あらゆるものの頂点にいた。
下等な生物と下等な生物同士が、世界を云々と争っている世界でそれはただ孤高であり続けた。自身に比肩しうるものは極少数であり、それ等はお互いの縄張りを持ち、滅多に争う事はない。
そんな中、1匹の同等の存在が死んだ。
それらの中では一番弱く、故に、強くなるためだけに下等な生物を食い漁る様な、同等の存在とは認めたくもないそれが死んだ。
弱くとも、同等の存在が死んだ以上、他も動くだろう。我等を降したそれを見るために。意志を持つそれも同じだった。
戯れに下等生物を滅ぼし食い荒らし、いずれ訪れるだろう強者と戦う事を望んでいた。
負けるつもりもなく、ただ無限に続くような世界で刹那の時間を楽しみ微睡む為に。
だが――
だがこれは――
これはなんだ―――
目の前には矮小な筈の下等生物が二匹、それが滅ぼし自身の【所持品】とした場所を勝手に荒らす愚かな者達を殺そうとして、今それは何もできずに地面に縫い付けられていた。
呼吸をすれば息苦しく、内部から切り裂かれていく。
たかが雨の礫がどんな牙や爪、聖剣や魔剣、魔将の魔法、英雄の技、勇者の力ですら殆ど傷を付けられなかった鱗や肉体を容赦なく貫き感じた事もない激痛を与え続ける。
一瞬で極低温になり、その数瞬後には極高温にと変わり続ける。そのあまりに早い変化に鱗が耐え切れず、肉体が耐え切れず悲鳴を上げている。
仕切りなおすべく羽ばたかせた翼は突如現れた竜巻によってズタズタに引き裂かれた。
しゅうしゅうと貫く雨の礫は酸すら含んでいるのか、体中を徐々に溶かしつくしていく。あまりの激痛と怒りに咆哮を上げようとすれば空気が消え、音がかき消された。
この状態を端的に言えば【急に変わった天気のせいで動けなくなった】だ。
攻撃されたというにはあまりにも歪で。
事実、目の前で此方を嘲笑する小さなナニカはただ狂笑し此方を見ているだけ。その後ろにいる少しだけ大きなナニカはただこちらを見ているだけだ。
それには理解できない【言葉】というものを用いて、ただこちらを嘲るように笑っている。ただ、笑っているだけだ。
あれは何もしていない、ただそこにいるだけで急に世界の総てが牙を剥いたのだ。
※
【ぇ~~この程度でもう動けないのぉ? ぅじ虫じゃん♪ おっきぃおっきぃ蛆虫ぃ♪ これならこっちの世界のゴミムシの方がずっと強いよぉ♪】
あの子に貰った鉄の輪を指でくるくると回しながら目の前のトカゲを見下ろし中♪
ほんと、雑魚にも程があるよねぇ、たかがすこしの天候操作だけでこんな風になるんだから、この世界のモンスターとかって生温いのかも。なんとなく目の前のトカゲの思考を読み取ったけど、これで世界最高峰とかwwwwマジウケるんだけどぉww
はい、一寸暑くなるわよ~、まずは500度から。あ、耐えるじゃんやるじゃない♪ じゃあプラス1000度~。
ぷくくくく♪ 一瞬で溶けて来てる~。はいじゃあ今度は絶対零度~♪
今度は融けたのが一瞬で凍って、あちこちひび割れて来てるじゃない。この程度しか持たないとかよくそれで最強とか最高の種族を名乗れまちゅねぇ。
さぁて・・・・私が望めば世界は望むがままに姿を変える。雨を降らし、雪を降らし、酸を降らし、毒を降らし、世界に関係する事ならばあらゆることが可能になる。
私の力、私の奇跡、私の呪い、私の根源、私の全て。それが私の力、世界への【強制命令権利】それはたとえ異世界であろうとも、それが【世界】と定義されれば、この力は何処までも自由になるのよね♪
単純に【世界よ壊れよ】と願えば世界はそうなるの。
私の願いに星自身がそれに応えてくれる。きっとすぐに世界は滅びを迎え星は終わるかもね。私の力は本来そこまでの強制力を持ってるから・・・
だからちょっと気が緩んだら簡単に滅ぼしちゃいそうだから、今回は面倒臭いけどストッパーを呼んでおいたわ。私って我慢するの苦手だから、こいつが私の機嫌を損ねたら、きっと我慢できずにこの世界破壊しちゃうだろうし・・・
そしたら自身の可愛い妹の旅を邪魔してしまう、そんなのだめだから。
――私があらゆる存在の中で唯一愛している存在を泣かしちゃうのは流石に本意じゃあないもの。でも色々あって我慢できない体質になった私じゃあ、自分の心を制御する事が難しいのよねぇ。
私が・・・そう、エンティケアがエンティケアでいられるのは、愛している少女の、大切な妹の前でだけだから。あの子が居なかったら私は狂ってセカイを滅ぼしてただろうから。
だから、イラつきながらも召喚時に妹大好き勢のヴァルハルトも一緒に連れてきたんだし何とかなるでしょ。目の前のさびさびヴァルハルトは私と同じで、あの子を愛し、護ってるから。あのデカブツ騎士ならば万が一、私が私を制御できなくなった時に、【殺して】くれると信じている。
世界に祝福され、世界を呪い、壊れた私は殺された程度で消滅する事はないから。さび騎士に殺されるその時は盛大に目の前のゴミを消し潰し、いつもの中で反省しつつ大切なあの子の役に立てたと満足できそうだし。うーん、私お姉ちゃんしてる!
時々なまいきに自分の方がお姉ちゃんだもんってやるからねぇ・・・!
エンティケアちゃんぱんちが唸りを上げるわよ! シュッシュッ!!
・・・って、あれれぇ?
【あれあれあれぇ~? ねぇ、もう動けないのぉ? この程度でもう動けないのぉ? くっそよわっ! こんなのに怯えてるとかぁありえないよねぇ】
ちょっと考え事してる間にトカゲがもう死にかけてた。というか殆ど死んでた。ほんとこの程度で動けないとかあまりにも雑魚過ぎるなぁ。邪神軍ってあの子の敵になれるのかちょっと心配だよぉ~
ま、雑魚なら雑魚でそれでもいいけどねぇ? 寧ろあの子を傷つけようものなら・・・あらゆる手段を用いて相手を貶し、堕とし、絶望させてやる。私がされたように、愛しい妹が同じ目に遭わない様に。
【がんばれ~? ほらほらぁ、ちょっとだけ動いてみよぉ? って・・・なによぉ、もう死んでるんだ】
この世界で災厄と呼ばれたそれは、結局私の適当に振るった力だけで何もできずに、ただ甚振られた虫が這い蹲るように死んじゃった。
なんか誇り云々~とかそういう思考が読み取れたけどぉ? あんたみたいな雑魚には誇りある死とか認められないからwwww
あんたはただただ地べたに縫い付けられ、一切の攻撃すらされず。ただただ世界という天災に壊されてればいいのよ。
【折角出てきたのになぁ~・・・あ、そうだ。私達で邪神軍を・・・はーいはい。わかってるわよぉ】
いっそこのまま~って思ったらヴァルハルトがこっち見てた。分かってるわよ、これ以上はあの子が持たないんでしょ? 可愛い妹の為だもの、ちゃんと戻るわよ。
それにしても・・・後ろを振り向くとよわよわ人間達があの子を護るようにしているのが見える。
それらに一切の感情を向ける事はないけどぉ、それでもぽつりと最後に呟いて、私達はあの子の中に戻る事にしたわ。
【雑魚が、私の大切な、大切な大切な大切な大切な妹の手を煩わせないでよね、つい殺しちゃいそうだから】
あの子に何かあれば私だけじゃなく、総ての世界がおまえ達の敵になるからね♪