そこが楽園だというのならば私は信じようと思う。
誰かにとってはただの瓦礫の山だとしても、誰かにとっては危険な遺跡跡だったとしても私にとっては、少女に導かれたこの場所は何よりも幼い頃から夢見ていた場所なのだから。
商人としての私が目の前の金銀財宝に興奮し
幼いころ夢見ていた英雄としての私は目の前の英雄の武具に目を輝かせる。
そこにあったものは大半が普通の人間には使えなさそうな巨人の家具や食器などだとしてもそのどれもが今の技術では再現出来ないような超技術で作られた物ばかり。
中には人間用・・・恐らくは使用人達だろうか? それようの家具や物資もやはり今の技術では作れないようなものたちだ。これだけで一財産築けるほどには宝の山と言える。それだけでも十分以上だが、更には普段生活に使う様なものや武具に至るまでその全てが魔道具や魔導武具ばかりだった。
オイシミが持っていたナイフ程の性能はないが、どれもこれも超一流のモンスター狩りや英雄達が装備しても不足ない物ばかり。
ふと触った重厚そうな盾は軽量化の魔術が施されているのか私でも簡単に持てる位に軽く更には強力な防御効果が付与されている。そのような武具がそこらへんに雑多として見つかるのだ、この遺跡が国に見つかっていれば最前線の戦士たちはかなり余裕をもって戦えたのではないだろうか。
生活魔道具一つにしても便利な物ばかりだ。入れた水を沸かす事が出来るポットや注いだ飲み物を常に冷やせるカップ。
入れておけば魔力が切れない限りは腐敗を無効化出来るだろう保管庫等々、どれ一つでも研究出来れば私は大商会を作る事も可能だろう。将来の事を考え用意しておいた魔道具の鞄に詰め込んでいくが、寧ろ私が使っている魔道具の鞄以上の持ち運び可能なチェストを見つけそれにどんどん詰め込んでいく。
ログンソンの方は人間が使える大きさの武具を探しているようだ。今彼が使っている武具も現時点においては勇者や英雄が扱う武器と遜色ない性能ではあるが、この辺りにある武具はそれらを性能の差や付与されている魔術の差はあれど全てを凌駕している。本当にオイシミには感謝しなくてはならない。
※
まさかまだ使える回復剤があるとは思わなかった。どの瓶も魔術保護されており総て問題なく飲める事を確認出来た。
その効果も現存している回復剤より汎用的に便利であり、効果もとても高い。回復剤は基本的に魔力を用いて強力な賦活効果を発生させるものだ。飲むだけで基本的に効果があるが、その性質上飲んで行き成り回復するという事はない。
魔術の治癒効果は魔力を用いて強制的に回復させる事が出来るため回復速度は速いが、何度も使い過ぎると極めて面倒なデメリットも発生する。それは半永久的に回復速度が落ち込み、老化が早くなるというものだ。
故に安易な治癒魔術の使用は控えるべきとされているが軽いケガ程度を治したり病症を抑えるために定期的に使うのであればそこまで危険ではない。あくまでもほぼ毎日のように怪我をしたりするモンスター狩りや軍人などの人間が可能性があるだけだ。
なので回復剤はとても貴重であり、安全性も治癒魔法と比べてとても高い。あくまでも高いだけなのでこれらの回復剤も定期的に摂取していれば中毒に陥ったり、かえって病気を進行させたりもするので注意は必要だった。
だが、オイシミが見つけてきたこれらの回復剤はその辺りのデメリットを極限にまで抑えている代物ばかりだ。簡易的な軽傷治癒の回復剤ですら毎日何本も飲む、などをやらなければ中毒にもならないだろう。これほどの回復剤を再現する事が出来ればログンソンの治癒やこれからの商売で必須になる。すべてが終わった後は研究しなければならない。
そしてそんな中ひと際目立つ入れ物に頑丈に魔術保護された薬瓶が一つだけあった。他の雑多な薬瓶とは違い、装飾も美しくその瓶自体が強力な魔道具とも言えるだろう。これほどの技術は私は疎か最高級の魔道具技師でも作れるかどうか。
その見た目、鑑定の結果神々が作ったと言われる神の薬の一つ―
【神薬ドラゴン・ブラッド】である事が判明した・・・!
私は今奇跡を目の当たりにしている。様々な王族や貴族が探し求めそれ一つで戦争すら起きたという神の薬の一つだ。
一瞬偽物ではないかと思ったが、これほど強力な魔道具で保存された薬はそうそうほかにないだろう。見た目も何もかも文献で見た形そのままだ。
たった一口飲むだけであらゆる病が癒され、総て飲めば若返り、長寿となり、ありとあらゆる怪我を治し、死者ですら一定の時間以内ならば復活させる事すら出来ると言われている。どこまでも真実なのか、その全てが真実なのかは分からないが、一度でもいいから見てみたいと願ったそれがこんな簡単に見つかるとは・・・
とりあえず売る事はない。確かにこれ一つで長者にはなれるだろう、だがそんな呼称などどうでもいい。これを調べて複製は・・・恐らく無理だろう、私程度の魔道具技師、それも回復剤などの飲料は対象外だ、私では無理だし他の人に頼むにもツテもない、それに頼んだとしても再現できる可能性はとても低い。
ならば万が一の為に使うか・・・権威の為に保持も考えたが命を狙われたらかなわない。他にはログンソンに飲んでもらうことも考えたが、失った四肢は流石に回復できないだろう。
あらゆる病を、怪我を治し、寿命を延ばし、若返る・・・まさに伝説の竜の血を飲んだ英雄の様に。
今はとりあえず大切に保存する事にしよう。これから向かう先は地獄なのだ、きっとこれを使う場所があるはず。私ではなく、オイシミやログンソンの為にも。
しかしだ、しかし! こんな簡単に出てくるのであれば、探せばもう1個や2個、下手すれば10個位出てくるのではないだろうか!!
ログンソン、オイシミ! さぁ、他の回復剤を探すとしましょうか! ほらいそいで!!
【神薬ドラゴン・ブラッド】
製造方法が一切不明の神の薬。
飲むだけで肉体が若返り最盛期の頃まで肉体が活性化する。
更に一時的な不老効果と永続的な長寿を得る。
あらゆる病や呪い、怪我などを完全に癒す事が出き、
死んだ存在に対しても半日以内なら蘇生すら可能とする。
とある錬金術師の言葉―
あまりに強すぎるそれを態と毒で弱める事で人に使えるようにしたんだよ。