異世界でTS幼女はおいしみを食べたい   作:あさねこ

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死の先へ行く者に、ただ、祈りを贈れ

 

 

 

 

 人はあっけなく死ぬ

 

 小さな村で僕達は生きていた。

 

 貧しい村だったけど、家族で幸せに生きていた。

 

 あの辺りはモンスターも少なく、窶れも少ない。だからこそギリギリ村人だけが生きていけるだけの僅かな余裕はあった。

 

 僅かだけ、

 

 ほんの僅かだけ、

 

 壊れる時は一瞬で、どこにでもある不作と冬が重なって、村はどうしようもなくなって滅んだ。

 

 僕達の家族もなけなしの食料と物資を持って村を出た。

 

 人は限界になると、他人に対してどこまでもドライになる。仲の良かった友人たちもこちらの事など知らないとばかりに逃げていった。

 

 仕方ない、それは仕方ない事だ。

 

 僕達だって余裕はない。

 

 それに僕の家は弟に妹もいる。

 

 平時であれば何れ畑を担う大事な人足になっていただろう。弟はまだまだ子供だが、農作業を楽しんでやっていた。

 

 妹はもっと幼いが、いずれは嫁となって他の家に嫁ぐだろう、村人同士のつながりを濃くするのに必要な人材だ。

 

 小難しい事は僕には詳しくは分からなかったけど、それでも大切な家族だった。

 

 だが、それは父と母にとっては違ったようだ。

 

 悪い親ではなかった、決して良い親ではなかったが、僕達をそこまでないがしろにはせず。何とか食べていくだけの事は出来ていた。

 

 母も悪い人間ではなかった、強いて言えば少し頭が足りていなかっただけだ。父のいう事を全て肯定しそれ以外は知らないし分からないという、典型的な村の嫁だった。

 

 妹もいつかはこうなるのかもしれない、そう思っていたが。

 

 まさか家族全員で逃げた先で少ない食料総てを持って逃げるなんて思わなかった。僕達の分の食料を持って逃げたからと、生き残れる可能性なんて少ない筈だ。数日、長くても10日ほどの食料が浮くだけだ。

 

 それでどうにかなるつもりだったのか、どうなのかわからないが、僕の考えていた通りに途中で死んでいた。食料も奪われ、着ている衣服すら奪われ、胴体は捌かれ両手両足を切断されて打ち捨てられていた。

 

 多分、食べる為に切断されたのだろう。人間は極度の飢えを満たすためなら何でも食べると、村に居た先生が言っていた。

 

 何も食料を持たない僕と弟と妹たち。

 

 もう先は、学のない僕でもわかっていた。

 

 何とか近くの村についても、誰も助けてくれる事はなかった。多分同じ事が僕の村であったとしても、きっと同じ事をしてただろう。

 

 どこも余裕なんてないんだ。見も知らない他人に施すものなんてない。村内ですらあぶれる人がいるのに、よそ者に与える仕事なんてない。

 

 食料すら足りてないのに、何故他人に施さないとならないのか。

 

 痛いほどわかる。

 

 そして・・・

 

 分かり切っていたが

 

 弟も妹も飢えて死んだ

 

 食べられるものもなく、木の皮を齧り、川の水を飲み、それでも何も足りなくて、雪が降り積もるこの場所で凍死ではなく飢えて死んだ。

 

 僕自身とうに限界で、あと数日も持たずに飢えて死ぬだろう。

 

 頭をよぎったのは、埋めた弟と妹を掘り返して食べれば・・・なんていう恐ろしい考え。確かに満たされるだろう、だけど・・・僕にはどうしてもできなかった。

 

 限界だった

 

 道中、色んな人に頭を下げ、食料を分けてもらえないか頼み込んだ。

 

 元々恥なんてない、家族も守れず、ただ死にたくないから生きている僕に――

 

 だけどそろそろ意識も薄れ

 

 このまま眠るように死んだ方が楽なのかもと、思った最後に

 

 行商人みたいな人達が見え、最後の最後にあらん限りの物乞いをした。

 

 どうせ無理だろう

 

 もう楽になれるならどうでもいい、どうせ僕はここで死ぬ―――

 

 倒れるように地べたに垂れていた僕の頭を、ぽふぽふと撫でる感触があった。

 

 ゆっくりと頭を上げると、そこには

 

 少女が居た

 

 自分の妹よりも年下だろうか

 

 その子は僕を見て、一切の表情も変えず、ただ、頭を撫でていた

 

 懐から何かを出して、そのまま僕の口に放り込む

 

 それが干しポリョンヌだと気付くのには少しだけかかった

 

 小さな、とても小さな声で、彼女は僕にだけ聞こえるような声で、こういった。

 

 

―おいしみ たべる

 

 

 おいしみ・・・というのは分からないけど、僕は彼女のお陰で今、こうして次の町、ポリョスに向かって歩いている。

 

 あの後僕は彼女の頼みを聞いた大人の人達に水と食料、それを入れる袋。僕でも使えるようなナイフを持たされ、ここから数日あるけば仕事も割り振ってくれる町があるという事を教えてもらった。

 

 更には路銀までも貰ってしまった。

 

 なぜこんなにも・・・と思ったら、糸目の人があの子がそう望んだから、と、気にしないで早く向かいなさいと言ってくれた。

 

 少女は頭を下げ感謝する僕に近寄って、また霞むような小声で

 

 

―むりは だめ  がんばら  なくて  いい   いきる 

 

 

 無理ばかりしていた

 

 両親に捨てられ妹と弟を護る為に

 

 必死に頑張った

 

 でも全部無意味だった

 

 少女は僕に無理はしなくていいと、これ以上頑張らなくていいと、言ってくれた。

 

 その言葉に僕は何かがストンと落ちて、歩いている最中、前が見えない程に涙が止まらなかった。

 

 生きろと、

 

 自分の為に生きろと、

 

 彼女は言ってくれたのだ

 

 貰ったナイフを握りしめる

 

 今の僕にはなにもない

 

 何の目的も

 

 やることも

 

 だけど、生きてみようと思う

 

 出来うる限りの中で、僕は、生きようと思う

 

 そして、あの子の様に、ただ無償で誰かを助けられるような人になりたいなんて

 

 おこがましくも思ってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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