異世界でTS幼女はおいしみを食べたい   作:あさねこ

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矮小なる者よ、跪け、命の為に

 

 

 ポリョスの町が今とても慌ただしい事になっている。

 

 最近増えてきたモンスターの襲撃が急にパッタリと止んだのだ。自分も防衛に参加し戦ってきたからこそわかる。こんな急にモンスターが襲ってこなくなるのは何かがおかしい。

 

 斥候を得意としているモンスター狩りの人が探索しに行って昼頃に戻ってきたが、とても神妙な表情で状況を伝えてくれた。

 

 どうやら、「モンスター達が逃げている」らしいのだ。

 

 普段小規模、大規模問わず襲い掛かって来るモンスター達がわき目も振らずに、人間の拠点を無視して逃げている。

 

 それはモンスターや窶れ、この辺りでも稀に見る邪神軍の尖兵ですらだ。

 

 それはつまりそうせざるを得ない状況が近づいているという事になる。勇者や英雄が現れたとしても、モンスター達がこんな風に逃げる事はないと聞いた。だから勇者や英雄、人間達の軍が近づいているという事はないだろう。

 

 もしかしたら国からの援軍が来ているのかもなんて考えたけど、国が村や小さな町を助けに来てくれたなんて話は「作り話」以外で聞いた事がない。そんな事があるのなら、最前線に近い自分達の町に国の騎士や軍が常駐してくれている筈だ。

 

 勿論そんな事はない、つまりは人間の大群が近づいているという感じでもない。斥候の人も高い所から調べた結果、そう言うのは近づいていないと言っている。

 

 ならば可能性としてはもう一つしかない。

 

 そして今、町が慌ただしい理由とも言える。

 

 モンスター達が逃げる、そんな存在は自分もあれくらいしか思いつかない。モンスターでありながらモンスターを喰らい、人を喰らい、動物を喰らい、邪神軍達ですら食らいつくす。あらゆる生物の天敵・・・【災厄】だ。

 

 邪神軍の魔将や英雄達ですら倒せるか分からない存在。それが猛威を振るえば大国であろうともその場に跪き首を垂れ祈りを捧げるしかない。

 

 勇者ですら勝てるか分からないと言われる、最早世界にとっての生きている災害。それが災厄だ。小さな村では知っている存在なんてほとんどいないだろう。自分は読み書きが好きで必死に覚えた文字のお陰で読めるようになった本に、そう言う【災厄】が居るという事を知った。

 

 世界に確認されている災厄は7体。それ以上いるのかはわからないけど、これでも2体ほど勇者によって倒されたのだ。そしてあと1体はまさかの邪神軍が討伐したと記載されている。

 

 今も尚確認されているのは―

 

 【誘死鳥カーオーン】

 

 【百光クファルガー】

 

 【死体の王国】

 

 【嗚咽の王】

 

 【喰らいし腐竜ラランザス=アルカイマー】

 

 【切り刻む紅き道化師】

 

 【腐り果てた森林の王】

 

 噂では都市に誘死鳥カーオーンが攻めてきたと聞いたけど、その都市が滅んだという噂がないし、討伐、撃退したという話も聞かないので恐らくはただの噂話だと思っていた。

 

 上から順に【確認された頻度が高い災厄】達だ。特にカーオーンは都市から逃げてきた人曰く、つい最近本当に襲ってきたというのだ。だけど殆ど死者を出す事なく、何者かによって撃破されたらしい。ただ、カーオーンの死体は確認されていないのでどこまでが真実なのかは自分もわからない。

 

 何にせよ、災厄が迫ってきている可能性が高いのであれば町総出で避難するしかない。幸いこのポリョスの町はそう言う避難経路を幾つも作っており、実は地下を掘り進めて町の住人+自分達程度なら狭苦しくはなるけど生活できる程度のスペースが確保されているのだそうだ。

 

 町の人もあっちこっちの大騒ぎではあるが混乱の最中と言う状況にならないのは、町民の民度と町長たちの迅速な指揮、自分達モンスター狩りの積極的な協力のお陰かもしれない。

 

 自分達は万が一の襲撃や災厄が来て居るかもしれないという事で警戒を続けているけど、手の空いている他の皆は懸命に食料や飲み水、必要な物資を地下に運んでいる。自警団の人達は率先して老人や子供達から優先して既に避難活動もしていた。

 

 そんな状況を見る度、自分の村と比べてしまう。このレベルまで行かなくてもちゃんと食料などを安定供給できる状況を作り、色んな整備をして、知識を広めていれば・・・なんて益体もない事を考えてしまっていた。

 

 災厄・・・今の自分では少し強いモンスターにも苦労している。あの時助けてくれたあの大剣を持っているモンスター狩りの人みたいに強くなれたらもしかしたら・・・いや、勇気と蛮勇をはき違えてはいけない。

 

 今回のこれがただの勘違いならそれならそれでいいと町長や皆は笑っていた。【それで皆が無事なら、皆でわらってられるならうちの町らしいじゃないか】・・・と。

 

 そして本当に災厄が来ているのなら君達のお陰で生き残れる可能性が出来た、どちらにしても笑えるし、感謝出来ると・・・あぁ、本当にただの勘違いで終わってほしい。そうすれば皆でわらってまた翌日からいつもの様に暮らせるのだから。

 

 だけど、空気が違っているのが自分にも感じ取れた。斥候の人は顔色を青くしながら、今回ばかりは危険かもしれないと言っていた。

 

 全員が避難した後も自分達は少人数で何かがあるかを調べる役目がある。

 

 何もなければそれでいい。

 

 いや、そうであってくれ・・・

 

 そんな思いは儚く散る事になった。

 

 

 

 

 

 

 それは、その日。悍ましい死の軍団を引き連れてポリョスの町に向かって進んでいたのだ。そこだけ見れば儚げな少女に見える化け物が・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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