異世界でTS幼女はおいしみを食べたい   作:あさねこ

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終末は近づいている

 

 

 

 

 魔術都市が半壊した事で、戦況が大きく邪神軍に傾いていた。

 

 既にいくつかの主要な都市は滅んでいる。あと数年もせずに世界は闇に染まる事だろう。

 

 歪んだ光を持つ人間達に終わりの時は近づいている。

 

 全てが終わった時

 

 世界を闇が覆いつくした時

 

 それは本来の世界、完全なる闇の世界

 

 それは一体どんなものなのだろうと、私は窓の上から空を見上げる。

 

 いつも通りの漆黒の闇。閉塞感すら感じるそれではあるが、闇の存在である私達にとってはゆりかごの様なものだ。

 

 夜は私達の時間。 色のついた世界、朝の何て悍ましいことか。

 

 だが、同時に想ってしまうのは、その世界は何処までも広く感じる事。

 

 人間達は青く澄んだ空の下を喜んで生きている。

 

 それは本来、この世界には無かったものだ。光と余分なものが現れ、世界は邪神様の手を離れてしまった。

 

 我等の中から、人間という種族が生まれ

 

 動物という種族が生まれ

 

 植物が生まれた。

 

 もともと存在していた、モンスターや虫は世界から追いやられることになった。

 

 個人個人は弱くとも、まとまれば強くなる光を宿す生命体たち。

 

 私達にはない、【感情】を持つ者達。

 

 私も、喜怒哀楽を理解できれば、何かが変わるのだろうか?

 

 【魔将】として個を得た私ではあるが、やる事は今までと変わらない。世界を闇に染めるために邪神軍を率い、世界を滅ぼす。

 

 闇の世界の為に、それこそが正しいと私は力を振るう。

 

 魔将は【過ぎ】を迎えた存在や英雄より強いのだ。私の前では、人の英雄であろうともその辺りの雑兵と変わらない。

 

 虫を払う様に少し力を籠めるだけで人間達は壊れ死んでいく。

 

 まぁ、私は【魔将】の中で一番程度が低いのだが・・・

 

 他の魔将が破壊の力を宿し、世界を滅ぼすのに対し、私はそこまで大きな力は持っていない。私に出来る事はただ一つ。

 

 【魅了】する事のみ。

 

 私が彼等を魅了する事で、永遠に傀儡とし好きなように操る事が出来る。英雄を魅了し、王を魅了し、動物を魅了し、モンスターすら魅了する。

 

 そして、私に魅了された存在は、二度と元に戻る事はない。

 

 私を【至上の存在】として認識し、私の存在は自らの命よりも上になる。私に従う事こそが生きる意味に変わり、だがそれとして人格が、能力が壊れる事はない。

 

 ただ【私】という絶対が組み込まれるだけだ。どのような手段を用いたとしてもそうなってしまえば最後、自分を認識したまま私の為の道具に変わる。それは例え、私が死んだとしても変わる事はない。

 

 内部から壊し崩していくと考えれば十分脅威の力であると私自身認識している。

 

 だが、同じ魔将には通じず、戦力は彼等に大きく劣る時点で私に出来る事は限られる。魔術都市は長い年月をかけて権力という良く分からない力に酔う人間達を魅了し、少しずつ内部から破壊し、最後の一手としてほかの魔将が部下を率いて滅ぼす・・・

 

 この作戦はほぼ成功していた。

 

 あの時、凄まじい存在が現れなければ・・・最初の時も、最後の攻勢の時も、私達の進軍は全て止められてしまった。

 

 唯一壊しておいた貴族という人間達を減らす事だけしかできなかったのだ、失敗と言っても仕方ないだろう。

 

 私としても魅了した人間がほぼ壊されてしまったが、それでも一応魔術都市は大きく弱体化したので、総合的に見れば成功かもしれない。

 

 少なくない魔将があの時に滅ぼされてしまったが。

 

 私の魅了が根本的に届かないあの異質な存在。

 

 喜怒哀楽がないと思っていた私が、恐怖という感情で逃げを打つ事しか出来なかった。そして逃げる事が出来たからこそ、今私はここに居る。

 

 力を持つ魔将達はそれを認める事が出来ず、自ら殺されにいった。

 

 残っている魔将はもはや数えるほどしか残っていない。

 

 例え魔将が滅んだとしても、闇の軍勢は潰える事はないから、そこまで気にする事はない。私が死んだとしてもいずれあの中から自我と力を手に入れた魔将が現れるだろう。

 

 魔術都市はほぼ力を失い、大都市は大打撃を受けた。

 

 闇はさらに強くなり、世界は本来の色を取り戻しつつある。

 

 世界は確かに終末へ近づいている筈。

 

 懸念があるとすれば・・・

 

 私達魔将の中で、一番強さと闇への親和をもつ魔将が力の大半を失いつつも何かを探すように動いている事だろうか。

 

 この前会った時は、信じられない事を言っていた。

 

 【光を見つけた】

 

 【澱んだ光ではなく、闇を包み、共にある綺麗な光を】

 

 【守らなくてはならない】

 

 【取り戻さねばならない】

 

 【その為ならば、我が力の大半を失ったとしても構わない】

 

 今、あの魔将がどこに消えたのかも分からない。

 

 そしてそれを気にする魔将はいない。それぞれが他人なんて気にする事などないのだから。私も気にはしていない。

 

 唯一、共にある綺麗な光という物が少しだけ気になった。

 

 少しだけだ。

 

 今私がやらないとならない事は一つ。

 

 魔術都市を機能停止にまで落とした今ならば、   

 

 神聖都市を攻める事が出来るだろう

 

 英雄を超える【勇者】を抱える大国。数々の魔将が打ち倒された。圧倒的な戦力をもつ私達がまだ世界の4割程度しか支配できていないのは、その勇者の力が故。

 

 私の力も効かず、攻め落とした場所も取り戻される。一番恐ろしい所は・・・

 

 【殺しても蘇ってくる】所だろう。

 

 あれは光の存在でありながら、本来の闇の力である無限を宿している・・・まるでバグともいえる存在。

 

 だが、魔術都市を落とした今、世界中の防衛力は落ちている。

 

 これを機に世界中を闇の軍勢で攻め続け、勇者を動かし、神聖都市を私の力で徐々に壊していけば、何れ勇者も【戦う意味】をなくすだろう。

 

 復讐に囚われればまたよし。

 

 それはいずれ窶れに繋がるのだから。

 

 今は様々な場所で私が魅了した邪神の使徒達が【邪神教】を謳い、活動している。後はそれ等に命令を下して人を襲わせれば・・・

 

 そう考えていた矢先に部下から連絡が届いた。

 

 邪神教と天使教が全て宗旨替えしたと。

 

 耳を疑った。

 

 天使教は分かっている。人間達が起こした宗教だ。それはいい・・・問題は邪神教だ。彼等の中には私が魅了した存在がいる。

 

 そのうちの一部に私の力の欠片を渡し、入信した者を遠隔的に魅了し支配する事も出来る。こうして徐々に全てを侵し壊す事を目的にしていた・・・

 

 それがすべて邪神教を捨てた? 私の魅了が解除されたというのだろうか? それはつまり死ぬ事と同義なのに、どうして・・・

 

 場所は連絡を受けている。

 

 私の魅了を無効化する何かが居る可能性・・・それはとても危険だ。

 

 私は準備を行い始める、私達を脅かす可能性のある何かを探しに―――

 

 

 





【魔術:終わらぬ魅了】
対象を魅了し支配下に置く。
支配下に置かれた対象は貴方の命令でのみ動く人形になる。

魅惑の闇の力に憧れた魔術師アーソンが編み出した魔術。
最後まで未完成であったそれは、完成を望むあまり魅惑の闇の魅了を
浴びた。結果アーソンは魔術よりも隷属を選び取った
英雄に殺された時ですら彼は幸福であった、魔術を超えた魅了への悦びを 

 

 
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