絶対に兄様と結婚したい妹VS突然女の子になっちゃったお兄ちゃん   作:としぞう

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第33話 まぶたの向こうに桃源郷

「気持ちいいね、あーちゃん。でも本当に目隠しとらなくて大丈夫?」

「う、うん。大丈夫……」

 

 右耳の鼓膜を、きょこの声がくすぐる。

 別にさっきの百合ほどの距離じゃないけれど、それでもかなり近い……というか、体がぴったりくっつく距離だ。

 

「じとー……」

 

 うう、左側から百合の視線を感じる。

 別に責めてる感じじゃないけど、どうにもそういう感じを察してしまう。

 

 というのもタイミングがピッタリだったこともあるけれど、あれからすぐ当然湯船に浸かる流れになり……ボクは拒否する暇もなく、こうしてきょこに補足されてしまったからだ。

 

 されてしまった、なんて言いつつ、やっぱりきょこに悪気なんてないのだろう。

 きょこからは素直に一緒に入れて嬉しいって感じの好意を感じる……見えないけれど、ボクに向けられるにはもったいなすぎる感情だ。否定できるわけもない。

 

 好意と言ってもやっぱり友情なんだろうな、とは思っている。でも元非モテ男子のボクからしたら、「これ、もしかしてボクのこと好きなんじゃないの……!?」と勘違いしてガチ告白して「え、そんなんじゃないけど……」と疑われるタイプの友情だ。

 

 だから勘違いなんかしない。そういうものだと受け止める!

 

「なんだか、あーちゃんの体温、気持ちいいなぁ」

 

 か、勘違いしてないから……しないから……!!

 体温という意味じゃ、やっぱり視覚の封じられたボクにはやっぱりじっくり感じられるものでありまして。

 

 平熱低めな百合と比べて、きょこは体温高めだなぁとか……そんな実感を持ててしまう。

 ボクは平熱は36度ちょうどあたりなので、自ずと二人の平熱だって分かっちゃう。そんな平熱ソムリエとしての技術を存分に高めつつあった。

 ……まぁ湯船の中なので当てにならないし、百合の平熱は元々知ってるけれど。

 

(そういえば、恵那ちゃん達はどうしてるんだろう? さすがに体洗うの長すぎて待ってられなかった感じだろうか――)

 

「あーおっ」

「ぎゃっ!?」

 

 なんて、恵那ちゃんのことを考えた瞬間、彼女の声がしたと同時に背中に、むにゅっとした何か――いや、おそらくあの、柔らか部位なアレが押しつけられた!

 

「え、恵那ちゃん!?」

「あはは、びっくりしすぎ。って、そっか目隠ししてるんだもんね、なぜか。忘れてたよ、ゴメンゴメン」

 

 そう言いながら恵那ちゃんは、ボクの背中にぐっと寄りかかりつつ、腕を首に回してきた!?

 ごめんって謝ったばかりのに追撃するとはいかなることか……ああ、目隠しをしているせいで抵抗のしようがないよ!!

 

 足はあぐらを組んでいるのか、お尻らへんに当たっている……もしも両サイドにきょこと百合がいなかったら、その足さえも組み付けてきていたかもしれない。

 …………よ、良かった! 二人がいてくれて良かったって思ってますからね!?

 

「百合ちゃん、碧先輩っ」

「あ、美也子ちゃん」

 

 次いで美也子ちゃんもやってくる。

 もしや唯一空いているボクの正面に……!? と、思ったけれど、百合の隣に座ったらしい。

 

 助かった。……だから、決して残念になんて思ってないからな!?

 

「え、えっと……恵那達はどこいたの?」

「三人が中々来ないものだから、ジェットバスでゆったりして、その後ちょっと涼んでたんだ。ね、美也子ちゃん?」

「はいっ。恵那先輩と沢山お喋りさせていただけて、光栄でした~!」

 

 光栄。ちょっと仰々しいワードな気もしたけれど、恵那ちゃんはイケメンだし、女の子にモテそうな女の子だ。美也子ちゃんの感想はそうおかしなものでもないのかもしれない。

 ……なんて、今のボクにとっては、女性らしい胸の膨らみをこれ以上ないくらい主張させてくる危険な女の子でしかないのだけど。

 

「碧、肌すべすべだねぇ。自分が本当に女子なのか自信無くなるなぁ」

「わかる……! あっ、恵那ちゃんがどうって意味じゃないよ!? 私も、あーちゃんの肌すごく綺麗だなって思ってるって話!」

「あはは、別に疑ってないよ」

 

 ……なんて、ボクのすぐ側で盛り上がるきょこと恵那ちゃん。

 百合と美也子ちゃんは二人で話している様子……百合はボクの腕を放さないけれど、おかげで、五人でいながら、ボクは完全に舞台装置と化したというか……。

 

 でもいざ会話に混ざったとて、話題を盛り上げられるわけないし、とにかく必死に時が過ぎ去るのを待つしかなかった。

 

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