貞操観念逆転世界で低レベルな女子野球部を指導してやろうとしたら逆に分からされた 作:伊つき
「原田先輩。昨日言ってた私から原田先輩への指導ですが、練習メニューを組んできたので自主トレの時間で取り組んでください」
「……わかった。直接は指導してくれないの?」
「すみません。ちょっと中龍助っ人の方々の分がまだ終わってなくて。優先度としてはそっちが高いので、ご了承ください」
「……そう。わかった」
合宿2日目。
朝イチで廣目が原田先輩に資料を渡した。
原田先輩は不満そうだが、事情が事情なので仕方ないと渋々納得したようだ。
そんなやり取りを朝食後のグランドに入ってすぐに済ませて、廣目はやるべきことに移行する。
「今のわかりました?踏み込みが甘いんですけど」
「うん!甘いね。動画撮れてるー!?」
「撮れてる撮れてる!」
「見せて!」
グランドで。
中龍助っ人ズの投手(転向含む)3人、吉田(2年)・山田(1年)・田中(1年)が廣目と一緒に投手として練習に取り組んでいる。
3人とも廣目の指摘を受けて、いわば"改造"を施されたらしい。
修正点を取り入れた3人は、1人がパット型の端末で動画を撮り、1人がパソコンで廣目が待ってきた分析システムにかけてその結果を見てる。
廣目自身はキャッチャーとして働きながら、実際に球と投球フォームを"眼"で"視て"その場で指摘してる。
このコーチングは、まず廣目が要求する"変化"を彼女たち自身が受け入れてくれるかが最初の難関だと廣目は言っていた。
正直、1日目はそれに費やすくらい納得してもらうのは大変だったらしい。
特に2年生で投手歴も長い吉田
逆に山田さんと田中さんは驚いたりはしつつも割とすんなり受け入れてくれたらしい。
「おい、いつまでやってんだ!マウンドはこのアリア様のモンだぜ。それにユイは私のバッテリーだ!いつまでも貸してやらねえ。さっさと紅白戦するぞ!」
「もうちょい待てよ。せっかちな奴だな……」
助っ人ズと廣目の間にアリアがズカズカと入ってくる。
それを追いかけて呆れたように制止するのが霧島先輩。
アリアの大声を聞いて外野で練習していた他のメンバーもなんだなんだと様子を見に来る。
「アリア先輩。スケジュールが押しててすみません。昨日取り込んだことをモノにするのに、時間がかかってまして……今日の午前は練習にしました。紅白戦は午後です」
「なんだと!」
廣目の返しにアリアが地団駄を踏む。
そんな彼女を霧島先輩が宥めて強引に連れて行った。
廣目はため息をついて指導に戻る。
るきあと
あとはピッチャー勢の3人だけだから本当にあともう少しの辛抱だ。
廣目の言う通り、午後には予定通り進むだろう。
まあ我儘アリアは納得しないだろうが……。
「ありがとう!廣目!」
「廣目さんに言われたやり方で頑張ってみる!」
「自信湧いてきたよ。獅ノ宮の役に立てるようになれる気がする!」
「まだ礼を言われるには早いです。これからが本番です」
助っ人ズ3人に囲まれて持て囃されるも淡々と対応する廣目。
丁度正午になった頃、廣目の指導も終わった。
これから昼食を挟んで午後は紅白戦となる。
その前に、食堂に向かう道で廣目が原田先輩に声をかけた。
「原田先輩。お昼ご飯を食べ終わったら紅白戦のチーム分けをしましょう」
「あぁ……うん。てことは私がリーダーのチームと廣目がリーダーのチームに分けるってこと?」
「はい。そういうことです」
廣目は頷いて、食堂のおじちゃんに凄まじい量を頼む。
原田先輩は並べられたお盆の数に「私、廣目が食べ終わるの待ってなきゃじゃん……」と渋い顔をする。
しかも運ぶのを手伝わされていた。
その代わりに同席して廣目から野球論や守備論を根掘り葉掘り聞き出していたが。
「まず、私と原田先輩が分かれるので、必然的に私のチームにアリア先輩を入れます」
「まあアリアの球は廣目にしか捕れないし、捕れないと試合になんないからね」
昼休憩を終えて、グランドに集まったフルメンバーを前に廣目と原田先輩が手持ち式のホワイトボードに【紅組(原田チーム)】と【白組(廣目チーム)】を書き並べる。
そして、白組の欄にさっそくアリアの名前が追加された。
「よし!私がいるチームに天才組全員だ!この超逸材ピッチャーのアリア様の周りを固めろ!!」
「お前、人の心とかねえのかよ……。ワンサイドゲームになるじゃねえか」
霧島先輩の指摘通り、チームバランスは考えないと紅白戦の目的である個々の起用法の模索、つまり試合での実際の稼働状況が一方的な試合内容で見れなくなる。
本末転倒だ。それじゃあやる意味がない。
「私様なアリアは置いといて……打たせないバッテリーがそっちに行くならこっちは守備型と打撃型2人ずつ天才組から欲しいんだけどどう?」
「はい。それがいいと思います。バランス的にも」
「おっけ。じゃあ
「わかりました。では、こちらは美山先輩と中宮先輩を」
淡々と天才組の振り分けが決まっていく。
今のところはこんな感じだ。
紅組:原田、霧島、長門、クレア
白組:廣目、アリア、美山、中宮
良いパワーバランスだと思う。
クレアは未知数だが、美山先輩はギャラリーがいない紅白戦じゃ本気は出さないだろうし、出しても5割……いや7割だとしたら割と拮抗するだろう。
アリア&廣目の世界記録の豪速球と打たせない振らせないのカンニングリードの組み合わせはチートだしそこに美山先輩を加わせるのはヤバいが、アリアを得意とする長門先輩はちゃんと敵だし大丈夫だろう。
メタは張れてる。
美山先輩が廣目と同じチームなのは……多分そうじゃないと美山先輩が参加すらしないからってのもあるだろう。
美山先輩と廣目が敵対すると、美山先輩が打席に立った時に廣目のリードを感じることは出来ても見ることは出来ない。
廣目を観察したい美山先輩にとってそんな旨味のない試合は参加する意味を見いだせないはずだ。
と、なるとこのチーム分けは正しい。
そして、原田先輩と廣目もそれを分かってて組んだんだろう。
「あとはどうします?」
「んー。こっち捕手いないからまず田島貰おうかな」
「そうですね。そこはマストですね。じゃあこっちは
「おけ。じゃあこっち先発いないから吉田で」
「打撃が弱いのでソユン先輩貰います」
「こっちはソヨン。最強バッテリーが敵な分、守備で失点減らしたいし」
「山田先輩で」
「るきあ。リリーフいなかったわ」
「田中先輩」
……なんか最終的に取り合いっこみたいな方式になってメンバーが決まった。
皆はただ静観してた。
思うところなかったようだ。
まあ結構補強ポイントを加味しての指名が多かったし、皆もそれは分かってるんだろう。
不満はなし、よかった。
と、いうわけで決まったメンバーは以下だ。
紅組:原田、霧島、長門、クレア、田島、吉田、ソヨン、山崎
白組:廣目、アリア、美山、中宮、
尚、初心者で投手経験しかない山崎と
とはいえ互いに内野だとチーム分けした意味が無いから敵チームの時は外野だが。
るきあと
投手陣もDHがない高校野球じゃ打席に入ることもあるしこれも経験だ。
8人対8人の紅白戦だが、センターは一定エリアに打球が落ちた場合、自動アウトとなることでセンターは不在でもOKになった。
ちなみに、球審は成城先輩。
塁審は廣目が"眼"で視るらしい。
プレイ中に的確に判断できると自負していて、全員面食らったが、廣目ならやりそうだという謎の納得感でそれで良しとした。
あと性格的にフェアな判断するだろうしな。
んで、俺はボールボーイとスコア係と雑用マネ。
まあほぼいつも通りだな。
試合の進行をスムーズにするために動く。
あと選手にタオル渡したり飲料渡したりそんな感じだ。
これで大体説明は終わりだろう。
よし。
センターエリアにカラーコーンをいくつか置いて円を作ったり、スコアボードを用意したり、色々と準備は終えた。
両スタメンはこちら!
〇紅組
1.1B クレア・バローナ
2.2B
3.LF
4. C
5.SS
6.3B ユ・ソヨン
7. P
8.DH
RF-ユ・ソユン、
〇白組
1.LF
2.SS ユ・ソユン
3.3B
4.2B
5.1B
6. C
7. P アリア・オイゲン
8.DH
RF-
球審:
塁審:
ボールボーイ:
イニングは7回まで。
いざ―――プレイボールだ!