異世界でTS幼女はおいしみを食べたい   作:あさねこ

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これが思し召しだというのならば

 

 

 

 私のせいでオイシミがいなくなってしまったと考えていたが、今回の事はどうやら本当に彼女自身のミスでリアカーから落ちて転がって穴に落ちてしまったらしい。

 

 一連をストレートに聞けば誰もが何かの冗談か笑い話だと言うだろう、私も当事者でなければ一笑に付していたような内容だ。しかしながらそれは事実であり、今ここで彼女がいつもの表情を見せてくれるのは幸運がもたらしてくれた奇跡なのだろう。

 

 私が冷静さをかなぐり捨てて探していた所に極光が走り、直ぐにログンソンがここに居ろと走り出していった。私は非戦闘員ではあるが、それでも彼とそれなりに旅をしてきた以上それなりに腕を上げてきた、だが彼が見せた表情は驚愕と恐怖そのものだった。

 

 恐らくあの極光はオイシミの、彼女が呼び出した何者かの攻撃か何かなのだろう。その証拠に光が消えると同時に何か巨大なものが上空から凄まじい勢いで落ちてきたのだから。あそこにオイシミがいたとしても彼ならともかく冷静さを欠いていた私が向かっても邪魔になるだけだったのだろう。その証拠に戻ってきた彼は魔将と戦った時以上に精神的に疲弊していたのだから。

 

 だがそれでも彼が彼女を、オイシミを抱きしめて帰ってきた時は柄にもなく大声を上げてしまった。私にとって彼女は未来への投資先に過ぎない筈なのに、いやだからこそか。そうなのだ、そう思う事にしよう。

 

 目が覚めた彼女はその表情はいつも通りだがどう見ても挙動不審であり、直ぐにすさまじい速度からの土下座を始めてしまった。止めようにも一瞬の事で私も彼も止める事が出来なかった。

 

 彼女自身今回の事は自分でも申し訳ないのだと感じていたのだろう、だがただの小さなミスが連続して続いただけで、それも私がそう言った対策を魔導リアカーにセットしていなかったのも大いにある、直ぐにやめさせることに成功した。

 

 ―ごめんなさい、ごめんなさい

 

 と、震えるような声でか細く呟く少女を誰がこれ以上責められよう。何にせよ無事でよかった、それでいい。今回の事はオイシミの遊び過ぎての油断、リアカーを魔道具を使っての自動化をさせていたため、私が動かしていれば気付けたという事も考え、魔導リアカーには転がり落ちない様に柵を設け、一定の物質がリアカーから落ちた場合音が鳴るように設定しなおした。

 

 これなら今回のような事は二度と起きないだろう。

 

 そして不思議だったのはあの時彼女を護るように現れログンソンを手助けしてくれた闇の・・・恐らくは邪神軍の魔将かなにか・・・それがいなかったのは未だに謎だ。というよりもそもそも何故そんな存在がオイシミを護っているのか・・・私達ただの人間には分からない事ばかりである。

 

 だが今回の事はこれで終わりではなかった。寧ろここからが本番だったのだ、直ぐに旅を再開しようとしていた私達を彼女が引き止め、地下に、彼女が落ちた場所に色々な魔道具とかが落ちていたと教えてくれた。

 

 成程、彼女が落ちた場所は何処かのまだ見つかっていない遺跡かダンジョンだったのかもしれない。あの極光から落ちてきたバケモノは多分そこの守護者か何かでオイシミに手を出して倒されたのだろう。

 

 昔の遺跡やダンジョンには色々なお宝が眠っている事が多い。モンスター狩りの一部もそういう場所を探索する宝物探索者なるタイプもいる。当たり外れが多いが、美味く当たれば強力な魔道具や武具、金銀財宝が手に入るのだ。

 

 勿論その分危険も多い。様々なモンスターや守護者、死んだ宝物探索者や何やらが死者と化し襲い掛かって来る。様々な罠に入り組んだ迷宮は恐怖そのものだろう。

 

 私はただの行商人なのでそういう場所に行く事はないし、行きたいと考えた事は小さな頃にしかなかった。英雄などがそう言うダンジョンを探索して邪悪を倒したり、誰かを救ったりなどそう言う英雄譚は数知れずあるのだから。

 

 強力な魔道具などは欲しければ買い取ればいい、そして売れば十分以上に元が取れる。だが積極的には・・・そう言う魔道具は確かに珍しいが探せば大体どこにでもあるものだ。武具などは珍しい金属の武器とかがある程度で魔力が宿った武器などがあればそれは大発見とも言えるが、そんな物が手に入るダンジョンなど大体すでに掘りつくされている。

 

 そんな事を考えていた私にオイシミが差し出してきたのは震えるほどに美しく強大な魔力が込められた短剣と鞘だった。

 

 意識が高揚するのが分かる。美しい装飾と飾り付けられた宝石の様に輝く何か。これは現在この地上にはない可能性がある。だがそれよりも、魔道具技師としてそれなりに育ってきた私だからこそこれのすさまじさが良く分かる。

 

 手に持っただけで湧き上がる力、スラリと抜き払うと美しい刀身、恐らくは装飾用、儀式用なのだろう攻撃力や耐久力はないだろうがそれを超えて余りある強力な強化能力がこの短剣には宿っていた。

 

 現在の鍛冶師や魔道具技師では絶対に作成不可能。英雄ですらこれほどの業物は持っていまい・・・勇者であれば国が全力を挙げて探し当てたのを与えた可能性があるか程度・・・これは恐らく遥か古代に存在し滅んだ巨人族【コルマイセル】の魔導技鍛冶師が作り上げた逸品に違いない・・・!

 

 そしてオイシミはこれを地下で拾ってきたという。そして・・・これと似たようなものがまだ地下には沢山眠っているというのだ・・・! これはもしかしなくてこれから邪神軍の本拠地と言う地獄に向かおうとしている私達に対する福音か何かなのだろうか・・・

 

 ミスでそこに辿り着いたとオイシミは言うが、彼女には得体のしれない力とそれ以上にどんな状況でも生きている神の加護ではないかと思うような幸運がある。

 

 これは先を目指すより前にその遺跡を探索する方が先になりそうだ。

 

 私も今から興奮が止まらない・・・! オイシミが生きていてくれた喜びと同じ位今の私は高揚していた。

 

 

 

 

 

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