貞操観念逆転世界で低レベルな女子野球部を指導してやろうとしたら逆に分からされた   作:伊つき

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第69話:紅白戦再終幕

 

「クソがぁぁぁぁぁーーーっ!!!!」

 

 アリアは打たれた。

 彼女の叫びがコダマして、その声と共に柵を超えて外野より外に打球が吸い込まれていく。

 白組、先制ソロホームランだ。

 これによりスコアは以下になる。

 

 

 紅組 1 - 0 白組

 

 

「そらド真ん中158km/hは打たれますよ」

「えぇ!?世界記録じゃん!」

「そら打たれるって……あれ?なんか常識が違う……」

 

 マウンドに集まった野手陣。

 廣目のセリフに中龍助っ人の田中さんと山田さんは驚く。

 ソユン先輩も含めて、去年の長門先輩を知っている者は、彼女が速球を得意としていることは既知だろう。

 しかし、まさかそれが140超えどころか160手前まで簡単に打ってしまうとはさすがに知らない。

 だから、世界記録の豪速球を寧ろ得意とするという長門先輩の最新の常識には皆困惑していた。

 そして今、ダイヤモンドを軽く1周した長門先輩がホームベースに帰ってくる。

 

「はい。ナイス未来。1本ゴチ」

「う、うん」

 

 ベンチで迎えるのはメットやらを脱ぎ終えて拳を突き出す原田先輩。

 長門先輩が打つ時は必ずホームラン、アリアからは打てるという認識を当たり前の前提としている彼女は軽いノリで長門先輩を迎えた。

 白組の方は既存メンバーが多いから紅組ほど新鮮な反応はないな。

 

「し、信じられん……話には聞いていたが、奴はさらに上の球速があるのか。だが、それより158km/hをあれほど簡単に……その方が信じられん……っ!」

 

 あ、いたわ。

 まだ長門先輩を知らなくて、アリアとの相性も知らない人。

 クレアがベンチに帰ってきた長門先輩を驚きの目で見ていた。

 いや、もはやちょっと引いてるなアレ。

 

「よーし!長門先輩に続くぞー!」

 

 ホームランを見て、やる気満々になった中龍助っ人キャッチャーの田島さんが打席に入る。

 彼女は左打席、左打ちだ。

 だが、まあ……あの感じで打席に入るのは危険だな。

 長門先輩が軽く打ったから誤認してしまうのも無理ないが。

 

「いやいやいや!やっぱ無理~!」

 

 案の定田島さんは三球三振。

 なんなら2球目から腰が引けた。

 そらそうだ。

 アリアの奴、容赦なく153km/hぶち込んできたからな。

 まあ誰が相手でも手は抜かないってのは良いとこでもあるが……。

 

「ハーハッハッハッハー!三振してやんの!雑魚め!!」

 

 うん。

 煽らなければな。

 

 と、いうわけで一回表が終わり。

 内容はクレアと原田先輩がレフトゴロ、長門先輩ホームラン、田島さん三振という特殊なモノだったが、これで白組が守備に回ることになる。

 紅組の守備はセカンドの原田先輩がやたら深い位置を守ってること以外は普遍的なフォーメーションだ。

 

 そして、一回裏。

 先頭打者は、守備で現在覚醒中―――中宮(ちゅうぐう) 秋奈(あきな)

 

 まあ、いくら覚醒してるとはいえ彼女は守備の才能持ち。

 攻撃中はそう驚異には……そう思っていた時―――。

 

「……っ!!」

 

 

 中宮先輩の気張ったように漏れ出た声と共に、カキィン!と金属音が響いた。

 しかも、それは完全に"捉えた"音だった。

 マウンドの中龍2年ピッチャー吉田さんもキャッチャーの田島さんも思わず見上げる。

 

「は!?嘘でしょ!?」

「マジか……!打撃もかよ!!」

 

 二遊間の原田先輩と霧島先輩も驚愕する。

 彼女達だけじゃない。

 全員が打球を目で追って、中宮先輩が描く放物線は送球だけではないということを目にしていた。

 中宮先輩の打球は……伸びて、伸びて、カラーコーンで囲ったセンタースペースを超える。

 惜しくもスタンドインはしなかったが、フェン直ならぬ柵直!!

 ライトの廣目もレフトの長門先輩も追いかけるしかない。

 センター超えの長打だ……!

 

「……っし!!」

 

 二塁ベースに到達した中宮先輩は噛み締めるようにガッツポーズを振り下ろす。

 凄い!中宮先輩、打撃も含めて現在覚醒中だ……!!

 確かに彼女は打撃センスもよかったけど、男子級の才能がある訳ではなかった。

 なのに、まさかこんなにすぐに開花するとは。

 ひょっとすると、守備と打撃のコンディションが連動するタイプなのかもしれない。

 

「悔しいー!」

「次次!切り替えていこっ!」

 

 中龍助っ人の吉田-田島バッテリーが悔しがるが、次の打者にすぐシフトする。

 中宮先輩は初心者だが、守備のポテンシャルは肩力において抜群で、打撃も悪くない。

 それどころか調子のいい時は攻守共に能力向上するようだ。

 これは紅白戦での新たな発見。

 目的通りに情報収集ができた。

 

 試合はさらに進む。

 続くソユン先輩が右打席に入って綺麗に三遊間を抜ける単打を放ってノーアウト1・3塁。

 しかし、3番右の美山先輩はニコニコしながら一切振らずに見逃し三振。

 4番右の田中さん、5番右の山田さんは共に変化球で凡退と三振。

 田中さんのファーストゴロの間に中宮先輩が主審兼両チームコーチャーとして成城先輩の指示を出し、その指示を受けてホームイン。

 これでまたスコアが動いた。

 

 

 紅組 1 - 1 白組。

 

 

 クレアのファースト守備は平均よりちょっと下くらいだった。

 具体的には守備適性Dの、捕球EスローイングD肩力Cくらいだ。

 

 2回は平行線。

 2回表、紅組三者三振。

 2回裏、白組三者凡退。

 

 3回表、紅組るきあが三振。

 

「ちょ!?速すぎじゃない!?こんなん普通打てんし!あーしは無理!!」

 

 クレアが単打で出塁。

 

「クソ……!お前レフト前だとアキナに捕られるからってライト前狙いやがったな~!!」

「当然だ」

 

 マウンド上で地団駄を踏むアリアに、一塁上のクレアが腕を組んでふんっと鼻を鳴らす。

 確かにレフトは中宮先輩に刺される危険性がある。

 だからといってあの豪速球に対して、打球の行方をある程度操れるのは流石だ。

 クレアは飛ばしたいところに狙って飛ばせるようだ。

 これは成城先輩や美山先輩も同じ能力を有している。

 

「よし、三振!」

「……っ。速いし、反応できないとこ突いてくるし、アリアと廣目の組み合わせヤバいわ……」

 

 続く原田先輩は見逃し三振。

 ツーアウト1塁。

 次のバッターは長門先輩。

 

「クソがぁぁぁぁぁーーーっ!!!!」

「えぇ……」

 

 まさかのテイク2。

 相変わらず廣目のリードを無視してド真ん中全力をぶち込み、自分の力で抑えようとしたアリア。

 打った張本人の長門先輩も呆れて絶句してる。

 今度は最速159km/h。

 が、寧ろ速くなる分には長門先輩の餌食だ。

 無事に柵越にぶち込まれた。

 てかさっきの第1号より飛距離伸びてるな……。

 長門先輩の勝ち越しツーランホームランでスコアがまた変わった。

 

 

 紅組 3 - 1 白組

 

 

 次は田島さんが見逃し三振。

 3回表終了。

 

 3回裏、中宮先輩が単打で出塁。

 ソユン先輩は中宮先輩に走塁の練習をさせるために送りバント。丁寧で上手かった。

 続いて美山先輩はやはりニコニコで見逃し三振。

 ツーアウト二塁。

 4番田中のヒット性の当たりをセカンド原田先輩の守備範囲で一二塁間を超えずに済み、一塁アウトでチェンジ。

 1者残塁だ。

 

 4回表。

 アリア×廣目によって、5番霧島6番ソヨン7番吉田が三者連続三振。

 チェンジ。

 

 4回裏。

 アリアが三遊間抜ける単打を放つも、山田廣目面平良(めたいら)が凡退。

 1者残塁でチェンジ。

 

 5回表。

 るきあミノサン。クレア単打で出塁。原田先輩が送りバントを試みるも失敗で、三振。長門先輩は四球で出塁。

 あまりに長門先輩を意識するあまり、アリアは無意識にストライクゾーンを避けて、1球も入らなかった。

 アリアは自分でわかってて、「ク、クソ……っ!」と汗を拭って苦い表情を見せた。

 続く田島を三振に抑えてスリーアウトチェンジ。

 

 5回裏。

 中宮先輩が変化球を捉えるもセカンドライナー。ワンアウト。

 ソユン先輩も鋭い打球を放ったが、レフトライナー。ツーアウト。

 美山先輩、当然見逃し三振。スリーアウト。チェンジ。

 

 6回表。

 5番霧島6番ソヨン7番吉田、三者連続三振。

 チェンジ。

 

 6回裏。

 田中センター前ヒット。

 山田廣目アリア三者凡退。

 1者残塁。

 

 

 そして、最終回。

 

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