貞操観念逆転世界で低レベルな女子野球部を指導してやろうとしたら逆に分からされた 作:伊つき
第2戦の翌日、俺は学校の食堂で飯を食べながら
ちなみに今日野球部は公欠で授業を受ける必要はないが、学習内容が遅れるのをできるだけ防ぐために午前中は授業を受けてきた。
一人暮らしだから食堂って有難いんだよな。
で、食堂使うならついでに授業も受けちゃえの精神だ。
まあそんなことは置いといて、飯を食いながらスマホを操作する。
「
まずは部員数にビビった。
すげぇ、中龍より多いんじゃないか……?
甲子園出場回数もえげつないし、栄冠も二度掴んでいる。
そして、現在
去年は
それが今は完治して尚且つ3年生となり、完熟期に入っている。
それだけじゃない。
彼女達が1年生だった頃、既に全員芽が出ていてスタメン全てをかっさらったらしい。
故に、某バスケ漫画の〇〇世代的な扱いだ。
中でも凄いのは、"野手"。
「は?エグ……!」
地区大会の試合結果を見たが、全て2桁得点の大量点差。
初戦が18 - 4。
第2戦が20 - 8。
このチーム……間違いない、"打"のチームだ!
凄まじい重量打線。
失点も多いのは野手と対称的に、投手はイマイチなのが原因らしい。
だが、野手は凄さまじい。
全員が打撃に長けていて超重量打線は言わずもな。
かといって守備走塁が弱いということもない。
ファースト、ショート、センターに至っては全国トップレベルの守備力だ。
まずは、センター"
左打者だ。
入部してすぐに1番センターに定着して、1年生の時点で甲子園出場。
甲子園大会では最多安打と盗塁王に輝いた。
しかもUZRもブッチギリ、ゴールデングラブも獲得してる。
そんな彼女は1番センターの地位を確実にし、不動の1番バッターとなっている。
次に4番ファースト、"
右打者。
彼女の持ち味はなんと言ってもアーチ力。
1年生の時はもちろんレギュラーを奪い取り、甲子園では本塁打王。
変化球に強く、打たれればほぼ確実にスタンドに持っていかれてしまう。
かといってヒット狙いのコンパクトな打撃ができない訳ではないというのが厄介なところだ。
正捕手も厄介だ。
5番キャッチャー、"
左打者。
彼女はまさしく天才打者というに相応しい。
多くの者は彼女を【ミス・フルスイング】と呼ぶ。
その名の通り彼女のフルスイングは高校生随一の迫力を有し、それは強力打線を有する王皇の中でも彼女の右に出るものはいない。
しかし、フルスイングはあくまで目立つだけで、彼女の"売り"ではない。
彼女の売りはバッティングの器用さ。
もちろん豪快なスイングでアーチを描くのは得意としている。
だが、彼女の恐ろしいところはコンパクトな打撃も鋭いタイムリーも得意としているという点だ。
つまり、バッティングにおいては全てが得意分野。
できないことはない上に中距離打者でもあり長距離砲でもあるという恐ろしい打者。
彼女は甲子園で首位打者と打点王を掴み取っている。
しかも盗塁数と安打数は1位の盛秋さんに次ぐ数字だ。
そして、そんな要注意タイトルホルダー達の他にも恐ろしいメンバーが揃っている。
彼女達3人だけを警戒していたらいいと思ったらそれは大きな間違いだ。
タイトルホルダー達を囲う残り5人の野手達も身内にタイトルを独占されてるだけでランキングに顔を出している強力打者だらけ。
特に現キャプテンの"
さらに"
そこに、外野手の"
そして、残る内野手2人もまた恐ろしい。
セカンドストップ
その結果、優勝した獅ノ宮のメンバーを押しのけて打者タイトルは総なめにしたという。
地区大会では美山先輩が基本的にやる気を出さないとはいえ、成城先輩は全力でやっていた。
まあ王皇戦は投手に注力していたらしく、打席数の差で最高打率と安打数を譲ってしまったらしいが、そもそも彼女と争えたのは浅呉さんだけだというのだからその実力は本物だ。
と、いうわけで王皇の野手はヤバいメンツの勢揃いだ。
寧ろヤバい選手しかいないと言っていい。
だが、調べてわかった。
ここまでやばいメンツの話をしてきたのに本当にヤバい人が最後に残っていたということが。
それが、内野手最後の1人―――"ショートストップ"。
「……!……原田
原田
もはやその名前を聞けば多くの高校野球ファンは説明不要らしい。
圧倒的世代No.1。
ここ10年、いや20年で一番の逸材。
高校BIG5の1人にして、U18日本代表正ショート。
甲子園大会におけるUZRは脅威の18.0……!!
しかも当時1年生だ。
間違いなくショートは誰よりも上手く、世間にももてはやされている。
誰もが揺るがず、彼女をNo.1と呼ぶ。
日本の未来のショートを担う女。
しかも打率は4割近くある。
打力がずば抜けた王皇で唯一、【守備】が高校最強である選手。
それが、高校最強ショート 原田
あのメンツに最強ショート。
超打撃特化の野手チーム。
間違いなく打力ではこの世界の高校最強だ。
そんなチームと戦う可能性が高いのは天才の巣窟、獅ノ宮学院高校。
【最強】か、【天才】か。
甲子園に出場できれば、王皇に限らずこの世界の最強とこれからもぶつかって行くことになる。
王皇は打撃最強。
まだ他にも投手最強のチーム、野手最強のチーム、守備最強のチームなど存在するかもしれない。
この世界に転生して15年。
これがどういう物語なのか掴めた気がする。
転生者である俺が目の当たりにするのは、恐らくこの世界の常識のトップに与する【最強】達と、規格外の男子級の【天才】達の衝突だ。
果たして、天才たちが勝って歴史にその規格外を証明するのか、それとも埋もれてしまうのか。
その物語を、俺は凄く近いところで見ることが出来る。
これは何も大袈裟な話じゃない。
獅ノ宮の天才たちはそれだけの大事に値する本物達だと俺は信じてる。
だから、きっと俺は歴史的瞬間の中にいる。
絶対にそうだ。
だって、彼女達はそれくらいすごいのだから。
「ん?この人……原田……」
1人で気分が高まってしまったが、ふと我に返ってちょっと恥ずかしくなった。
周りを見たが誰も俺の興奮に気づいてないようだったのでセーフ。
と、そんなことよりも最後に調べた原田
それは……。
「……い、いやまさかな。そんな訳……ははっ、まっさかー!」
俺は頭の中に浮かんだ思考を首を振って振り払う。
だって、原田
確かに原田という名前を見て原田先輩は当然過ぎったが、別に珍しい名前じゃないし一緒だからなんだという話だ。
U18日本代表の宣材写真を見て、"似てる"となんとなく思ったが流石にこじつけが過ぎるなと直ぐに否定した。
大体姉妹だか親戚だか、なんであれ身内なら多少はそんな話が日常会話の中で出てきてもおかしくない。
特に王皇の野球部員なら尚更だ。
王皇が同じ地区でもうすぐ当たる可能性があって、要注意だと何度も話してるのに、もし身内ならそこに触れないなんてことは何か事情がないとまずないだろう。
いや、わざわざ言う必要はないとも取れるけど……でも相手が相手だ。
間違いなく王皇の中でもNo.1プレイヤーだし、それこそ名指しで要注意と言われてもおかしくないし、そうなったら情報のひとつとして原田先輩はともかく成城先輩は話すはず。
うん、そうだ。
絶対に、きっと、話す……はず。
だから原田先輩の親戚なんてことは……。
……。
「……」
やめておけばいいのに、俺は魔が差した。
原田
そして、見つけた。
観た。
獅ノ宮の皆の野球が好きな俺にはひと目でわかった。
―――原田
「……っ」
間違いない。
顔とか名前とかよりよっぽどこっちの方がわかりやすい。
彼女達は、"やる野球"が一緒だ。
本当にそっくり。
瓜二つ。
細かい動きから癖まで完全に一致……いや、同じだが、原田先輩の方が【
技量、練度全て原田先輩が下位互換。
同じというより……原田 林さんが自分に合ったプレイスタイルをしているのに対して、原田先輩はそれをただ真似ているだけに感じる。
しかもその"真似"が染み付いてしまっている。
それは、小学生時代、原田林がトッププレイヤーで原田涼香の憧憬となり真似をすることになったからか。
はたまた、同じチームだったからか。
では、偶然だったと?
似ている顔。
似ているプレイスタイル。
共通する身体能力の高さ。
同じ名前。
違う。
決して偶然巡り会って、真似することになった訳じゃない。
―――おそらく、"