貞操観念逆転世界で低レベルな女子野球部を指導してやろうとしたら逆に分からされた 作:伊つき
中宮先輩のプレーは、本来ならショートがやるファインプレーだろう。
だが、この世界の野球は女子野球で、グランドは女子野球の規格だ。
男子野球とは常識や勝手が違う。
だから、"レフトが一塁を刺す"という事象も女子野球のグランド規格内で男子級のプレイヤーが混じっていれば起こりうる。
要するに。
外野が狭く、塁間も短いこと。
そして、中宮先輩の能力。
この2つの相乗効果でファインプレーは起きた。
「すげぇ……」
俺はベンチで感嘆した。
正直言って、今の中宮先輩は神がかってる。
完全に覚醒してると言える。
豪速球を投げるアリアや天才的なバッティングを魅せるクレアという目立つ能力の2人を、強肩という同じ派手さで食っている。
あの中宮先輩が、だ。
初心者で最初は野球に消極的だったのに、そんな中宮先輩が今、天才たちを凌いでいる。
間違いない。
今日、ここに新生が誕生した。
男子級の外野手だ。
そんな彼女がレフトを守る中、また天才vs天才が始まろうとしている。
「
「……!」
マウンドの上で仲間の名を、仲間に対する呼び方ではない呼び方をするアリア。
対する長門先輩もその意識に気づいて、真剣な表情に移行する。
アリアは過去に、長門先輩に打たれている。
人生で唯一アリアの150キロを打ち砕いた女、それが長門 未来。
だから、アリアにとって長門先輩は味方であって、ライバルでもある。
『おい、ミク!勝ち逃げなんざ許さねえ。絶対いつか抑えてやるからな!』
『う、うん』
アリアが転校してすぐ長門先輩に宣言した。
その次の日も。
『ミク!今日こそお前を倒す!勝負しろ!おい、ミク。どこだ!?早く部活に行くぞ!!』
『ちょっ……!うるさい、教室まで来ないで!』
授業が終わった直後に3年生の教室に乗り込んでくるなんてこともこの日だけでなく、しばしば……。
また、ある日。
『ミク!今日こそ勝たせろ!ただし、手は抜くな!抜いたら殺す!』
『め、めちゃくちゃすぎる……もう解放して欲しい……』
『てかあたし達からしても毎日毎日うるせえよ!もうスローボール投げろよ。そしたら抑えられんだろ!』
『ふざけんな!このアリア様が自慢のストレートを打たれたままで終われるかよ。私のストレートは最強なんだ。なのに、打たれた。そんなことあっちゃいけねえ。ストレートで抑えなきゃこの腹の虫は収まらん!』
『め、めんどくせぇ……!!』
と、こんな感じで毎日毎日……途中霧島先輩の擁護はあったものの、長門先輩は初めて後輩に苦労したという。
紅白戦のチームがわかれた時は、「3打席あったら1回くらい負けないかなぁ……」とボヤいていたほどに。
自分が負けることを願うなんておかしな状況だ。
だが、手を抜いたらすぐに見抜いてくるアリアが相手じゃ、仕方ないと思う。
毎日のウザ絡みを解消するにはもうアリアが自分の力で勝つことを願うしかない。
「勝負だ!ミク、今日こそ勝つぜ」
「あーはいはい……」
ダル絡みを挟みながら両者が対峙する。
アリアVS長門先輩、まずはその第1打席だ!