貞操観念逆転世界で低レベルな女子野球部を指導してやろうとしたら逆に分からされた   作:伊つき

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第28話:14回連続パーフェクトゲームの噂

 

 俺が一人暮らししている学校近くの小さなアパートの自分の部屋で、俺は成城先輩から貰ったリストをスマホ画面にPDFで映して眺めていた。

 ベッドに寝転びながら俺はメンバーを読み上げる。

 

兎美徳(とびと)学院高等高校……東地(とうち) (ひめ)浮千代(うきちよ) 珠芽(じゅか)……」

 

 リストといっても今は2人だけ。成城先輩も関東圏にいる獅ノ宮級の天才プレイヤーはこの2人くらいだと言っていた。

 ちなみに獅ノ宮級の天才がどういった人物が当てはまるのか、判断基準がわからなかったので成城先輩に聞いたところ。

 

 返ってきた答えは……例えば『中龍学園』の『橋本(はしもと) 真広(まひろ)』と言われた。

 確かに真広さんは才能というか素材型といった感じの選手だった。俺も認知しててしかも実際に見たことあるから例えとしてはかなり分かりやすかった。

 

 ただ、中龍にはもう1人優秀な選手がいるからそこが引っかかった。

 それは誰か?なんて疑問に思うのもおこがましい。

 圧倒的事実、高校最強ピッチャー『名護(なご) 憲子(のりこ)』だ。

 

 当然俺は名護さんも獅ノ宮のメンバーに負けず劣らず天才なのではないかと尋ねた。なんなら橋本さんよりも実力は上だ。なのに彼女の名を差し置いて橋本さんを先に挙げたことに俺は疑問を覚えた。

 そして、その疑問に対して答えを提示する成城先輩の発言を俺は寝転がり天井を眺めながら思い返す。

 

『名護憲子は確かに最強の投手よ。でも、天才ではないわ。いえ……厳密に言うと私達とは違うタイプの天才よ』

『違う……タイプ……?それってどういう……』

 

 ますます疑問が深まった俺に成城先輩は『違いは可能性よ』とだけ言い残して帰ってしまった。

 今の俺には意味がわからないがとにかく橋本さんのような選手が必要ということはわかった。

 

 成城先輩の可能性という言葉は学年の話かと最初思った。

 それは、彼女が候補に挙げた選手を有する兎美徳学院高等高校にもリスト外に優秀な野手が一人いたから。

 しかし、その野手はリストにある『浮千代(うきちよ) 珠芽(じゅか)』の姉であり3年生。

 

 そして、名護憲子も3年生。共通点があったので、学年を指しているという発想に繋がった。

 だが、プロで年齢が~という話ならともかく高校生の学年でそんなに変わるだろうか?

 

 もちろんすぐに卒業してしまうという欠点はあるが、1年生から3年生まで高校生と言うだけで若くて可能性があると言えるだろう。

 橋本さんが急成長する可能性があるといっても名護さんが同じような年齢で橋本さんを大きく離してるのも事実だ。

 

 だが、そこまで考えて思い出した。

 名護さんは美山優希に打たれている。

 そして、成城先輩は言っていた。美山優希に呑まれない為には美山先輩に匹敵するメンバーが必要だと。

 

 それは必ずしも彼女に全てのパラメータで勝てと無茶なことを言ってる訳では無い。

 例えば現状の獅ノ宮野メンバーでも同じことが言える。

 霧島先輩のスローイング技術は本気の美山のスローイングに匹敵するという。長門先輩のパワーは本気の美山先輩と同等だという。

 

 つまりはそういうことだ。

 一分野でもいいから美山先輩の能力を1つでも持っていることが獅ノ宮ベストナインに入れたい条件。

 

 名護さんは敵として打たれたから不採用という訳ではなく、美山先輩が投手をした際の能力に掠りもしてないと成城先輩に判断されたから弾かれたのだ。

 対する橋本さんはポテンシャルは名護さん以上と名護さん自身も評価していると成城先輩は言っていた。

 

 つまり、橋本真広は美山優希に匹敵する能力を1つは持っている『かも』しれない。

 そういった『かも』が大事で、それが成城先輩の言っていた『可能性』だ。

 

 ―――獅ノ宮ベストナインとは、つまり実質9人の美山優希を擬似的に揃えることを指している。

 

東地(とうち) (ひめ)浮千代(うきちよ) 珠芽(じゅか)……」

 

 俺は、寝返りをうちながらもう一度リストの名前を読み上げる。

 兎美徳(とびと)学院高等学校。

 私立の中でもトップクラスのお嬢様高校で、甲子園優勝回数は過去27回。

 

 名護と橋本という逸材が現れ中龍が黄金期を迎えるまでは兎美徳が絶対的王者と呼ばれ、優勝常連の強豪校だった。

 だった、と過去形を用いたがその実力が今は落ちぶれている……という訳では無い。

 

 兎美徳の強さは今でも変わらない。ただ、近年は中龍がそれをさらに上回っているというだけだ。

 故に、リストアップされた選手が中龍の選手に劣るということもなければ、中龍でも勝っているのは片手で収まる程度の逸材だ。

 

 東地(とうち) (ひめ)。2年生。

 高校最強の強打者だ。ポジションは兎美徳ではセカンドだが、本職はファースト。兎美徳は打線重視でファーストが2人スタメンに組み込まれているらしい。

 

 近年中龍にやられているのはこの東地さんをサブポジに付かせているからとも言われている。

 ならば、ファーストが空いている獅ノ宮にとって彼女は絶好とも言える。……あくまでこちら側からしたらだが。

 

 別に出場機会は貰えているし、それどころかポジションが空いていなくても出される程だ。兎美徳にとって彼女をセカンドでも出すことが兎美徳なりの重宝しているということだろう。

 何より超お嬢様だ。

 

 それが普通の公立高校である獅ノ宮に来てくれるとは思えない。

 だが、こっちも誰でもいい訳じゃないから成城先輩はリストアップしたんだろう。

 

 続いて、浮千代(うきちよ) 珠芽(じゅか)。1年生ピッチャー。

 東地さんと同じく動画を漁ってプレーを見たが、確かにこの()は凄い。

 橋本さんを見ている時と同じでこれからの成長を期待させてくれる。

 

 そう思ってようやく気づいた。

 名護さんは橋本さんや浮千代さんと異なり、既にある程度成長している。故に、『これから』よりも『今』の彼女に期待して見ることが多い。

 なるほど、こういうところも『可能性』に含まれるのかもしれない。

 

 

 ―――と、いう訳でリストアップされた選手達を見てきたが。

 

 

「む、無理じゃね……?この人達引き抜くの……」

 

 俺にはやらかしと責任があるとはいえ、これは無謀としか思えないしやる前から弱音を吐かざるおえない。

 お嬢様達が一般校に転校というだけでもキツイが、何より実績と歴史とブランド力のある強豪校が引き抜きなど許すはずがない。

 

 ……まあ成城先輩のことだから何か考えがあるんだろうが、俺としては他を探した方がいいんじゃないかと思う。

 獅ノ宮級の天才は妥協しては手に入らないとは俺も思うが、さすがにこれは高望みしすぎだ。やはり妥協はどうしても必要になってくる。

 それに何より。

 

「……この学校に引き抜きの話持ち出すの超怖ぇ」

 

 いや、マジでコレ。ビビる資格などないかもしれないが、感情だから許して欲しい。

 超お嬢様強豪校とか絶対怖いじゃん。下手に刺激しない方がいいと思うんだが……でも成城先輩はやる気満々だしなぁ……。

 

「……代わりに誰か見つけたらここにアタックする話無くなるかな?ははっ、いやそんな都合よく代わりいたら苦労しないけど」

 

 独り言を呟きながら乾いた笑いを浮かべて俺はSNSを用いて高校球児について調べる。

 逃避気味にダラダラと高校球児に対する投稿を眺めること2時間。

 

 

 ―――俺は、偶然にもとんでもないモノを見つけてしまった。

 

 

 それは。

 

 

「……は?14試合連続パーフェクトゲーム……?」

 

 地方紙に取り上げられた小さな記事。

 俺はそこに記載された文字列を5度見くらいした。

 

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