「な、成城先輩……」

 

 前のめりに座りながらタオルで汗を拭う成城先輩が、俺にフォローを入れてくれた。

 さすがはキャプテン。口だけでなく、ここまで2打数2安打でどちらも三塁打。頼りになる。次の打席は本塁打を放つと宣言もしてみせた。

 

 ……彼女のことはもう疑ってない。有言実行してくれる、それを行動でここまで示してくれた。だが、なんだろう。

 気のせいではないと思うんだが、彼女が異様に疲弊しているように見える。

 まだ4回24球なのに肩で息をしている始末だ。

 

「……はぁ……はぁ。ふぅ……。……っ!……っ!……っぁ……ふぅ……!」

 

 俯く成城先輩。椅子に腰を下ろしながら、地面と睨めっこして荒い呼吸をしている。

 いや、そんな疲れる?こんな好投してテンポもいいのに?

 

 俺はそう疑問に思うが、さすがにこの状態の人に話しかけるほど無神経ではない。そっとしておくことにした。

 成城先輩の様子とスコアボードに記されている球数を交互に確認して、原田先輩は唇を噛み締める。

 

「24球……冬華が、24球も……っ!」

 

 目を伏せる原田先輩。

 見てらんないわ、マジ早く試合終われ……!と呟きながらタオルを被って座り込んだ。

 ていうか、24球もってなんだ?24球しか、の間違いだと思うんだが。4回フルで消化して24球。俺の見込みで1番間違ってなかったのが、成城先輩の先発転向だ。

 まさに、素晴らしいの一言。やっぱり彼女は先発が向いている。

 

「成城先輩。攻撃終わりましたよ」

「……っ。……?あぁ……えぇ……今、行くわ……」

 

 5回表が終わっても尚、動かなかった成城先輩に俺が声をかけた。

 我に帰った成城先輩は酷い顔色で少し怪しい足取りと共にマウンドへ向かう。

 そして、投球を始める前に内野陣を集めた。何か言っておきたいことがあるようだ。

 

「何?どうした?大丈夫?」

「……えぇ。それよりも、そろそろ打たせて補るのは限界だから先に言っておくわ」

 

 そう告げて、成城先輩は霧島先輩を見た。

 初回に原田先輩に向けて、「この回の打者は初球に皆、貴女の元に飛ばさせるからお願いね」と予告して以降、『何球でどこに飛ばす』かを宣言し全てその筋書き通りの投球結果を得てきた。

 しかし、それもここらが限界だ。故に、霧島先輩に尋ねる。

 

「ここまで涼香に飛ばしてきたけど、貴女にも飛ばしていいかしら?」

「お、おう。そりゃ全然いいけど……大丈夫かよ?顔色悪いぜ」

「大丈夫よ。それと、外野にも飛ぶようだったら三振を取るわ。得点圏に出塁されたら、特にそうする」

「はぁ!?そんなことしてこの先持つわけ……っ!」

 

 成城先輩の発言に原田先輩が異議を唱える。

 去年、成城冬華の1試合における最大投球数は21球。今日は、もう既に去年を超えていることになる。

 才能に盲目だった去年の3年生達による天才達の贔屓雇用においても、成城がその投球数のセーブの枷を外すことはなかった。

 

 今日は、球数の限界を超える上に、ここからさらにギアを上げると言う。

 ここで、津川和哉が知らない情報を再確認しよう。

 成城冬華は、何をやっても完璧である。しかし、彼女には弱点がある。

 

 その弱点は―――『体力』。

 

「……っ!!」

「ストライク!バッターアウト!!」

 

 試合を再開した後、マウンドで腕を振るう成城先輩は、ワンアウト2塁3塁のピンチの中、打者を三振に取ってアウトを1つ増やした。

 

 1球目の138km/hのストレートから2球目には急ブレーキのように打者の手前で失速するエグいチェンジアップを投げ、最後にはストライクゾーンの端から端まで真横に変化する魔球スイーパーを魅せて、3球全て空振りの三振。

 

 およそ女子高生とは思えない持ち球を有する一級品の投手だ。

 これほどの火力と多様に渡る武器を持つ投手を打てる高校生は、元の世界の男子高校球児にも早々いないかもしれない。

 

 だって、球速以外はもう男子プロ野球にいても遜色ない。

 ここまで何故かこれらの決め球を用いてこなかった打たせて取るピッチングをしていたのが謎なくらい、三振を取る事に長けている。

 

 もっと謎なのはこれほどの才能と能力を持った投手がリリーフだったこと。しかも去年の登板数はめちゃくちゃ少なく、野手としての起用が圧倒的に多かった。

 意味がわからない。見る目がないとしか言いようがない。

 俺は、ベンチで成城先輩のギアを上げた最高のピッチングを前に思わず笑いが出た。

 

「ははっ。やべぇ。この人を先発転向させたの、神采配だろ。ここまででちょっと不安だったけど……なんだ、俺全然監督できるじゃん!」

 

 俺はベンチでガッツポーズを作る。

 自信は確信に変わった。やはり野球は男子のスポーツだ。男子野球を知る俺は、この世界で監督として全然通用する。

 彼女達獅ノ宮は本当に凄いからもう女子野球を見下したりはしないが、それでも比較的な話、男子野球の方が高レベルなのは事実だ。

 

 彼女達有りきであるのは認めるが、彼女達と俺が組めば俺の夢みたいな目標も現実にできると確信できる!

 こんなに嬉しいことはない。

 俺の好きな野球が、この世界でも観られるようになるんだ……!

 

「ははっ。んっ……?」

 

 笑いが止まらない俺がヘラヘラとしながら試合を見続けていると、何か違和感を覚えた。

 俺が注視するのは、マウンドの成城冬華。

 

 素晴らしい三振を取った後の彼女は、なぜか顔面蒼白になり、投球間隔を空ける。

 汗を拭いながらホームに背を向け、深い深呼吸をして空を見上げた彼女は、息を整えてからまたプレートを踏んだ。

 そして。

 

「フォアボール!」

「……っ!」

 

 ツーアウトにした後の打者を。

 さっきのエグい三振ピッチングをしたのとは別のピッチャーと化した彼女が制球に苦しんで、ストレートを3球外した後最後の頼みの綱と思って投げたであろうスイーパーも外して歩かせた。

 

 これでツーアウト満塁。ピンチは加速した。

 マウンドに集まろうとした野手陣を成城先輩は片手を突き出して制止し、汗を拭ってからロジンを触る。

 その時、成城先輩が一瞬固まった。ロジンを手にしたまま目を見開いて、右腕を伸ばし、肘を凝視する。

 

「……」

 

 ここまでで1番長い間の取り方。彼女は固まったまま、沈黙を続ける。

 次の打者がバッターボックスに入っても尚、成城先輩は自身の肘を眺めている。

 

「なんだ?どうしたんだ……?」

 

 さすがに様子がおかしいので俺もベンチから身を乗り出して、訝しんだ。

 だが、杞憂だったのか。暫くした後、成城先輩は再びプレートに立つ。

 

「……っ!!」

 

 打者の手元から膝元まで曲がる大きな変化量のカーブ。

 ストライクゾーンど真ん中からストライクゾーンギリギリまで落ちるフォーク。

 その後に変化量の少ない上に速いスプリット。

 ワンボール、ツーストライク。

 

 完璧なピッチングだ。

 なんだ、なんだか調子が悪くなったのかと思ったが全然変わってない。

 あとは高めの速球でも投げれば簡単に三振が取れて、このピンチを回避できるだろう。

 だが、次の1球は俺の予想とは大きく異なった。

 

「……っ!?」

 

 成城先輩が放ったのは確かに速球。

 135km/h。

 しかし、それはストライクゾーンを大きく外れた。

 

「ボール!」

「……っ」

 

 審判のコールが響き、成城先輩は投げきった後のポージングのまま固まる。

 固まって……ん?なんかずっと同じポーズのまま動かなくなってしまった。球を放った後の伸ばしきった腕が、心做しか小刻みに震えている。

 下を向けている彼女の顔には大量の汗が浮かんだ。

 

「タ、タイム!タイム!!冬華……っ!!」

「……っ!」

 

 原田先輩が試合を止めて、凄まじい形相でマウンドに駆け寄る。

 成城先輩は、原田先輩が動いたのを横目で確認して、ポージングを解いた。右腕をたらんと垂らしながら左腕で汗を拭い、なんでもない風を装う。

 

「なんでもないない訳あるか!誤魔化し切れると思ってんのか!?あんた、肘でしょ……!」

「肘?」

「……」

 

 原田先輩が大声を張り上げるので、試合は中断。俺も監督としてベンチを出てマウンドへ向かった。

 原田先輩に指摘された成城先輩は黙りこくって、グラブを右脇に挟み、素手になった左手で自身の右肘を隠すように触る。

 俺も獅ノ宮野手も皆がマウンドに集まった。

 全員の視線が成城先輩に集まる中で、彼女は目を合わせとせずに弁明する。

 

「別に大したことはないわ。騒ぎすぎよ。戻りなさい」

「そんな訳にいくか……!感じるんでしょ?―――『違和感』ッ!!」

「……っ!」

 

 原田先輩の言葉に俺も皆も表情を強ばらせる。

 野球選手の言う、『違和感』という単語は絶望の象徴だ。決して、無視してはいけない。

 それがあると言われれば、もう怪我を疑ってもいい。大概実際に故障である場合が多いからだ。

 

「……」

 

 成城先輩はそっぽを向きながら無意識に自身の右肘を撫でる。

 きっと投げた時の感触は悪かったはず。違和感を覚えて、痛みも常に多少はあって、嫌な感じが付きまとっているはず。

 なのに、彼女はなぜか誤魔化そうとしている。まだ、投げるつもりでいる。

 

「問題ないわ。ちょっと疲れて制球が荒れてきただけよ」

「……いや、有り得ねえだろ。疲れたくらいでお前のコントロールがブレてたまるかよ」

「成城ちゃんの制球力は機械並だもんね~」

 

 成城先輩が口でなんと言おうと皆によって即否定されてしまう。

 俺もさすがに違和感って言葉は無視できないな。

 

「成城先輩!違和感は無視できませんよ。しかも肘はヤバいです!中龍側にお願いして試合中断してもらいましょう……!」

「……まだ勝負の途中でしょう」

「怪我したら元も子もないですよ!」

「……」

 

 俺が主張すると、成城先輩は俺の事をジッと見た後、何か思考を巡らせたのか目線を空に逸らして瞼を閉じる。

 一拍置いた後、彼女は決心したように目を開けて、ようやくプレートから足を外した。

 

「わかったわ。佐藤先生に連れ添ってもらって病院に行く。涼香、この場の対応は貴女に任せてもいいかしら?」

「……了解。中龍の監督に事情を説明して話つけてくる」

 

 原田先輩に一任することを告げて、成城先輩はマウンドを降りる。

 皆がベンチに向かっていく成城先輩の背中を目で追う中、彼女はふと振り返って、俺に声をかける。

 

「津川くん。貴方も私と一緒に来てくれないかしら。荷物を持ったりしてくれると助かるわ」

「わ、わかりました!」

 

 二つ返事で承諾して俺は成城先輩についていく。

 おそらく佐藤先生の負担を減らすために告げられたのだろう。おばあちゃん先生である彼女に荷運びやらをやらせるのは酷だ。

 俺は彼女に言われた通り、彼女の物と思われる荷物をベンチから回収してロッカールームのカバンも取りに行く。

 こうして、成城先輩は5回48球無失点でベンチ裏へとその背中を消し、グラウンドを後にした。

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