貞操観念逆転世界で低レベルな女子野球部を指導してやろうとしたら逆に分からされた 作:伊つき
「おはよう、
「……何?急に」
寮生活を送る運動部の女子高生2人。
彼女たちは埼玉のとある高校の野球部員だ。
朝練前から励む"
こんな朝早く起きるのは部長だけ。
とはいえ声をかけてくるのは珍しい。
変な絡み方も気になるし、何かしら用事があって接触してきたのだろうと
そして、それをご明察とでも言うように部長は、壁に肩を預け腕を組んで笑みを作る。
「
「……っ!」
靴紐を結びながら話半分で聞こうとしていた
そして、すぐにその目を据わらせて嫌そうに顔だけ振り返る。
するとわざわざ告げてきた張本人はニヤニヤしながら待ち構えていた。
その表情を見て「感じ悪っ」と
「人聞きが悪いな。私は校内でも王子様だって評判なんだよ?」
「……半分嫌味でしょ、それ。てか何?自慢?」
「まさか。私が受け取る好意は一つだけ。そう!愛しの摂津くん―――」
「あのさ。もう行っていい……?」
いつも口にしてる男の名が聞こえてすぐ。
だって、摂津くんの話をする時の
だが、そうやって切り抜けようとするのを確認すると、部長の
具体的には玄関の扉の前に移動して、そこに背を預けて
そんな
「何?邪魔なんだけど」
「……トーナメント表のリークも一足早く手に入れたよ。
「両方勝ち進めば、でしょ。てかどうでもいい。今の
だが、手をかけたところで
同時に
「今送ったのは今年の獅ノ宮のデータさ」
「だから、興味ないって」
「今年はあの"規格外"達が9人いる……と言っても?」
「……っ!」
そして、「やっと可愛い顔を拝めたね。景気がいい。今日も良い1日になりそうだ」と
対する
ついでに舌打ちも添えておいた。
「どうせそのうち1人は使いもんにならないでしょ。くだらない」
「2人だね。成城冬華も今は怪我をして地区大会には間に合わないとの噂だよ」
「成城って……尚更話にならないじゃん。あれが欠けたら終わり。以上」
「冷たいねぇ。獅ノ宮には妹分がいるっていうのに、酷いお姉ちゃんだ」
「……姉妹じゃない。ただの従姉妹。何度も言ってるでしょ」
もういい?と尋ねる
それに対して
「成城と
「
耳を疑った。
冗談だとしか思えない上に、冗談だとしても面白くない。
160km/hどころか150km/h後半を超えれば世界記録だ。
だから、日本の女子高生球児が世界記録を軽く超えるなんてありえない。
ありえない……いや、そんなことはない。
なぜなら今の女子高生球児が1番知ってるからだ。
あの獅ノ宮ならば、嘘と一概に決め付けられない。
そう思ったのと同時に
硬い感触があって、コツコツと音もした。
中にはスマホが入ってる。
「試合の日程も送ってある。初戦の視察を
「……なんで私が。ていうか紫も何引き受けてんの。主力でしょ。そんなの1年のベンチ外にでもやらせればいいのに」
「彼女達じゃ役者不足さ。凡人にあの獅ノ宮は計れない。観に行っても何も感じ取れない」
「……」
同意見だからだ。
1年に行かせてもただの観戦になって帰ってくるだろう。
なるほど、なら正捕手の
だが、自分が行く必要性はまだ理解できない。
「妹はともかく、160km/hだけでも拝んできてくれないかな」
「……だから、姉妹じゃない」
めんどくさい。
どうせ首を縦に振るまで玄関を通してくれない。
再度ため息をつく。
「……わかったわかった。行けばいいんでしょ?」
「おや。物分りがいいね。いい子だ」
「やかましい。顎クイすんな」
視察を受け入れてようやく壁ドンも解いてくれたので、
今日はやけに重い扉だった。
1歩外に出ると、準備運動をする
「しっかり見て、攻略法を見つけてきてくれ。期待してるよ―――君は高校BIG5、代表正ショート。我ら
その名前を背に宿すジャージ。
背中を見せたまま、
だが、振り返りはしない。
「何?なんかわざとらしい」
「はて。何の話かな~」
指摘するとはぐらかして上機嫌に室内へと戻っていく嫌な部長。
おそらく焚き付けたかっただけだろう。
何が王子だ、絶対性悪女の間違いだと内心ぼやく。
本当に趣味が悪い。
もうあの
「……
従姉妹の名前を呟いてランニングを始めた。