貞操観念逆転世界で低レベルな女子野球部を指導してやろうとしたら逆に分からされた 作:伊つき
「寝坊して大変申し訳ありませんでした!!」
「よし、殺せ」
「いや。刑、
土のグランドに膝をつける彼女は、既に罰を受けているようなものだが、その上さらに重すぎる判決が言い渡された。
あまりに重すぎて取本さんが顔芸を披露してしまっている。
そして、それを告げたのは―――2年生キャプテン、
そんな彼女に取本さんは低姿勢で手を合わせてねだる。
「お姫ちゃ~ん。何卒、減刑を頼むよぉ~!」
「
「お嬢を気安く呼ぶんじゃないよ!」
「東京湾に沈めるよ!」
こっっっっっわ。
だって、怒号飛び交ってるし。
グランドに案内するや否や、ベンチがあるのにベンチ前に椅子を用意してそこに鎮座したのは
なんと、驚くことに彼女以外は一切座ろうとせず、彼女を直立姿勢で取り囲んでいる。
まるで、
彼女は、
つまり、【
校内の治安は凄まじく悪く、これといって"テッペン"もいなかったので派閥が分かれ、校内で度々抗争が起きていたとのことだ。
それが原因で甲子園大会常勝軍団だった野球部も、野球どころではなくなり、中龍と立場が入れ替わってしまった……との説もある。
しかし、理事長の孫である姫さんが入学してからというものの、校内の上下関係におけるヒエラルキーは決定づけられた。
ただ孫というだけでなく、文武両道才色兼備。
何事においても力を示し、彼女は晴れてヤンキー高の
ヤンキー高は、ヤクザ高に進化したらしい。
いらない進化すぎる……。
とはいえ、東地さんの台頭で常勝だった
「アリス。罰としてランニング」
「おっ。さっっすがお姫ちゃん!やっぱペナルティは走り込みだよね~!わかってる―――」
「200周」
「えっ」
一瞬喜んだ取本さんが固まる。
ただ1人椅子に鎮座する
「い、今なんて……?」
「グランド200周。ペナルティ」
「いつも100周じゃん!なんで2倍!?」
「お前、獅ノ宮のモンに嘘ついたらしいじゃない。だから、追加で2倍」
「ヒョエ……」
取本さんからおよそ人間からは聞いたことない声が出たぞ。
魂も一緒に口からでてそうだ。
てか完全に白目向いてる。
またしても美人が台無しだ……。
「う、うおおおおお!こうなったらヤケだ。やってやらぁ!」
「前向きなのウザ。やっぱ250周で」
「なんでやねん!!」
関西出身だからか、取本さんによるキレッキレのツッコミが入った。
しかし、すぐに切りかえて叫びながらランニングを始める。
ほ、本気でやるのか……凄いな。
まあウチの野球グランドはそんなに広くないのがせめてもの救いか。
よかった、ウチのグランド広くなくて。
「よし、じゃあミーティング始めよっか」
ただ今爆走中の取本さんは完全無視で東地さんは部員を集めてミーティングを開始した。
ひ、酷い……。
「
「かしこまりました、姫様。では、これにてミーティングを開始致します。まず、今日の練習試合の目的ですが―――」
ミーティングをすると口火を切っても、東地さんが主導する訳では無いようだ。
東地さんに指名された3年生正サードの
そして。
まず、今日こんな大会直前に練習試合を受け入れてくれたのは、"試合勘"を取り戻すためだという。
なので、中龍の時と違いガチメンはガチメンでも主力選手だけのフルメンバーで挑んでくるようだ。
中龍は、橋本 真広さん過保護スタメンではあったが、センターとセカンドは次期主力候補の2年生だった。
だが、
マジでガチだ。
「先生。スタメン発表」
「は、はい……!」
桑名さんの進行が終わり、ミーティングも終盤になった頃、東地さんの一言で名ばかりの顧問先生が指示を受ける。
もうここまでの様子でわかったが、3年生だけでなく顧問の先生や大人たちまでもが東地 姫を"
顧問の先生は若い女性で東地さんにビクビクしている。
20代前半で私立の名門に赴任できるのだから優秀な人なんだろうけど、それでも東地さんに怯えるほどに完全に内政は彼女に掌握されている。
兎美徳は、そんな完全閉鎖的独裁環境にあり、外からわかる情報は少ない不気味な高校だ。
まあ、そんなことは置いといて、顧問の先生によるスタメン発表が行われる。
と、同時にグランドを周回してきた取元さんが肩で息をしながら戻ってきて、ビジター側3塁のベンチ前で膝に手をつく。
「よ、よし……!250周終わった!」
「えっと。1番ショート取本 アリスさん……!」
「鬼か!?」
思わず取本さんが顔を上げてツッコミを入れる。
うわぁ……。
これ絶対わざとだ。
桑名さんが手に持っていた手書きのノートに書いてある情報と違う。
桑名さんがわざわざ訂正して、打順が繰り上がった。
試合前に既に満身創痍の取本さんをわざわざ1番バッターに変えたんだ。
しかも試合はもうすぐ始まる。
取本さんは休む暇なく打席に立たなきゃいけない。
これも恐らく東地さんの指示だ。
顧問の先生がチラチラと彼女を確認して「これでいいんですよね?」みたいな目線を送ってるから間違いない。
身内ですら倫理観を疑って何度も確認してるんだ。
凄い。
いや、凄いというかもはや怖い。
スパルタすぎる。
1回の遅刻でペナルティが重いし多い。
兎美徳野球部、めちゃくちゃ昭和の体育会系だ……!
「よし。アップすんぞ。お前ら、練習試合だからって手ェ抜くんじゃねえぞ。死んでも勝て。負けたら多摩川に沈めて帰るぞ。ただし、遠泳で兎美徳まで戻ってきたやつだけ許してやる」
ミーティングが終わってようやく立ち上がった東地さんが、竹刀を手に告げる。
またとんでもない事言ってんなぁ……。怖ぇ。
「お前らぁ!わかってんな!?返事がねえぞ!!」
『お、押忍っ!!』
「お嬢!大変です!」
部員に催促する東地さん。
そこに駆け寄ってきた女子マネージャー。
東地さんは完全に輩の表情でマネージャーを睨む。
「あぁ!?てめぇ、何返事サボって―――」
「し、獅ノ宮野球部に
「おほほ。皆さん。淑女らしく、お上品にいきますわよ。獅ノ宮の皆さんはカタギですから、フェアプレー、えぇフェアプレーで。やっていきましょう。よろしくて?」
いや、もう遅いだろ!!