円卓の武偵   作:もこー

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いつぞやぶりの投稿でございます
文字数は七千程度ですが、お楽しみいただければ幸いです


ガウェインという男

 エルは一体何と言ったのだろう。意識は明瞭な筈なのに、まるでそれを拒むかのように理解できなかった。

「待て、一度冷静に……」

「いい加減にしてよ!」

 エルは本気で怒っている、それだけはハッキリと理解できてしまう。

 あまりの剣幕に二の句を告げれなくなってしまい、俺はただ呆然とエルを見た。

「君はトラストを選ぶの?それともヒルダ?何で、何で僕じゃ……」

 多分、トラストとエルの順番が逆だったなら、俺はトラストにも同じようにしてしまっただろう。

 それでもただ一つ明確なのは、エルの泣き顔を見ると酷く心が痛む。

「……俺は誰も選んじゃいない。誰が好きかと言われたらみんなだと答えれる。ヒルダは楽しいし、トラストは理由も分からないが多分誰よりも信用してる。お前はそうやって子供みたいだから、放っておけない。……今はこれで勘弁してくれないか?」

 その気持ちに応えるのは難しいが、ならばせめて正直な気持ちを伝えよう。

 こんな事を言うのは屑の印であろうが、当事者になってやっと分かる。それ以上の回答は最初から持ち合わせていないのだと。

「じゃあ、今だけでも、僕を安心させて……」

 エルの行動を拒むことはできなかった。そうしてしまうと、先ほどの言葉が嘘になってしまうから。

 エルは優しく背中に腕を回すと、自分から寄り添って唇を重ねる。

 エルの唇は震えていなかったが、代わりに消え入りそうなほどに身体は軽かった。

「んー、いい物を見せて貰っちゃった」

 不意の声にエルは反射的に俺から離れ、俺も顔だけ向けて声の主を確認する。

 扉の前でクスクスと笑うのは、同じ名字を持つ悪魔の姿だった。

「……っお前さえ捕まえれば!」

 エルはその姿を見て少し戸惑ったが、人間とは思えないような初速で咲倉へ飛び掛かる。

 咲倉は口元を緩めると、エルの腕をすんなりと避け、すれ違いざまに足を引っ掛けた。

 エルはそのままの速度でバランスを崩すと、勢い良く転がって廊下の壁へとぶつかる。

「乱暴な女は嫌われるよ?ロウは守りたくなるような人が好みなんだから」

「っ……今更何をしに来たの」

 咲倉は服を払うと、無様に立ち上がるエルを見て嘲笑した。

 エルも下手に攻めてはいけないと察したのか攻撃はせず、質問を投げる。

「ロウの力について伝えに来た、それだけよ?別に争うつもりは無い。ここで戦ったらロウがまた怪我をしちゃうでしょ?」

「俺の力?」

 エルの言葉にちゃんと返事をするのは単純に舐めているからなのか、本当に戦う気が無いからか。

 どちらにせよ捕まえるとなればチャンスのはずだが、遠目から見ても隙は見当たらない。むしろそこに居るだけで威圧感を持っている。

 咲倉は俺が質問すると、嬉しそうに笑顔になった。

「そう、あの女を助けた時の感覚。ロウは覚えてないでしょうけど、アレならキンジのHSSにだって対抗できる」

 あの女とは多分トラストのことだろう。そういえばどのようにして助かったのかを聞き忘れていた。

 だが、そんなことよりもHSSに対抗できるとはどういうことだろうか。

 銃弾を手で曲げてしまうような相手とやりあえるなんてありえない。

「バカバカしい……」

「副作用はあるよ。終わったら気絶したり、なってる時の記憶がなかったり、目が覚めても体が動かなかったり……まぁ、時間が短いとあまり出ないけどね」

 しかし、それをバカバカしいで済まされないほど、咲倉の説明は自分に当てはまっている。

 エルも話を聞くべきだと判断したのか、口を挟もうとはしない。

「条件は感情の昂りと、その時に誰かを強く想うこと……試したら早いでしょ?」

 咲倉は言葉を言い終わってすぐ、エルに見えないよう袖からナイフを出した。

 何をしようとしているかはすぐ分かる。

「逃げろ!」

 間違いなくエルに攻撃をする。そうしたら、俺が怒りにより感情を昂らせ、なおかつエルのことを強く想うだろう。

「ほら、言われてるよ?逃げないと」

「……」

 しかし、エルは逃げようとはしなかった。拳を握り締めると、それを構えて迎撃するつもりですらある。

「無理よ、逃げたらだ〜い好きなロウを連れていかれちゃうもんね?」

「お前……!」

 咲倉は全てを見透かした上でここに来たようだ。彼女からすれば予定通りといったところだろう。

 ナイフを手で遊びながらエルへ振り向くと、歩み寄る。

「バスカービルに付き従った人の力、見せて貰うね?」

「ここで、捕まえる!」

 咲倉の言葉に応えるようにエルが一声挙げると、前蹴りを咲倉の胸へ目掛けて繰り出した。

 咲倉が半身でそれを避けると、エルは片足だけで小さく跳躍し咲倉の脳天を目掛けて更に足を振り下ろす。

「っつぅ……」

「この程度じゃ、ロウの足を引っ張るだけよ?」

 しかし、後ろに軽くステップを踏んだ際に振り下ろされる足を軽く斬ってあざ笑った。

 はたからみてもエルは冷静さを欠いている。焦りからか怒りからなのか、実力の差を体感してもなお一歩を踏み出す。

「うるさい!」

「やめろ……」

 エルは何度いなされても構わずに攻撃を続け、そのたびに体のあちこちを斬られた。あちこちに血が滲み、少しずつなぶられて体力は削られる。

 その姿をただ見ていることしかできないことを見せつけられ、腹の中に何かが生まれるのを感じた。

 エルは攻めの手を緩めると、肩で息をしながら顔をしかめる。

「つまんない……もう殺した方がはや……」

「離れろ」

 このままエルは膾切りにされて死ぬのだろうか。それは許されない。自分のつけれなかった後始末の結果が、こんな結果で終わらせるなど、無理だ。

 咲倉の言葉でみるみる内に力が湧いてくる。この感覚はどこかで感じたことがある気がするが、今はどうでもいい。

 身体の痛みが嘘だったかのように綺麗に消えている。今なら動ける。

 咲倉はこちらの声に反応して振り向くと、うっとりと俺の姿に見惚れた。

「そう、それだよ。お姉ちゃんにもっと見せて!」

「目障りなんだよ!」

 ベッドから降りると、咲倉は興奮した様子で駆け寄ってくる。

 俺にはこんな奴を相手にしているような暇は無い、エルの治療を早く済ませないと傷が悪くなるかもしれない。

 咲倉はナイフを左胸に向かって突き出してくるが、やはりとても遅く見える。突き出される手首を目視すると、右手で叩き落とした。

 続けざまに右足で相手の胴体を捉えると、壁まで蹴り飛ばす。

「っくふ……あは、は……ははは」

 蹴った時の感触は間違いなく骨を折っていた。だが、咲倉は何事も無かったように立ち上がると、不気味に笑い始める。

「ははは……私は間違って無かったよ、アロンダイトの正式な継承者はロウだった!く、ふふふ……またね、ロウ」

 そして、愉悦に顔を醜く歪めるとそう叫んで窓を割って飛び出して行く。

「えへへ……僕、役に立てたかな?」

「黙って寝てろ」

 エルはそれを確認すると、緊張の糸が切れたようで倒れ込んだ。あれだけいたぶられていたのだから、当然だろう。

 歩み寄って行くと、エルは嬉しそうにそう言った。

 バカに付ける薬があればいいのだが、今はこの言葉が一番の薬になる。

「ひどいや……頑張ったのに」

「ふん……」

 少しずつ力が抜けてくるのを感じると、少し乱暴にエルの体を探って携帯を探した。

「ま、まだ心の準備が……!」

 すると、エルは傷だらけだというのにやはりバカなことを言い出す。

 携帯を見つけるとそれを引き抜き、見せながら言ってやる。

「そういう所は可愛いな」

 どうせ気絶したら記憶は残ってないんだ、何を言っても恥ずかしいことは無いし、なによりも、気付いたら言っていたのだから仕方ない。

 エルは素直に顔を赤らめると、そっと目を閉じて顔を逸らし、俺は理子にメールを送ると、力尽きて意識を失った。

 

「こんなのすぐに起きるから放っておきなさい、ゴキブリ並みにはしぶといわ」

「だが……」

「……」

 こうして目を覚ますのは何度目だろう。今回は意識も身体も違和感が無い。むしろ、違和感が無いことが違和感なくらいだ。何せ、骨折や銃創がいくつもあった身体には、その中の何一つとして残っていない。

 目を開けて上体を起こすと、そこは咲倉を追い返した部屋で、エル以外の全員が集合している。

 ベッドの隣には持ってきてくれたのか、俺の武器や携帯が見えた。

「ヒルダ、暫く血はあげないからな」

「あら、私は信用してただけよ?」

 ヒルダの軽口も懐かしく感じるのは、それだけ多くのことが一度に起きたからだろう。

 キンジに対抗できる、とまで言われた力が何なのかは分からない、それでも、それが必要な力ならば使う、それまでだ。

「心配などしてないからな、私はお前を信じているから……」

 トラストの念話のような物は素直では無く、何かを言おうと口を開いたトラストは、言えなくなってしまったからか、口を閉じてしまう。

 心配されるのも、悪くはない。

「詳しい話はエルから聞いたよ」

「……アロンダイトの継承者がなんとかって言ってたんだが、知らないか?」

 エルは傷だらけなのにそこまでちゃんとしていたのか、正直驚いた。

 だが、それについてどうこう言うよりも、気になっていることを訊かないといけない。

「んー……」

「かつてアーサー王に死ぬ間際まで付き従った騎士ガウェインが使っていた剣の名前だ」

 それを聞いた理子は頭を捻り始めたが、代わりにトラストが説明をする。

 アーサー王といえばアーサー王物語のことだろう。騎士ランスロットやモードレッドが有名な人物か。

 だが、俺の名字はガウェイン何かではなく、片桐だ。あの口ぶりでは俺がその剣を受け継ぐみたいな話だが、本人としては意味が分からない。

「かつてアーサー王は、裏切りの騎士モードレッドにより、深手を受けて湖へ姿を消したという。そしてそれ以来帰ってくることは無かった……しかし、子孫は代を変え、名を変えて今もなお血が受け継がれている。他にもランスロットやモードレッド、彼等もまた、同じだ」

「……詳しいんだな」

 トラストはあたかも全て知っているかのように、語り始めた。

 その理由に察しが付き、あまり驚かないのはなぜだろう。単に冷めているのか、頭ではない血の流れが全て知っていたのかもしれない。

「私はアーサー王の血を引いているからな、そのくらいは知っている義務がある」

「そうか……すまないが、理子さんと二人にしてくれないか?」

 トラストの話を聞いていると、不意に脳裏が焼け付くような感覚に襲われた。

 それが何かは分からないが、自分の中で何かが警笛を鳴らしている。

 だが、まだ考えはしない。そうすると、トラストにもこれが伝わってしまう。

 だが、トラストならこの気持ちも汲んでくれる。

「分かった」

「……仕方ないわね」

 ヒルダは少し迷った様子だったが、トラストが出て行くのを見ると、仕方なくといった様子で続いて出て行った。

「デートのお誘いかな?」

 理子はヒルダも出て行ったのを確認すると、やはりおどけて見せる。

 この人は本心を隠したいからか常にこれだ。よほど息の詰まる生活だし、俺ならやっていられない。

「そうだな、是非一緒にお茶をしたい所だが……今日は別の用事だ」

 まず一つ、理子は本当にキンジを探しているのかが疑問だった。仮にもチームバスカービルのメンバーなのだから、事件から数ヶ月も経った今でも影すら掴めないのは違和感がある。

「キンジさん達は見つかりました?」

「んやー、中々見つからなくてねー……海外に逃げ延びてる可能性もあるかな」

 そして、トラストが襲われて捕まったのは理子が怒らせた後のすぐだ。どうせナンパかスリかのフリをして煽った後に、路地裏へ誘い込んだに違いない。

「なるほどな……それで、キンジさん達はどこに居るんだ?」

「いや、だから分からないんだってば」

 俺がエルに捕まっていた時も、エルが何かを言うタイミングを潰して現れた。そしてあの時の言葉は聞けないまま今まで忘れている。

「今の俺はあまり気が長くないんだ、やめてくれ」

「っ……」

 そして何よりも、なぜあんなに都合良く俺の住んでるアパートに居た。更に言うなら、なぜ居続けることができる。部屋の内装を見ればそんな短い期間の話で無い事は分かった筈。

 疑い始めたらどう考えても怪しいんだ、この人は。

「もう騙されない、ふんじばって洗いざらい吐いて貰うぞ!」

「頭のいい人は嫌いだよ!」

 俺はベッドから飛び出すと、すぐ隣においてある刀を手に取った。

 理子も逃れられないと判断したのか拳を構えて見せる。

 拳銃を使わないということはこのことが音で漏れるのを警戒しているからだろう。つまり、この件についてヒルダは協力関係に無い。

「理子さん、俺はお前を……捕まえる。役に立ってくれよ、ガウェインとかいう先祖さん!」

 俺はただ理子のことを考えた。あの日励ましてくれたことや、なんだかんだと楽しかったことも、全て。そしてその上で俺はこの人を捕まえる必要がある。

 そこまで覚悟した時、自らの意思で力を引き出した。

 意識がこの戦いにのみ集中され、風の流れすら読めてしまいそうなほどゆっくりと感じる。

「私だって、捕まる訳にはいかないんだよ!」

 理子は素手のままだというのに、構わずこちらへ駆け寄ってきた。

 こちらも刀を鞘から抜くと刀を右手に、そして二刀流のように鞘を左手に構える。こうして本気で戦えるのは久しぶりだ。

 刀を理子の踏み込みに合わせて左肩から斜めに斬り下ろすと、理子は俺の膝くらいまで体を倒してタックルをかましてくる。

「っつ、クソ!」

「お前に舐められるほど、Sランク武偵は甘くない!」

 それを鞘で頭を殴り止めようとしたが、理子の髪がまるで生き物のように動きそれを受け止められた。

 理子のタックルをまともに受けた俺は一緒に倒れこみ、刀を手から離してしまう。

「経験が違うのよ。越えられない壁じゃないけど、すぐには無理な壁」

 理子がそれを見逃すことは無く、髪を使ってこちらの身体を押さえ付けると、拾い上げる。

「だったら壊して進むだけだ、越えてる時間は無い」

 自由な下半身で理子の体を押しやると、理子は跳ねるように立ち上がり距離を取った。

 理子は間違いなく俺よりも強いだろう。だが、キンジさん達はもっと強い筈だ。ここで諦めてしまうというのは、あの二人を追うことを諦めてしまうのと同じ。それだけは絶対にしない。

「殺しはしないけど、動けなくさせてもらうよ」

「っ……」

 理子はそれだけ言うとまた駆け寄り刀を振り下ろす。その瞬間、不意に景色がおかしくなった。

 まるでコマ送りのようにスローモーションになり、身体が勝手に動く。

 理子の一太刀を鞘で受け止めると、理子はそれを引き、俺の右肩を狙って刀を突き出した。

「お前も、刀の腕じゃ俺を越えられない」

「しまっ……!」

 だが、こちらは鞘の口を刀の刃先に合わせ納刀する形になる。

 鞘は俺の肩の上に向いており、鞘走りの音と共に理子の身体が俺の方へ吸い寄せられた。

 それを見越して体制を低くした肘打ちにより、確実に意識を飛ばしにかかる。

「うぐ……!」

 それはしっかりと理子の鳩尾を捉え、力の抜けた理子はダラリと腕に凭れた。

「焦っていたか……?」

 理子がこんなにアッサリ終わるとは意外で、ついそんな事を呟く。

 わざわざ得意でない刀を使うよりも、素手の方がまだまだ勝機が濃かっただろう。

 身体の力はまだ抜けていないが、とりあえずはトラストを呼んで見張って貰うとする。

 そうして理子を横たわせて背中を向けた、その瞬間が命取りだと気付いても遅かった。

「だから、経験が違うんだよ」

「バカな……!」

 背中から両腕に組みつかれ、髪で首を捉えた理子の甘い声が耳元で囁かれる。

 あの時の感触は間違いなく決まっていたのに、なぜ起き上がってきているんだ。

「奥歯にちょーっとキツめの薬仕込んでたんだよ。あー、不味過ぎて女じゃやっちゃダメなことしそうだ」

 恐らく気付け薬か、蘇生薬のことだろう。まさか、こういう場合を想定して、常に仕込んでたというのか。だとすれば、こちらの行動は全て予想の範疇だったと言える。

「何でこんなことを……」

 抵抗する手段も無く、今やれるのはただ情報を引き出すことだけだ。せめて、その後ろ髪を掴めずとも見ておきたい。そうすれば、例え失敗したとしても利益は出る。

「ヒルダは知らないから、あの娘は責めないであげて。それが条件よ」

 理子はその魂胆が分かった上でか、不意に普段の口調に戻るとそんな事を言う。

 ただの口約束にしかならないというのに、それでもヒルダを想っているのか、それとも俺を信じているのか。どちらにせよ、答えは一つしかない。

「俺がそんな奴に見えてたとは、心外だ」

「そう言うと思ってたよ」

 理子はクスリと笑い、そう答えた。

「私が協力すればキンジとアリアは解放される。目的は君とトラストの二人。でも、殺すことも仲間に引き入れることも、人質にとって何かをすることも無い。それ以上は私は分からないし、ただ監視を任されてた。でも、咲倉が来た時に、君の捕獲に指示が変わったんだよ」

「なるほど、話は聞かせて貰ったわ」

 理子が話を終わらすと同時に返事をしたのは俺では無い。ヒルダだ。

 理子は声の元へ顔を向けて、今頃驚いたような顔をしているのだろう。髪を操れることを俺が知らなかったように、トラストの念話を理子は知らない。理子が有利だと思っていた状況は、ただ籠の中で囀る小鳥と同じだったのだ。

「ヒルダ……」

「理子、その人から離れなさい」

 しかも、理子はまだヒルダが盗み聞きしたとしか思っていないだろう。トラストは恐らく窓の下で罠を張っている筈。

 理子はとても悲しそうに呟いたが、ヒルダは普段よりも険しい声で命令する。

「……こないで、来たらこの首を折る」

「う……あ!」

 しかし、理子は少し間を開けると、ヒルダにそう言って、首に巻き付いた髪に力を加えた。

 呼吸は制限され、少しばかりの余裕はあるがいずれ気絶しそうなほど酸素が薄い。理子には引けない理由があるのだ。

「貴女は私に”正しいと思ったことをするんだよ”と言った。だから私は正しいと思うことをする……貴女は片桐を殺せない。エルやトラストが彼を好いているのを、知っているから」

 ヒルダはスタンガンを取り出すと、動作を確認しながらこちらへ歩み寄ってくる。それは理子への信頼と、その言葉を守ろうとする二人がパートナーとして培った絆の結果だろう。ならば、理子の答えも見えている。俺は何も心配することは無い。

「……そっか、私の唯一のパートナーだもんね。裏切るようなことしてごめん」

 理子は俺への拘束を解くと俺から距離を置いて、ヒルダに対して謝った。ヒルダも小さく頷くと自らの右手にスタンガンを押し当て、電気を纏わせて行く。

「お説教をたっぷりさせて貰うから、目が覚めたら覚悟してなさい」

 そして、その言葉が終わると右手の雷を理子へと放つ。青白い光が一瞬光ったかと思うと、理子は倒れて意識を失う。

 俺も段々と力が抜けており、そろそろ限界らしい。情報は全てトラストに渡っている。例え忘れても何の問題も無い。

「待ちなさい、気絶する前に聞くだけ聞いて。どうせ忘れるのでしょう?」

 視界がボヤけ始め膝を着くとヒルダはこちらに駆け寄り、頬を軽く叩いてそんな事を言い始めた。

 正直辛いが、少しくらいならまだ耐えられる。そのくらいのワガママは聞いてやろう。

「理子を止めてくれてありがとう、感謝しているわ。それと、貴方を好いている人がもう一人居るから、覚悟しておきなさい」

 言葉を聞き終わると、それを整理するよりも前に意識が途絶えた。それが良かったか悪かったかは分からない。でも、ヒルダの満足気な顔は最後に見ることができた。




特質するような事は無いため、これにて

とか言って終わらせるのも味気ないのでちょこっと雑談でも


最近こちら円卓の武偵に限らず小説の執筆がストップしております
理由としては停滞期というものと、頭痛と不眠症に悩まされ書く気力が無いということです

こんなことじゃいけませんが、ちょっとばかりの休憩ということで、目を瞑っていただければ幸いです
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