貞操観念逆転世界で低レベルな女子野球部を指導してやろうとしたら逆に分からされた 作:伊つき
「ねっ、津川。野球の話しよ!」
「はい!しましょう!」
「……」
練習の合間、度々雑談する津川と涼香。
その2人をよく見るのは、霧島
グランドの隅っこにある水道でスポドリのジャグタンクを洗う津川に、「コップは私が洗うよ!」と言って涼香が手伝っている。
目的は親切じゃなくて野球雑談がしたいからだ。
だが、傍から見れば好意があるから口実を作って一緒にいるようにも見える。
とはいえ紗永は野暮な指摘をしない。
代わりに、ベンチに置いた荷物からタオルを取りに来た
「やけに見てるわね。あの2人がどうかしたの?」
「あぁ。いや、別にどうもしねえけどよ。逆に冬華はあの2人見て、こう……思うことねえか?」
「……そうね」
紗永に言われて2人の様子を一瞥する冬華。
冬華からしても、言わんとしていることはわかる。
だが、正直まだ
津川と涼香は、現段階ではただの仲の良い後輩先輩でしかない。
何かあるとしたらそれはこれからの話で、それも今後の展開次第だろう。
今下手に手を加えると、それは余計なお世話でしかない……というのが冬華の見立てだ。
「……言いたいことはわかるけど、今は友達ですらないんでしょう?だったらそっとしておきなさい」
「そうしたいのは山々なんだけどよ。涼香は超奥手だぜ?ほっといたら今の関係から何も進展しねえんじゃねえかと思うとな……」
「だとしても何もすべきではないわね。どうしても気になるなら涼香に、一緒に遊びに行ったりする気はないのか尋ねるくらいね」
「おぉ。なるほどな。そりゃいいな」
冬華の言うことに一理あると、紗永は納得したように目を丸くする。
なので、翌日。
さっそく昼休みに話を振ってみた。
「そういやお前、最近津川と部活中仲良いけどよ。同じ野球趣味同士で一緒に試合観に行ったりしねえの?」
「……は?きゅ、急に何?」
指摘された涼香は明らかに動揺する。
この感じは言われて初めて意識したといったところだ。
そして、意識するとそれで頭がいっぱいになる。
まさしく恋愛経験の浅い処女である。
「いや、仲良い割に遊びにいったりしねえんだなぁって思っただけなんだけどさ」
「そ、そりゃ異性だし……」
「関係あるかぁ?それ」
「……っ」
目を丸くする涼香。
紗永はツッコミ過ぎたか……?と内心焦り、冷や汗を流すが、涼香の内心では紗永が言い出してくれたのは助かったという面が大きかった。
と、いうのも涼香もそういう感情がない訳では無い。
津川を意識していない訳でもない。
故に、恋愛経験豊富な紗永からこの話題に触れてくれたのは涼香からしても舞い込んでくれた
だから、食いつく。
ただし、処女特有の興味無いですよなアピールを忘れずに。
「ま、まあそうだよね。た、確かに。ち、ちちちなみに私が津川をそういう……さ、誘ったりするのって紗永的にはありだと思う?変じゃない?」
「お、おう。まあ……そうだな」
涼香はそっぽを向きながら冷静を装ってるつもりなようだが、紗永は困惑気味に顔を顰めた。
そして、思った。
こいつ動揺しすぎだろ……、と。
明らかにどもり過ぎだ。
全然隠せてない。
「……じゃあ、どっかに誘ってみようかな」
涼香は、肘をついて口元に手を当てながら、窓の外を眺めた。
顔どころか耳まで真っ赤だ。
しかし、顔を逸らしてるのでどんな表情をしているのかは紗永には見えない。
見なくても、簡単に想像できるが。
「……協力するわ。言い出しっぺだしな。あたしでよかったら相談乗るぜ?」
「うん。ありがとう。正直頼りにしてる」
涼香は自分の経験が浅いことを自覚している。
だから、ここは素直になった。
そして、放課後。
部活中に津川を誘おうとするも、処女の涼香はどもりまくりな上に、話を振る勇気もでない。
悪戦苦闘の末……最後には誘うことはできた。