異世界でTS幼女はおいしみを食べたい   作:あさねこ

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窶れの姫よ、悍ましき畜生よ、どうか死に絶えよ。

 

 

 ここ数日ポリョスの町にも難民が来るようになった。

 

 自分がここに迎え入れられてから一月の間に10以上の家族がやってきたのだ。そのほとんどが家族連れだったりするが、彼等の大半はかの大都市リカリオン・ラスから逃げてきた者達ばかりだ。

 

 一部は宿屋を経営してた女性や酒場のマスター、レストランのマスターシェフなど本来ならこんな田舎には来なさそうな人間まで来ている。やはり邪神軍の襲撃は世界各国で起きているのだろうか、等と思っていたらどうやら違うらしい。

 

 なにやら強大な窶れ人が何度も何度も散発的に襲撃し少なくない被害を受け続けた結果だというのだ。王族や貴族は軍を自分達を護る事だけに集中し、スラムの人間は勿論の事、市民すら護る事がなくなり、誰もがやっていけないと一念発起して逃げてきたらしい。

 

 確かに最近は窶れ達の襲撃も多い。あちこちで元は山賊だったのかスラムの人間だったのかという姿の窶れ人も見かけるようになったし、この近くの何処かにあるだろう窶れ人の集落からも襲撃は絶えない。

 

 やっぱり人類は徐々に追い詰められているのかもしれない。未来は昏く、先は見通せないけど助けてもらって残った命、今度は自分が誰かを助けられるようになりたい。

 

 あれからずっと鍛錬や討伐を続け、ポリョス一番の戦士になっていた。一応魔術も使えるようになったし、魔力を武器に宿して戦う能力も手に入れた。

 

 みんながこぞって英雄だの勇者だの囃し立てるのが最近の悩みだ。まだまだ今の自分は弱い。あの時助けてくれた彼等の足元にも未だ及ばないだろう。努力を続けて強くならなければ・・・

 

 何はともあれ避難してきた彼等をポリョスの町は快く受け入れてくれた。自分も受け入れられた人間だからここで彼等が追い出されたらどうしようと思っていたけど、やはりここはポリョンヌが毎回豊作になる町、食料には一切困っていないのだ。町の人曰く、「このままでも後20年は安泰だよ」との事。流石だと思う。

 

 今は町長の屋敷の会議室で彼等が襲われたという窶れ人についての情報を収集している所だ。自分もいるのは町の英雄とか呼ばれるようになったせいなのだが・・・それにしても誰がつけたのか、その窶れは【窶れ姫】と呼ばれているらしい。

 

 見た目が普通の窶れ人とは違って、殆ど人間の姿に近いそうだ。窶れに果てると人も動物もモンスターも植物も、本来の姿とはかけ離れた姿に変わる。

 

 人間ならまるでモンスターの【アグル】のような矮小であり、悍ましい姿に変わる。研究者による一説では窶れが果て、進化して【アグル】と言うモンスターになったのではないかとも言われてるらしいけど、一部窶れが産んだ子供達は更に悍ましく姿が変わり、独自の生態を作るとかなんとか・・・正直そこまで行くと訳が分からない。

 

 何にせよ窶れになると、本来の姿とは劇的に変わり、知能は退化し人間ならまともな言語すら喋られなくなるものなのだ。

 

 だけど彼等の言う窶れ姫はボソボソと喋ってはいるけれど確実に普通の言語で会話し、そして人間達・・・それもどうやら騎士階級や貴族階級に対して怖気が走るほどの憎しみを抱いているような事がわかったそうだ。

 

 彼等がその窶れ姫から逃げられたのも、基本的には都市の一般人であり王族や貴族でもなければ、騎士でもないから見逃されただけとも言っていた。

 

 後何故か、宿屋の店主の女性、酒場のマスター、レストランのオーナーシェフにだけはそもそも殺意すら向けていなかったというのだから訳が分からない。彼等自身もどうして見逃してもらったのか分からないらしい。

 

 共通点みたいなのはないように見えるし、強いて言うならば商い人という所かもしれないが、それがどうして窶れ姫に見逃される対象なのかも分からない。

 

 後彼等は見逃してもらったそうだが、同時に彼等を餌にして逃げようとしてた騎士や貴族達は全員もれなく殺されたらしい。今も何度も撃退されては更に強化された襲撃を続けているらしく、あのままでは陥落も時間の問題だという。

 

 もしかして窶れになる前の自我が強固で、それも騎士や特権階級の存在に対して強い憎悪を持っているからなのかもしれない。ならば都市を崩壊させるまでは安泰かもしれない・・・だけど、何時かその都市が壊滅し、窶れ姫が更に壊れ無差別に襲い掛かって来るような事があれば・・・いずれはこの町にも来る可能性がある。

 

 その時、自分達はその窶れ姫と戦って勝てるのだろうか。

 

 逃げる際中、彼等は騎士や貴族たちの断末魔が耳から離れないらしい。

 

 まるでそれは人間とは思えない、まるで、彼等こそ窶れとでも言う様な、悍ましい呪詛が自分を苛む呪いの様に聞こえるそうだ。

 

 

――窶れの姫よ、悍ましき畜生よ、どうか死に絶えよ。

 

 

 

 





【呪詛:リカリオン・ラスの最後の断末魔】
外道畜生が理不尽に相手を呪い苦しめる最後の呪い。
この呪詛を使ったものは必ず死亡する。
対象に死ぬまで生命力を奪う強力な呪詛を付与する。
しかし所詮は呪詛、聖なる力があれば簡単に解除される。

窶れの姫よ、悍ましき畜生よ、どうか死に絶えよ。
           我等、尊き存在に仇なす総てに永久の苦しみを――
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